つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

アナスタシア9/26S回

なんか2月ほど寝かせてしまっていたのでそろそろ出します。

これは演目限らないんですけど役者さん方におかれましてはお大事になさっていただいて……いやあの何とは言わんがあの疾患は予後不良が最もこわいんで頼むどうかご快癒してから出てきてくださいっていうか……。これ‘20年より昔から言ってるんだけど主催各位、おれらは実はいちおう血が通っているので具合悪い人を引っ張り出して提供された娯楽を楽しく消費できるほど人でなしではないんですよ……?*1


それはそれとして。
Twitterがなくなってもちゃんとログを残す練習なので普段より散りばらです。というかそうなっててもらわないと(未来の私が)困る。


堂珍グレブの回を観るたび脚本と仲良くなれる(自分の中で筋が通る解釈や見解を見つけること。オタクスラング)……なんで……?

初見時からずっと納得はしてなかった(それが作品として悪いとは言ってない、ミュージカルではよくよくよくあることなので)皇女アナスタシアとグレブの対峙シーン、グレブにとって重さがあれどナーシャにとって意味がなくない?を思っていたら『血統や国から与えられた役割より自分のおもうただしさを選ぶ』道をグレブが示すんだなここでとなり2回目*2の敗北をしました。や、どこも勝ち負けではないし何ならぜんぜん初回から負けたかったですけども。
いま思えば背景に全部書いてありましたね。……4回目で気づかなかったのはごめん顔を見るのに忙しくてなんだけど3回目まではそこが物理的に見えない席だったのは私にはどうしようもないぜ……物語を食ってる自覚があるから初見キャストがいるときは注釈席じゃないとこ選んで取ってるもん……。
このセットや演出までが嫌いなわけじゃないけどアナスタシアくんやっぱ物理的に見えない席がある場所に物語の必須パーツを置くのやめようよ……。そういう場所におくのはミュエリザの鹿さん*3くらいまでにしといてよぅ。

これは堂珍さんがカラコンしてると信じているから言うんですが、堂珍グレブ正面を見据えたときの色の濃い灰青色のまなこに冬将軍を想起していっぱい好きだなそのセンスとなりますね。少し濃くて寒色ぎみの静かなグレー、雪の積もった静かでほの明るい夜って感じの色してない?私は雪国にいたことがないので小説等からつくられた脳内理想イメージ映像ですが。ロシアの人民を導く冬将軍が夜明けの近い雪夜のいろしたまなこに静かながら確かな熱を宿しているのよくない?堂珍グレブの登場演説は1階から3階まで上手下手も満遍なく一度は顔が正面から見えるのすごいと思うし、それであの熱のこもった身振りと声、地に足着いた力強さで人民たちでつくる理想を語られるともうあれですよ、この人はロシア人民の未来を信じているんだなの気持ちになれますよ。地位や部屋がよくない印象を与えるのかもしれないが私自身はそれほど悪くはない、まーじでその通り人間性がはなまる*4だよこの警視副総監。

堂珍グレブ、登場場面の曲で人民らが不穏なことを言うとそっちに顔や視線を向けるのでゎぁ有能と思いました。さっと鋭い目が向くのに音の気配がしないの隙がない、し、明確な反乱分子でなければ大ごとにしないでやる気なのかなと。泳がせているだけかもしれんけど。
「ふるえているじゃないか」の声がすごくやわらかくて、いいよね。あの音の羽毛みたいなやわらかさが大変好きです。道路掃除人の娘と目を合わせたときの内心が恋なのか庇護心なのかはグレブにしかわかりませんが(作品外で教えてほしいとも思わない)、傍目には庇護ですと言われてもそんな違和感ない口当たりがこう、大人としての安心感があっていいよね。
いやまあ下心むき出しでもキャラとしてはわかるわかるよではあるけど(弱いものは食いつぶされるをここで見せる展開もロシアのねずみは強かなんだのディマソングと相性悪くなさそうだし)、人民に対して人情味のある堂珍グレブが憐れな少女に隠さずそんなもの向けてたらどんな顔して見てればいいかわからなくなりそうじゃん……。
私は堂珍グレブのこと、教育者……ではないが……指導者の人格を持てる登場人物*5だなと思っている節があるので……。相手への情と未来への祝福がある厳しさというか。

ところでなんですけど、もしかしてWキャスTキャスって演者ごとにデフォの音響設定決めてたりします?堂珍グレブの1幕ナンバー、どれもサビのところで急に音響の増幅抑え目になり、2回目のサビでは普通にぱんと張りのある増幅音が飛んできてたので……。これまでそんな演出かかってた回に会わなかったので、田代さんの歌い方に合わせてたのをその場で堂珍さんの歌い方に合わせ直してるのかなと思ったんですが。この音の飛んできかたしたの私のいたあたりだけ?

 

海宝ディマ(2回目)、布のかかったソファに寝転がってオルゴールをいじっているときのあどけなさに大変動揺しました。ぅゎぁあどけなくて可愛らしい……少年みたい……となってしまい。まさかだってこの話でディマから子どもでいていい安全圏を奪われた少年少女の気配がする瞬間があるとは思ってなかったじゃん。
オリバー!のちびっこギャングたちがそのまま大人になったみたいな海宝グレブが年相応より幼い(たぶん。ハンサムじゃなかったら~みたいなこと言われる場面があるので”そういう”対象になる青年なんでしょう)無防備さをしてるの、そんなの好きじゃない人類がいる?
そんなディマに石川ヴラドが向ける眼差しと声がまた温かく、協力して関係を保ち、互いを守り合う存在としての疑似親子みたいだなと思いました。タイザン5作品が好きなのでついそんな連想を。いえタイザン先生作品の「家族」はだいたい業ですが。
それを差し引いても、「つい助けちゃった」ヴラドが少年ディマにとって飾らずいられる相手になったの、いいよね。革命で家族と記憶を喪ったアーニャがいる一方、ロマノフ王朝の弾圧で安心できる場と守ってくれる家族を失った少年ディマに革命(のどたばた)で得た友がいるの、アナスタシアは革命が起こらなければよかったのにねに見えがち(じゃない?アーニャの悪夢やナナの嘆きを見ていると。)なのでバランスいいなーと思って見てる。
それはそれとして登場シーンの利発で抜け目なく、でもどこか想像の世界であそぶ子どものままな海宝ディミトリがヴラドと二人っきりのときだけすっかり警戒を解いているのはかわいいよ。
海宝さんがディミトリ役のときだけ出す、獣のようなぐるぐる音がする低い歌声が大変好きなので再び観られてきゃっきゃしました。あれお歌のじょうずな人しかやってくれない(できないのかもしれない)ので元四季の出る舞台は期待してしまいます。いえもちろん明るく高らかに響くハイトーンも好きだけど。いやあどの演目でも思うけど歌も演技も声の飛ばし方もなにもかもパーフェクトだなこの方。これで30代なのすげえよ。


朝海リリィ、皇太后様の番犬じゃん。2幕、凛々しく揺らがず飼い主を守るドーベルマンみたいなリリィが出てきて新しいなとなりました(賛辞です。)ロマノフ王朝崩壊に動揺する陛下に寄り添ってる場面では女性の嫋やかの印象だったので、生きるためにリリィも変わらずにいられなかったの説得力があった。個人的には。
酒場での乱痴気もよく吼えるけど威厳というかな、ロシア貴族である誇り、みたいな芯の印象が一番強くて、この曲の仕草と動きだったらわたしこのリリィが一番好みだなと思いました。たぶん座席位置もあり、歌はなんかハコに吸われたような音だったのが無念だけども。彼女の回もっと観たかったな。
対陛下へのリリィが見せる仕える秩序を守る信念、ねえグレブくん彼女とは思想では仲良くできないけど信念ではちょっと分かり合えたり……いやだめだな「そして何一つ返さなかった」をあんな悲痛に叫ぶ男が皇室は皇室ですを謳う陛下の番犬と仲良くはできないな。
このリリィだけなんだよね、「お客様ですよ、陛下」を猫撫で声でやらないの。粛々と畏敬を込めた低い声で主を呼ぶの、”””良”””では?
今更ですがリリーを呼ぶときにちっちゃいイをつけるの私の癖なので気にしないでください。

ところでなんですが、もしかして朝海さんって宝塚だと男役でした?ヴラドとの再会シーンでの彼女の動きがさ、なんか……若手の男優が女装して「女性役」として出てるときの色恋場面の気配とよく似ているんだよね……。これが演出指示なのか*6トップ以外の宝塚の恋愛場面がそうなのかは知りませんけれど。
これはおふざけであって私は本気ではありませんよ、ほらこいつら滑稽でしょう馬鹿にしていいんですよ、のあの感じ。私はあれが嫌いで若手が異性役やる集団劇をあまり観ないので語気が強いのはごめん。

*1:と思っていたんですが世の中にはそうでない人もいるというのをうっかりつついてしまったトレンドとそれから職場で見て久しぶりに具合を悪くしました。悪意がないがゆえの残酷、物語越しに見ているくらいがいちばんで限界値だよ……。

*2:1回目、なぜグレブがここで折れる?ご都合的にはわかるが説得される要素もアーニャの成長提示も虚無じゃん!?この場面がナナとの和解より重い扱いの順番に置かれるのなんで!?→このグレブに子どもを殺すのは無理だよ……。なんでここに置くのかは相変わらずわからないけど記憶と共に戻ってしまったロマノフ貴族の傲慢をここに置いてくのかな……。

*3:シシィが「鹿だわ!」言う前後で背景スクリーンに鹿のシルエットが映る。そして'22エリザではシシィのこれに「シカサン!?(裏声」と応じるルキーニが1名いて。

*4:海宝グレブの人間性が悪いとは言わないんだけど、でもアンジョみたいなグレブだなと思わせるあやうさがあるので……。田代グレブは個としてのとき”は”純朴そうだけどアーニャの前でしかそのお顔しないから副総監どのとしては国のいびつを映す鏡だよ。

*5:普段はぎゃーぎゃー言ってくる生徒でも、本当にヤバいトラブルに巻き込まれたときは頼る相手に選びそうなタイプの人間。相手が自分らを対等に尊重してくれる、信念のある人間だと感じているからの人望っていうかさ。

*6:ここを馬鹿にする場面にしてないキャストもいたので(1/3だけど)そうではないんじゃないかと思っているんですが、詳細は知らない