つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

「#いいねで答えるミュージカル好きの20の質問」リトライ。

昨年だったかにやった気はするんだけどせっかくなので。

途中まで6月に書き、クロスロードとM.バタフライに情緒もってかれてた結果が今になりました。脱線多いので目次おいときますね。

1.ミュージカルを好きになったきっかけのミュージカル

おそらくなんですが……バンダイセラミュの、ドラクルシリーズの後にやった火球降臨の一個前のやつ……ダークキングダムが出てくる……ウィキペからも抹消されてるけど……。
それこそ20年くらい昔、朝9時くらいに実写セラムンやってた年があったじゃないですか。その実写セラムンを妹が好きで、延長線でよくこのビデオを借りてたんですね。そのビデオを後ろから見てた私が河﨑美貴さんのクンツァイトにハマりまして。
それから10年後、週に13種類授業作り片道2時間を21連勤というクソみたいな仕事してた時期に再燃した。絶版の過去作集めてiPadにぶっ込み、仕事以外の起きてる時間はずーーーーっとこれ見て何も考えないようにしてたのでマジでこれで命を繋いでたやつです。寄っかかり方が重いんだよな。

バンダイセラミュ、河﨑美貴さんと遠藤あどさんが好きでしたね……。動きが綺麗で身体制御の““よさ””を浴びて生きていた。いや重いんだよな(自戒)
後で調べたらこのお二人はダンスクラブの所属だったらしく、そら鮮やかなはずだよ身体の制御と表現がよ……となりました。
このセラミュシリーズに出てた役者さん(浦井健治氏)が出ているというのでデスミュ再演(‘17)に行き、ミュージカル女優濱田めぐみ(敬称略)の第一声に心を打ち抜かれてその場で追いチケしたのがはじまりです。浦井さんが教室を掌握するさまはカリスマでした。


2.音楽が好きなミュージカル

ラブ・ネバー・ダイ、マタ・ハリ

LNDは特にね……あの話から音楽を抜いたら何も残りませんからね……。何回でも言うけど、「愛も情も年月も才能ある音楽には抗えない」なんて素面で聞いたら賛同し難い物語世界の摂理を音楽で“わからせ”られるのALW御大ぐらいだよ。いやホントに御大くらいだと思いますよ、ご自身の描いたキャラクターの人間性やお話のアレさを楽曲でねじ伏せて「魅力的なミュージカル」に仕立て上げられる素材としてご完成ご提供できるの(私はLNDがとても好きです)(ただし演技と歌唱と人物構築がばけもの級のキャストを集めないと魅力的にはなれない作品だとも思ってる)

マタ・ハリ、楽曲もだし転換につかう音楽も好き。「一万の命」で地獄のような戦場の夜を描いた直後に澄んだ空気が清々しい朝につながってるの、あんなひどい(この転換が一番好きです)ことある!?
楽曲は「捕らえろ、スパイを」、「一万の命」、アンナがメインのあの曲……名前が出てこない……あの曲が好き。「二人の男」も好きなんだけど、あれはラドゥー大佐が理性と自分を見失ってく様が楽しいとこあるので……。
マタハリ再演はつくづく「会場がブリリアでさえなければ……」な演目でしたね……。愛知で聞いたときに「こんなに豊かな音だったんだ!?」ってびっくりしたし、大劇場のメインキャストばんばん張ってる役者さんが、ブリリアのたった2週間でマイクに声を吹き込む癖がついてるのにも衝撃を受けた。梅芸ちゃん頼むよ……愛知大阪は素敵な劇場選ぶのにどうして東京だけあんなポンk……音楽と演舞を売るには向いていない劇場をチョイスしがちなんだい……。


3.ストーリーが好きなミュージカル

ストーリー・オブ・マイ・ライフ、サンセット大通り、メタルマクベス

わたしはね がんじがらめが すきです。
SOMLだけちょっと系統が違うんですが、何れも「誰とも分かち合えない地獄」がとてもよい色をしていると思います。そういうのがね、好きなんですよね……。

あと。ストーリーが好きかっていうと首を捻らざるを得ないんですが、LNDのラウルくんもその系統(がんじがらめ)で好きなんですよね私。彼のいる地獄は誰とも分かち合えない、歌に愛されたクリスティーヌもグスタフも彼の「みじめさ」に共感できないし、そもそも彼と音楽を語り合えないことを彼の瑕疵とは思っていないから。
ラウルくんの可哀想なところ、愛し合っているクリスティーヌもグスタフも彼の抱える深い傷を理解することができないのに、彼の敵とさえ言えるファントムだけはその傷を的確に理解していてここぞの時に違わず抉ってくること。

メタマクはね、夫人の孤独がいいよね。「あの夜見た真っ赤な血が恐ろしい」をランディに言えず、追い込まれて追い込まれてようやく口にしたときにはもう、造反の不安を血でかき消している夫には届かないのが最の高ですよ。すぐ側にいる最愛とも分かち合えない地獄のなかにいる。
特にDisk1の、ひとつ何かが違っていれば彼らは踏み止まれただろうって臨場感?危うさ?迫力?あれが好きなので円盤か有料配信かしてほしいなあと言い続けたい所存ですよわたくしは。

サンセットは恋する少女のような濱めぐノーマが可愛いなっていうのが第一に来るんですけど、マックスの妄執がわたしのヘキにクリーンヒットでした。一度はジョーがほどいた「無声映画の大女優」の呪縛に自ら選んでかかり直したノーマ・デズモンド最高だったでしょ……。
サンセットは2幕の後半、縋り付くノーマの「嫌いにならないで!」に無言の眼差しで応える平方ジョーに度肝を抜かれた思い出。恋ではなくとも同情と憐憫でノーマをあやしてやっていた優しいお兄ちゃんみたいな彼が、一片の情も窺わせないあんな冷酷な顔を……!?するんだ……!?できたんだ……!?と思った。目だけで語る大女優ノーマや彼女を支える檻でありキャメラであるマックスの無言の眼差しに気圧されるばかりだったジョーが、眼差しと表情だけでノーマが思わず従うほど雄弁に拒絶をした。過去に囚われ変わらない屋敷の半年間を吸収してジョーは確かに成長したのがあれだけで分かるのとても好きでした。
ストーリー、ストーリーでしたね。誰にも理解できない苦しみに負けそうな彼女の心を支え続けた「ファンからの手紙」、人数を偽ったまやかしだったけど中身はたしかにマックスの本心で、たった一人のファンの献身に未来と解放を棄てて応えた大女優の献身が最高だったという話ですよ(強火の幻覚)

ストーリー・オブ・マイ・ライフ、どの箇所も全体的に好きなんですけど、「君は素晴らしい、トム」でトーマスを責めるアルヴィンがトーマスの頭のなかにしかいない空想なのがよきだよ。あれは多忙を言い訳に見ないふりしているトーマスの罪悪感だと思う。向き合わないで逃げているから膨らむ一方の。
あと、あの世界にいるアルヴィンがトーマスの内にある「アルヴィンはこういう人だった」って記憶の再現なのも好きポイント。アルヴィンが優しく辛抱強く情の深いいいやつであればあるほど、トーマスおまえー!アルヴィンのこと大好きじゃんー!ってなる。
私はここを好きすぎてたびたびしばしば話すんだけど、あの日起きたことを「知ることはできない」から「そこにない真実を探さないで」、「君の中にある」僕たちの思い出を見つめてほしいと言ってくれるアルヴィンが、トーマスの想像する親友の姿だっていうの最高によきじゃないですか?


4.世界観が好きなミュージカル

SOMLの好きなところ、まんまこっちだったのでは?という顔をしています。いちおう演目かぶらないように気をつけてたけど諦めましょう。世界観、現実からガラスの板一枚むこうにあるのが好きなんですよね。だからメリポピも好き。
 ……世界観だけならLNDも今度こそヘキに入るんですよね……。音楽か愛かの対立をしていたミュージカルオペラ座の怪人を踏まえて、愛と音楽が境目なくどろどろに融け混ざったLNDが来るの、あのヒトの生活から浮き離れた非現実感が肉のにおいのないグロテスクって感じでとてもよい。
閉じた箱庭が好きなので、スリルミーもそういう意味では世界観が好き、に入るのかしら。色褪せない『私』のアルバムを見せられているような話よね。

 

5.好きなミュージカルの登場人物

LNDのラウルくんが好きですね……ここまでで薄々お察しかもしれませんが……。彼の愛する人と彼を愛する人はだーれも気にしてない彼の特徴を、彼一人が埋め合わせのできない欠陥だと思ってあんなに思い詰めているのが本当にかわいい。おまえはクリスティーヌの錨なんだから飛ぶ羽を持たないって嘆かなくていいんだよ。*1

あとルイ16世。1789もMAも好き。これは前回も同じこと言ってそうだな……。己の無力と無能を知っていて形だけの影響力の大きさもわかっているから何もできない、おろかでやさしくさといおうさま。どう在れと求められているかすら解らないほど愚かだったら、己の無力を直視せず幸せでいられたろうに。
左右で違う靴下を「自分で履いたんだ」と戯けて笑いにする優しい人。国王にメイドがついてないわけないのに。鍛冶屋になれたらと言っているけど、彼はおうさま以外の何もできない。生まれという意味でも、培ったものという意味でも。そういう、空に憧れる風切り羽のない鳥みたいな憐れさがすごく好き。

あっそうだ好きな登場人物と言ったらスリルミーの『彼』を忘れてはいけない。
キャスト組によりさまざまとは思いますが、どのペアも大抵は「ひとりで立つための自尊の根っこを損なわれたものの危うさ」「大人になれなかった少年」の概念みたいな色気があると思う。
みんなちがってみんないいだけど個人のヘキで言うなら’19柿澤彼が一等好みです。大人になれなかった(なるための安心を与えてもらえなかった)ものが持つ少年性が好きなので……。

番外編として、2019エリザベートの涼風ゾフィー田代フランツ三浦ルドルフのラインがめっちゃくちゃ似た者親子で当時のわたしは悲鳴を上げた。楽しかったです。ルドルフは僕とママは同じっていうけど、シシィを求める気持ちだけを持っていてもよい個人としての気持ちとするところとか自分と国の境目がいまいち見えてないところとか、君が似てる在り方はママじゃなくてパパだと思うな私は……。
また一方で、平方フランツと木村ルドルフが機会が来るまで自分を抑えて政治の振舞いをやれる似た者親子だったと思う。力と意志はあるのに手段がわからなくてあっちこっちにぶつかってるの、(ルドルフという人物が)若くて未熟で可愛かったよね。

↑ここまで書いたの今年の6月頃なんですが、今期エリザを見て改めて思うのは私の本来のヘキにハマってるのはゾフィーのほうなんだよなということですね。強くて脆くて矜持の高い愛の女。あなたが圧し隠した本音を口に出しさえしていれば、別の未来があったかもしれないのに(けれど彼女が彼女である限りそんなもしもは訪れない。)私はゾフィーの厳しさを国母の愛だと思っているアカウントなのでそんなことを言う。『「怖い絵」で人間を読む』と『皇妃エリザベートの生涯』を読んでみんなと100回くらい言っちゃう。
それなのに現在進行形でフランツにどハマりしている*2のはひとえに出番が多い(=心情を覗き見る機会が多い)のと「知らないものは与えられない」アンテナがばりばり反応するからなんだと思う。自分の心に意識を向けて苦しくないようにしてあげるってことを誰にもしてもらえなかった人に、心のままに感じて伝える自由を一緒に掴めと求めることに無理があるのよ。好きな人との繋がりを手放さないことだけを自由として己に許しているフランツと心が縛られないことを(最低限の)自由と感じるシシィという東宝版の構図、「夜のボート」にある「あまりに多くを〜」「少なすぎるわ」の凄まじい説得力に「そうね……」しか言えなくなる。他に何一つ自由がなくてもあなたが側にいれば幸福だVSあなたが側にいれば何があっても挫けず自由を勝ち取れる の擦れ違いがここに極まってしまっている。
こないだのWOWOWウィーン版エリザコン配信の「悪夢」で挑むフランツをトートが捕まえてくるくる踊ってるの見て温情措置だ……と思っちゃいましたよね。最愛を喪う前に彼女を救わんとして挑んだ結果の死、温情でしょ。人物の結末としての好みは東宝版ではあるんだけど(ウィーン版は黙示録の文脈が乗りまくってるのコミでの演出が好きなので)、彼女がいなくなった世界を知らないまま死ねるの温情措置だよあれは。
ごめんなエリザにとちくるっているからエリザを語ってしまったよ。


6.好きなミュージカルアニメ

スーサイド・ショップ

これも前回と変わってないと思う。何故なら他にミュージカルアニメを知らないから。
私はねー。この作品は映画を見てから原作を読んでみてほしい派なんですよー。まあ映画ならそうするよねー、と思った物足りなさを伴う満足が小説版を完走することで完璧になるので。

 

7.好きな非英語圏ミュージカル

これは…作曲家が英語話者じゃないって意味? 初演が公用語英語じゃない国って意味?
前者なら、天保十二年のシェイクスピアはばりばりおもしろかったです。井上ひさし御大のすごさを感じた。円盤あるからぜひ見てほしい。
後者ならマタハリとデスミュ初演再演。レミゼやALW御大脚本演目ほどじゃないけど、ワイルドホーンミュージカルもあの楽曲を役として歌いこなせるキャストありきの魅力だと思う。

リトルプリンスも脚本作曲歌詞日本作なんだっけ?そうだったらそれも。土井裕子さんが最高だったという話しかできなくなってしまうんですが。からだぜんぶで笑うあの子どもの笑い声、ぜんぶで怒って悲しんでをする子どもが見ている世界そのままの色がほんとうにすごかった。
クロスロードもここに挙げたいんだけどあれ名乗りは音楽劇だから……。

閑話休題ホリプロが主催を持つ漫画原作ミュージカルは初演は歌えるキャストを集めても再演以降は若手を売る道具にされがちでちょっとかなしい。サブカル原作でも王家の紋章はちゃんとそういう風に扱ってもらえてて(千と千尋も)、東宝ちゃんのそういうサブカル由来だからで雑に扱わないでくれるところすきよ。……と思ってた矢先のSPY×FAMILYミュージカル化、しかも主演に5歳児弱を据えたがる(たぶん原作者の要求でしょ……レミゼ関わってる東宝がどれだけ無茶言ってるかわかってないはずないもの……)あれで信頼を失ってしまったが。梅芸に救いを求めたいが梅芸は梅芸でブリリア使いたがる致命的な欠点があるからな……。


8.好きなミュージカルのオープニング

オープニングが好きなミュージカル……SOML……? Wキャストや年度かわりはどれもみんな違ってみんないいなんですが、あの最初の約束を聞いて小さく口角を上げる初演田代トーマスと、同じとこで静かに苦い顔をする‘21平方トーマスのバージョンがとりわけ好きです。
そして「死んでしまったら知ることはできない」がここで提示されていることにたったいま気がついた私のおきもちを共有してもよいですか はじめの約束で交わした会話のなかからあの答えが紡がれたんです??? 私はあの空想世界(あらすじより)にいるアルヴィンはトーマスの記憶でできている、ゆえにアルヴィンの口にする言葉は過去にあったやり取りの再演かそれを言い換えたものだと読んでいる派です。トーマスがアルヴィンと過ごした日々の結晶があのトーマスだけの天使なんだよ。強火の幻覚です。


9.好きなミュージカルのエンディング

終わり方が好きなミュージカルってことですよねたぶん。ダントツでサンセット大通りです。
無声映画の大女優の」ファンのために己が何者かを見失って、新たな自分を歩むことさえファンのために拒絶した孤独な女がヨカナーンの首を手に入れるの最高でしょ。彼女だけのキャメラに映ったままさ。
誰も見ていないときにどんな自分でいればいいのかわからないノーマの「不安定」は、マックスでは解消できないのちょう好き。マックスは一人の女としてのノーマを見ていないし、彼は彼女のキャメラなわけだし。大女優はカメラの前でなら何にでもなれるから、マックスの目だけでは己を規定することができない。


10.既成曲の使い方が好きなミュージカル

く……クラシック音楽の教養がなさすぎて本歌取りに気がつけてないですね……。「Op.110」って言ってもいい?ミュージカルじゃないからだめかな?
マドモワゼルモーツァルトは使い方おもしろかったなと思います。元のクラシックを知らなくても演出意図がわかるように解説がついてたのも好きです。相互さんが宝塚の福利厚生って言ってたからそうなんだなーと思ってる。


11.好きなミュージカルのデュエット曲

……「負ければ地獄」(ラブ・ネバー・ダイ)…………。
あれをデュエットと呼んでしまうことにものすごく抵抗があるんだけど(ラウルは絶対に再会もデュエットもしたくなかっただろうし……)、でもそうね……一番好きまでありますね……。
石丸ファントム田代ラウルの藝大出身が殴り合うようなあの音圧をもう一度と思うんだけどコンサートには不向きだし石丸さんハリーを満喫してるしその2人が揃ったなら望まれるのは闇広だしでコンサート版LND再演でもないと永遠に叶わないんですよね。

「罪の遊戯」(ジキル&ハイド)は今年の正月に石丸ハイド濱めぐルーシーが生で聴けてCDにまでなってくれたので煩悩が浄化されしあわせになりました。好き……。

穏当なところだと「あなたが側にいれば」「私が躍る時」(エリザベート)とか「二人の男」(マタ・ハリ)とかかなあ……。破滅と不穏のかおりがする曲が好きなので穏当と言ってもこれなんですが……。


12.好きなミュージカルのリプライズ

リプライズのことあんまりよくわかってなかったんだけど、天才リーヴァイ先生のおかげでちょっとわかりつつあります。同じ構図の違うものを見せてひどいよどうしてそんなことするの天才じゃんと悲鳴を上げさせるための仕組みですね? 違うと思う。

一晩だけでいい扉を開けてあなたの側にいさせてと乞うフランツの嘆願と、もう嫌だ扉を開けてあなたの側に連れていってと請うシシィの嘆願を同じメロディ(ウィーン版では)同じフレーズでやるのひどいよ天才すぎる好きですと思いました。

1曲丸々のリプライズだと「笑う男」(リプライズ)がとても好きです。軽やかに道化て歌う自己紹介の1幕と絶望した彼が叩きつける2幕の、歌ってる人も歌詞もおんなじなのにまるで色と重さが違うのがね、あの迫力がすごいですね。
なのでCD盤にも両方入れてほしかったなあ……いやまあ予算があったんでしょうけど……。

同じく1曲丸々リプライズになってる曲だと「夜のボート」(エリザベート)も、好きなんだけどさあ……好きだしコンサートでかかるとやったぜとも思うんだけどさ……。
やったぜとも思うんだけどあれは「あなたが側にいれば」ありきというか、かつてシシィが教えた愛の限界をシシィ自身が伝え諭す構図が味というか、エリザのナンバーの中であれだけリプライズ前ありきの構成してる曲もなくない? 単品で食べさせるなら「あなたが側にいれば」のが文脈なしでも可愛いぶんより向いてない? 役者の技巧とエリザの重厚さと他の作品にはあまりない種類の情感が味わえるのは「夜のボート」のほうだよねわかるわかるよ、エリザメドレーやるなら締めの曲にシシィを置きたいのもわかるよわかるんだけど。

だからと言ってコンサートで「あなたが側にいれば」から直結「夜のボート」は温度差えぐいし役者さんにそんな極限しんどそうなことしてほしいわけでもないしその2曲並べるなら前を「あなたに続く道」にするのが2作品から曲を出せて衝撃も小さく安心した可愛さだよね*3、というのもめちゃくちゃわかるんだよな……。
エリザベートメドレーがだいたい「愛と死の舞踏曲」「私だけに」「闇が広がる」「夜のボート」なのも歌う人のバランス的にもエリザの旨味を摘むのにもベストチョイスなのすごくよくわかるのでそこにぶち込んでくれはちょっと言えないしね。おれは「あなたが側にいれば」の可愛い(でもこの時点でほんのり陰が差してる)2人をコンサートでも見たいだけなのにこの世はままならない。


13.ミュージカル曲の好きな歌詞

歌詞ねえ……うーん、いや、言葉で物語を追うし歌詞はすごい見るんですけど、物語の文脈として好きなのであって「このフレーズに勇気をもらう」系の好きはそんなにないんですよね……。
それこそ上で言った「夜のボート」の言い交わしなどになると思うんだけど、私はあの曲においては「あなたが側にいれば」から数十年変わらない深い溝が好きなわけで……。

前後の文脈なしでっていうと、「あたしは誰」(ジキル&ハイド)とか……?
「対決」(ジキル&ハイド)もかなあ、私の中であれは「魔王」(シューベルト)と同じ分類なんだけど。いやあのその構成が……今まで食べてきた物語音楽と近くてですね……声楽家さんも男女問わず歌った動画上げてる人多いみたいだし……。ミュージカルシャーロックホームズ(橋本シャーロック&一路ワトソン)の印象なんですが、いつか浦井さんに歌ってほしいんですよね。もちろん柿澤ジキハイの対決も楽しみです。


14.悪役が歌う好きなミュージカル曲

……デスミュって月とLとどっちが悪役? Lでよかったら「ゲームの始まり」(デスノート The Musical)
あとは……ラドゥーくんって悪役?悪役だったら「一万の命」(マタ・ハリ)
マックスの「The Greatest Star of All」(サンセット大通り)もめちゃくちゃ好きなんだけどマックスはたぶん悪役ではないでしょうし……。あっ!テナルディエ夫妻の宿屋ソング!

見てる作品に悪役があまりいないのか、私の悪役認定がズレてるのかどっちかなんだろうと思います。おそらくなんですけど、やってることは酷いことでも悪役にもなりきれなかったちっぽけな人間が好きなんですよね。私はマチルダへの警戒心が高まっているので(今んとこJtR並みの肩透かしを喰らう予感しかしてこない)、子ども向けと子ども騙しは違うと思うとだけ言っておこうかな。

※ なおワイルドホーンじゃない2.5次元ミュージカルの曲は除くとします。*4
世界的ヒットをばんばん打ってるワイルドホーン作曲の2.5次元ミュージカルがこんなにある日本ミュージカル事情がなんか変なんだが。息子氏が推し作品をパパに布教するから……ありがとうございます……。ワイルドホーン2.5次元ミュージカルの強み、ワイルドホーン先生は英語で作ってるから海外キャストの英語版が即出せることだと思ってるんだけどあんま見ないね。海外行ったのデスミュくらいだっけ?


15.メインキャラ以外が歌う好きなミュージカル曲

メインキャラって「ヒーローとヒロイン以外」で取るのがいい?メインキャストとして名前が上がってない人物と取るのがいい? 後者かな、なんかそんな気がしてきた。

「捕らえよ、スパイを」(マタ・ハリ)
めちゃくちゃ好きなんだけど私が好きなのはあの「誰もが不安と疑心を隠して笑顔で虚勢のパーティーしている」独特の不穏さなのでコンサートでは一生見られないんですよね……。マタハリが円盤になってくれて本当によかった。

「特ダネ!」(ジャックザリッパー)
……いや……うん。私あの曲をアンサンブルが主体で歌うのは好きなんですよ……だって愚かな群集心理の曲じゃんあれ。集団心理の暴走を1人の人間に押し込むから怪奇に見えるんだよ。
この曲が「ミルク」(エリザベート)と違うのは群集の動機がゴシップ(なければ今すぐ死ぬようなものではない)なところと、油を撒いてるつもりのモンロー自身もとっくに火に巻かれていて、当人にはその自覚のないところ。愚かで無責任な人類の暴力がコンテンツとして大好きだから愚かで無責任な人類しかいないあの曲が好きなんですよ。

あ、はいウィーン版エリザの1幕「カフェ・タイム」もめちゃくちゃ好きです。東宝版?ごめん今年はヒトの姿に完璧に化けたトート閣下からしかし溢れ出るカリスマと忠実な僕を認めてやる帝王の御心にちょっと心が持っていかれてて。


16.ミュージカル化してほしい映画、小説、漫画など

私は『朗読者』のことを男女自由(もちろん組み合わせによりアレンジは必要だろうが)の2人芝居1幕ミュージカルになるとずっと思っているんですが皆様いかが思われます?ジキハイやフランケンのように、想起を得て要素を組み込んだ別の話として書かなきゃなので脚本家と作曲者のセンスに全てがかかると思うが。
2人の繋がりときっかけがせっくすじゃねえかはそらそうなんですけど、私あの話を知ったきっかけがでっかめジャンルの二次創作なので*5本質理解を「彼女が傷つけられたくなかったたったひとつのちっぽけな誇り」に頼ってるんですよね……。

物語音楽で展開するソングサイクルミュージカル(それを最早ソングサイクルミュージカルと呼ぶのかは知らない。)でなら楽しそうな日本原作いっぱいあるんだけどね。
ぶたぶたさんとかが行けるクチだと思ってる。ぶたぶたさんは人形でやって、周りの人間がくるくる悩んだり救われたりする感じでさ。

進撃の巨人ミュージカルはぜひRevoちゃんに書いてほしかったんだけどRevo曲でやるとワイルドホーン2.5次元ミュージカル並みのキャストを揃えなきゃならず難しいのもまあまあわかってしまうから納得するしかないんですよね……。進撃の巨人にはアメリカ作家が書いたスピンオフ二次創作を紅玉いづき訳で逆輸入したスーパー恋愛小説ノベライズがあるって聞いたんだけどそれミュージカルになりません?Revoさんお口に合いませんか?宝塚に1作ご提供したって聞いたよ?

日本の作品で普通に2幕ものやるならそうだなあ……『桜風堂ものがたり』とかどうですかね。さっきの発言から舌の根も乾かないうちにこんなこと言うのもなんだけど、日本人に作曲させるとだいたい中途半端な(ミュージカルの作曲を学問として入れてないアーティストに“感性の赴くまま”作らせちゃったんだろうなみたいな)出来になるから、版権めんどくてもあと10年くらいはちゃんとミュージカル作れる人を外国から招いてやってほしい……。

ブレイブ・ストーリー』は向いてるとこっそり思ってるんだけど、あの世界観を今の日本商業演劇で作らせたらトンチンカンなアニメもどき映像で手抜……じゃなかった再現に挑戦したがるじゃん……?日本商業演劇の制作陣は映像の使い方のセンスが破滅級にないから……。

YouTubeに載せりゃさぞ集客に使えただろうPVをなぜかステージ上で流すだの*6、キャストの誰でもない出処不明脈絡なしの戦場幼児写真で作ったユニセフ募金サイトみたいなスライドショーだの*7、ライトの演出でやりゃいいところGBAのパズルゲーやソシャゲの背景みたいな映像流してみるだの*8。輪郭が明瞭な人や物を動かした時点で「観客の想像する光景」と「今ここで動き歌ってる役者の輝きや臨場感」のどちらをも上回ることができなければ(そしてそんなものはあり得ない)、世界観を壊す異物に成り下がるっていうのがどうしてわからないんだろうと毎度不思議に思っているんだけど。

「新しい技術だから不慣れなんだよ挑戦を見守ってあげてさあ」なんて言わせねえぞ、ここでこういう風に名前出すの本当に大変申し訳ありませんなんだけど大ベテランの新感線やイケコ氏演出は画像/映像投影の使い方あんなに巧みなんだから。コロナ禍以前の作品からあんなずっとうまかったのに後発のミュージカルが揃いも揃ってなんであんな「舞台の上に映像や実写の写真を出すことの意味」すら考えたことなさそうな演出なの?って言ってるんですよぅ。生身の1回こっきりの空気を崩さず彼らの中にぶち込んでも浮かず、かつこの映像でしかできない演出やってたのThe39Stepsくらいじゃん。


17.一番笑ったミュージカル

ここでSOMLの名前を出したら人の心はないのかって言われたりしない?だいじょうぶ?
いやその……誰も悪くない地獄みたいな状況が極まると楽しくなっちゃうんですよね……。たぶんなんらかの防衛機制が働いてアドレナリン出てるんだと思う……。
上演中に声を上げる客もウケ狙いだかなんだかでグダグダたるむ板の空気もそもそもが嫌いなので、コメディとわかってたら行かないというのもありますが。物語と技術の粋を観たいんだよね。


18.一番泣いたミュージカル

なんだろう……ジャージィ・ボーイズかな……。「春」が……BLACKチームの春を観るとほんとに情緒がだめで……。

「成功へのチケットだ」「よく歌えよ」「そのBフラットだ」

ひよこのヴァリに光を見て、彼を綺麗なままでいさせてやろうとする歳上組にめちゃくちゃ泣いてしまうんですよね……。

長らく「生きる」の「私だって何かしたい!」だったんですけど、あれですよねこれ同種の感慨ですよね。何者でもない自分への失望と先のなさへの焦燥、その最中で目の前に飛び出してきた光への憧れ。


19.音楽は好きなのにハマらなかったミュージカル

……ピピン? 「ミュージカル・ショー」もしくは「音楽劇」と名打って出されていたら大好きだったと思うんだけど。
ミュージカルと名打って売られたらこちらは音楽の力を期待して観に行くんだからよりにもよってそこに唾を吐き否定する演出でオチにするなというか、予想外の展開であることと期待を踏み躙ることは違うんだよというか。再演に行ったんですけど、主演キャストを強調しての謎に豪華な特典がついてたわけをさっくり理解しましたね。そこ以外どうでもよい人じゃなきゃこういう裏切りされてリピート来ないんだ。
いやほんと、「ミュージカル」と名打ってさえなければ絶対楽しかったのになあ、と。それだけが惜しい。
(「あんまり……」なミュージカルは他にもあるんだけど、そういうものだと「ねえそのホンその演出その考証、時間と頭使って考えました?」になっちゃうので……。)


20.ストーリーは好きなのにハマらなかったミュージカル

ピピン。理由は上記に同じ。音楽の力を否定する演目を「ミュージカル」と名打って音楽の力を期待して買わせるのは騙し討ちって言うんじゃないの? の1点です。

あとは……ファンタスティックスかな……。あの時間に対してあの曲数あの歌唱時間しかないのに「ミュージカル」を謳うことにそもそも無理があるとも思う。あとさ……こういうこと言うのごめんなんだけど、あの演出をあの音響調節でやるならもっと歌えるキャスト連れて来るかもっと歌稽古期間設けるかしないと駄目だよ……。どっちも無理筋だと思うからせめてロミジュリWキャストみたいに増幅とリバーブがんがんにかけて音圧だけは確保するとかさ……多少は音響の方針でカバーできたでしょ……。

歌で引き込んでなんぼのミュージカルなのに歌で興醒めさせるの勿体なかった。音楽劇ならまあまあミュージカルじゃないしなとできたけどミュージカルなのにこれは駄目だよ。このジャンル分けした理由はチケット単価上げたかっただけなの?まで思っちゃったよ。
(ピピン以外の「あんまり……」なミュージカルを挙げて話すとこうなっちゃうんですよ……。)

いやなんとなくね、ファンタスティックスのキャスト人選*9的に絶対再演やりたがるだろうなと思ったから「今度はせめて『音楽劇』で売れ」だけは言っておこうかなって、思って……。音楽劇なら「まあクリエ初演だからこれからに期待だよね」でギリ納得できなくはなかっ……ほんとか……?

*1:私が見た版のオペラ座クリスはラウルに「私を必要として」「手を繋いでいて」しか求めてなかったので……。ラウルに求めたのはそれだけで、彼女の音楽に彼女の命より重きを置かなかったラウルにしか求めることができなかった役割なんだよな。

*2:キャストがどうこうではなくエリザ墺皇帝フランツの概念にハマっている。田代フランツのシシィが絡むと自分を騙せなくなるいきものも佐藤フランツの皇帝をやることばかりうまくなっていくいきものも好きです。青年期も無力でかわいいけど壮年期のバランスの取り方が好きですね……。フランツくんその矛盾した心情にどう折り合いつけて無自覚でいるのかなって。

*3:エリザ「あなたが側にいれば」をセトリから抜いてMA「あなたに続く道」を置く、どちたも本役でとなると日本で花總まり-田代万里生ペアしかできないしぬほど贅沢な発想なのだがそこは置いておく。数年後には花總-甲斐ペアのどちらも本役かつ幻のペアリングが誕生するだろうし。フェルセンにまで指命してからルドルフに呼ぶのはイケコ氏そういうことでしょ……。

*4:2.5次元、とくに若手やアイドル大量起用のそれは歌や表現技能が高いキャストが安定して置かれるのが悪役しかないため、ちゃんと歌う必要がある曲は悪役側に割り振られる

*5:二次元オタク、未知の文学教養に触れるきっかけが二次創作になりがち。観劇沼の皆さんがシェイクスピアに触れるきっかけと同じ感じだと思います。

*6:蜘蛛女のキス、あの動画そのものは隙もなく手も混んでて単品なら鑑賞に耐える美しさだとは思うが、それが「モリーナを支え続けた美化に美化を重ねた記憶」「彼女の言葉からその作品を知らないヴァレンティン(≒観客)が空想した映画の情景」「目の前で動いている安蘭けい本人」のいずれにも(特に最後)劣らぬ魅力があると本気で思っていたのか? 本気で? それ以前に、「実写の動画」を「生身の人間がリアルタイムで作り」「それゆえに生じる余白は観客が想像で補うことで成り立っている」舞台の上に「それだけで完成した作品」なのが当たり前の動画という媒体を置いたらどうなるか、本当に考えたか?

*7:ミス・サイゴンのブイドイ。一番最初の写真だけで十分重さがあったのにどうしてわざわざ金かけて滑稽に安っぽくするのか。ない方がマシというかタム坊と宣伝の一枚画で十分迫力と偽善を表現できたでしょというか、深夜帯のチープなB級映画なら笑って許容できたかもしれない質の小道具を帝劇ミュージカルでなぜ出した?

*8:COLOR。バイク走らせるシーンの背景映像はすごい上手だったのに……。ハリボーテトリスみたいな三原色熊パズルゲーとえっそれ冗談抜きで聞くけど文アルのパクりじゃないよね?単なる二番煎じであってパクりではないよねそこは信じるよ?な謎のゲーム背景どうにかならんかったのか。ただでさえ色々中途半端なのをキャストの底力だけで進めてるんだからさ……。

*9:退団から間がない宝塚男役、2.5次元で人気の、そうじゃないミュージカルにシフトさせようとしてる男優、演技も歌唱も上手なんだけど「役としての歌唱」は伸び代たっぷりな若い女優、ビッグタイトルのミュージカルに出演した芸人。パントマイマーと元四季入れたのは制作側の良心だった、あの2人いなかったら本格的に場が崩壊していただろう。