つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

アナスタシア10/4M回感想

キャスト(すべて敬称略)は葵・相葉・石川・田代・堀内だったかと。葵アーニャ見るかと思ってここ取りにいったので。

待機列で後ろのお客さんが前回観たグレブ評を話していたんですね。いわく、「すらっとしてて歌がうまくて他の2人とは発声からちょっと違うグレブ」
全員が全員あの服だと細身に見えるし他の二人とは発声が違う(元四季・声楽出身・J-POPシンガー)ので可能性3/3のままなのおもしろかったです。こんなに情報出てるのに横から聞いてるだけだと何も絞り込めない……いったい誰の話だったんだ。

今回は平日マチネに行ったんですよ。あまりに快適でびっくりしちゃった……。お客が……上演中の飲食も笑ってる俺アピールもせず普通に舞台を観てて……。
笑ってる気配はするんですよ。肩が揺れてるんだろうなって衣擦れや息だけのくすくす笑いがさざめくように
あんまり快適で平日休の業界に転職しようかと思っちゃった。初日以外にもこういう環境で観られる舞台があるのか……。というかこれが本来の客層が多い公演回の空気なのか……。
もしかして平日ソワレか土日が第一候補になるのは元々舞台のお客さんとして想定されてなかった(のが門戸が広がって来るようになった)人々で、故にお作法を子どもの頃に入れ込まれてないからお茶の間バラエティと同じ感覚で声出すものと本気で思っており、またシーンの空気も読めないから笑ってる俺アピールを……して……?


アナスタシア、やっぱり1階中列あたりのセンブロが一番観るのにバランスよいのでは?ちゃんと全体が見えてギリ表情も見えるし音響も変な鳴り方しないし、オペラグラスで抜けばどういう化粧かもわか……いやこれは見ようと思えば2階からも見えますけれども。この子 なら抜ける。前席にいる客がアレという懸念は捨てきれないので17列が最強ではありますが。この列にびっしり関係者いる回もあったし。
がなりの下手な人のそれが自分で思ってた以上にだめなんだなって気づいたので今回は対策にもうちょっと下がった場所取ったんですが。なんだかんだクリアな日生の音響だとどうもならんけど風呂釜と悪評高いオーブなら普通の声は普通に聞こえてキツいとこは(うまく出さないと届かないから)変な風に聞こえるけどそこまで痛くはない場所があると思って。結果から言うと勝利しました。でも役者さんを近くで見て歌や声も楽しむって目的なら15〜16列のセンブロくらいが一番いいように思う。


すみませんがここからだいたいグレブの話をしています。ディマもナナもリリィもヴラドもわたしは初見印象から大きく動いてなく、わからないものに自分なりの理解の道筋をつけるのが私の言語化なので……。
何度でも言いますけど受け手の感想は受け手の感想であってあなたの正解はあなたが観て感じたことですからね。*1


田代グレブ、発声が気にならない程度にちゃんと距離取って観るとわりと楽しいなと思いました。この方なのでかなり後ろでも歌唱は普通に飛んでくるし……。
耳が痛くならないとこから見る田代グレブ、それでもやっぱりファーストインパクト(誤字ではない)がさては人民愛してないな?の全力マイナス印象(キャラとしては好きだよ)だし、この瞬間の印象が強すぎてその後の可愛らしいのも懊悩も可哀想だなとは思いながらもめちゃくちゃ笑えてきてしまって、私は。いえグレブも真面目に生きてるよなとは思って観ているんですよ。
真面目に生きてるよなと思ってるけどあのマジで「何一つ返さな」そうなロマノフ王朝*2見てからだと君とその人民たちの違いは現体制で有利に育てられるコネや仕事をたまたま生まれ持っていたかだと思うけどな?(民衆ソングの感じは社会主義っぽかったし)の目で見てしまい。いや可愛いんですよ、冷たく厳しい綺麗な所作で階級なりの威厳もあって(なんか今回はあった……。)
アーニャとの邂逅からずっと隣の客が無言で笑ってたとしたらすみませんそれ私だったかもしれない。ごめんおもしろくて……。アーニャもグレブもずっと真面目に生きてるんだけどそれ故におもしろくて……。私は(架空存在の)人類の悪性*3に直面するとおもしろくなってしまうタイプです。
そうやって見ていたら1幕終わりで怒涛の丸め込みをくらいなんとなく印象はほだされてしまいましたが。このグレブへの印象度、むかし観たLNDファントムへの印象度と類似の上下をする……。以上、全体まとめ終わり。おもしろかったとこと好きなとこの話をします。

これは「生きる」の光男クンに言ってるのと同じやつなんですけど(前置き)、
ねえやっぱり私このグレブひととして嫌いwwww アーニャとのシーン見るに根っからの悪人ではなさそうだけどだからこそ人として嫌いwwwww(キャラクターとしてはそこそこ好みです。私はボンボルドがキャラとしてかなり好きだけど人としてシンプルに嫌いだよ。)
なんかこう……たまたま生まれた時場所がよくて持ってただけのコネと力を己が権利や資格として疑うことなく“育て”、そうでなかった弱者を愚昧とねじ伏せる腐敗役人なんだよな。
初見(まだ出してない)印象でも書いたんですけど、田代グレブ複数回*4観ても人民への愛はあるのか?の疑念が湧いてくる。監視と威しで口を噤ませ抑圧と強要で支配する、相手を信頼している者の行いではないよ。
いやあのこれは悪口のつもりではないんですけど、ほんとうに、いえグレブの悪口ではすごいあるんですけど役者への悪口ではないっていうか、グレブくんのことそういう人物として作ってると私は半ば信じているんですけど違ったらえっあっごめんそうは見えなかったと甚だ侮辱的なあやまり方をするしかないんですけども。
さっきも言ったけど、このグレブも根っからの悪人ではないとは思うんですよね。「個人として」「対等」に付き合うならたぶんそこまでひどい人でも嫌なやつでもなさそうなんだよ。だからこそ人として嫌いというか。
こいつらは敵だから有害な脅威であろうとして脅威性が高いのは行為の是非はどうあれそうだってわかってるんだもんながあるじゃん。自分は正しくてこいつらは愚かだからで(自分らが設定した)法律には正しいだけの無法をしてるのがいっちばん質が悪くて一番有害性が高いんだよ。やめよう別の話になってきている。私はいまもう物語ではなく現代日本の話をしているな?

ミュージカルアナスタシア、私はどの組み合わせで観ても社会風刺か?と思いながらいやでもホン書いたのも演出リーダーも国外の人だから違うだろうけど*5でもなんかもう現代日本なんだよな……自分らが言ってることとやってることのわかってないロマノフの皇族・貴族の胡座をかいた無責任さの造形が……となってしまう。

それはさておきグレブの登場シーンも遠くから、つまり絶対に侵害されない(色んな意味で)引きずられないとこから見てるぶんにはすごい好きなんですよ。隙や容赦のなさそうな表情や所作も印象は厳しい人物だなだけど同時にすごい綺麗*6だし……(やっぱ聞き取りにくいから芯を下げてほしいなとは思うけど、他グレブで聞いたから大まかな内容はだいたい覚えてるし……。)やっぱり人民のことはミリも信じてないし芽を摘み支配して、体制側にとって望ましいことだけを強要しようとしているようには見えるけど。なんか……いやこの印象は初見時インパクトを引きずってるのかもしれないけど、田代グレブは他の2グレブに漂うような“人民にとって”より良い未来だとどこかでは信じてる気配がなくない……?そうは思わないんじゃなくてそんなものどうでもいいみたいな関わりの断絶が漂ってませんか……?

私は田代さんがこの造形(この時代のロシア国家の映し鏡、貴族と形が違うだけで民衆にとっては有害な弾圧者)のつもりでなかったらどうしようとそろそろ本気で不安になってきているんですけど、でもだって田代グレブこの物語のなかでアーニャ以外に対等な個人の重さで向き合ってた相手いなくない?もしかしたら不穏分子でない同志にはやや優しいのかもしれないけど、悲鳴を上げた道路掃除人に意識を向けてからアーニャの顔を見るまでの数瞬で篤い人情を感じ取る力は私にはありませんでした。「震えているじゃないか」からもう声色が違うので、アーニャに向けるようなものを善良で忠実な人民には向けないんだろうな(少なくともすべては)というのはわかるよ。どのグレブもそうなのでアーニャにだけ少し特別なのは脚本設定なんだと思う。

そして田代グレブ、その特別やさしいアーニャにさえここまで強圧的なのに況やロシア人民をやみたいなところがあってだいぶおっかない(賛辞) アーニャに対する田代グレブよりロシア人民に対する堂珍グレブのほうが穏和そうに見える。所作の鋭さもなんだけど1幕の田代グレブ、アーニャにだいじょぶ?してるとき以外ほぼほぼ表情に受容がないからそれもあっておっかないんだろうな。*7よく顔立ちの整って表情に感情をあまり乗せない様を指して“お人形のような”と言うけど、お人形って綺麗だけど不安が募る場(夜中とか)で目が合うとすっげえこわいし目を離した後も引きずるもんな……。

これを一番強く思ったのが「流れるネヴァ川」をアーニャに歌わせるところ。私はこのグレブだとこのシーンが一番印象に残っているんですけど。するりと綺麗な動きでアーニャに腕を伸ばし、上向いた掌に急かされるように背中を伸ばし肩の強張ったアーニャが声を揃えるあの場面。
ことに激情的なものはない綺麗な所作と暴力性のほぼない怜悧な表情、己の処遇決定に強く関わる者が容疑者(「容疑なんてない」って言ってるけど)を促すときにこれ真正面から向けられるよりおっかないことあります?友好的と強圧的って両立できる要素だったんだな……と思いましたね。
暴力性っていうか……アーニャにカップをコン!とするときに向けてるときのあの……暴力性って言うのも違ってる気がするんだけどなんていうのああ言う気配。

それはそれとしてアーニャの顔を見て運命感じてる(言い方)グレブくんの邪気のなさと明るく輝く表情(愛らしいんですよ純粋で)を見て、私やっぱりグレブくんのこと嫌いだわ……www(賛辞)と思いました。いえかわいいんですよ。アーニャと反対方向へはけてくときのまっすぐ前見た明るい表情と高鳴る胸をおさえる握られた右手見た?
演出としては可愛らしいと思うんですよ、キャラクターとしては好みなんですよ、でもその排他性と運に恵まれた生まれへの自覚のなさが人として嫌い(架空人物の造形としてバランスは素晴らしいと思う)、そういうヒューマンには現実でよく遭遇し総じて有害性が高くその自覚がないから。さては私この物語における”たまたまその環境に生まれただけで”恵みを享受できていることに自覚もなくノブレスオブリージュ的な意識もない者のこと嫌いだな? (この物語の架空存在としての)ロマノフ王朝は滅んでしかるべきだったと思ってるしくずれロシア貴族どももどっちかと言えば嫌い枠だもんな。もしかして私グレブくんのその恵みが呪縛になったからあの1幕ナンバーでなんだかだ丸め込まれて同情してる?

最後のソロナンバーで情緒を掴んで振り回された結果なんとなく同情しながら1幕が閉じ(話はまだもう少し進む)、最初にも言ったけどLNDファントム観たときを思い出しました。私はLNDファントムのことも人として嫌いなんだけど、でも作中は音楽の力を追い風にしたエモーショナルの瞬間最大風速でなんか呑まれてしまうんだよ……「負ければ地獄」とかさ、落ち着いて振り返るとひっでえやつだよクリスとグスタフを物だとでも思って、になるんだけど*8でもあれ観てるその場じゃめちゃくちゃ昂揚するじゃん……ああいう……。

突然の文具オタクですがこの人物造形の田代グレブが3グレブのなかで筆記姿勢が一番うつくしいの大変好きなんですよね。すっと伸びた背筋、指先に強い力をこめずとも美しい文字を書ける正しい鉛筆の持ち方、目を少し伏せるだけの首を屈めない手元の見方、体幹使ってないとすぐ崩れる姿勢なのに全く力みの見えない美しい所作、あれは教育とか未来への機会とかそういう周囲が与える財産を生まれつき享受できた人間の特権だよ。いや演技なのはわかってるんですけど、でもほんとに、あれはまじで“周りにそう見せたい主体の意識”がちょっとでも見えるとわざとらしくて鼻につくんですよ。ああいう所作の類は意識されていない(ように見える)ときほど美しく、その人物を好意を持たれるに足る魅力があるように見せるんだよ。すっげーアレな例え出すけど(役者さんやグレブくんがそういう人間だとは言ってませんその意思もないです)生まれたときから金とコネに困ったことない二世政治屋の遊説しぐさなんかもう典型でしょ。
この書きぶりだと2グレブの所作がそうではないように聞こえますがお三方とも鉛筆の持ち方綺麗ですし姿勢もよく所作もスマートなんですよ。強いていえば海宝グレブの持ち方がちょっと幼げ(つけペンではなく鉛筆なのであの少し手首を内に入れる筆記姿勢も綺麗な持ち方です)でかわいいです。でも彼もちゃんと教わってるひとの持ち方だと思う。突然のオタクトークごめん。

ところで某青空でちょっと話題になってた田代さんのメイク、1幕ラストの持ちナンバーで真上から強い光が当たったときにぱしっと輪郭がシャープになり、あれは3階席からでもアナスタシアの明るいライト(暗いと端の席で顔が陰になるのでこれ自体は有難い)が直撃しても客席まで表情を見せる化粧なんだなとわかりを得ました。そういや最も強い光の直撃回数が多いだろう両アーニャちゃんも化粧での色設定や輪郭の付け方かなり強いもんな、まあこの演目で近くを取りに行く客は役者のメイクががちがちに強くてもでかいハコならそんなもんかとなるだろうし。
わたしは男性俳優の化粧を表情の視認性の向上と(その登場人物の)属性の付与だと思っているので(市村さんや鈴木壮麻さんのメイクは殊に付与された属性を読みやすい、あと岡本圭人さん)、グレブは成人の男性性と威圧感を強調するお化粧だなと思っています。シャドウの入れ方とか。ソリッドというかシャープというか。用語に詳しくないので適当なことを言っています。
2幕に入ると影との輪郭がやわらかくなってたような気がしたんだけど、たぶんライト……?20分とちょいの休憩時間で一から直せるもんなの?

 

断片の吐き出しログです。順不同でばーっと下ろして進行順に並び変えました。私は初めからこれがしたいのに文字数制限がないとつい掘ってしまう。

グレブの悲鳴みたいな「何一つ返さなかった!」の叫びを1回観た後に1幕1場のダンスシーンを見るとロマノフ王朝滅んでしかるべきだよと思ってしまうよね、これまではそう見てきたんですが「オルゴールよりお祈り」が大事な状況だと分かりながらアナスタシアが童女から少女になる間ずっとこうやって音楽と踊りに耽ってきたんだなこいつらと気づいてしまい一層その思いを強くしました。ロマノフの王族貴族どもが一対一の個人として付き合ったときどういう人間だったかには無関係に。彼がどう決断したかどうかとも全く別の話としてさ。
いやでもロシアンバー貴族を見る限りはだめだったよ。アーニャがああいう人間に育ってるのは金も庇護者もない一人民のアーニャとして生きてきた期間があるからだし。

相葉ディマ、3ディミトリのなかで一番大人っぽい感じがするなと思う。あの勝ち気で機を窺った目の輝きかな。アナスタシアが生きてるかもの噂を聞いたときに大人の顔で悪だくみをひらめくの彼だけじゃない?
関係ないけどアイシャドウをしっかりめに入れてくれるので遠目からでも表情の印象がはっきりしてて好きですね。

相葉グレブが大人っぽいとひょうきんでもよく周りが見えてる石川グレブも対等な悪友に見える。これは疑似父子、ディマが得た新しい庇護者の色が薄いという意味です。

下を靴紐を結んでいるのに2階からでも表情が窺えた海宝ディマ、あれは技術だったんだな……?

1幕民衆ナンバーの最後、袖からすーっと出てくる田代グレブがつかつか直進するときからもう半眼で、目をつけられているんだよなディマたちがな。
田代グレブ、不穏な声を聞いて振り向くときに動きが大きく勢いあるのに乱れがなく、音がして見えないのがおっかないんだよな。堂珍グレブも振り向くときに静かそうなんだけど、彼は動きも表情の厳しくなり方も最低限(に見える)から静かの印象があった……んだと思う。
演説中も表情が厳しいの田代グレブだけだよ。人民の意気軒高を喚ぶためにやってる感はあるんだけど共感や同調じゃなさそうっていうか。真正面から見ても目の奥が笑ってないんだよな彼……。ライトは入ってて輝きはあるんだけどなんだろう、冷たくて動かない印象のほうが強かったな……。よくオタクが言うじゃん『グラス越しに目が合った』って、そのニュアンスで言うなら視線の向きは正対で視界に入ってもいるんだろうとは思わせるのに絶対に目は合ってないんだよ。

葵アーニャ、身体が覚えている「アナスタシア」の記憶を再現するとき表情も皇女のそれになるんだよね。無邪気で天真な(お腐れ)ロマノフ貴族のそれに。それもそれで解釈としてはどっちもありだよね楽しいわねとは思うけど、……思うけど『アナスタシアを取り戻す』の意味合いが百八十度逆になるからやっぱりこの演目は四季並みのぶれなさでできない(ロングランじゃないし無理はないのだけど)ならアーニャとナナはシングルがいいよぅ……。どちらのアーニャがいいというのではなくて(個人的な好みは頑としてあるけど)……。アンサンブルさんで実力ある人に頼み込んでペイも払ってアーニャカバーに備えてもらっておいてさあ……。

「新しい友人として」モードのときにここまでアーニャに強圧的なグレブ、いるんだな……。アーニャとグレブの関係で最も好きな場面ここなんだけど。紳士的で友好的な様と有無を言わせぬおっかなさ、両立するんだな……。

執務室でのナンバーからの路地裏ナンバー、アナスタシア天才の所業なんだよな作曲家がなと思いました。私は対比と構図のオタクなので。
執務室の場面では革命で王朝が滅んだ後も流れ続ける川と訪れる春、路地裏の場面では革命で家族を失ってもしぶとく生きてきたロシアっ子の活力って感じの曲……だと思っているんだけど聞き取れてなかったらごめん。
(ところでアナーキストで囚われたディマの父、革命最中のことだと思って聞いてるんだけど革命後だったらもっと”革命により失われた”のニュアンス強くなるね。)
グレブに強く促されて歌い始めたアーニャの声はしかしすぐに萎んで消えてしまう一方で、続く場面でのディミトリのナンバーでは自分から飛び込むように入り、言葉を止めた後も笑顔で続きを待っている。
つくりは似てるのに印象が真逆になるの天才の所業では?比較の獣は歓喜しました。
葵アーニャがこうやってるのか葵×相葉×田代の組合せでだけこうなるのかアナスタシアの作曲家がリーヴァイさんと同じ種類の天才なのかはわかりませんが。譜面をただしく汲んでなぞればそうできるように描く作曲家が天才なんだったら他の演目でもつよいキャストとちゃんとしてくれる演出家が入ってたら期待できるようになり素敵だよ。
弱さが際立つ葵アーニャとアーニャに対しても相当に強圧的な田代グレブ、ディマには地団駄ふんで癇癪を起こす子どもじみた葵アーニャとその癇癪を流す(ひねてるけど)大人の視座も持つお兄ちゃんみたいな相葉ディマ、なんか今まで観た中でいちばん過去(と役割)に抑えつけるグレブと未来(と個の意志)へ誘い出すディマの対比がわかりやすかったな……。

列車で「飛び降りるしかないでしょ!死にたいの!?」って叫ぶ葵アーニャ、はじめ観たときも思ったんですけどやっぱちいかわみたいで好き。普段は自分の不安が枷になってうまく動けないちいかわが、同じ危機がせまった状況でも頼れる仲間がピンチや行動不能になり自分が頑張らなきゃいけなくなるとばっと行動に出るあの『なんとかなれーっ!』に似てない?
わたし葵アーニャの最も好きな場面ここなんですよね。不安で怯え竦んでいる彼女の、それが煮詰まると爆発的なエネルギーとなって行動するの。
葵アーニャ、弱さっていうのかな、不安や怯えで竦んでいるときの表情や佇まいがピカイチだよ……。
執務室で萎むように言葉を途切れさせたアーニャが「ロマノフは死に絶えた」を続けるグレブをただ見てるときの怯えが滲んだ不安げな目、よくない?

史実で語られるようなアナスタシアの闊達さは木下アーニャが輝いてるのでどっちもそれぞれ良さがあるよ。良さがあるけど、そしてどっちのキャストでがいいを言う気はないんだけど、アーニャとナナはSキャストでやるのがいい演目だなとはつくづく思いましたね……。いーんですよディマやグレブや熟年男女組はWキャストでもTキャストでも、でもアーニャとナナが変わると(少なくとも四季ぐらいの揃え方をしていないと)話の中心点が変わっちゃうから……。
これ前にも言ったんだけど書いたものを公開したかまで覚えてなくて……。私いまアナスタシアのログが書きかけ4つぐらい放り出されてるので……。

上官から指令が下った田代グレブ、電話越しにその少女を手にかけろの圧をかけられるたび嫌がるように目がゆがむのが可愛げですよ。「それだけだ」を自分に言い聞かせるように口にする*9のとか。でもこれ嫌がってるの人の命を奪うことじゃなくてアーニャの命を奪うことじゃないか?とも思ったけど。
「あの日の父は(お前次第だ)」*10を言われるひとつ前あたりで上官から圧が振ってきたとき、苦痛そうに顔を歪めたままパッと頭が横に振れたのを見て可愛げだなとはしゃいでしまいました。反射的な拒絶が出るほど嫌がってるのに電話越しでは伝わらないの、そんでまあこの男は対面で言われてたら動揺以上のものは見せないんだろうなみたいな質感があるの可愛げじゃない?
好き勝手言ってますけど板の上で展開されているものを好きに(場所によっては見えないけれど)摘んで、そうやって観たものを繋ぎ合わせるのが舞台モノなところあるし……。
後半、コートを受け取るあたりからずっとぐすぐす言ってたのは泣いてたのか調子悪かったのかわからんので割愛。演者側の不調ならあんまり娯楽消費したくないんだけども(架空存在の消耗や破滅、物語だから可愛いね美しいねとよろこぶんであってリアルな人間のそれを消費するのは人としてしたくない……そうでしょ普通に!?)ミュエリザ大阪のことがあったから梅芸ちゃんの演者の安全保障をいまいち信じきれないんだよな……。

ああアーニャ殺しは嫌なんだなって顔してたグレブが「あの日の父は、」を脅されて逃げ道を絶たれた顔するのすごい可愛いなと思うんですよね。
差し出された銃を手に取る前に2,3回躊躇って、伸ばした手で上から掴むようにするのとか。ほんとにやりたくないんだなと観ていてテンションが上がってしまう。嫌なのにそれを言うのもできず”自分の意思で”選ばされている架空存在からしか摂取できない栄養素があります。現実でそんなことが罷り通ったらもちろん絶許です。
人物像として一番好みなのは堂珍グレブだしキャラクターとして一番ヘキに刺さるのは海宝グレブなんですが、でも目を逸らすをやめた(やめさせられた)後でも部下の見ている前でもあんなにやりたくないのが滲み出てるの可愛いじゃん……。

情がない指導者のことをわたしは根っから愛せないのでグレブくんのことはぜんぜん嫌いなんだけど、歌と芝居が素晴らしすぎて歌唱を聴きながら演技を観てると瞬間だけ切り取った風速であっかわいいなと思ってしまうんですよね……。この感触LNDファントム観てるときと似ているんだよな……歌と芝居で情緒を直に振り回されている。
何回もこれを言ったのでちょっと言い足すけどその2人の人物像が近いとは思ってないし田代さんにLNDファントムやってくれとも思ってないです。思ってないというかやりたいならやりに行く方だろうと思うしやれば映えはするだろうけど脚本から滲み出るアレさを蹴散らすには各キャストを原キーでのびのびできるところにあてるのがいいと思う。ラブネバはALW御大の音楽には抗えないで成ってるところがあるから……。

堀内リリィ、ロシアンバーでの崩れ方が一番大きいリリィだなと思う。皇太后の付き人役からの落差っていうか。「今!こそ」あたりの印象だと思う。
歌唱もダントツで飛んでくるのもこの人ですよね。発声がしっかりしててどこの席でもぼやけないのもあり、上から下まで満遍なくつよい(お歌のパワーが)

去ってくヴラドとリリィを見てた(らしい)グレブが心底軽蔑したように反対側を向いて吐き捨てる「(過去の)絶頂期が」のところ、この人ほんとに嫌いなんだな……としみじみしてしまう。そうやって生きる彼らも嫌いだし価値観も到底肯定できなさそう。
革命の(ひいては彼の父がさせられたひとごろしの)ただしさを謳うのと、ロマノフ王朝時代を絶頂期とする価値観、合わないだろうしな……。受容の気配がないとこんなにも怜悧で冷たく見えるんだなあとにこにこしました。
これはグレブっていうか田代さんのスキルな気もするんだけど、柱に半分寄りかかって冷えた目を向ける姿があんなに様になってるの何事だよ。
田代グレブは白鳥の湖観てないって話は聞いていたんだけど思っていた以上に見てなくてびっくりしちゃった。
アーニャたちのいるブロックをじっ……と見てるか宙に目をやり思い悩んでるかのどっちか。たまに(登場時もしていたが)プログラムで顔を隠す。
可哀想だなとは思うんだけどやっぱりこう、生きるためか自分の考えかを選ばされる側になると(あとアウェイの場所になると)こうも落ち着いていらんないんだなとおもしろくて笑ってしまう。拍手はwしよう?wwと笑ってたら周りの拍手の音を聞いて数拍遅れて手を動かして拍手だけはしててあっえらーいと思いました。視線はアーニャたちのいるブロック席から一個も離れてませんでしたが。あんなに気も漫ろなクラップもなかなかないよ。

相葉ディマ、「すべてうまくいく」のときはまだ笑顔を作ってて声も明るいけど、ここではない遠くに向けた目だけが笑ってないのいいですよね。自分に言い聞かせるための強がりって感じ。上手の手前のほうででもそうなったらアーニャとはもう、みたいなこと言ってる葛藤がある。
落ち着かなくてそわそわそわしてる石川ヴラドを見て、笑って肩を掴んで勇気づけてやるのいいよね。擬似親子のような海宝ディマ-石川ヴラドも好きだけど、対等な悪友でパートナーなこの2人の安定感も好き。


鍵閉めて入ってきたグレブがアーニャに声をかけたときから焦りと動揺が露わなの本当にかわいそうだなと思います。指令が下ったときの“したくない”からいっこも割り切れてないままなんだなーって感じがして。あとこの場面、構図が1幕とかぶってて好きなんですよね。
少女の腕を掴んで顔を寄せて、1幕の忠告と同じような構図なのに、あのときは腕を押さえて逃げ出したアナスタシアはもう揺らいでくれないんだよ。1幕でアーニャがしていたような取り繕いもできないほど動揺しているのは彼ばかりで。
ほとんど泣きそうな声で「頼むから」の懇願してるの可愛いなと思うんだけど、でもなんで彼がここまで追い込まれてるのかよくわかってないんですよね私……。

いえあの心情の流れは追えてるんですよ、いくら私が唐変木でもああも順を追って可哀想なことになっていけばわかる。あの任務を下されてからずっと思い悩んでいて、踏み出せない心と裏腹に仕事は順調に進んでしまい、後はもう引き金を引くだけの(けしてやり直せない)ところまで来てもまだ割り切れなくて、これが正しいと思えないままさあ引け殺せと責められて、終いには声上げて泣き出すほど追い込まれてしまったのは。
段階を踏んで追い詰められていてめちゃめちゃ可哀想だなと思いました。かわいそうはかわいいなのでニコニコ眺めてしまったが。
 
そもそも なんですけど。
彼はなんでここまで追い込まれていて?
再会を思うだけで胸高鳴るほどアーニャに一目惚れしたのは知ってる(観た)けど、そのふわふわした恋情って信じている父親像と秤にかけ続けられるものじゃなくない?だから殺すのを嫌がってたのが父を出されて退けなくなったのかなと思っていたんだけど。
「引き金をひくそれだけ」、子どもをひとり殺すのくらい、その人生を奪うのが直接か間接かなんて今更こんなに気にするような人にも見えなくない?
ここまで書いてわたしこれ電話越しの上官殿と同じこと考えてないかみたいな気持ちになりました。
 
あっねえもしかして己の仕事を(「警備兵だった」父の仕事も)国のため人を守ることだと思っていたから、おまえの仕事は殺すことだを突きつけられてあんなに動揺してる!?
ここで折れる動機たぶん脚本単位での設定だと思うんだけど、最終関門の位置で出てきてそんな格がひk……覚悟がキマってないことある!?
……でもこれこのぐらいが舞台モノのスタンダードなのかもな……。フランツ陛下やジャベール警部が桁違いにキマってるだけで……。マタハリみてたときも「なんでこのひとアルマン撃ってこんなにショック受けてるんだろう(1幕の段階で殺すつもりでいたのに……?)」と思ってたし、私がかたき役にキマっててほしい覚悟が深すぎる可能性がある。まどマギほむらちゃんやスネイプ先生ぐらいまでキマっているもんだとばかり。マミさんやクィレルぐらいだったか。

記者たちに驚くも口を開いたらぱしんと押さえにかかるの皇室付きだったんだもんなの落ち着きがあり好きですね。ヴラドがやらかしたとき「ちょっと待って!」「(たぶんまだ秘密とかそういうことを言ってる)って言ったでしょ!」の慌て声がしっかりめに飛んできたのでオタクは手を叩いて喜びました(無音) 子どもを叱りつけるママなんだよなそれはな。ヴラドには全然響いてないけど。ほんとに響いてないよ、あれっだめだったみたいな顔するけどそれからにっこにこのままいなしてる。いなすな(爆笑)

*1:演者のなかにもそれはあるだろうけど、私は「物語はその枠の中で受け取られたものが全て」派なので。厚意と好意で外部設定集の補足を考慮に入れることもあるけどそれは作品論てきな作品理解であって物語の感想ではないのだわ。と思っています。

*2:「オルゴールよりお祈り」のアナスタシア童女時代から彼女が少女になるまでずっと親戚と仲間貴族で楽しい舞踏会やってるんですよ。宮殿で無邪気に可愛らしく響くアナスタシアの笑い声の裏で人民がどんだけ苦しみ凍死飢え死にしていったか賭けようぜ。革命は起こるべくして起こったよ。

*3:人類の悪性、自分には“生まれつき普通に”与えられていたものをあって当然の権利とする傲慢と、それが生まれつき与えられてなかったものへ対する無関心な残酷さです。と二次元媒体で情緒を育まれたねずみの言い分です。

*4:田代さん、というかグランドミュージカル出るひとは結構、後半で同役相手の要素を取り込んでいくこと多いよね。前半からずっと追ってるとキャラが変わったように見え、でも後半でだけ見ると適度にバランスとれた人物造形に見えるという。史実がない人物やるとき初めは動作が極端だから殊にそう見えるのもあるんだろうけども

*5:最近の梅芸作品蛍光として全く何も考えてないわけではなかろうけれども。

*6:一部の隙もなくある色に整えられ崩れないもの、それがどんなものであれ「綺麗」だよやっぱり。

*7:舞台俳優さんその傾向が強い方多いけど、田代さんもコンサートでも演劇でもデフォルトの表情に対人における気くばりとしての受容の気配があることが多く(親切な方だなと思う)、それを見慣れているのもあって、受容を取り払った怜悧さが前に立つ佇まいが大変おっかなく見える。

*8:Q.ラウルは? A.ラウルもだめなんだけどここまで音楽での感情誘導にぜーんぶ乗せられてきてるからやっぱり抗えないんだな(かわいそうに)が勝ってしまい。

*9:上官どのにピントが合ってる(たぶん)目の焦点が変わるのか、ライトの入り方が変わってふっと目の色が薄くなる

*10:この歌詞ずっと「あの日の血は」、あのとき行った皇家みなごろしを完遂せよだと思ってたんですけどもしかして「父は」ですね?