つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

SoML弟くんチーム見てきました。

どーーーーーしても先に観たかったんですよこっちを。

ワタクシ実写にしろアニメにしろいわゆる原作至上主義と呼ばれる類の人間なんですが、それより強く「最初に見たものを親と思い込む」家鴨か?みたいな刷り込み体質でもある*1ので。初演もやってるペアを先に見たら絶対こちらを「同じかどうか」で見ると確信があったのでそれなりに頑張って取りに行った。チケ取りは観劇準備で一番しんどい作業だと思う。

毎回言うんですが個人の感想だし自分用のログです、あなたの見て感じたものがあなたの真実なのでそこはよろしくお願いします。私は普段から強火の幻覚を見にいくタイプだし今はとち狂っているので尚更だぞ。あと役名を敬称の代用として使っています何故ならそうしないと舌を噛むから。おれが。


太田アルヴィン

ねえ最初にいい? 彼のお衣装のコートあるじゃないですか。子供がクレヨンで描いたようなお友達や蝶やアメリカがあったりするあれ。大きなポケットやフェルトで作ったパックンみたいな頭が縫い付けられてたり、アルヴィンが持つ自由な感性の象徴みたいなあのコート。
本屋の引継ぎを手伝うためトーマスが駆け付けたとき、静かにコートを脱いだアルヴィンが茫としてるのひどい(好き)と思いました。子供でいられないから?そのコートを?脱ぐの?
膝の上に置いたコートを両手で握ってるアルヴィンが、机に視線を落としたまま「大人になったみたいだ」ってぽつりと呟くの、ねえ、そんなひどいこと(好き)ある!?!?!?(好きな場面です) 情動が揺れすぎると語彙力が蒸発して「ひどい」「だめ」「すき」しか出てこなくなるのは赦してほしい。

そのあたりでもうだいぶだめだったんですが(私の情緒が)、「こっちへ出てこないか」「いいの?」のやり取りでみるみる生気を取り戻したアルヴィンがぱっとコートを着直してはしゃぎまわるのを見てオタクは情緒がぐちゃぐちゃになった(好きな場面です)。独立記念日のあいだずーっと泣いてて隣の人ごめんね。
あのきゃっきゃしてるシーン見ながら隣がめそめそしてることで続く展開をお察しさせてたらどうしよう(初めて観る人にはぜひあの衝撃をもろに受けてほしい)と思っていたんですが、そのお隣からは「きみは素晴らしい、トム」ですすり泣く音が聞こえてたのでたぶんセーフ。

個人の印象なんですが太田アルヴィンは時々トーマスを困らせる悪がきを"している"感があって、あれが視野が狭くなってるトーマスの思考に風穴を空けているのかなーと思った。登場シーンや「帰省」のあの感じ。子どもっぽいことしてるときでもアルヴィンがまじで余裕なさそうなときは出てこないから全くの素ではないんじゃないかと思ったんだけど。
トーマスにとって重いことを軽くしてぶつけるのにああやってるだけなのかもね。しらんけど。初見だし。トーマスにお尻向けておどけた声で言う「じょうずに隠したねぇ、1週間前のことなのに」がさらっと言ったけどあの……!?となったからそんな気がしただけだと思う。おもしろがってさえいる風な声で軽く流れていくけど、優しかったり真剣だったりしたらトーマスを責めるみたいなガチシリアスにもなるよねあそこ。

怒るをしないのかへたなのか、アルヴィントーマスに怒りを表明するをあまりしないねって思った。牧島トーマスもそういう感じだしこのペアやさしい子だね。いい子というか。
神の偉大な図書館チャレンジや3度目のさよならのときでさえ、乾いた笑みを浮かべてうそだよね?みたいな感じでトーマスの顔を下から覗くの、こう、そういう子なんだなって……うーん語彙力がない。いるよね傷ついたときに咄嗟に笑顔が出てくる子。あのときもしトーマスがうそだよ、冗談だよって言ったら、あるいはごめんねって言われたら、そうだよねって引っ込めるのかなアルヴィン。あの柔らかな追及を。アルヴィンがそういう話をするときトーマスを責める色があまり見えなくて、ただどうして、って聞く重さだけなのがやさしいなこの子って思う。

アルヴィンが始終そんな感じだから、「きみは素晴らしい、トム」の、口ではそう言ってるけどアルヴィンめちゃくちゃ怒ってるじゃん……みたいな姿は追い込まれた(彼を追い込んでるのは自分の罪悪感や"こうあらなければ"なんだけど)トーマスの想像なんだろうなーと思っている。
彼の記憶の再現でできている10歳の少年がああいう子なのにアルヴィンが暗に自分を責めてる想像に追い詰められてるトーマス、彼に必要なのは休養と心中をさらけ出せるプライベートの知人だよ。まっすぐ見ればそんなおばけはいないのにね。それができないからおばけはこわいんだけどね。
トーマスの罪悪感が作り出した彼に怒っているアルヴィンにさえ、トーマスは「一番感謝しているのは」で自分を呼んでくれると期待してる姿を想像するんだよな(あそこは1876年みたいに、記憶の再現ではなくてその記憶を見ている彼の天使かもしれないけど。)心の奥底では気が付いてる。自分の感情にも物語のルーツにも。アルヴィンが物語と出会わせて、背中を押してくれてたこと。

アルヴィンの話してるとそのうちトーマスがアルヴィンをどんな人だと思っているのかなに流れちゃうんだけどあの物語はだってトーマスとトーマスの記憶で形作られたアルヴィンの話じゃん……? そんなことないと言われたらそれはそう。

 

牧島トーマス

トーマスから書こうと思ってたんだけど最初に言いたいことがあのコートだったので……。
牧島トーマスかわいいね?いえトーマスはみんなかわいいしアルヴィンもみんなかわいいんですけど。大人びた(大人ではない)感じがかわいいなって。
神秘的な本屋でアルヴィンの言葉に期待で顔を輝かせてるのかわいくない? ふとした瞬間に冷静になっちゃうけど、物語であそんでる隣のアルヴィンが構わず言葉で引っ張るとまたきらきらした顔になるの。大人びてるけどひねてない、アルヴィンが手を引けば空想あそびを楽しめる子どもって印象。「普通」に目が行きがちなトーマスは、物語の楽しみ方を知ってるアルヴィンと一緒にいれば感じるままを楽しんだり想像を膨らませたりできるんだなーと思った。自分でも信じてるのか張り切るアルヴィンに合わせてるのか、本屋の精霊に元気よくご挨拶するの可愛かったです。

トーマスは大人になっても後ろめたいことがないときはまっすぐ相手に目を向けるから、それも込み込みの印象ではあると思う。ひねてなくて根がやさしい、素直な人なんだろうなって。独立記念日ではしゃぎまわるアルヴィンが危ないことするたび自分の焦りそっちのけではらはらした顔して追ってるの見て、彼はやさしい人だなあって思った。仕事がばたついててプライベートもごちゃごちゃしててそれをアルヴィンに言えないまま、自分のことだけでもいっぱいいっぱいなのにアルヴィンがひどい顔してるの見ちゃったらほっとけなくて手を伸ばすんだなって。余裕がなくても期待されたら無下にできないやさしい人。サラとの婚約もそうやって抱え込んだもののひとつなんだろうね(幻覚) そうやって自分のことそっちのけで大事なものを抱え込んで、だから一番手を放しちゃいけないときに持ちきれなくなって落としちゃうんだろうね。強火の幻覚です。
これまでもこれからも妄想なんですけど、牧島トーマスが大事な誰かを決定的に傷つけてしまうのはトーマス自身がどうすればいいかわかんなくなってるときなのがやさしくてあわれな人だなと思う。自分が溺れているときに誰かを支えることはできないのに、それでも助けたくて手を伸ばしちゃうんだねこの人。自分の苦しさそっちのけで。

形になっただけのようなぽろぽろした笑顔で少し肩を縮めて相手の目を覗き込む、トーマスに傷ついたときのアルヴィンとサラとの関係に決定的な罅を入れたときのトーマスがおんなじ仕草してて、冬。相手を気遣うような、訊ねたその先を聞くのをおそれているような。アルヴィンのそれは傷ついたときに出るものなのかなって印象なんだけど、トーマスのあれはどういう感情の反応なんだろう。無邪気で無害な軽い一押しでアルヴィンを傷つけたときは言い方を間違えた、ひどいことをしたって慌てて掴みなおそうとしてた(ように見えた)から、自分が傷つけたことに気づいたときの反射ではないんだろうなと思ってるんだけど。トーマスの感情に由来するというか、相手のどんな姿を見たときの、なのかな。

牧島トーマスがアルヴィンの話してくれる「生きていく」「残り続ける」をうん、うんって小さく頷きながら聞いてて、彼はこういう前の向き方をしたんだなあと思った。期待してたでしょって身体を軽くぶつかられて、すっかり肩の力が抜けたトーマスが素直に受けてるの可愛かったですね。

「バタフライ」のトーマス、自由に空想をはためかせてるときのみずみずしい喜びが羽化して空へ飛び出した蝶のようですごいかわいいんだけど今ちょっと日本語に出力する情動が整ってないのでみんな自分で見てみてほしい ちっちゃこい少年が景色の広さに目をきらきらさせてるのすごいかわいいよ

*1:TLでママ髑髏なる単語をしばしば目にするので、最初に見た回を基準に作品見ちゃうオタクはそれなりにいるんじゃないかと思っている。