つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。noteもある。 https://note.mu/biobiofreak

森フォレ感想

感想なのか? わからないけど。
わからないけど東京楽を観てきまして、ぐるぐる喋り出したところでまだ地方公演あったなって思いだしたのでツイッターからこっちに来ました。
すべては個人の主観による一方的な感想です。

感想です、と言っても、私はあれが何だったのかさっぱりわからなかったんだけど。いい作品なのはわかったけど、あの物語と同調できる価値観を私は持ってなかった。同感する箇所はいくつもあったけど共感した場面はなかったのは、そういうことなんだと思う。

ただ、あの物語が刺さる人とあの物語にすくわれる人はきっと別なんじゃないかなあ、とは思った。物語の彼らを愛おしいと思う人とも。
強い反発をおぼえながらどうしようもなくすくわれる人がいるだろうなって作品。

 

以下脈略はゼロです。

人物相関図とにらめっこするって聞いてたけど、時間軸が行き来することだけ知ってればそんなややこしくなくてすんなり追えました。どの人物も初登場からすぐ名乗ったり名前呼ばれたりしてくれるし。

セリフが戯曲みたいだなって印象。いやそのそりゃ戯曲なんだけどなんというか、西尾維新みたいっていうかシェイクスピアみたいっていうか。会話というよりうたいみたいというか。辿っている歴史のなかだからなのかな。でもルーの台詞もうたいっぽいから脚本家の文体なのかな。あの台詞を肉声で聴く行為を自然にできるかどうかで物語への没入度が変わってきそうではある。

2幕の後半だったかなあ、少し暗くなった場面の誰も発声しないところでどど、どど、って低い音が響くの体内にいるようでした。音が低くて大きいから椅子や内臓に響いて揺れるんですよね。心臓の鼓動だ、って思った。違うものかもしれない。

母親は娘の未来を願って手を放し父親は息子に自分のもつ価値あるものを引き継がせようとする、それが延々と繰り返されるのすげえグロテスクだな、と思ってみてた。と、いうか、観ている最中は「グロテスクだな」とぬる熱い温度と質感だけを感じていて、言語化しようとするとこれが出てくるようなかんじ。
あれは彼らなりの(少なくとも主観では)愛情で、しかしその行為は子供らの心に大きく深い穴を穿ち、埋まらない欠落が次世代に同じ心の欠落を残す、それがなんか、生きたまま開腹したなかに手を入れさせられてるようだったな……と。

あとあれ。繰り返される「約束する」、約束は履行されているのに感情と精神がどろどろと変質して崩れ傷んでていくような。行為のもとにあったはずの目的がうみ変わっていくからなのかな。

童女のように無防備な、大人のなかにいるちいさなおんなのこがだいすきなので訪問したサラと話す麻美さんのリュスに好き……と思っていた。あと「触りゃあしないよ」のところ。立ち去るサラに「まだ名前を聞いてない!」って叫んだのはなんとなく真実に気づいていたからなのかね?(ダグラスくんがリュスの顔を見ればルーとエマがある、ルーの顔にもエマとリュスの、みたいなこと言ってたし……)

全体的にグロテスクなものが多いもんだから、1幕で提示されたダグラスくんがルーに構う目的が厚意じゃなくちゃんと自分のためで安心しましたよね……。よかったよちゃんと自分のための動機、枷を取り去るための行動で。ルーへの愛のためとか言われたらちょっとグロテスクすぎた。成河さんのダグラスくんの「手伝ってくれと言われた」の言い方が可哀そうだなって。
ところでダグラスくん何者なんでしょうね。古生物学者って名乗ってたけどアドレスはgmail.comだし最後は自分で考古学者って言ってたし。

初めルーのルーツにしか関心がなかったダグラスが大丈夫、ってルー本人を気遣うようになったからルーもダグラスにありがとうって言葉を向けるようになったのかなーっていう。見てないわけじゃないんだよねたぶん、「じゃあなぜ黒い服を着ているんですか!」「喪服だから」みたいなこと言ってたし。エマだか弟だかの喪に服していたルーの謎が解けたときに、黒じゃない、血の色のコートを「ちょっとしたプレゼント」として贈るの示唆的だなーと思うなどしました。自分のルーツを知ることで血を受け入れる、なのかね。

最後の暗転が開けたときに成河さんが瀧本さんの背から手を離して前へどうぞみたいな動きをしてたように見えたから、ダグラスとルーが並んだ後、ダグラスがルーの背(というか腰元)に手を回したのかなと思ってるんだけどラストシーンどうなってたんです?

マタハリ東京終わりましたね

初めは人物ごとに語ろうと思っていたんですが早々に諦めました。場面ごとにすると感想というかログの出力になりがちなんですがそれでいっかなって……最初に読んだのがそういうのだったから観劇感想を褪せてく記憶に対抗するログと思ってる節がある。
こないだも言ったけど書かれてないじごくを行間から掘り出して喜ぶ趣味があるのでだいたいラドゥー大佐を追ってます。

一個人の主観であってすべての個人団体宗教思想そのほか諸々とは無関係です。
役者さんへの印象と彼らが演じる登場人物への認識を切り離して好みの幻覚を見ています、ご了解ください。それもあって役名を後ろにつけてるときは敬称略です。
毎回言うけどあなたの観て感じたものがあなただけの真実なのでそこだけはよろしくな。

永久に終わらない気がしたので随時足してくことにしました。

 

 


○1幕

「生きろ~寺院の踊り1」

あそこ、ピエール役の工藤さん含めた軍人が"ドイツの"軍服を着てるのが好きなんですよ。ラドゥーもアルマンもフランス軍の人だからフランス視点で話が進んでくけど、国のために戦う同朋が次々に死んでいるのはフランスもドイツも同じなんですよね。パッシェンデールで八千の命が散ったとき、英雄を背負ったパイロットがなす術なく撃墜されたとき、これで無事に家に帰れると喜んだ命があるはずなんだよ。わくわくしちゃうよね
歌詞で「パリ」って出てきたから民衆はフランスなのかなと思うんだけどどうなんだろう。女性の鞄を奪った男から分け前をもらっているドイツ兵、戦地での略奪なのか自国民からの強奪なのか、どちらにしろ戦争は人を荒ませるね。
ロザリオがそこそこちゃんとしててテンションが上がりました。銀色の十字架、カーネリアンや赤めのうを模したような色の玉でできていて、いくつかごとに銀色?少し違う玉が挟まってるように見えた。アヴェ・マリアに使えるんじゃないかなあれ。どうかな。
「妻が見当たらない」「黄色い服の人?」「ちがう!!」 のやり取りが好き。戦禍の地獄絵図、役に立たない厚意にも感謝を返せるのはその余裕のあるときだけなんだよな。
その一方で「この子だけは」って赤んぼを差し出した女性が肩を抱かれてあなたも一緒に逃げるの!ってされていて、この地獄みたいな場所もまだ捨てたもんじゃなくて、こう……好き……。曲の終わりでこの妻を探していた男性と赤いおくるみを抱いた女性が寄り添っていて、同じ人じゃないかもと思いつつ(相貌認識が弱い)感極まってしまったよね……。

マタ・ハリの踊り、柚希マタの美しさは鋭さ、愛希マタの美しさはしなやかさって印象。この場合の美しさはイコールで武器でもある、と思う。
鍛え方なのかな動作なのかな、柚希マタの動きって肌の下にある筋肉を思わせる感じしません? 躍動感というのかな、相手をとらえるような眼差しも相まって野生の豹みたいな。戦うための身体を魅せるために使っているような、手を伸ばすのを躊躇う気迫を伴った強い美しさ。
愛希マタ、黒くてまん丸い瞳が獲物を見つけた仔猫のように笑みに変わるのが愛らしい肉食獣みたい。関節なのかな筋肉なのかな、動きがしなやかで、無理矢理捕らえようとすると腕から抜けて行っちゃいそう。
お二人とも2階からみると身体を反らしたときに胸骨のラインが浮き上がって、ちゃんと健康的な肉付きをしている動物から見えるあばら骨、いいな……って思いました。馬場のサラブレッドに惚れ惚れする感覚と似てる。どこ見てるんだって話ですが。
配信で初めて聞こえたんですが、マタが身を翻す動きに合わせてキンキンした金属ぽい楽器が鳴ってるんですね……? 音階あったっぽいしマタの衣装じゃなくてオケの楽器だよね……?
あのところで、Wキャストの演目観に行くときこの人物だからの共通イメージとこのキャストさんだからのイメージをどう切り分けてるんです皆さん。


「わたしは戻らない」+ラドゥー大佐の楽屋伺い

楽屋に戻ってきた愛希マタの、少女のような獰猛さを残した笑顔や動きがすごい可愛い。狩りを終えて満足そうな猫ってこういう顔してない?猫飼ってたことないけど。飾りが髪に引っかかってアンナに助けを求めるところが完璧なマタハリではなくひとりの娘って感じで好き。
名刺を確かめた途端にラドゥーに向ける目や表情が冷たくなるの、生命力と誇りが高くていいよね。「わたしは戻らない」でうろっと弱気を見せた目に強い怒りのような勢いのある輝きが燃えていくのが好きだなって思いました。

柚希さん歌が上手い……いやそりゃそうだし皆さんそうなんだけど歌がうまいですね……あのハコであんなに動きながらで上から下まで掠れも削れもしないでマタハリの意志が飛んでくるのすごい。最初の寺院の踊りもなんだけど観ていてマタハリに呑まれる感覚がとにかく強くて、すごかった……って感情しか言語化できてなくて……。
私ならできるっていうよりはラドゥーが絡んできたことでの立場の危うさや事の大きさはちゃんとわかっていて、でも負けられないから不安に背中を向けて自分に暗示をかけているみたいな印象だった。「それとも、ブラジャーの宝石かしら」の距離の詰め方と目の合わせ方が自分のどう見られているかをよくわかっているいきものだ……と思いました。
なんとなくの印象なんだけど、愛希マタは逃げられるぎりぎりを見定めて懐に入り込むけど、柚希マタは色めかして誘ってみせる仕草が同時に一線を越えさせない牽制になってるような感じしない?

ラドゥー大佐、あの、 ガワの話していいすか。舞台モノで二枚目ポジションの登場人物(役者さんではなく)が好みの人物造形なことあんまなくて、登場人物にかっこいいなーって感想もつの初めてに近いんですよね……。
加藤さんのラドゥー、バーナムの愉快で楽しいエンターテイナーの印象で行ったら整えられた動作のそこかしこに威厳のあって背筋が伸びた。いえ伸ばせないんですが。加藤和樹さんという役者さんを認識したのが「怪人と探偵」のラスト30秒だったので、*1(全然違う人物像なんですけど)あのとき見たやばいものは幻覚じゃなかった……みたいな気持ちが。
田代さんのラドゥー、いやもう語彙力がなくて大変申し訳ないんですが、あっ すごーい みたいな感想が第一印象ですね……。スリルミ"私"やトーマスアルヴィン、リースくんの印象が強くて*2すっかり少年の面影があるひとみたいな認知でいたので脳みそがびっくりした。脚を使って入室合図の音を立てる動作まで洗練されているのすごかったですね。
ガワの話満足しました。

加藤ラドゥー、柚希マタとの回しか観てないんですけど、マタハリの色めかした仕草にもはっきりした拒絶にも余裕の崩れず応じてた印象がある。涼やかで、内心どうあれ動じていないように見せられるのは強いよね……。貴方はペテン師だ、ってさらりと投げつけるのがさ、こうなるところまで全部わかってて揺さぶりに来たんじゃないかって感じさえしてくる。それだけに「……魅惑的だ!」の言葉を探して視線がさまよう姿に社交辞令じゃなくてガチのやつじゃん……と思いました。あそこだけ前のめりに話すよね、彼。
入室前に薔薇の花へ口づけてるあたりそこそこ濃い人だと思う。違和感もなく様になっていて格好良いけど、マタやアンナに見せてのイメージ操作じゃなくしたいからしてるんだよ?あのキザ仕草を?

田代ラドゥー、礼儀正しく無害そうににこにこしてたのがくるんとひっくり返って国家主義者みたいなこと言い出す……。「なりたいはずだ」の圧が強いんだよこの人。「お受けする気にはなれません」って言われたときに一瞬、びっくりしたみたいに停まるのとか、じわっと表情が変わるのとか。席を外すアンナに柔和に頭を下げたり色ごとを仄めかされて困ったように笑ってたりした無難ないきものはどこにいったんだよ……。
入室前に薔薇の香りを嗅いでる田代ラドゥー、ほらアンナもビッシング将軍の花束の香りを嗅いでいたからたぶんそこまで変なことではないんだよたぶんおそらく。*3人に渡すものにするのかいとは思うけど。香りで気持ちの切り替えするタイプの人だとしたらどんなに気を張っててもマタハリから「あの香り」がするたびに掻き乱されるんだから可哀想だよなとは思いました。


「この街の乾杯」

パーティ会場でのラドゥーくんの話をするし記憶ログの出力をしたんですが(だってたぶん残らないので……)あまりに長かったので別の投稿にした。ラドゥー大佐、キャサリンの扱いがぞんざい。
「求めるから生まれるのさ」を聞くたびにそう思うなら求めろよ!!!!!って思う体になっちゃったよね。求めるから生まれるんだろ? 神話も本物の愛も英雄も? 出会いが恋じゃないのは仕方ないとして、求めれば生まれるものがあるというならジョルジュとキャサリンの間に絆が生まれてないってつまりそういうことだろ……この場面見た限りだけどキャサリンからは歩み寄りの努力してるぞ……。あのシーンの大佐、所作はスマートでかっこいいんだけど至らなさに悪気がまるでないぶん余計に残酷だよ。
後に出てくる「女が意志を持つと危険だ!」を聞くたび、この場面のキャサリンを思い出す。感情は見せても意志はないように従順な、男の意思をあらわす存在としてある飾り物。
最後にマタハリのいないパーティー会場に振り向く加藤ラドゥー、ほころびかけた蕾のような、恋におちた自覚のない人の目をしていて愛らしいなと思いました。田代ラドゥーは焦れていて、表で口実を作りたかったのかもう一目見たかったのかはちょっとよくわからない。


「人生と闘え」

東アルマン、出てきたときから煙草吸ってるし酔っ払いに絡まれてるマタを見てふっと悪い顔で笑ってるの見た!?!? マタを見てるっていうか、ちゃんと意識あるのにタチの悪い酔っ払いのフリしてる仲間を見てあいつら楽しんでんじゃねえかって笑ってる感じ。2回くらい笑ってたなあと思ってたら配信では綺麗にどっちも抜かれてて呻きましたありがとうございますそういう男なんだな? タバコを地面に押し付けて消してから街灯裏のポケットに入れてるのきっちりしてるなあと思って見てた。動作の起点があそこ(屈んで火を消して→立ち上がって→近寄っていく)なので、煙草を消すことでお仕事スイッチ入れたように見えて楽しかった。
三浦アルマン、最初に見たときヤンキー座りがすごい衝撃的で見るたび衝撃を受けるんだけどわかります……?路地裏にうつくしいいきものが落ちてる……みたいな衝撃がある。顔の造作の話ではなく(いえお顔もうつくしいんだと思うんですが)、なんか三浦アルマンって少年が物語の中から飛び出してきたみたいな独特の非現実感があるじゃん。地に足ついてない子供っぽさを残したままというか。髪に隠れがちな表情と拳握って意志を語るときぱっと輝く瞳、吐息を含んだような声がその印象なのかな。あの息を含んだような余韻のある声、ラドゥー大佐や軍の部下たちに話すときは全然してなくて諜報員としての色仕掛け用なの!? って後になってびっくりする。

パーティー会場のお客に囲まれてるときのオーラのあるけどファンに優しそうな愛らしさが酔っ払いに声かけられて仕舞い込まれるのは二人ともそうなんだけど、柚希マタはその後もちゃんと笑顔は浮かべて対応してるのこういう戦い方で生きてきたんだろうなって思いました。美しいけどおいそれとは触れがたい壁のある笑顔。愛希マタの隠しもせず冷ややかな顔してるのも正直で可愛い。腕を掴まれたときに愛希マタのが痛がってるように見えるし、愛希マタのが突き放すラインが早いのかなと思った。二人ともお客として扱うか迷惑と切り捨てるか、執着されたときに厄介でないところを見定めて切ってるんだろうなと。

恋愛のフレームなくてまるで理解できてないんだけど、"マタ・ハリだから助けてもらった"んじゃなくて"困っている人なら誰でも助ける"アルマンの信念(嘘)に惹かれたってことで合ってる? 出会いが「ラドゥー大佐の命令で」「マタ・ハリに」接近したからだったのがあんなド地雷踏んだみたいな怒り方になるのそういうこと? だとしたら「国際的な有名人」だから接近して彼女の踊りに魅惑されたラドゥー大佐がばりばりマタの守備範囲外で楽しいですね。

ところで配信で聞こえてテンション爆上がりしちゃったんだけど「オリーブちゃん」 センス最高じゃない??????


「一万の命」

じりりりり!ってベルの音が机から鳴ってて凝ってるなあと思った。ただでさえでっかい鋭い音がぐるんと動き回ると危機感煽られて心拍数が上がる。
「ベルリンの秘密諜報員が殺害されました」「代わりの人員の補充を急いでいます」って言ってるのすごいあの、2回目からひやっとした(ベルリンがドイツの首都なのついさっき気づきまして……。)危険度が高くてなかなか人を送り込めなくて戦争に勝つためには外せない場所。マタハリに託した任務、まじで戦況を左右する要の情報じゃん……。そんなものを軍への忠誠なんかまるでないマタに託さなきゃいけないほど戦況逼迫してるんですか……。
「くそ!!」って叫んだときに部下の人が受話器をちょっと離して振り向くんだけど、ラドゥーくん部下にはあまりそういうとこ見せないのかな。あんなに余裕なさそうなのにね。着任から4か月しか経ってないのにえらいね。そんであなた本当に心中を吐き出せる相手がいないね……もう十分いっぱいいっぱいだから首相あんまりプレッシャーかけないであげて……。情報が手に入れば「空から勝ち取れる」、さもなくば「地上で負ける」、言葉で画を描くのがうまいよね首相、空をとぶ飛行機が地面に墜ちて陸兵共々死ぬのが見える。ひっどい(好きです)
自分の至らなさで同胞が死んでいく、神さえ彼らを救ってはくれない、なんでもするからこの戦争を早く終わらせてくれ、で彼の精神が追いつめられてく線を綺麗に引いてくるのえっぐいなあと思いました。

加藤ラドゥー、照明が映りこんでるのか虹彩の色素が強い光で浮いてるのかわからないけど(たぶん両方)大きく見開いた黒目が暗い赤色をしていて、血に塗れた戦場を映しているようでその、すみません見ててすごくテンションが上がりましたね……こびりついた乾きかけの血の色……。眼の色って髪と違ってほいほい変えられるものでもないから普段はあんま言及しないことにはしてるんですが、褐色がかった暗赤色に輝く眼、この人は勇敢な同胞が消えるたび戦場の地獄を見てるんだなあって。
悪化していく戦況に余裕をなくしているなかでも部下に目を合わせて手でぱっと動かしてから目を移してるのが頼りになる上官で無理して"大佐"として自分を動かしているようで、なんかいつか過労でぶっ倒れそうだなって思いました。同胞の死におぼえる痛みを押し殺してやるべきことをやってるみたいな。

田代ラドゥー見るからに荷が勝ちすぎてて、まだ一万の命を背負えるタマじゃなさそうなんだよこの人……心はとっくに限界なのに責任感だけで立ってるような感じ。「勝利」を口にするときに痛そうな顔をしていて早晩潰れるぞって思った。敗退を忘れないのは大切だけどそのせいで得た勝利を喜べもしないんじゃ戦の指揮は続けられない。
配信で「神さえ」のときにぱっと手を組み合わせたのが映ってた気がしてうわしんど……と思いました。好きです。祈りはかなわなかったから「神さえ救えない」なのかな、それでも祈らずにいられないほど他にできることがないのすごい可哀相。このひと「行動しろ」のところで強く胸をたたくんですよ。2階からでもどん、と鈍い音が聞こえるぐらいに強く。同胞の犠牲の責任をひとりでしょい込んでる感じがするの、気のせいかな。


「C'est La Vie ~人生なんてそんなもの」

彼らの日常だろう第2事務所の地獄の夜を見せられてからこの平和な朝を見せてくるの、鬼か?(好きなところです) アルマンにもマタにも何の責もないんだけど、この構成のおかげで2回目の楽屋訪問にはもう大佐への同情心でいっぱいだよおれは。
異性恋愛の物語を読むフレームが乏しくて*4このシーンはマタとアルマンが可愛いということ以外あんまりわからないんですが、それだけわかってれば楽しいよね……。ふわふわきらきらしてて可愛いよね二人とも。
彩雲に手を伸ばした柚希マタの顔が曇ったのを見てその手を包む三浦アルマン、楽しそうに笑ってるマタの手を包んで引き寄せる東アルマン(振り向いたマタがそこでアルマンのいるのを思い出したような顔をする)とがいるのでマタが愛を見つけたタイミングが違うのかなあと思ってるんだけどどうなんでしょうね。
愛希マタはお袖で顔が隠れるのでよく見てない、たぶん下手で観ればいける。「年を重ねるとね」の声と表情で愛希マタに年上なんだなあってしみじみ思う。年齢的にはつり合いとれるのアルマンよりラドゥー大佐なんです? でもマタのほしそうなもの("私"自身を愛してほしい)を彼の地位や年齢に達した人はもってなさそう。ラドゥーの年齢知らないけど。
個人的な印象なんですけど三浦アルマンより東アルマンのが大人の男の人っぽく見えるので役者さんの年齢知ってびっくりした。なんかこう、年経て削れる世界への尻込みしなさが残ってるよな感じしません?
「ただ空を飛ぶんだ」の指をくるくるして遠くに飛ばすしぐさが曲芸飛行みたいで、アルマンほんとに飛ぶの好きそうでかわいいよね。三浦アルマンのマタに顔近づけて目を覗き込みながらやるあれに、少年みたいな青年だなって思うしいやもうめっちゃ心の距離詰めに行ってる……とも思う。同じものを見ていると疑わない子供みたいな愉しそうな顔。東アルマンもうちょっと物理的な距離があった気がするんだけどどうだったっけ……ちょっと高いところからマタに笑いかけるのが可愛かった記憶がある。笑い方に見てる景色のイメージを共有しようとする人って印象受けたことだけ覚えています。


「あなたが思っている以上のこと」+楽屋伺い2回目

ラドゥー大佐が相当余裕をなくしていてすごい可哀相だなって……表情もなんだけど動作にも余裕がなくなってるのすげえ可哀相。入室の合図もなく、アンナが席を外すのを確認してるのも繕わない(1回目は会釈の体を取ってた)。露骨に牽制してるのにこっそり戻って階段の裏に隠れるアンナを見逃してるのも意識を張り巡らす余力ないのかなーって思うけど、バルコニーで首相が話しかけるまで気づいてなかったみたいだし元々得意じゃないのかなあ。戦場だからというのもあろうけど、アルマンはぼろぼろの状態でも背後の気配が変わるの気づいてたし……。
地獄の夜と穏やかな朝を見てからのここなので大佐への同情路線で見ちゃうんですが、と言いつつ19日の私がラドゥー大佐どっちもきもちわるい執心の仕方だなって書き殴ってて笑った。そうね。
ラドゥー大佐、スパイ活動させるためには過去の情報を仄めかして内面揺さぶったりアルマンを入り込ませたりするのに、個人の感情として見せるご執心はマタハリの女体にしか向いてなさそうなのが、それなのに(彼女の「大ファン」達のように)女優マタハリではなく、生身のマタハリを欲しがってるのが訳わかんなくてきもちわるいんだよな……。なんで使命でなく情動で欲しいものへのほうが見てる層が浅くなるん……?逆じゃなくて……?(アルマンは逆なんだよね、華やかなマタハリという虚飾の内にいる傷を抱えてなお前を向く女性を愛する)
加藤ラドゥーは恋心(おそらく)と紳士的で二重のオブラートに包まってるんだけど田代ラドゥー恋心はどうにも見えなくて*5紳士的は穴が空いててダイレクトにご執心が見えてるので……いえこれはラドゥー邸の感想なんですが……。

突然ですが推しの話をします。聖書のフレーム使ってるから気をつけてね。
田代ラドゥー なぜ 嗅ぐ。マタの香りを嗅ぐのは加藤ラドゥーもやってるんだけどなぜ見せつける。手に移った残り香を嗅ぐのは退室後にやってるから(田代ラドゥーはあそこでも吸気音を入れるから客に示す意味でも)香りを楽しむだけならあの場でやる必要はなくて、戻されかけた手をわざわざ繋ぎとめてまあ綺麗な姿勢でするあたり衝動的でもなさそうで、社交と演説に長けたラドゥー大佐があの行為がマタからどう見えるかを理解してないことはないだろうし、感情制御が崩れてきてるの抜きにしてもあそこだけ共感使って社会やってる人間の言動から逸脱してて、姿勢や表情が涼やかで整えてあるぶん機序と意図がとれなくて薄気味が悪い。見た目が綺麗だから余計に忌避感が強く出るんだよ……失礼な例えだけど幽霊って元の造形が美しかったり可愛かったりするから生者なら持ってるはずの要素の欠損が際立って怖ろしいじゃん、あの現象と似てる。
三周ぐらいしてラドゥー邸の大佐を獣(天使と獣のほう。mammalではなく。)っぽいなと思うようになってあれ釘を刺してるんかなって思った。アルマンのジャケットを嗅ぐのも情報欲しくてやってるわけじゃないじゃん、決定的な証拠は既に手にしてるんだから。あの行為を牽制や威嚇に使ってみせてるんだったらラドゥー大佐、自分のお顔の良さをわかってて面白いな……人間社会の美醜基準で美しい男がやるから不気味の谷みたいなきもちわるさが出るんであって、例えばびじょやじゅの獣王子がやっても見た目のイメージと一致するから強調や恐怖は煽っても納得感に向かうわけで……。推しの話終わりました。

ラドゥー大佐を迎え入れる愛希マタの表情の冷たさ見た!? 包み隠さない拒絶、好き。わたし今回加藤ラドゥーとの組合せ見られてないんだけどどっちの大佐にもこうなの?
しなだれかかってから突き放すところ、しなやかで艶めいた誘いに見えるのが好きでですね、彼女にとってそういう仕草や振る舞いは戦いなんだなって思う。それも鎧ではなく矛なんだなって。

マタハリのソロナンバーでこの曲が一番好き。厳密にはソロじゃなくてだからコンサートではまず聴けないだろうな*6って今から覚悟が決まりCDを出してくれ……。「善悪の彼岸などこの世にはない」「逃げなさい! 〜 あたしに早くさよならと」のところがすごくすごくよきだよ みんな円盤出たら聴いてね
ところでさ、『彼岸』のところは自分が聞きなし間違えてるんだろうな正しい歌詞なんだろうと考え続けていたんですが(「善悪の悲願」はちょっと意味が取れなくて)、もしかしてアンナ仏教やヒンドゥー教の人なんかな……ヒンドゥーにはあるっぽいんですよね死後の世界のイメージを喚起する河……。いやまあ宗派によりけりだろうけどキリスト教に彼岸の概念はないと思うんですよね…天の国、向こう岸というか届かない上のものって感じしない?
アンナが「マルガレータ」が「マタ・ハリ」になった後の知り合いなら、キリスト教のひとでない設定だったりするのかなって思いました。階段の陰で話を聞くアンナが配信で2回とも抜かれてて、2回ともスパイの命についてはびくっとするけど「マルガレータ」にはさほど反応してなかった気がするのよね。
ところで何度か言ってるけど「火炙りにされるのは」って聞くたびにジャンヌダルクが頭をよぎるの私だけですか。国のためにはたらいて魔女として処刑された聖女。

 

*1:Q.そこ以外は? A.怪人と部下の動きがキレる人を追っててあんまり……お歌のすごいお兄さんだなくらいしか……

*2:MAでかっこいい役の人やってらっしゃるんだけどMA貴族組のお衣装って全体的にかっこいいより綺麗寄りじゃないですか時代的に

*3:アンナ、初日の頃も花の香吸い込んでたっけ?とは思った。

*4:普段は恋慕を伴わないまま拗らせた唯一無二への感情か自分のすべてをベットして見返りを求めない献身ばかり食べているので……

*5:上限まで前向きに見てもあるのは肉欲だと思う。

*6:マタの歌うメロディーがワンフレーズしかないため。マタを演じた方のコンサートに春風さんがゲストで呼ばれるのでもなければまず無理だろうなって……。

マタハリの(おそらく首相が主宰の)レセプション

パーティ会場でのラドゥーくんの話をするし記憶ログの出力をしたんですが(こういうわちゃっとした場面でオフマイクを見て読むのが趣味なので。たぶんセリフは2人共通。)あまりに長かったのでログだけ別の場所にしました。ひと言でいうとラドゥー大佐、キャサリンへの扱いがぞんざい。


そういえばレセプションの主催はたぶん首相でした。先頭に立った彼が全体に挨拶して、控えていたキャサリンと、隣のラドゥーを紹介する。
それを受けての大佐、初めの招待客に「ようこそいらっしゃいました」って言ってたと思うんだけど、26日だったかな、そのとき聞いたのは「ご無沙汰しておりました」だったような。オフマイクなんだけどなんかごぶ……って声が飛んできた気がして……。
2人目の客にも何か言ってるんだけど毎回見逃す。こっちの客のが仲良しなのか、挨拶の後にちょっと談笑して盛り上がってたような気がする。ダンスのときと混ざってるかも。

あのねところでラドゥー大佐、どちらもここでは手に唇落とすときリップ音を立てるんですけどね。加藤ラドゥーはマタハリにも音を立ててキスするんですよ、田代ラドゥーはマタハリにだけしないんですよ……柚希マタにはリップ音立ててた回もあるんだけどしなくなってて、何その特別……。*1

ラドゥー大佐が首相の飲んでるお酒(1人だけグラスが違う)を褒めて、それを見ていたキャサリンが氷に刺さってるボトルを持ち上げて飲む?って仕草をするんですよ。従順ないい*2奥方じゃん。談笑してた大佐はキャサリンに目を向けてそれを片手で制するし、田代ラドゥーは配信のとき「いらない」*3って言ってておっまえ……。ラドゥー大佐さあ、こういうときキャサリンに愛想笑いしないんだよね、厳しい顔してるわけでもないんだけど、無関心というか社交辞令的な微笑みがないの。ノーサンキューのサンキューがない*4。それ見てた首相が手でダンスはどうだいって感じで促し、キャサリンと目を合わせてエスコートして踊り始める。

エスコートしてるときや踊り始め、ターンする彼女を受けるくらいまではキャサリンに意識を向けてるんだけど、キャサリンの頭越しに首相に目配せするし(これ田代ラドゥーだけ?)彼女を前に置いて踊りはじめたら他の客に気を取られて目線がそっち向くし、近づいてきた男から庇うように引き寄せて踊りが止まったのはまあ……にしても、他の男性客がふざけてるのを見ながら一緒に笑ってるし(これも田代ラドゥーだけかもしれない)、いや全然キャサリンに気がないな……? お客の女性にもしてた紳士的な(社交儀礼的な)エスコート以上の感情が見えないぞ……?

キャサリンが言ってた「あのブロンドの〜」はラドゥーがそっち見てたからなんですよね。キャサリンは後ろにいるラドゥーの視線や意識が逸れたのに気づくのに、ラドゥーはそれもあんまりわかってない。なんでキャサリンがご機嫌損ねたかわかってないでしょ。どっちの大佐も。

田代ラドゥーは踊りながら余所見してるのをなじられて「ごめん」って素直に謝ってましたからね……。ちょっと困った顔でなだめるようなジェスチャー、そこだけ見ると悋気に対応してる夫っぽいけどラドゥーくんも悪いよあれは……。悪気や浮気心はないんだろうけどだから余計に残酷なやつだよ、元々関心が薄いってことじゃん。ちょっと後の「求めるから生まれるのさ」「それじゃ哀しすぎる」で面食らったように一瞬きょとんとするの、キャサリンの言葉がわかってなくてそういうところだぞ……この大佐はそこがいいんだけどさ……。

怒って離れたキャサリンのためにシャンパンを取って近づき、妻の当てつけるような言葉にも仕方ないなあって顔して気を取り直して優しげな笑顔と仕草でグラスを差し出すのはいい夫みたいなのにな……あれどっちかと言うとため息ついて受け取り、仕切り直して乾杯に応じるキャサリンのほうが大人なんだよな……。

乾杯のあと、ラドゥーは彼女に向いたままなのにキャサリンは90°向きを変えて飲んでたの見ました? ラドゥーくんそれさえ目を閉じて見てないのも。仲睦まじく見せるべき社交の場でくらいも少し妻に関心を持とう? キャサリンも夫の無関心わかってるからやってそう……。それはそれとして目を閉じ片手を背中に回し、涼やかにシャンパンを飲む姿は大変に絵になってございました。加藤ラドゥーも田代ラドゥーも。

自分に全然関心なくて雑談に笑ってる夫にも黙って腰を抱かれてパパのところに戻ってくるの、キャサリンよく我慢してると思うよ……。それはそれとしてこの場面のキャサリンの従順さを見るたびに、後の「女が意思を持つのは危険だ」を思い出す。

加藤ラドゥー、社交の場を涼やかに完璧にこなしていながら、首相の言葉に共感しながらもマタハリの勧誘を朗々プレゼンしながら、ひとりになると彼女に想いを馳せてぼんやりしてるのが恋をしている人間のそれだなあと思った。恋をしていて、その自覚がまだないから思い募らせて悶えることもない、気の漫ろな感じ。なんで一人の時間が欲しくなったのか、彼女が出てくるかもしれないほうが気になるのは何故なのか、もしかしたら気にしている自分のことも、よくわかってなさそうじゃない?
首相の焦りや憤りに共感して「わかっています!」って言いながらマタハリのプレゼンは涼やかにするの、大佐業がそこそこ肌に合ってそうで好きです。キャサリンが上がってきたから会話を打ち切るのを目だけで伝えるの、交渉に慣れてそうだなあと思った。*5

田代ラドゥーにはなんとなく、消耗してるんだなあって印象を受ける。バルコニー(だよねたぶん)に上がりながらカフスのボタンを外し首元を緩めて(全部仕草だけ)ってしてるのとか会場を見下ろしながら焦りを浮かべているのとか首相が去ったあとベンチに座り込むのとか、たぶんそこら辺の印象。首相に声をかけられたときの反応にラグがある(振り向いて、首相に気が付いてぱっと身を翻すかんじ)のもかもしれんけど。キャサリンに「だいじょうぶ」って言い置いて離れてくのはひと息つく時間がほしかったのかなーと。(つまり妻といるときのラドゥー大佐は気の休まらなさそうと思っているんだな自分)
と、思っていたんですが、いやでもあそこでウインクかます余裕あるならまだまだ大丈夫なのかな……って配信みて思った。ラドゥー大佐より首相のが上手にウインクしてるのコミカルで面白かったですね。

キャサリンが言い放った「女優の皮を被った売春婦よ!」が(経歴として)その通りでそうね!?ってなる。誰かから聞いたわけじゃなさそうだし勘なんだろうけど。「そんなこと〜」って言ってるけどあの時点でその事実をご存知ですよねラドゥー大佐? 加藤ラドゥーは窘めるような、田代ラドゥーは驚いたような顔してた記憶があるんだけど違うかもしれない。

階段下りながらジャケットをぱん、と整えてる(田代ラドゥーは途中からしなくなった)加藤ラドゥー大佐、気を取り直してキャサリンのご機嫌取るつもりだったのかな。一足先に下りたキャサリンはパパと話して夫を見もしないで立ち去るけど。首相の目くばせと手の動きで追いかける意思がふっと消えるのひどい夫だよ(好きです。)マタハリがパーティに出てくるのをしばらく待ってたのも含めてひどい夫だよ(好きです)
このときの加藤ラドゥーが切なげな、初恋なんだなみたいな目をしててオタクはテンションが上がりました。ほころびかけた蕾のような雰囲気、かわいいよね。田代ラドゥーはよくわかんない。焦れているような表情。お仕事で表でも挨拶しときたかったのかもう一目見たかったのか。

*1:リップ音から続く吸気音が執心の強さのようでうわぁ……と思っていたんだけど気にされてたらすみませんと配信のカテコ挨拶で思った

*2:これは献身的で従順で都合の良いという意味

*3:「いや、」って言ってる回もあった気がする

*4:追記.愛知の田代ラドゥーはちょっと考えて「だいじょうぶ、いらない」って言っていました。ノーサンキューのサンキューがあった。えらい

*5:田代ラドゥーは軽く手で制する。目ざとさと首相への距離感が好き

マタハリ6/16感想

マタハリラドゥーの話をすると言ってたのでラドゥーの話をします。(2回目)
あらすじ追い終わったからどうしても細かいところに目が行ってる。
自分で読み返して思い出すためのものなので楽しいとこしか書いてないしすべて受け手の主観すなわち幻覚だよ、そのことをご了解ください。

愛希マタ・田代ラドゥー・東アルマンです。

 

○1幕感想

愛希マタハリ、踊りながらのまん丸い眼やすうっと細まる笑顔が仔猫のようで、なるほど艶めかしい猫……。柚希マタは野生動物のようだったけど、愛希マタはどこか愛玩動物みたい。やさしく誘えば腕の中に入ってきて、でも繋いで留めようとすると腕から抜けていってしまう愛らしいソマリ*1みたいな女。

楽屋の田代ラドゥー、無理して悪辣ぶってる感じがしませんでした? 警戒や反感を掻き立てるよな表情をしてみせるのに感情喚起に付随する目的がなさそうというか。マタハリへのストレートで好意的な賞賛がどこかそぐわないのも、敵対の意思なしを示してるときに効果がある行動だからなのかな。
マタハリがお願いを突っぱねたときに目を見開くのが、怒りというよりは「えっなんで?フランスのために働きたくないの?」みたいな驚きに見えて可愛いなって思いました(幻覚) 最後、私が信頼できる人間だと〜って話すときにはちぐはぐした印象が薄れて柔らかくなるのが、権力じゃなくて信頼で関係を作るのに慣れてたのかなって印象。

シャンパングラスを取ろうとしたキャサリンの手を田代ラドゥーがやんわり止めて、いこうかって誘うの可愛いなって思いました。
パーティで妻や他の客と談笑してる姿がふわふわきらきらしてて、この人もともとこっち側で仕事してたんじゃないかって妙な質感が……敵意を力で威圧するより、華やかな場に潜り込んだり相手を気分良くさせたりして情報を引き出す諜報員に向いてそう。さっきも言ったけど、(内心どうあれ)好意と信用で関係を組み上げたり懐に入ったりするほうが得意そうなんだよな……。
上官との話し合い、一度は君の知る必要のないことだって撥ねつけときながら移り気を疑われるとマタハリだって教えちゃうの、妻に疑われるの嫌だったのかな……だとしたら可愛いな……。後の場面を見るに地雷がありそうなのは“覚えのないことを疑られる”ことのほうな気はする。

ところでさ、この場面のキャサリンが「踊り子の皮を被った売春婦よ!」って言うじゃん。なんで知ってるの? 噂が流れてるの??
金髪の〜って会話からするに根拠のない憶測の可能性が高そうだけど、キャサリンも元諜報員だったりしたら楽しいなって思いました。夫の口からマタハリを聞いてびっくりするんだし、ラドゥーが話題にしてたことはなさそうかなって。1人上に残ったラドゥーの代わりに上官が世間話して背中に触れて退場を促すからたぶん家族ぐるみの付き合い。そりゃそうか最重要機密握ってるんだもんな、人質は要るよな……。

東アルマン、自立した若い男の人だった。いやそういう人なんだけど。三浦アルマンに少年っぽさというか、ほっとけない危なっかしさを想起したのでそこが強く印象に残ったんだと思う。1人で立てるからこそ、差し伸べられた手にちょうど良く重さを預けられるようなバランス感覚してそう。
アルマンという人間がよくわかってないのであれなんですけど、東アルマンがスパイの道に踏み込んだときは"国のためにできることを"を健全に発想してそうだなって思った。切迫して居ても立っても居られずにではなく、きちんと考えて覚悟が決まった上で選んでそうだなって。
東さんについてはDoVで1回見たきりだったので、こんなにしっかり声出す方なんだ!という驚きがあり。マイクの増幅もあるのかもだけど、太さと滑舌揃ってて聞きやすかったです。1階と2階で相当に音が違うから何もわからなくはあるんですが

田代ラドゥーと東アルマンの会話、アルマンのほうが冷静さを保ってるの面白かった。初めは上官してたラドゥーが、仕事の出来を言及されたアルマンの放つ「マタハリに『好意』を持つように」でばちん!と繕ってた余裕が飛ぶ。そこに地雷があるんですね……?

マタハリの手に唇落としたまま大きく息を吸い込むのシンプルにきもちわるいな……(賛美の表現です) これ加藤ラドゥーもやってた……? 遠くて吸気が聞こえなかっただけ……? 目を伏せたまま涼しい顔でやってるから余計に執着が強そうでぞわっとする。
キスの誘いに乗ってくれないマタに素直に切なそうな顔するのかわいいですね。

リオンで東アルマンが繰る人形、テーブルの上でマタにお話する。マルガレータの告白を聞きながらだんだん気配が変わっていって、ここで落ちたんだろうなと思いました。ホテルの支配人が「フロントでサインをするのを見て〜」ってシャンパンを取り出すのを愛希マタハリは綺麗で愛嬌のある笑み浮かべて眺めているんですよ。アルマンに笑うときはちょっと硬いくらいの笑い方なのに。この子の笑顔は身を守る鎧なんだろうな。

アルマンの「落ち着かないご様子ですね 大佐」が当になように、田代ラドゥー、余裕がないのかすぐ焦燥が剝き出しになる。だから敵意を持って対すればペース乱すの難しそうじゃないのに、激昂したときの脅しは語尾が甘く掠れるのがすごいこわい。更に怒らせると声が低いまま仕草にも眼差しにも艶が出てくるの、何あれ……。1幕終わりの論戦でひとフレーズ、ぐんと艶を増した声が柔らかい布みたいにアルマンに絡むんですよ。情愛とは別のところでそういう色を帯びるの、シチュエーションや本来だろうラドゥーの感情と全く噛み合ってないがゆえに、つややかであればあるほど剥ぎ取った下にある得体の知れないものを想像させてこわい。
しかもそれやるのだいたいアルマンになんだよな……マタハリ相手じゃないんだよな……。
リオンから戻ってきたアルマンのジャケット掴んでゆっくり息を吸い込むの、そうですかそこで嘘を判断する……。ところであのナンバー、アルマンも「あの薫りが」って言ってるんですね? なんかちょっと聞こえてきた。
ラドゥーが「鏡の中に彼女を見る」って言うのは楽屋を思い出してるのかなと思ってたんだけど、田代ラドゥーはマタハリのなかに自分と同じものを(一方的に)見出していそうだなって思いました。2幕まで観て。

少年パイロットを励ますアルマン上官、少年の正直な開示(「少し、漏らしました」)で少年の肩を支えにするくらい笑ってから「僕も、」って開示するの人心を掴むのが上手で感動しちゃった。感動した後につい、諜報員に志願だかスカウトだかされるだけはある……と思ってしまい。優しさや面倒見の良さ、人の心を開かせる天性のものがあって、そこに作戦が乗ってるんだろうな、東アルマンのスパイ技術。

リオンでは少し硬いぎこちない笑顔をしていた愛希マタが、1幕終わりではアルマンを想って空を駆けるような笑顔を浮かべてたのがとても好きです。裏切られても傷つかないよう無意識に構えていた彼女が「本当の愛」を見つけて、手放しに笑えるようになったんだなと感じて。

 

〇2幕感想

少年パイロットの悲痛な「空に隠れ場所はない」「祈ってくれ」が大変好きなんですよ。
この少年パイロット、次に現れるときは大きな銃を持っているのでパイロットから陸軍兵士に志願し直したんだよなたぶんな……。国のために……上官が励ましてくれたように、英雄になるために……(パイロットたちのナンバー、「英雄になれ」っていうそうですね)

田代ラドゥー、マタハリに頼られるとすごく嬉しそうで素直だなって。アルマンの情報を渡したけど諜報員だとは暴かなかったの何故なんでしょうね。マタはアルマンに会うためにリオンに立ち寄ったのに。マタがパリから出られないと信じてたのかな、それともマタをがっかりさせたくなかったのかな。
自分で口にした「嘘」のひと言から一気に過熱されるのマタと同じくらい嘘か本当かに拘りありそう。嘘はいらないから愛などいらないなの? そういうことなの?
サスペンダー脱ぎ落とす動きに全然色気がない。*2 焦りと衝動と、理性の箍が外れた獣の姿。
マタハリへの想いを自覚したら感情制御されるかと思ってたけど……そんなことなかったな……。そもそも田代ラドゥー大佐、どういう感情か自覚したのかな……。
「追い払ってやった」って話す声にも表情にも甘さも余裕もなくて、嘘つくの下手か……!? えっ身内だから……? キャサリンに立ち去られて可哀相なほど動揺していて、“そうして彼はまた一つ失った”の感。

愛希マルガレータ、オランダ人のパスポートで旅に出るとき帽子を深くかぶって顔を隠すんですね。柚希マタがけっこう堂々と顔を見せていたので驚きがあった。座席が違うからそう見えたのかもだけど。

上官にマタの逮捕を促されて、目を閉じ深々とため息をついて天を仰いでからぱっと見冷静に立ち去る田代ラドゥー、1幕でテンションが上がりきると一周回って腹が据わるのを見てるから内心が恐い。

裁判のラドゥーがめちゃくちゃ活き活きしていて、夏。活き活きしてるっていうか演説上手ねっていうか、見られることと魅せることをよく知っていそうというか……笑顔で民衆(客席含む)の一人ひとりに視線を合わせて説得しようとする……。田代ラドゥー、やっぱり人前で動く任務で成果出してきてるのでは。適性如何はさて置いても積んできたスキルの高さがすごいぞ。
「あなたのような男たちから身を守るための!」でそれまでの涼やかさが嘘のように豹変する。そうだねマタハリを守りたかったんだよね……。同情の余地はないけど……。

アルマンと揉み合い発砲音がした後、地面に落ちて苦痛の表情を浮かべてたラドゥーが自分の腹に傷がないと気がついた途端、可哀想なほど動揺するの何故なんでしょうね。自分の手で人間を殺したことになの、アルマンに駆け寄るマタを想ってなの、でもアルマンたちに振り向く前だったんだよな……同朋を、ひょっとしたら人間を直接手に掛けたことなかったのかな……。アルマンに近づこうとして、アルマンを抱き締めるマタにまた絶望する。手すりに縋りついてなんとか崩れ落ちないでいる有り様で階段を上がっていくの、可哀想だなって思った。

最後、腰の折れて俯いていたのがゆっくり背筋を伸ばし、首だけ真上を向いてはけていったんだけどあのラドゥーそのうち自殺しそうだなっておもいました
ラドゥー大佐(史実)も二重スパイ容疑で殺されたってTLみたとき、加藤ラドゥーにはあそこまでしたのにその結末なのかって思ったけど田代ラドゥーにはよかったねって思ってしまい。戦争終わるまでは自分から死ねなさそうな男だったので。

 

だいたいラドゥーの話したんだけどひとつだけ役者さんの話していいですか、田代さん声が重……!? 表面がざがざしてるのに粘度の高い感じ。高い音でもどろりと這うようで、ざくろの皮が爆ぜるみたいにばんっ!って圧が増す。喉のとこで音をぐっと圧してるように聞こえたのは私の耳が悪いのかハコの音響かは分からん。愛知ミーでしばしばしてたのと同じ歌い方に聞こえた。

*1:猫の品種。鳴き声が高くてきれいで、甘え上手なんですよ

*2:ジャケットとサスペンダーを脱ぐ仕草に色香が匂い立つ役を演じていらしたのが1月前なんですよ スリルミーという

マタハリ6/15感想

ラドゥーの話をすると思うって言ってたよね、だいたいラドゥーの話をします。

柚希マタ・加藤ラドゥー・三浦アルマンの組合せ、敬称略です。
個人団体その他諸々に無関係の一個人が見た幻覚であることをご了解ください。

組合せ固定じゃないから難しんだろなとは思うんだけどCD出ませんか?ワイルドホーン楽曲邦訳歌唱を残してほしい。


○1幕感想
楽屋に入ってきた加藤ラドゥー、駆け引きと余裕のある笑みを含んだ色男の眼差しで会話してたのがマタが名刺に目を通した途端に甘さを消した厳格な軍人の顔になるからすごいよ
険しい顔したマタが要求を突っぱねて蠱惑的な踊り子の振る舞い(そういう話は終わり、の牽制だと思ったんだけどどうなのだろね)をしたら彼もまた権力ある色男の甘い眼差しをするところも含めて、この男敵に回したくねえなって凄みがあった。

三浦アルマンのヤンキー座り、ガラの悪さよりも所在のなさに見えた、場にそぐわなさというかどこか儚い雰囲気というか。ほの青い白目が控えめに覗くようにマタを窺ってるからかな。この組合せラドゥーもアルマンも白目のあおさが健康そうないきもので好き。

加藤ラドゥーさ、ライトの関係か虹彩の色かわからないんだけど、「一万の命」で大きく見開いた黒目が暗い赤に輝いて見えるんですよ。苦悶を浮かべたまなこが血に濡れた戦場を見ているようで、見ているこちらの息が止まるようでしたね……。ライトの加減もあるのか若さなのか、目が少し潤んでいるように光がよくよく入るんだけど、彼は苦しんだり無念さを噛み締めたりしながらも涙をこぼさないんだよなと思った。兵士の命を預かる彼はたぶん、それを己に許さなそうだなとも。自分の力不足で奪われた命に後悔はしてもいいけど同情はさ。
その後の場面、マタハリへの激情が噴き上がるところで見開いた目がやっぱり血の赤を帯びていてわあ……と思った。
2回目の逢瀬で立ち去るとき、キスを拒まれた口元にラドゥーが自分の手を運んでいて、夏。1回目はまっすぐぴしっと姿勢を崩さず立ち去ってたじゃんさあ……

マタハリを想うラドゥーのソロ、イントロ直前あたりで加藤ラドゥーがぎ、ぎぎって軋むような動きで揺れて、入りの歌詞が「なぜ軋むのだ」(胸が、かも)だったの細かい そしてラドゥーさん己の恋情を自覚しきれてないから制御できなくて、間欠泉のように名前のついてない衝動が噴き上がるの好き。
 
ラドゥーくん、最初に楽屋で言葉を探してやっと伝えた「君は……魅惑的だ」が全くの本心で一目惚れだったんじゃん。直後にアルマン差し向けて美人局するのなんなのマゾなの??? いやたぶん順序が逆なんだな、スカウトしにいくと決めた時点で念を入れてアルマンの伏兵を仕込み、コンタクトのために入った舞台で一目惚れしたんだな……。

アルマンの口から「マタハリ」の語が出るたびにあそびのない目で唇を戦慄かせるラドゥー大佐、どう見てもアルマンと色が違うタイプの執着なのにお前も同じ言うてるのが変に自覚なくてやばいんだわ。顔上げて振り向いて見てみろアルマンどん引きの目ぇしてるぞ
ラドゥーが心を掴まれたのは輝く女『マタ・ハリ』でアルマンが恋したのは痛みを抱えて生きる『マルガレータ』だからなんにも同じじゃないんだよな。大佐、おまえさんが恍惚としているマタ・ハリの「あの薫り」にアルマンはたぶん何の執着も抱いていないぞ。

ラドゥーの前でマタが見せるのは妖しく艶やかに笑い本気と駆引きで戯れ合う女で、アルマンの前で見せるのは娘のように裏なく笑う女で、2人はどちらもあの女に惹かれているけど、見ている面も欲しいところも全く重なってなさそうなのよね
三浦アルマンはマタハリに「サインが欲しくて」って言ったり痛み止めのツリーオイルに「いい匂いだ」って笑って見せたりするけど、あの時点ではただの監視相手としか思ってなさそうじゃない? 思いがけずマタハリの本当を聞いて、ほんとに「同じ」かもしれないと思ってしまって本気になる、みたいな。

柚希マタハリ、ヒョウでもシマウマでもカンガルーでもいいんだけど、しなやかで強い野生のけもののような魅力だなと思った。ふっと思ったのはどの雄より美しい翼を持ってしまった雌孔雀のよう、だったんだけど(おそらく色合いもあって)リオンでの会話でなんとなく納得した。適性が高かったから強く魅惑的な女をやって、やれているけどマタ自身はそういうものを欲しい女じゃないのかなーと。アルマンと話しているときは娘のように笑うよね、マタハリ
というかあの、マタハリが踊っているのってシヴァ神信仰に基づく鎮魂の踊りなんですね……?

○2幕感想
1幕では戦争に喘ぐ町の人々(現実)とマタハリという鮮やかな夢って感じのお出しされ方だったのが、2幕ではマタが戦争を嘆く無力な町人(希望の薄い帰りを待つ女たち)の1人になってるの、クるものがありましたね……。

踊り子マタハリの顔ではなく1人の女としてラドゥーの元を訪れるマタと、どうありたいかがここ一番不明のラドゥー大佐、おもしろいですね……?
心など(愛など?)なくても良いってマタに迫るラドゥーがだいぶキてて好きです。最初に楽屋で出会ったときの駆け引き含んだ甘さはないのに見返りなしの本心でもないの、それでいて愛が欲しいわけではないのどういう感情なの?(好き)
欲しがるものは(その感情動機が)よくわかんないけど言ってること自体はそこまで道理がおかしくはないんだよなラドゥー。私の力でお前の欲しがるものを与えよう、対価に一夜の夢を寄越せ。ドイツの将軍はじめ、おそらく世界中のマタのファン(有力者)も同じことをしている。
お金に対して返される「愛を込めて」、一夜限りと承知しての情交、どちらもマタハリは与えて来ているよね。自分の愛なんかを手に入れてしまったから国境の分け隔てなく愛を売る女マタハリでいられなくなったのだろうけども。
それともあれなのかな、嘘を承知で一晩恋人どうしをやるのにラドゥーのほうから幻想あそびを投げ捨ててしまったからマタも本心で返さざるを得ないのかな。初めに条件提示したら或いは頷いたのだろうか。うーんでもあそこに来てるのマタハリというよりマルガレータだったしなあ。
恋はアルマンに向けるよう仕向けたから俺には本心からの屈辱と憎しみを寄越せなの?(たぶん違う)
妻に突き飛ばされて少し驚いた顔の後、自嘲するような笑みをしたラドゥーがその後に顔を上げて、愉快なものを見つけたみたいに笑みの質を変えたの何見ているのかわからなくて不穏。袖に消えるまでずっとその笑みを浮かべて何かをまっすぐ捉えている。

上司に決断を迫られ、返事をして立ち去る直前にラドゥーの白眼がぬらりと輝いて凄みがありましたね。大きく目を見開いて俯くからライトの反射がぬるりと蛇のように白目を這うんだ。
アルマンともみ合って発砲音がする直前、苦痛に顰められた顔がただの青年みたいに見えた。「記憶から取り去り」みたいなこと言ってたラドゥーがナンバーの最後で「記憶のなか」ってこぼすの可哀想だなとおもいました。ベンチ?ソファ?にかけたまま心の芯を失ったみたいな顔で消えていったね

ラスト、狂を発したかと思ったけど最後の言葉を聞くにちゃんと正気っぽいんだよな……。そうでもないのかな……。割れて歪んだ鏡に己の顔を映して不安定な表情をするマタ、あそこ見るとあまり正気には見えないけども
いつまで経っても答えないアンナに顔を曇らせて振り向いたマタが、アンナの震える声での「もちろん大入り(うろ覚え。"いつもの"口上)」を聞いて踊り子マタハリの顔で笑って見せたの最高でした。
最後の最後、リオンで見せていた娘の笑顔で手を伸ばしていたからたぶん会えたんだね。ジーンの踊りを見たあの湖だしね。(あのレースと水色の背景、そういう理解でいいんだよね?)

'21レミゼ感想

6/13マチネです。まとまってない記憶の断片をわーっと書くつもりがこうなったのでわーっとするのはツイッターでやろうと思いました。文字数制限がないと連想と空想で無限に話がずれていく。

 

知念里奈さんファンテーヌ
知念ファンテを見たら2幕ラストシーンの解像度がめちゃくちゃ上がってすごく動揺しています。あまりに上がりすぎて強火の幻覚(そういう演出ではないところ”わかって”しまった怪電波)じゃないかって気がしてきた。
死者が生者を迎えに来た場面だと思ってたけど違うじゃん、いやそうなんだけどあそこにいるファンテは、たぶんエポも死後の世界から迎えに来てるのではなく神の国から使わされてるんじゃん……という幻覚を見ました。見ています。
知念ファンテが出てきて声をかけた瞬間に静謐さが聖堂のそれになったじゃん……ならなかった……?(オタクは幻覚を見ています) フランダースの犬(アニメ)のラストでネロとパトラッシュを天使が引っ張って連れていくじゃん、バルジャンを迎えにきたファンテと寄り添ったエポはあの天使たちと同じなんだなって思う。わからない、幻覚かな。

正直に言うとわたし前回のレミゼのあのシーンにちょっとホラーに似た無常さを覚えていたので(害意もなく世の定めとはいえ、この世ならざる者が命の灯火を消したように見えて仕方なかった)、あの静けさに神聖を感じ取ることになるとは思ってもみなかった。カトリックの聖人思想、わたし一片も共感していなかったんだけど*1こういう気持ちなのかって思っちゃったよ。
死は喪失じゃなくて救いの日まで離れているだけ、再会するまでの遠い旅のようなもので。先に逝った者が迎えに来たのはこの世から連れ去るためではなく道に迷わないよう手を引くためだった。バルジャンがマリウスに託した嘘(遠くに旅に出る)がまことになったの好き。

 

小野田龍之介さんアンジョルラス
前回に見た記憶よりリーダー適性高そうなアンジョルラスでこのアンジョになら心臓預けられる。勝てそうかどうかじゃなくて、この人の理想になら命を懸けてもいいと思える。
あのカリスマに仲間へ気を配る情の篤さと細やかさが乗ったらリーダーとして最強じゃん……。あの学生軍アンジョルラスだからついて行ってるしアンジョルラスだからあそこまで士気を高められてるよ。
一気に妄想強度を高くするんですけど、あの学生軍アンジョルラスの語る正義に共感して集ってるのもアンジョルラスに鼓舞されてるのも事実だけど同時に俺たちがこいつを支えてやんなきゃとも思ってそうじゃないですか?
初めての恋にすっかり浮かれているマリウスにちょっとむっとしてるのを仲間がひょいと宥めて最終的には革命の話に持ってけるようにするのとかさ。

小野田アンジョルラス、狂気がないのが彼の魅力だし哀れだよ。*2まったく正気で作戦を立て仲間を想い同志の死を目にして、それでもリーダーでい続ける気持ちの強さといつか対面するだろう正気では受け止められない酷い現実に心が折れてしまうのではないかって危うさ。
あのカフェで同志の死を聞いた衝撃を打ち払うように戦意を燃やして仲間を鼓舞しようとするアンジョルラスにいつか折れるぞ折れるぞと思ったりした。ガブローシュの死に崩れるように座り込んだアンジョが眉間をぎゅっと押さえて動かないから折れちゃったかな……と思ったら悲しみも悲愴さも戦意の燃料に焚べて最後の火をつけたのすごかったね。それまでは櫓の上、高いところにいながらもバリケードで身を護って戦っていたアンジョがバリケードの隙間で全身をさらして赤い大旗を振っていたの、勝てない戦でリーダーができる一番のことをしているんだなあと思った。
砦のなかで一番目立って一番危険で一番無防備な場所を自分の身体で塞いで、赤い旗と赤い自分で士気を高めて死の恐怖を吹き飛ばして。最後の瞬間まで後ろを向かず、誇り高い戦士として落ちていったね。ちびいぬガブローシュと同じように握ったこぶしを振り上げてさ。
最後までひとり残り、嘆くマリウスを心配するように見ているアンジョルラスにマリウスの兄貴分だった(というかマリウスがみんなの弟分だったんだろう)仲間想いの男をみた。

 

上原理央さんジャベール
家柄の良さそうな刑事。当たり前のように恵まれて、当たり前のように神のために職務を果たす、神にとても誠実な人。彼、バルジャンを捕まえる決意を新たにしたときに十字を切るんですよ。自分の職務を神のための奉仕(地上を神の国に近づけるための行いが"天命"、まあ神から与えられた仕事みたいなものです)と疑わない。このジャベールはなるほどな、娼婦や小悪党を理解することはできないだろうな、と思った。
彼はおそらく自分の意志で刑事となり、自分で選んでスパイとして潜入した(失敗したけど。)刑事としての職務のためなら他人にどう見られようが構わない、己が命さえ惜しむこともない。
自分が生き延びるために、あるいは自分を犠牲にしても子や家族を守るために仕事をする彼らが『他に選べない』『選ぶ余地などなかった』のは弱さにしか見えなかっただろうなあ、と思うのよ。『死なないためには仕方がない』は、『誇りある死を選ばない』とも言えてしまうので。
ジャベールのその信念にひびを入れたのは冷たくなったガブローシュなんじゃないかなあ。神の国に近づけるために職務を果たしている自分たちが殺した、神の国に一番近いはずの存在。
「死にかけてる!」ってマリウスを見せられたときすごい形相になって、そのぎらぎら光る目のまま道を譲った彼の信念はあのとき折れてしまったのかなあと思った。
届かない何かを見上げ伸ばした手が、こと切れてぶらんと垂れ下がりトンネルに吸い込まれた光景が目に残っている。


ここからは幻覚を見てないでどんどんいきたいです はい

佐藤隆紀さんバルジャン
穏やかで優しそうなバルジャンだなあって思った。ふわふわした。声の印象なのかな。コゼットを小さなお姫様のように扱う手がやさしいんだよ。
マリウスにコゼットを託して去るとき、背を丸めて首を落として歩みさっていくから一気に年老いたように見えた。このときのバルジャンはエポニーヌが言ってるように「じいさん」なので、今まではコゼットのために背を伸ばして気を張り詰めていたんだよね。きっと。
若いふたりを迎え入れる穏やかで慈愛に満ちた微笑みがね、いいよね……。

橋本じゅんさんテナルディエ&森公美子さんテナルディエ夫人
やったー!!って思う、具体的にどうこうというのはわからんけど、小悪党ぶりが見ていて気持ちいいよね。流れるようにお客の持ち物をパクっていくテナルディエと息ぴったりで品物を受け取って台所に紛れこませたり服に胸に押し込んだりする夫人の破れ鍋に綴蓋さ加減とか「ラッシャーセー!(雑)」とか好きだよ。
催したお客のを受け止めたボールの中身を酒瓶に入れて夫に差し出す夫人、ひぇ……。テナルディエが飲み始めてからうげぇって顔になる(それでも飲み続ける)のどういう顔して見ればいいかわからない(好き)瓶を口から離したところにすかさずボール差し出すのが2人の歳月の長さって感じ。
コゼットにばいばーい!したあと、大金でテンションが上がっていそいそ服を脱いで(仕草)ハグするのめっちゃ面白かったですね。バルジャンやジャベールと反対の、目の前の利益や自分の欲望に従う人の象徴なんだなーと思った。

*1:キリスト教の信ずるかどうかは主と私の一対一の契約なのになぜ他人をバフに使おうとするの?って思ってた、おそらく彼らにとってはそういうものじゃないのはなんとなく判ってるよ。

*2:前回のレミゼ、普段は友達想いの青年なのに革命を謳うときは目が狂気に輝く相葉アンジョルラスがいたよね……今回もそうなのかは観てないから知らないけども……

バタフライ効果のたとえ話、いつかしたいと思っていた

 田代さんがSoMLの紹介でバタフライ効果の話をするたび、あの言葉をあの向きで説明するの世界への信頼がすごいなあと思っているという話をですね。いつかしようと思っていた。
あの説明が田代さんの解釈なのかブライアン・ヒルさんの解釈なのかは存じ上げないのですが。未知への可能性のニュアンスで話をするじゃないですか。眩いなあ、と思う。

《butterfly effect》ある系の変化が初期条件に極めて鋭敏に依存する場合に見られる、予測不可能な挙動のたとえ。もとは、米国の気象学者ローレンツが1972年に行った「ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか」という講演の演題に由来する。大気の対流が決定論的な微分方程式に従うにもかかわらず、数値計算の精度をいくら向上させても事実上正確に予測できないカオスの性質をもつことを象徴的に表現したものとして知られる。(デジタル大辞泉

 バタフライ効果とは - コトバンク

 言葉の定義としてはこんな感じ。ソース掴めてないですが初めはカモメを喩えに使うつもりだったというエリザ好きには楽しそうな小話もありますね。

わたし理系分野の専攻だけど物理や数学は専門じゃないのでここからはどうか話半分で聞いてくださいね。情報を拾い集めてもその分野でメジャーな概念理解を獲得するのは外のヒトには難しいので。

わたしは科学に、特に物理には世界の近似値を求める学問だってあたまがあったので、*1このたとえ話を自然にはいまだ届かない、人類の限界を表すことばだと認識していたんですよ。近似式はアナログのゆらぎを削いでデジタルにしたものだから、ゆらぎが結果に大きく響くカオスは計算しきれない、といいますか。
科学の発展は観測している箱庭の枠を広げることや解像度を上げることはできても、箱庭の外や点と点の隙間そのものを計算できるようにはならない。だから、ごく小さな差異が大きな違いにつながる複雑系の全貌を正しく計算することはできない。箱庭のたとえでいうなら、箱庭の外が変化すると、それに合わせて箱庭の中がまるで書き変わってしまう……みたいな感覚かなあ。なんか違うんだけど。がたがた揺れる電車の中で線のブレひとつなく手紙を書け、みたいなほうが近いかもしれない。
まあとにかく、そういうニュアンスで出た喩え話だと思っていたんですよ(そもそも私の理解が間違っている可能性は十分にあります。物理、専門外。)

なので、蝶の羽ばたいた小さな空気の動きでさえ地球の裏側で嵐を起こすことが"できる"という、未知への可能性の物語としてかたられるバタフライ効果がとても新鮮でまばゆかった。

『メガホンの話をしてください』*2みたいな鱗の落ち方をしたのかもしれない。

オチがないね。まあないからねオチ。ルールとしての数学は根性だけど、物理をやっていた人にツールとしての数学の話を聞くと世界の解像度が上がって楽しいよね。文字の連なりが彩りに見える瞬間。

*1:この表現でいうなら生物学は世界を最頻値であらわす学問かなと思う。近似もとるけど、生物学において個体差と学習をないとして考えることはできないので。

*2:科学者はメガホンの音が出る仕組みを語り、小説家はメガホンが出てくる物語を語るってやつ。学校業界の講話としてよく回るんだけど発祥と真偽は知らない