つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

エリザベート11/19S回 感想

一回くらい書きたいこと全部書くかと思ったら走り書き時点でだいぶ狂った文字数していて情緒狂ってんなと思いました。記憶との闘いなので箇所によりわりと胡乱です。

演出意図など全く気にしてない個人の感想だし私はだいぶSAN値を喪失しています。途中まで書いたところで「……東京で観る回全部終わるまでしまっとくべきだな」と判断したやつなので全てを察してください。好きなところを書いた個人の感想ですし一貫して賛辞の感情をもっています。信じて。

私は制作・演出側が見せたい像を汲むのではなく観たものを継ぎ合わせて見たい画を作るタイプのオタクなので、あなたの真実はあなたの見て感じたものを信じてください。例によって注釈機能は脱線に使われています。
1.7万あるそうなのでいちおう目次つけます。

1幕

序章の死人たちをガン見しすぎていてどの瞬間に誰を見れば一番ひぇ……死体だ……となれるのかがわかってきました。個人の好みですが段を降りてからの香寿ゾフィー単独追尾めちゃくちゃ楽しいです。フランツやルドルフを見てないかと言われれば見てるんですが。かわいーので。
一度伏したゾフィーが身を起こすとき、がらんどうの目で胸か心臓あたりについた糸を引っ張られるようにぐうっと身体が起きるのですげえな……と思うよ。仰向けに反ったとこから上体を起こす動きが物体じみているので見てほしい。

ルキーニがフランツの上に手を翳して“引っ張る”とき、田代フランツがかこんって小さく跳ねてから持ち上げられるのを見てひぃって言っちゃった(好きな場面です。)声に出しては言ってないが。うゎ……糸で動く繰り人形……みたいな気持ちになれます。タイミングぴったりなのもすごいけど(細かい調整入れてるのは見ている黒羽さんの側だと思うが、ルキーニとフランツのどっちもが音にかっちり合わせてないとああはならんでしょうし)あの発想どこから湧いてきて……?

山崎トートのご降臨、愛と死の輪舞曲もだけど、あの溜める感じになんかこう、わたしは自己愛のかおりを嗅ぎとるんだな……と発見があった。俺の歌を聞けというか、自分の声が力を持つことを確信しているというか……。トート閣下は黄泉の帝王なので彼の言霊は力を持つどころか支配の力そのものなんだろうけども。


香寿ゾフィー、それぞれの訴えを聞いてるのは明白なのに揺らがず動じず冷静であり続けるのが彼女の威厳で心の強さだし、あんなに冷静で厳しい「ただ一人の男」が髪飾りにかわいらしい淡桃色の宝石をつけているのめちゃくちゃキュートだと思う。私あれ大好きなんですよね、皇太后の趣味でも与える印象の操作でもめちゃくちゃ可愛いと思う。*1
大司教の訴えを聞いてももう一人の母親の哀願にほんの僅かに視線と気配が向くだけでおおよそ感情が波立つ素振りを見せないのが本当に好き。婚礼典前のデュエットや初夜明けての諍いと比べても統御が効いてて公務の毅然さかなって思うけどわからない、夢を見すぎているがゆえの欲目かもしれない……。

香寿ゾフィーは息子の取ろうとする選択をぎりぎりまで様子見して彼が口を開く直前に扇で制止するんだな……。未熟な皇帝を育てているみたいだなと思う。
弾圧される民のほうに同情して心を揺らすフランツを見て彼女の制止を見ると「早まる」が相手に同情することなのかなって気持ちになりますね。いえ文脈からするに自分の心に沿うことなのではないかと思いますが。「見極める」が即ち(心を殺して)国の利になる選択を取り続けることだろうと思うので。

謁見の間での黒羽ルキーニ、大司教の訴えももう一人の母親もちょいちょい後ろ(舞台の奥側)を見るんだよね。ゾフィーを、というよりあれはたぶんフランツを見ている。

謁見の間で伯爵が話している傍ら動き始める香寿ゾフィーがフランツとがっつり目を合わせていて、田代フランツも目を合わせたまま頷くので絆……絆ね……うわ……となってしまった(好きです。)香寿ゾフィー、フランツに求めることを我が身で体現しているのであの謁見での圧がすさまじくつよい。

目を合わせるといえばゾフィーが側に立ったときに視線を合わせて、ほんの少し笑みの形を作って頷く若き皇帝がめちゃくちゃ好きだって話をしていい?


愛希シシィ、しゃがみこんで帽子で顔を隠してゾフィーを見たことない生き物みたいな目で見てるし、一度ぴゃっとしてからもまたやっぱり帽子を壁にして覗いてるし、すんごい可愛いけどこっそりとは言え不作法ではあるしゾフィーを見てあの反応をする感性はもう絶対に宮廷のお人形には向いてないよ。皇太后のお人形にならずとも国家存続のための人形にはならねばならんのに。

香寿ゾフィーは結構鋭く「フランツ!」をするんだけど田代フランツはこのときはまだあんまり気を張っているようではなくて、こてんというかきょとんというかの反応で返すのでかわいーだなと思う あのときの鹿打ちの時間はゾフィーのルドヴィカとの会話同様、彼の数少ない「皇帝」をやらなくていいプライベートなんだろうかね。
この場面、ひとり甘い優しい声で「フランツ」と呼びかける人がいるんだよね、ゾフィー的にも(今はフランツは)自由時間の認識があるんだなと思う 涼風ゾフィーもぴしゃりとやってたので剣幸ゾフィーかな

お見合いの着席、田代フランツが明確に母の後に腰掛けるようになってる 10月くらいはほぼ同時だったと思ったんだけど

お見合いの香寿ゾフィー、ルドヴィカとお喋りしてるときだけは彼女と同じテンション表情で楽しそうにお話してるんだよね。彼女が皇太后の鎧を外して心から寛いでいるときの娘っこみたいな姿はこれなんだなあと思う ゾフィー様あと6時間ぐらいおしゃべりしてて
いい香り!してた田代フランツがお茶置いてけぼりにしてる母を待たずに紅茶に口をつけていて、よ、よかったフランツ陛下のあの溜めがゾフィーにタイミングを合わせるためだったらどうしようかと思ってた
そして後ろのリヒテンシュタインは陛下が口にしたのをちゃんと確かめてから少し顔を隠して自分に割り当てられた紅茶を飲んでいた。主が口にするまで自分は飲まないをしていたのはあなたでしたか。

ヘレネの髪飾りを拾ってぱっと背中に隠した愛希シシィ、難題に取り組むいたずらっ子みたいな目をしてネネを見てて可愛かった。やんちゃで溌溂としてて瑞々しい感性の少女。

ここで髪飾り拾い上げてからどうしよどうしよとフランツやゾフィーを上目遣いで窺いながら機を見てる花總シシィも小動物みがあって私はべりべり可愛いと思っています。芯はすごく強いのにちょっとおずおずしたというか気ぃ遣いの表情や仕草をするのが、おてんばだけどちゃんと作法を教えられている良家のお嬢様でいいよね かわいい
愛希シシィの歳相応の面はパパとの会話で見えるある種の割り切り(やだけどしょーがないよね、みたいな)、花總シシィの歳相応の面はマイナスの印象や感想を露骨に見せない、に滲むよなあと思っています。受け取り手の感想です。

香寿ゾフィーをよく見てるとフランツがネネの前で首をこてんとしてるときはまだ予定通りを疑ってなく、シシィに手を差し出したところで初めてえっ!?という顔をするのでやったーとなりました。やったーではないんだよな何もな、でも公務では息子の感情の機微まで完璧に読みきっていた皇太后様がプライベートではあんなにわかりやすい一目惚れを見逃すの、楽しくなりません?

ここ田代さんもたぶん佐藤さんもなんだけど、シシィにくるん!と一回転させられたフランツがびっくりした顔でぱちぱち瞬きして、横で笑ってるシシィを見て破顔するのめっちゃ可愛いと思います。お作法通りでないダンスの動きはじめてだったんだろうな(そして悪気が全くないシシィにされたそれがけして嫌なものではなかったんだろうな)みたいな かーわい

ルキーニがシシィとフランツを動かすところ、フランツが心臓のちょっと上からくくくって引っ張られてるように動いていて、そっか糸で引っ張られてるのか……みたいな気持ちになりました(好きです) そういう糸で繰るお人形のこと序章で見た気がするな、生きてるか死んでるかの違いはあるけど……。


「あなたが側にいれば」導入、口づけの後にはにかみ小さな笑い声を立てるシシィとつられて自分も笑っちゃうフランツのかわいい恋人たち、愛希シシィ田代フランツペアもやってました かわいいね

「幸せになりましょう」には笑顔で頷く田代フランツが「自由」を聞くと顔を曇らせるので、この結婚はだめだ!シシィの幸せは自由の中にしかない!の気持ちにね、なる。愛希シシィ、見せられた首輪が自分のためのものだと告げられてからずっと顔曇らせてるんだぞ……。
このシシィが再び笑顔になるのは自分を抱きしめるフランツが嬉しそうににこにこしてるのを見てからなのでいっぱい可愛いだよ。結婚前の愛希シシィ、たびたびフランツの顔を下から覗き込むようにするので可愛いね。

「義務の多さに夢さえ消える」をシシィが打ち消しても眉を寄せたまま、切なげな表情でさっきは笑顔で頷いたはずの幸せも「掴めない」と重ねて言い聞かすフランツくん、シシィのこと(そしてもしかしたらオーストリアの行く先のこと)をすごく心配して不安がってるようだなあと思う
ここでシシィが言った「私が掴める」で重荷を下ろしたように漸く笑顔が戻るので、すごくかわいいなと思う一方いまから夜のボートに思いを馳せてしまうんだわたしは このときのこの言葉を、彼にそれを信じさせたシシィが己の知った現実で打ちのめすときが来るんだよ

そいえばこないだ寄り添い合うシシィとフランツが微妙に違うとこを見ていて情緒にクるみたいな話をしたと思うんですが、「あなたが側にいれば」では同じとこ見てました。違う方見てるのは「いつか私の目で見てくれたなら」のとこでした。そうだね違うものが見えているね。


結婚式、「少しずつ教えよう災いの源」をルキーニの影になるところで山崎トートが囁く感じ?主従の繋がりが強固にというより一瞬感じた気配に黒羽ルキーニが振り向く感じだったような印象を受けた。


いつでも凛として過不足なく振る舞う香寿ゾフィーが「皇帝夫妻の御入場」で礼をするときは左側に少し捻るように頭を垂れていて、普段がほんとに隙なく完璧なのでたったこれだけで相当な不如意なのが伝わってくるのいいよね……。単にお客に顔が見えるようになのかもしれないですが、彼女が公の場で完璧な所作を崩すこと1幕ではまずないので……ときめいちゃう……。

ゾフィー様のマックスと踊ってるときの“無”みたいな顔おかわいすぎて笑っちゃった。無の顔をしながら礼法の型だけは守って華も盛り上げるつもりもミリもない踊りをするじゃん……。伯爵と踊ってるときは冷静ながらもいつものゾフィー様、謁見のお姿見てたら祝宴たってまあこういうもんだよな彼女はと納得するくらいなのに。

婚礼典のラスト、様子のおかしい彼女を心配したフランツが問うのに対して愛希シシィが『あのね』って口を動かした後目を泳がせて、続きを舌に乗せず一度は俯いちゃっていて。そっからの「みんなが見つめているわ」でかなり勇気を出してあれを訴えたんだなシシィ……と思いました。

これを聞いた田代フランツはシシィの言葉に応える前にきゅっと眉を寄せていて、どうも全く共感できてないわけじゃなさそうなんだけど、シシィに言葉をかけたときにはすっかり仕舞って綺麗な「皇帝陛下」の顔に戻っているから彼に縋りついて顔を伏せてるシシィはそれを見ていないんだなあ すれ違い


初めての諍いもそんな感じなんだよな、言い争う……というかゾフィーがシシィを打ちのめすのをちょっと離れたところから見ているときは困ったような辟易したような表情しているのに、シシィに言い聞かすときには本音の気持ちをすっかり仕舞い込んでしまう。そして「でも母の意見は」のところでは母に目を遣るんだよこのときのフランツはさ……フランツくんそういうところですよ……。

フランツがシシィに言い聞かす言葉を聞いて音もなく目と唇に笑みを乗せるゾフィー、あれは“勝った”笑みだったよ……。
この表情に一番近いなと思ったのが2幕サロンの「計画」を思いついたときのそれだったので、皇族の義務だけじゃない、彼女の私情がひとつまみ入った感情だったんじゃないかなと思ってるんだけどどうかな、分離不可分でもそれはそれで可愛いけどもしそうだったらゾフィー様に甘くていい匂いのするものいっぱいもらってほしくなっちゃうな。*2

ところで。古川トートは体操室で追い詰めるとき花總シシィ相手のほうががっつりお触りするらしいですが。田代フランツも初夜明けての愛希シシィのこと花總シシィよりちょっと年上みたいに扱ってない? 彼女を抱き返してた肩の手を宥めるように撫で下ろし、服の袖がなくなる前後あたりで指を離して両手を取り重ねる。*3
花總シシィのときは肩から順番に降りていって辿りついた手ってを握って揺らしてなかった? どっちも可愛いが(ふたりともが)まだあどけない一面を残しているように見えるのは花總シシィとのペアだなと思いました。これはおれのヘキと好みの話です、どっちも可愛いしどっちも好きだしフランツくんにはそういうところだぞと思います(そういうシーンなので)


「私だけに」、シシィは朝焼けに手を伸ばして歌い始めて姿を現した太陽の光のもとで決意を固めるんだ……。落日のオーストリアに背を向けてるじゃんよと思いましたし、自我が目覚めて決意を固めた彼女を祝福するように降り注ぐ朝日(真上から落ちる強い白色ライトの光)がおま……イケコ氏の演出力……となりましたよね。


2年目の諍いで、シシィは夫が姿を見せるとまっすぐ飛んでいくのにフランツは「お義母様が」を聞いて母に目を向けちゃうし、フランツに訴えるシシィの背後で香寿ゾフィーが何事か呟き顎で指し示すのでこわ(好き)
目を合わすだけで意思疎通を図れるのに正面からそんなことされたら逆らえないんだよなフランツくんにはな

言い聞かすフランツの腕のなかでやっぱり愛希シシィものすごい不信の顔してるし妻のこの表情まっすぐ見ながら“正しい”皇帝陛下の答えを綺麗な笑顔で話しきるのいっそ胆力すごいな……。すごいのは胆力ではなく叩き込まれた教育と絆という名の鎖かもしれない……。田代フランツここで出てくるときベッドに視線を向けるんですが、そのときやシシィVSゾフィー再来を見つけて表情変わるのを見るかんじ子供の取り上げを事前に聞かされてたわけでもなさそうなんだよな。(皇帝陛下には)打合せなしのアドリブであの説得出てくるのすごいよ、咄嗟に出てくるのが完全母側の言葉だからシシィに「敵だわ!」言われちゃうんだけども

3年目、愛希シシィは振り向く前にもう覚悟が決まってて強いな……と思いました。
フランツ、シシィから返事が戻ってきただけで張り詰めた緊張が少しほどけてストレス値が下がってるのかわいいんだけどシシィがここまで不信を強めたのはだいたいあなたの答えのせいだよ。義務を果たす代わりに小さな自由を母へ交渉するほうがシシィに拒絶され続けるより負荷が小さいのかな、彼には。


ハンガリー凱旋、「シシィ」の声音が心配するにとどまってて田代フランツやっぱり愛希シシィ相手のときのがちょっとだけおにいちゃんしないよなと思う 花總シシィのときは宥めるというか窘めるというか、小さい子が駄々こねるのにわかってるでしょうと言い聞かすような感じだったので…… ペアの相手が違うからか今回が連勤ソワレじゃないからかはわからんが……
皇族お手振り、愛希さんも花總さんも手首の先を動かして手を振るのかわいいだなと思いました。

ハンガリー国旗しまえの一件は皇帝の知らないところで行われてるやり取りとはいえ(伯爵が夫妻登場前に出した指示だし、史実では市長が勝手に忖度したことになってるし)あの圧をかけといてパレード中止したら一層の反感買いそうなものだし、シシィを守りたさに判断を誤ってるのはフランツのほうなんかなあそこ

ハンガリー凱旋、「エーヤン、ハンガリー!」では綺麗な皇族スマイルで応えてた愛希シシィが「エーヤン、エリザベート‼︎」が聞こえて涙を浮かべそうなほどに感極まっているのを見てしまい情緒が限界になりました。彼女は彼女を喜んでくれる居場所、歓迎してくれる民をここに見つけてしまった。


山崎トートの「2人で踊った〜」の声が哀愁を帯びているというか、結ばれてるパートナーの不貞をあまくなじるそれで笑っちまったよ 愛ね そうね 重いんだよ思い込みが
閣下?閣下まさかもしや初子のゾフィーを連れて行ったの罰や試練じゃなくて愛しいきみが楽しく幸せに暮らせるおうちづくりだったりしませんよね?

カフェタイムの黒羽ルキーニ店員、お客とフレンドリーにチットチャットしてて他の店員とも関係作れてそうでそれはそれは仕事できそう
1番で盛り上がった市民が椅子に片足乗っけてるのを注意してパッと『下ろせ』の払い落とすジェスチャーをしてた お客があっすまんみたいな感じで足を下ろしたらまた普通の常連客扱いするの接客業の鑑みたいな店員だな

少年ルドルフに剣を持たせてぐうっと拳を肩に押しつけさせる香寿ゾフィー、動きに急な勢いみたいなものがないからこそこわいみたいなところあるよね。冷静沈着

最後通牒の問答、シシィの「体罰よ!」を聞いて視線が扉のほうにふっと動くフランツに、聞く気も応じる(掛け合う)気もありはするんだなと思うなどしました 体罰は止める気があるのにしきたりのことだとわかると苦しそうな顔して即座に諦めるの、う、うーん根が深いんだよな……。

シシィに突きつけられたお手紙を大事なものみたいに両手でしっかり持って目を通し、閉ざされた扉から離れるときも両手で持って読み返してくフランツ、かわいくてハオだよ


「ミルク」で初めは純粋に平民を心配していたようだった革命家たちが、革命の火を煽るために“使える”と気づいてこの機を利用すべく動き始めるのが私はだーいすき 人類の愚かさで原罪だよ
ミルクに集まる群衆のなかでもひときわ迫力ある動きの市民おばさんを見てたらルドヴィカ役の彼女であることに気づくなどした

上山ルキーニは革命家たちの意図に気づいているの目配せをして観客にも見ろよこいつらををするけど、黒羽ルキーニは民衆側の怒りを爆発させて加熱するやつら、と一緒の側にいるみたいな動きをするね。革命家と共謀するでもなく、民衆たちと全く同じ目線にいるのでもなさそうで、でも民衆の怒りと同質の感情を募らせているような。そのぶんだけ、宮廷にミルクを持ち込んで、肩すくめて腕をひょいとするところでの落差が大きい

シシィの初めの返事(お言葉嬉しくうかがいました)で田代フランツがぱあっと表情を明るくするのがかわいいなと思うんですが*4、フランツはその前シシィが姿を見せたときからもう感動しているというか嬉しそうにするのでお母様このいきものからシシィ取り上げるの無理だとおもいますよみたいな顔をしてしまう このいきものからシシィ取り上げるの無理だと思いますね……ご無体ですよそれは……


2幕

キッチュで箱に打ちつけられたルドルフ人形の頭がポストカードの中に挟まって、ちょうどギロチンで首の落とされる人のようになっててうわぁと思いました


戴冠式、何が起きてるのか知ってるのに(毎回見てるから)ルキーニや閣下が気になるのにハンガリーの王冠を受ける皇帝夫妻が好きすぎて毎回毎回そっちを見てしまうんですよね。皇后が上手くなったシシィと、他の場面では見ない種類の「皇帝」の顔をしているフランツ
皇族スマイルで笑みの形をしっかり作る田代フランツが大司教だか教皇だかから自分とシシィが冠受けるときは(場所を入れ替わりながらシシィと見交わすときも)笑みを一切しまった真剣な顔してるのアウェイの場でやるガチの式典でガチの宗教儀式なんだな……と思う、し、偽冠を受ける甲斐ルドルフが喜びを顔に全開出してるときに思い出してウッてなる 一国の上に立つのがやるべきことでなくやりたいことになっちゃってる時点で皇帝の器でも国王の器でもないんだよ

この場面で田代さんは捌けるときマントをぐっと持ち上げてさばくから、どこから(かなり見えにくい席から)見ても双頭の鷲がしっかり見えるの好き 皇帝であっても滅多に身に着けないだろう*5ガチ宗教儀式に格が合う衣装なのにどう扱えば民にどう見えるかを完璧に心得ている皇帝陛下、ハオでしょ いやすみません理屈をこねましたがあの静かで威厳のある布地の動きと双頭の鷲が"美"なのでみんな見て

「私が躍る時」、山崎トートが差し出した踊りの誘いに手まで伸ばしておきながら被せもせずくんっと引っ込める愛希シシィ、目が好奇と残酷に煌めいているし、そうやって躱されたトート閣下はスッと鋭い音をたてて大きく息を吸い感情を露わにする


少年ルドルフ、巧くんの声が歌声も台詞も丸っこいというかくぐもったというかな質感なんだけど、少年ルドルフだけ増幅でかくて耳に刺さって聞こえるエリザ音響に限ってはこの子が一番聞きやすいんだよな
舞台モノの発声としてはあんま見ないけど節なし台詞が多い役じゃないし歌詞の文字は聞き取れるし、少年ルドルフの内に籠る男の子感があって好き 他のルドルフの(彼の歌声だけめっちゃ増幅されてるので)刺さるほどの音も神経質な感じの性情があって少年ルドルフぽいなと思いますが

少年ルドルフと閣下、「ほんと?」「必ず」の後で同時にうんっと頷くんですね……。巧くんルドルフ、トートと目を合わせて後にも先にもここでしか見せない満面の笑みするからオタクはないちゃった 好きだよ


精神病院、スターレンが割って入ったときにルキーニが憎悪の灯った目を剥いて口を歪めてすごい憎々しげに睨みつけるので、邪魔されたと思ってんだなと思いました。スターレンナイスプレイだったじゃん

ところで思い出した花總シシィの話をするんですが(言いそびれ続けたので)、ここで患者に取り囲まれたシシィが目がちょっと怯えと困惑の間をしながら口元が咄嗟にあわい笑みの形に歪むのが、あの日の少女を思わせて堪らなくなるんですよね。シシィの心は変わったのでなく強い皇后の下にあの日の少女の残滓がある
※信じている相手に思わなかった傷つけられ方をしたとき、敵意のなさを示すみたいに形だけ笑みになる、相手に優しくしあう世界で育てられた人間の反応なんですよあれは*6


ゾフィーサロン、やっぱり感情が表情にも動作にも大きく出てて、完璧な皇太后だった彼女の「老い」だよあれは……。
台から降りるときに一段踏み外したっぽくてがくんとなったんだけど咄嗟に杖をつき流石ゾフィー様と思ったし、後ろの公爵(1幕時点)が心配する様に手を伸ばしながらついていきアフターフォローも万全だった。
「計画」を思いついたとき、最後に「任せました」とはけていくときの含み笑いが初夜明けてのそれと一番近くて、あれはやっぱりゾフィーの勝ち誇り(皇太后の義務よりも少しだけ“私”に寄った感情)だったんだなと思うなどした。

大司教様は?」の高く澄んだ声とまんまるお目々、「私ですか?」にこっくんするのと「もちろん(行ってない)」に平静のお顔に戻りながらもうむうむってするの、かわ、かわいくない!?
敬虔な司教様がそんなとこ行くわけがないもんね、秩序の申し子ムーブで皇太后としてもそうなるよねな言動なのにどうしてこんなにかわいさが? かわいい


娼館でマデレーネにやめてよされて、あっ邪魔だった?ごめんごめんみたいな感じであわあわする黒羽ルキーニ、面白い……というか剽軽な男だな……。それでいてエスコートはしっかりするんだぜ。
黒羽ルキーニ「わぁ〜お(無声)」(鍵を開ける)
貞操帯の中身を見て大司教様?おまえいま十字を切り掛けませんでしたか? 右手を右肩から左へ水平に移す動作、……気のせいだよな?(たぶんほんとに私の考えすぎです)
黒羽ルキーニは最後のところ、歌の途中でお金に手を伸ばしてひょいと遠ざけられるんだね。どちらも笑みを含んだ目をしててハオだなと思いました。


体操室で今か今かとして倒れるぴったりのタイミングでやっはー!と爆笑してテンション爆上げになるルキーニ、100年繰り返してるんだもんな、と思った。

山崎さんが飛び乗る直前の一瞬、着地点を目だけで確かめててつい応援をしましたよね 無事に着地できてよかったです 

指示出す人々のいる位置によるんだろうなとは思ってるんですが、ここでフランツが(どちらも)両手をぴっと振って人を払う動き、初夜明けてのゾフィーもやるんですよね……。

わたし今期の田代フランツの「あなたのせいです」って言ってるときが今期に感じた印象の変化で一番好きなんだけど、具体的な言葉にするとご気分害させそうだから東京楽終わるまでは黙ってようと思ってる ハコ変わると雰囲気もまた変わるので

ゾフィーの手振りに従って双頭の鷲を見上げたフランツが視線を下ろしながらため息をつく、片手を胸に当てて会釈(軽く腰を折るほう)をする、ゾフィーは息子の顔を見つめ続けているのに頭を戻してからは決して目を合わせようとしない、正面から見交わし頷くだけで意思疎通が図れていた彼らがそれをするのは断絶なんだよなもう

ゾフィーの最期の独白、涙を浮かべた香寿ゾフィーの愛しげな微笑みが見返りを求めぬ母の愛そのもので、その温度と湧き出る深さに反則だよ……となっちゃうんだよなおれはな……。2幕で老いの象徴のごとく漏れていた感情はそれでも「皇太后」としてのもので、彼女の個人としての心は、我が子の平穏と幸いを願う泉のような母の愛は誰も、向けられていたフランツさえも見ないままだった。
こないだ配信で見たウィーン版は結構強い失望(恩知らずだったか裏切り者だったか)だったんだけど、日本版はどこまでもどこまでも「あなたの国」(皇族が維持するべきものであると同時に息子が死ぬまで乗り続けなくてはならない船だ)を守りたい母の愛だったの、ないちゃうでしょそんなの……イケコの訳詞が天才だよ……


逃げるシシィの38年、フランツの呼びかけの後に顔を隠して舞台の後ろを足早に通り過ぎるシシィ(と付き従うスターレン)がいるのひどすぎのひど(好きです)では?その後に遅れ追いかける他の侍女から愚痴みたいな現状の便りが宮廷に届く。
2回目、上手から下手に急ぐシシィのに一瞬違和感を覚えた(おれが認識してるシシィと体格が違う……)んだけどたぶん気のせいです、自分は首から肩で個体サイズを判別していることがわかりました。
このときについてくスターレンを黒羽ルキーニが愉しそうに手で呼び止めて後ろ遅れてるぞの身振りをする、スターレンが厳しい仕草で侍女らを急かす、象徴的だなと思いました。シシィについていけるのはスターレンだけ、それはきっと着いてくガッツがあるという侍従の資質の意味でも、シシィを置いていかず寄り添いたい従者の心の意味でもなんだろうね。
ちなみにルキーニはにやにやしながらなだれ込んできたへろへろ侍女組に合流していた。


田代フランツ、声を張り上げて息子を呼び止めておいてからひんやりした声で「この新聞を知っているか」とやるの、怒鳴りつけて凄むより冷静に揺らがずに詰めるほうがこわく見えるのを知っててかわいいと思う 皇帝陛下の冷たい眼差しに音だけがふわっと響くの静かな怒りがかなりこわいし、(役者さんがではなく)フランツが何を見てそれを覚えたかと言えばゾフィーの体現かシシィの拒絶のどちらかだよなとなるのがとてもハオ まあゾフィーだろうな、愛希シシィは拒絶するときはぴしゃりと言うからな 温度があって強いのがシシィの感情表現だよ

甲斐ルドルフ、父上のこと絶対「わかってない」「見ていない」(「見てくれれば『わかる』はず」)と思ってるでしょ……となる(個人の感想です。)歯痒そうというか必死というか、その奥に見くびりがある。見くびりっていうのかな、父を馬鹿にしているのとも違って、彼には見えていないと本気で思っているような。若さだねえ。
うんまあゾフィー没後の陛下しか知らないと、昔からある馴染むものに拘って視野が狭そうに見えるんだろうなフランツ皇帝な……。彼は彼で選んでいるんだけど、平和……ではないが……小康を保っている時代の記憶しかないルドルフには選択の意図が見えないだろうな、とも思う。
私は明言のない行間から”ない”じごくを探すオタクなので、民族紛争やら革命やらが起きると後処理で弾圧粛正処刑をやらされる、臣民を苦しめる裁定を正しい選択としてやらなきゃいけなくなるあの経験がよっぽど苦痛だったんだな、とフランツの民族平等の固持に対して勝手に見てしまうんだけど。

息子からシシィの話が飛び出てきたときフランツが動揺するのは自分のせいでシシィがここからいなくなったという、彼自身が気に病んでるところをほじくり返されたからで政治には全く関係ないんだけど、ルドルフは皇帝が反応したから「説得」できると勘違いしてぐいぐい行くんだなあ。そういうところも「政治がわかってない」よなあ、と思う。夫婦(+姑)間*7のあれそれがわからないのはしょうがないけども。

皇帝陛下、シシィのことを詰られるとあんなに動揺するのに話がハプスブルクにずれるとまた冷静を取り戻すのかわいいだよ。ため息つかんばかりの「あり得ない」の一蹴が好き。

「よく見てください!」の後で甲斐ルドルフが父に視線を合わせて見て!と腕を広げ、田代フランツがかつてのゾフィーが起き抜けのシシィが目に入ったときのようにごく小さく息を吐いて呆れを見せる、でも母上と違っていちおう聞き入れて目は向けてやるのやさしさだねと思いました。このやさしいは甘いと同義です。


闇広の「約束を〜」の声が蟄居後にシシィに縋るときの声(ママは僕の〜)とおんなじだ、と思った。何に同じと思ったのかはわからないけど。
顔は見てないけどたぶん、おんなじ顔をしていたと思う、あの縋るような媚びるような、社会をやるには向いていない、相手を信じすぎ相手に委ねすぎている笑顔を
自分で立つには誰かに自分を預けすぎているんだよ彼は


甲斐ルドルフ迷ってる これでいいのかってずっと迷ってる
差し出された握手の手を、彼らと手をくんでいいのだろうかって迷ってる彼の手を革命家たちが無理矢理取って握って、迷った目の先をトートが受け止めて頷くから逃げ場がなくなってしまう。

それでも偽冠を被らされる直前、頭を垂れたルドルフは確かに笑うんだ 希望だか喜びだかに満ちて
なのに高台からぽんっと飛び降りた後もまだ迷うんですよ、飛び出したり見おろしたりしてるときは少しずつ喜びが湧いてきていたようなのに、かつての愛希シシィみたいにそこに自分の居場所を見つけてしまったみたいな顔してたのに。
そうやって迷っている彼の肩に革命家(バチャーニ?)が手を置いて、ルドルフの顔を覗き込んで目を捉えたまま頷くからもう逃げられなくなる。そのまま乱戦がはじまって、あとは

乱戦中の山崎閣下、やっぱ一度は手を差し伸べるじゃーん! こっちだと手を伸べて、死の天使(たぶん)に掴まれたルドルフが手を伸ばした先でふっと“見えなくなる“ ルドルフに向けてた導く者の表情がふっと落ちて、気配もすっとなくなるんですよ ひどい(好きです)

2度の銃声が走った後、ルキーニと一緒に大笑する古川トートとは対照的に山崎トートは旗振り指揮者のルキーニに背を向けるんだなと思いました。黒羽ルキーニもじっとトートを見つめて次の“合図”を待っている。

山崎トート閣下、ルドルフが逮捕されても皇帝との断絶を見ても無じゃん 感情が動いてない 2人のこと、どうでもいいのかな……よさそうだなシシィが絡んでなければ……。

陛下の「処分は追って“沙汰する”」の声に失望が混じっている?いつも?
滲み出る悲しみとか無念とかもあるんだけど失望があった 気がした
表情はあんまり怒りという感じではないから*8怒りというよりは悲しみや無念が大きいんじゃないかと勝手に思っているんだけど。


舞台俳優甲斐翔真(敬称略)、錨を持たない迷いの繊細さと繋がりの糸が切れたときの絶望がめちゃくちゃ切ない煌めきをはなっている。
甲斐さんお願いだからもう一期ルドルフやってください。イケコ氏からの君をフランツにしたいオーラは2年前から俺たちにも見えているが頼むもう一期ルドルフをやってくほしい。普段舞台を見ないけどこの煌めき絶対好きだよ勢を残らず誘って連れていくから……。

甲斐ルドルフの「打ち明けるよ」、言い聞かすようだって感想を見かけたので意識して見ていたんですが、私はあの静かな熱に、縋るような宣言に懺悔の響きを聞いてしまう。己の味方であると信じられる絶対的な存在にありのままを晒して身を投げ出して、そうすれば救ってくれると信じて疑わないものの告解の合図。

……あのね、好きなんですよ。好きなんだけどここが本当に好きだし是非このままで次期エリザもルドルフを再演してくれフランツオファー来るだろうけどあなたのルドルフが見たいと思っているんだけど(前置き)、
かつてのシシィが成し遂げた“偉業”を身振り手振りも心の籠って大きく、感激と賛美と尊敬を心から溢れ出るまま語る(=讃える)ルドルフが映している、肥大しきった理想の偶像への敬愛が本当にきもちわる(賛辞です)(本当に)
いやあのほんとに大好きなんですこのシーンのルドルフのこと。でも言葉にするならきもちわるいだよ何がって、ルドルフは目の前にいるシシィが全く見えていなくて、それなのに彼だけは「ママを一番よくわかる」と心から信じているところ、そして彼が求めてる「理想の皇后(統治者)となる」ことがシシィが何より耐えられない本当の自分を殺されると同義であること。

演出や表現や演技を本当に素晴らしい大好きですと思っているんです信じて、でもその大好きですを言語化するとつまり、本当の自分でいられないから宮廷で戦って一度の裏切りを契機にウィーンを飛び出したシシィに血の繋がった実の息子が存在しない理想像をあなただと突きつけるのがあまりにあまりにグロテスクだという話で 大好きです ほんとう 信じて*9

そしてこのグロテスクな万能の理想像、劇中で出てくるものの中で何が一番近いってフランツの信じるシシィとの(かつてシシィが示してくれた)愛の力なんだよな……やっぱ君ら親子の鏡だって(個人の主観です)


トートの口づけを受けた甲斐ルドルフ、泣き疲れた子どもの気配を漂わせたまま銃の安全装置を外し、ふっと目を閉じて静かに引き金をひいていってしまうのでおれの情緒がだめ ひとりぼっちのルドルフ

ルドルフの納棺に背を向けた山崎閣下が唇を拭うとき眉を寄せてるんだけど、あれは切なさとか一筋のあわれとかととればいいのかまずいものを食ってしまった顔なのかわからないよ


ルドルフの葬儀、「聞こえてるの」でシシィに伸ばしかけてた手を一度引っ込めるフランツが好きという話をしても? きみはいつだって彼女のために自分のやりたいことをひっこめるね
フランツとスターレンが同じところで首を横に振っている(あなたのせいではない)のが好きですね……

シシィが倒れ込むのを抱きとめて支えたフランツの、彼に支えられてるところからシシィが右腕を水平に伸ばしていて(そうすると陛下の胸からお腹を押してる動きになる)、冬。拒絶じゃんそれは……。支えた陛下に対してというかその前の腕に触れたことへの拒絶ですかそれは?もしや?
陛下は……な、何もしてないよとは全く言えないけどでも政治だって処罰だって皇帝陛下がああしかできないことシシィはある意味いちばんご存じでしょう……だからこその拒絶だったらもう何も言えないが。

田代フランツ、拒絶されてはけるときはちょっとだけ背中丸まってる(腰を折っているのかもしれない、すこーしうつむき加減になっている)ことが多いんだけど、ここは(加齢で腰が丸まってはいるものの)胸を張って背を伸ばして「みんなが見ている」「皇帝」の動きではけてくんだな……と思いました
いやわかんないですが。違うときもあった気がするから日替わりかもしれない、田代さんペアの相手がしたことに呼応するように演技が変わる人だし……

墓の下から右手左手順番に出してよいしょっと出てくる山崎トート閣下、纏ってるのがケの気配で場にそぐうてなさすぎて笑っちゃう。喪に服す気がない(まあ閣下にしてみりゃようこそ俺の国だしな……。)あのシーンの山崎トート衣装はキラキラがないから、彼なりにヒトの子に合わせてやってはいるっぽいんだけど。
シシィから向けられる憎悪を聞きながらすいっと距離詰めて憐れんでます同情してます(あなたの気持ちに同調してます)みたいな顔と動作で彼女に寄り添う閣下、シシィの言ってることに対して噛み合ってなさたっぷりでそこが怖い。今のシシィに自分が必要だと確信してるじゃんこわいよ

噛み付くように「まだ私を〜」を言われた愛希シシィが最後のダンスのときみたいな顔をする 屈辱というか屈服させられているけど心はというか


「夜のボート」の愛希シシィ、「愛にも〜」を言った後に一度目を伏せた気がするんだけど、「奇跡を」からは目を逸らさないで、帽子の下の陛下の表情を覗き込むように首を少し傾けて語りかけるのでオタクはないてしまいました。あなたが側にいればのときの仕草をここで思い出すことになると思ってなかったじゃん……あんまりだよ好きだよ……。

シシィ自らに愛の限界を説かれる田代フランツ、目を大きく開いたまま大きく動いての反応はしないけどじわじわと姿勢が変わっているっぽくて、土に水が染み込むようにあの言葉が入っていくのかわいそうだなと思いました。
外套の襟に隠れていた首元が気がつくと見えているのでなんらか動いてはいるはずなんだけど、語り終えたシシィが彼から目を逸らすまで一歩も動かず杖さえ止めたまま彼女をずっと見ているので

いつの間にかシシィもフランツも頬に涙の後が残ってるから泣いてるんだな、と思う


シシィとわかれて俯いていた老皇帝、ぐ、と唇を噛んで顔をあげたらもう真顔してるんですね。田代フランツは「オーストリア皇帝」してるときはだいたいにこやかなので、……いやそうでもないか……ゾフィーのたくらみから後の陛下、宮廷でもプライベートでも全然笑わないもんな……。

「悪夢」での死の瞬間上演、フランツの悲鳴を背後に黒羽ルキーニがあまりにテンション高くぶち上げるのでつられて笑ってしまいました。嘆いてるのにごめんとは思ったんだけど、ルキーニとちょうど目が合ってしまって……つられちゃって……。

山崎閣下は冷たい目で、しかしフランツを捉えたまま指揮を振りつづけるんだなあ その男のことがお嫌いで?お嫌いっていうか打ち倒さなければいけないと思っていらして?

毎回言ってる気がするんですが、「与えられる 自由を」を聞いて悲鳴を上げ、次の言葉で「妻を救わなくては」となるフランツがすごく好きでですね。自分の全てを投げ打ってもシシィの望む自由は与えられなかったし、彼女は生きている限り再び自由を手に入れられないとちゃんとわかっている人の思考だよ。
母の意向に逆らってでもシシィ本人に拒まれても(拒絶であっても無視であっても)、唯一彼が手放さない自分の意思がシシィとの繋がりなのが私はすごく好きで……たぶんこの話だけで1000字くらい話せてしまうので話しませんが。

鑢に唇を寄せる山崎トート閣下の目つきとしな、やっぱりこのトートの色気って死へ呼び込む権能の発露か何かなんじゃ……。

犯行日を証言した後に黒羽ルキーニが言うイタリア語(ゥングランデ、ベニーチモ、みたいな……わかんない)、キッチュグラッツェ!×2の後に発するのと同じ言葉だよね?

2度も振り払われたのにまだ諦められないでルキーニの両肩を掴んで、涙を浮かべて彼を見上げふるふる首を振るフランツがとても可哀想でかわいいなって思う。わたしは他人に害をなして自分の願いを叶えることのできない無力のことを可愛いだと思っています。

シシィを刺して、刃物を抜き様シシィの顔見てハッと嘲笑するじゃんルキーニ……

立ち去る直前にルキーニがふと気配を感じて振り向いて、トートをまっすぐに見たあの瞬間に100年の狂想劇がはじまってしまったんだろうか。達成感も見えるが依然皮肉っぽい笑みも荒れている雰囲気もどっかに行っちゃって、狂喜だけで『偉大なる愛だ!』を叫ぶ。

閣下、最後の触り方がやっぱシシィに気遣いというか、一個人としての尊重というかがあるんだよな

いやあのその、いろいろ考えてたんだけどいっぱい背伸びして山崎トートにぎゅーする愛希シシィが可愛すぎて全部ふっとんじゃった。首にしがみつくにはトゥーシューズめいっぱい背伸びしなきゃなんだね かわいいね

あっルキーニの最期見てない!と気づいたんですがしょうがないね、死んだ彼女を横たえる山崎閣下が美しかったからね……。

*1:実質は役者さんかイケコ氏の好みだろうと認識してはいますが、板の上にあるものから“ない”ものを空想してなんぼでしょ舞台の物語はと思っています。

*2:役割と個の意志が癒着して境界がわからなくなっているいきもの(非現実)、ものすごく大好きなんだけど切ないほど憐れだとも思う

*3:お二人とも歳下で男性に素肌をがっつり触られることの少なかった愛希さんに気遣ってるのかもしれない、それはそれでよきことだなと思う。どっちでもよいとこなら役者の気持ちに寄り添って演技したり演出つけたりしてくれてる(と思わせてくれる)作品のほうが安心して見られるので

*4:佐藤フランツも喜色を見せるんだけど、田代フランツの喜びようがノーガード無防備でべたぼれじゃん……となる

*5:1幕終わりに着てるのも軍の儀礼服だし、史実でもフランツヨーゼフは軍服常用の方だったし

*6:マイナス感情を伝えるときに相手を不快にさせない気遣いを(無意識に)行うのが普通ないきもののことを私は「育ちの良い」と呼んでいます。

*7:何も考えずに「夫婦(+姑)間」って書いたけど「夫婦間(+姑)」にならないのがなんかもうそれが全て感があるよね。

*8:父子の対立や悪夢での閣下ご対面のあれを怒りの表出とするなら

*9:何故ここまで念押しするかと言うと「マタ・ハリ」できもちわるいと評判だった田代ラドゥー、東京楽挨拶での役者さんコメントがあっかなりびっくりしたんですねお兄さん……すみません……な感じだったためです。(でもあの熱量のご執心が生きた生身の女性に向いてるのおぞましい寄りのきもちわるいだよ(好きな場面です)、アルマンにあんな顔近づけてるのにマタハリしか映ってないじゃんその目(好きな場面です)ということがあり)