つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

エリザベート愛知12/11マチネ感想

Q.なんで今さら愛知のログを書いてるの?
A.出しそびれていたからですが?
多少はねばっていましたがキングアーサーがクリーンヒットしたため追加を諦めました

オーバーチュア
最後なのでぶっちゃけると基本的に人物ごと役者ごとに様々な動く死体の表現を見てきゃっきゃとしています。深い眠りから引き起こされたような人もいるし死体に電気ながして無理やり動かしてるみたいな人もいるし叩き起こされました!みたいな元気な死体もいるし。楽しいですよ。
それはそれとしてトート閣下の横顔が美しすぎて、冬。ご降臨も麗しいと思うけど、死者の群れを意に介さずすーっと歩くあの人外のたたずまいが好きでですね……。

田代フランツが母を呼ぶ少年ルドルフの両肩に支えるように触れるのが好きなんですよね。なんかこう、ルドルフのことちゃんとわが子として愛していたんだよな……みたいな感慨があって……。

パパみたいに
愛希シシィなんか……東京よりあどけなくなった? 表情の動きとか……。ハコの違いでそう見えるだけかも。
「パパー!」はイントネーション変わってたから花總シシィと合わせたのかもしれん。

マックスのシシィを見る表情の愛情たっぷりさに救われました。彼女のやんちゃに手は焼くけど可愛くてしょうがないんだなーって蕩けた笑顔がよきですよ……。ウィーン版コンサート*1のマックスは疎ましい寄りの無関心だったので……

「い、いいえ?」してから何か思いついたいたずらっ子の笑顔で走っていくのかわいいだわよ

愛と死の輪舞曲
古川トート、シシィ(抜け殻)を自分で引き寄せておきながら目を合わせ続けていられなくなって体ごとそっぽを向いてシシィを押しやったり、生者には見えないはずの自分に気がついてもらえたことにぱああっと顔を輝かせたり、初恋のおとこのこが如くぴゅあっぴゅあな反応でこんなに可愛らしかったのに、次の再会ではどうしてそんな……?
あれか、閣下視点だとBSSからのバームクーヘンなのか……。僕が先に好きだったのに、君は僕の特別なのになのか

ところで毎回思うんだけど、シシィの手に頬をすり寄せるのが彼女に「命を返す」所作なの、執着の湿度……!ってなりますね。山崎トートよりさっぱりめの空気なのに*2ちいさな仕草の湿度がな……高いんだよな……。

古川トート閣下、生者にふれないなのか黄泉から出ないなのか、結婚式前まではなんらかのルールを守って動いているようにも見えるんだよね。
例えば彼は、愛と死の輪舞曲の後にシシィを抱き上げない。魂を戻した少女を抱き上げて現世に戻すのはトートダンサーに任せる。
見守っていたシシィが目を覚ましたら静かに立ち去ろうとして。自分を見て話しかける彼女のほうへ行こうと手を伸ばしかけて、はっとしたように踏みとどまる。で、代わりに唇をなぞってキスを飛ばす。
結婚式ではお忍びのご来賓となって問答をし彼女とダンスを踊りまでしてるので、彼を縛るそのルールはあくまで閣下の厚意だか自制だかによって運用されてただけなんだろう。


謁見の間
こないだ最後通告を書くシシィを見ながら羽ペンは軸細いから長い時間文字書くの大変だよなーと思ってたら、田代フランツが軸ではなくその上の綿毛のところを握って……握るというかふわふわに指を添えるようにして持っていて、頭いいな……と思いました。

「忍び足の密告者たち」で片目を瞑ってしーっ、のジェスチャーをする黒羽ルキーニ、チャーミングでしたね

大司教の訴えにフランツがどう答えるかを見てる黒羽ルキーニ、段の上に両腕置いたところに顎乗っけて見上げてて、楽しそうだな……と思いました。踊れる人の滑らかさもあってネコチャンみがある
黒羽ルキーニはさ、もう一人の母親が訴えてるときも屈んだまま玉座を振り向いてるんですよね。見定めてる……

もう1人の母親が「お慈悲を、陛下!」って叫ぶのを聞いて涼風ゾフィーが慌てた顔してばっとフランツを見るので、陛下さすが息子をわかっていらっしゃる……と思いました。そうだね彼の琴線はそこだね、きみの息子は彼女が転んだときからもう落ち着かない様子だったもんな。
涼風ゾフィー、フランツに言葉をかけるときは基本的に彼のほうを向いて、顔を見ながらいっこいっこ助言を入れていくので一生懸命でかわいいなって。あそびが全くない。ゾフィーのほうにもって意味でもそうだし、受けるフランツのできる行動選択って意味でも。
いやあのこれにかわいいの出力は微妙にギアがずれてるんだけどでもかわいいじゃん、一人の人間の意思を完璧に押し殺させて理想の皇帝にコントロールしようとするがんじがらめ、それを彼女は完全な愛情と使命感でやっているのが好(ハオ)だよ。

フランツが「却下」の裁定を下す前にもう涙を流しているの、己を無力をよくしっていてかわいいなと思いました。

意見を求められたグリュンゲン伯爵、語りながらの視線を追うと皇帝陛下ではなくゾフィーを見ているので伯爵おまえ…… フランツはゾフィーが動いたのに意識持ってくけどちゃんと視線を戻して見てるだろ君をよ
その涼風ゾフィーはすいと無関心にドレスを摘んで静かに段を下りてるからこの相互不理解、味

ゾフィーの言葉よりも続く男どもの自分を見ていない「「ははあ!」」にショックを受ける佐藤フランツもかわいそうだけど、ゾフィーの言葉を聞いてもちょっと哀しそうにするだけですぐ切り替えられるほど慣れっこになってる田代フランツもかわいそうだよ その諦めの軽さ、学習性無力感ではありませんか?

皇帝陛下は冷静に見てしまうとやらかしおじさん*3なので、ヘイトが向かないようにするには現実の人間みを薄くするか同情と憐みを積みに積むかしないとといけないんだなーというのが最近の理解なんだけど、それにしたってかわいそうでしょ ええまあ例にもれずそこが好きなんですが

バートイシュル
紅茶をサーブされた涼風ゾフィーがありがとうって言ってるのを見ていい子だね〜〜〜えらいね〜〜〜上に立つ者の気遣い!!!!!!ってなってしまう。お喋りに夢中で冷まさないままお口つけたら熱くて右手で小さく口を押さえて、結局そこから飲まないで戻すの(でも文句は言わないの) かわ

バートイシュルのゾフィーちゃんは表情豊かにころころ変わり、ぷん!と憤慨しても筋の通ってないことは言わず下の者には丁寧で、この姿しか知らないならルドヴィカはそら怖くないよなとなる。息子のフランツはフランツで礼節はきっちり押さえるが鹿狩りもお茶会もマイペースにしてて*4、君ら……さては皇族の義務が外れるとぽやぽやだな……? ぴゅあぴゅあゾフィーちゃんとマイペースなフランツが公務となればあの支配と追従の構図をごく自然にやれてしまうように仕立て上がるオーストリア皇族教育、闇。仕立て上がるっていうか、あの確度で公人たれを強いられるから、見せる機会もない私人の部分がスレないまんまで残るんでは

この曲の最後、コミカルな音の終わってさーっと上手下手にはけていくとき普段のぶうってむくれではなくちょっと口を尖らせつつも抑えて貴族の気品の姿勢で歩いていくのでえらいね……となるんだな。
どうしようか、ゾフィーしか見てなかったことが丸わかりになってしまったが。いや見てたんだよ一応……ゾフィーに呼ばれて下りていくフランツがちょっと顔逸らして悪戯っぽい顔したのとか……。

あなたが側にいれば
シシィにキスする前のフランツが緊張した顔していて、あっかわいーとなるなどしました。嫌がられないかな、だいじょぶかなって少年少女の青い春じゃん。いえ史実の歳は知っていますが。アオハル判定でいいんじゃないかあれは。
御園座はノンマイクの音もよく響くのか音響側で拾うことにしたのか、はにかむシシィに自分も笑った後もふくふく笑ってる音が聞こえてよかったねみたいな気持ちになりますね。少年少女の青い春、かわいいんだけどな……ここではまだな……。

ネックレスが左右逆(なので裏表も逆)になっちゃっててなかなか金具が止められず、「とても重い」ぐらいまでかけて留めていたことで、ネックレスを着けられて笑顔でフランツを振り返るシシィが誕生しました。かわいいだったしこの後の曲の「王冠落とした」がこの夫婦どっちも運命じゃないんだよみたいな気持ちになり情緒がだめになった。運命が警告してるじゃないかよもうこれはよ。

おいかりデュエット、婚礼典
マックスに振り向いて一瞬、涼風ゾフィーが関わりたくない存在に対峙する子どもみたいな顔で身構えをするから待って待って待ってゾフィーちゃん強く厳しい皇太后は頑張ってキャラ切り替えてるの? となりました。おれの幻覚か?かもしれない。
ゾフィーちゃんの素がバートイシュルで見せてた目下にも丁寧な育ちの良いお嬢ちゃんみたいな性質だったらそらマックスの相手するのはしんどかろうが。あの真面目で貴種の義務と責任を純粋に信じている貴族のお嬢さんからすれば、ノブレスオブリージュを放棄して(ルビは最上を尽くさず、あたり)手を抜きやってるようなマックスはそら「だーい嫌い!」だろうよ……。

マックスが「マザコン皇帝」の"マザコン"の部分を客席向いて囁き声で言うから、マックスがゾフィーにあてつけてるだけじゃなくて市井や貴族界隈でもっぱらの評判みたいに響くのおもしろかった。マザコンじゃないよたぶん……我が薄いだけで……。

皇帝夫妻のご入場に姿勢を正して目線を落として臣下の礼をするゾフィー、謁見の間でやるようなぱりっとした威厳がないからかなりの不如意そうなんだけど、それでも部分部分を見れば礼法は完璧な動きをしてるようなのが彼女の生真面目だなと思う。いやわからんが……。どこかちいちゃなこどもみたいな気配がして好きだなあと思いました。

周囲が2巡目を踊り始めても相手を捕まえていない(のかあれはガン無視しぐさなのか)で扇を顔の横で立てて持っている涼風ゾフィーに背中を丸め腰を低くして顔をちょっと斜めにして彼女を覗き込んで雑に手を差し出すマックスのお誘いしぐさはどう見ても挑発だったし、ゾフィー様が無言で手を取るも双方めちゃくちゃ憮然としてるし、憮然としてるのに所々でダンスに合わない頭の傾げ方してメンチを切り合うので笑っちゃったじゃん やることしっかりやってはいてもお顔立ちと突沸する激しい感情表出(ガッチガチに制御されてるんだけど)でどことない幼さがふと香る涼風ゾフィー、しかしマックスの言動が負けず劣らずで大人げないので一周回ってつり合いが取れてるように見えてしまう罠
涼風ゾフィーの幼さ、固い品種の桃みたいな香りがしてかわいいなと思うしそこが彼女の純粋だなと思う。それこそがいびつであることと同義だけども。

婚姻典ラスト、言葉につっかえるシシィが一度後ろを振り向いて、しれっと顔を伏せる人々のなか彼女を見つめたままのパパが、でももう腕を広げて「おいで!」って言ってくれないのを目に焼き付けた後でフランツに向き直って吐露するじゃんよ
シシィだって夫よりパパのほうがいいんだ いいっていうか、安心で楽しい居場所の象徴なんだよなたぶんパパはな
まあフランツくんシシィが駆け寄ってきたときも抱き着いてしばらくも彼女の様子がおかしいことに気づいてなさそうだったしな……
婚礼の儀で誓いに「はい」を答えたシシィがその後で顔を曇らせたのには気づいて心配げな顔するのに……

最初の諍い
黒羽ルキーニが放つ小鳥ちゃん、本日はセットの下に潜りこんでしまい、「おぉう」言いながら引っ張り出されるなどしていました。引き出したらびびびびって羽ばたきだし、元気だねえとか何とか言われていた

涼風ゾフィー、「皇后はどこ」を言う前に少し身構えて何度か躊躇うようにしてるのとか、それで出したフランツを呼ぶときの猫撫で声に似た声と笑顔とか、シシィのことはヤだし不安要素だけどウチに入れたから身内として接するつもりでいるんだなって感じがして、ゾフィーちゃんえらいねってなりますね。

出すものと見せてる相手は制御下にありながらも感情をころころ出してみせる涼風ゾフィーがさ、ベッドの上掛けを剥いで扇でとん、と示してからの2番が笑みや勿体ぶりもなく厳しい真剣な顔で詰めていくのもシシィへの妬みだ嫌がらせだじゃなくて『為すべきこと』をやってるだけなんだなという感があって、えらいね〜〜〜!!!!とその割り切りできる*5太后陛下がガチで恐いのと、彼女が「親切で言うのよ」も「争いたくない」も含めてぜんぶ本心から言っててやってるという歪(好きなところです)とで情緒が大変なことになってしまいました。
「私を妬んでる」に険の抜けた表情で目をぱちぱちさせて「馬鹿なこと言わないで」って答えるの、ほんとに1ミリも考えてなかったんだな……となるじゃん……。躾もとい教育に鞭を使っていないぶん、*6年頃の女の子相手だから優しくしてたまであるのでは……?

顔を出したフランツのもとに走っていったシシィを振り返ることもなく、何の感情も表に出さずにただ会話を聞いているゾフィー様、彼女は威圧や癇癪めいた脅しをしてないときの素のお顔立ちはすっごい可愛いんだなと場違いなことを思ってしまいました。いやあの、だってそれ以外のこと考えるのすっごいこわいじゃん……。あそこで感情出さずに聞いてるゾフィーがこわいというより、彼女が当たり前にそれをできるようにしてしまったオーストリア宮廷のしきたりが怖い。「(母の意見は)君のためになるだろう」、と聞いたときにゆっくり口元だけで笑みをつくるけどその笑みあれですよね……勝利っていうか、勝利は勝利なのかもしれないけどそれ『嫁への恋心より私との絆のほうが強い』てきなやつじゃなくて妻可愛さで選択を過たず『正解』を選んだ皇帝の、その価値観を育て上げたことへの勝利感では……? みたいな。いやなんかないんだよなゾフィーちゃん、感情に悪意のどす黒い粘度がさ……悪意じゃないんだろうな……みたいな感がある。香寿ゾフィーはめちゃくちゃ私情入ってる顔しますからね、上掛け剥いで初夜を暴いてからとかね。

ゾフィーにせよフランツにせよ、国を維持するための皇族という機構としての在り方が他のすべてに優先されるの、人物としてめちゃくちゃ大好きなんだけどそんな振舞いをごく自然にできてしまう人間を作り上げてしまう教育は闇だよ。人を鞭で打つな。

2年目の諍い
「お断りよ」からシシィのほうを見もしないで初孫をあやしていた涼風ゾフィーが、フランツが出てきてシシィの訴えを聞いてる段になったらなにか言ってやってみたいな顔でフランツ見てるのでまあフランツは勝てないよ。

フランツを押し返す前に愛希シシィがフランツを睨みつけたままふるふるっと首を振っていて我が強くてサイコーだった。田代フランツ、シシィがなんで訴えるのかまでは理解追いついてそうなのになんで分かり合えないのかまではわかってなさそうで、なんかこう、そのあたり涼風ゾフィーと親子だなって……国を維持するために自分の願い全てを押し潰すのを仕方ないと思える人間はそんなにいないとおもうなおれは

ハンガリー凱旋

「エーヤン、エリザベート!」で感極まったような喜びを浮かべた愛希シシィがフランツの顔をぱっと見て、わあって顔してたフランツが笑顔で応えてふたりお手ふりを始めるのかわいさがあるよ ここでのシシィはまだフランツとの鎖を切る気ではなくいてくれる

フランツ陛下、登場からちょっと張り詰めた厳しめの真顔をしているのであっそうだったんだとなるなどした。皇帝陛下をお見せするときはだいたいにこやかな顔してる印象だったけど、警戒を解いていいのかわからない相手には厳しく構えてるの状況不安定なんだなと思った。それとも宮廷内が例外なのか


カフェタイム


少年ルドルフ登場

 

最後通告
フランツくん扉に縋りながら訴えの合間にぐすぐす言ってて、ここで泣きが入るのかわいいな……と思いました。かわいそうはかわいいだと思っています(創作物に限る。)
ゾフィーとは方針が対立したら自分の気持ちを引っ込めてなかったことにするフランツが、シシィの前では施錠って無言の拒絶をされても半分泣きながら開けて開けてしてるのまあ随分心を開いて、みたいな感想を持っちゃった。

最後通告の裏が所々油脂性っぽい黄色のなにかで跡ついてたんだけど、台を出すときに蝋燭のロウがこぼれたりしたんだろうか

扉が閉められ拒絶された後、シシィから渡された最後通告を両手できゅっと持って読み返しながら去っていく田代フランツが好きでですねという話をしても? フランツくん、シシィから受け取ってすぐさっと目を通してるんだよ通告、たぶんざっとだけど下まで読んでいる。

椅子の後ろから出てくる古川トート閣下、シシィに同情してるしてるという感で、そ、そんな切ない表情と声音で慰めをする……とおののいてしまった。シシィの肩に触れてそっと撫でる手つきがいたわりに満ちていて、つらいよね、かなしいね、っていたわりと同情をこれでもかと与えながら死の口づけをしようとするからな
古川閣下、孤独なニンゲンの苦しさにそのとき欲しい言葉と表情を差し出して寄り添うのが抜群にうまい

彼女の意思の言葉に従いフランツが「ひとりにして」、トートが「出てって」誰もいなくなった書斎で、机の縁を両手で握って俯きしゃがみ込んだまま微動だにしない愛希シシィ、声や音が聞こえるわけでもなく肩が震えているとかでもないけど、こう、泣いてるのかな……という雰囲気があって、いいですよね……じごくがそこにある……(誰も悪くないはのなのにできてしまった地獄が好き)

フランツはシシィの前でだけ内心を表に出せるけど宮廷のシシィはひとりのときにだけ落ち着いて内心に向き合える だめだよこのカップルは 解散

ミルク
ひときわ迫力のある市民マダムがルドヴィカの人でその隣で切実にしてるのがマックスの人で、この2人が1番ミルク売りルキーニに迫ってるの場面の迫力がすごい

反宮廷、反皇后がわーっと盛り上がってどんどん過熱してくところに黒羽ルキーニが「今」を低く重い声でたたき込むのでぞっとしたよね

戴冠式
教皇さまも原さんなんだ……!?豪華じゃん戴冠式
愛希シシィはハンガリーの民に親愛深げに微笑みかけるけど田代フランツはもうここではほとんど笑ってみせないんだ……? 東京では皇族スマイルをやってた印象だったけど、今回はほとんど笑ってなく、シシィと見交わすちょっとのときだけ目元が柔らかく弧を描く
フ……フランツくんハンガリーの民お嫌い……? 嫌いっていうかシシィがハンガリーびいきなのあんまりお気に召してない……? シシィを狙った銃弾のことまだ怒ってる……?

ルドルフとの対立のときには息子でも民でもシシィのこと以外は払い落とせるような揺らがなさだったから変化としてはまあそうだよねではあるんだけど、田代さんのフランツ己の象徴としての意味合いを芯までわかってそうなお綺麗な笑顔する印象だったのでびっくりした

ママ、どこなの
「友達さ」って言いながら少年ルドルフに向けたにこーって笑顔がちょっとあどけなささえおぼえる可愛らしさで、閣下、閣下あのさあ……閣下……。この閣下、再会で拳銃を差し出すときもおんなじ優しい可愛い笑顔をするんだぜ、親愛100%みたいな無防備な笑顔をさ……。
少年ルドルフの意識が己から逸れた途端、水が乾くように優しい眼差しが引っ込んで無関心の顔をした古川トート閣下がさ。遠くから銃を差し出しかけて「連れて行って」を聞いて何かに気がついたように震え、じわじわ興奮と喜色が強くなっていくのを見ながら“使い方”をここで思いついたんだなと、ルドルフくんのこれからを思って泣いちゃったよね。

マダム・ヴォルフのコレクション
グリュンゲン伯爵(1幕時点)が1曲かけて見事な性欲堕ちを見せるので皆んな目が空いてたら見てね。
来店時、ルキーニに親しげに歓迎された伯爵が、ルキーニが他所を向くや否や触られた腕や肩ををパッパと指で払っていて、伯爵おまえなあ(セカンド)をしました(好きです。)自分から足を運んでおいてそれかね。
お上品ぶってる(がっついてるムーブをしない)公爵は女の子たちがようこそーって来てくれても指名するより先に彼女らが前に出た他のサロンメンバーに付いてしまい、全然オタノシミできてないのが因果応報で笑っちゃった。マデレーネ登場まで女の子と遊べてないの公爵だけなんだよな。周りはオタノシミはじめてるのをどうしよってくるくる見てたらルキーニがじゃじゃーん!と彼女をお出しするので盛り上がりに参加できる。マデレーネが捌けるときには大司教サマさえスケスケガウンを恭しく持ってるのに伯爵はメンバーに先を越されて参加できなくて、中途半端に伸ばした手の行き所をなくしたところでルキーニが差し出すんですよ鍵を。 

体操室
崩れ落ちるシシィに黒羽ルキーニがめっちゃ嬉しそうに笑い転げているんですがそれは 手を叩いて目頭を抑えて、若干の狂気すら感じるほどタガの外れた喜びをするじゃん……?

ズェーブルガーとして言葉を重ねながらシシィが「出て行くわ」と言ったらチッ!って感じで悔しそうに顔を背けて片目を眇めた(背後にいるのでシシィからは見えない)のを見てしまい、トート閣下、閣下はそこで自殺を狙っていたんですか閣下

古川トート閣下、歩いてきた勢いのまま身体傾けもせず長椅子をどんと片足で踏みつけ、そのままバランス崩しもせずシシィを詰めていて、体幹の強さとバランス感覚の良さと何より脚の長さが明らかになってしまった 古川さんが脚長いことは知っていたが、ひと息にそこまで脚上げるのにジャンプも助走すら要らなかったんです……?実は……?

母子の訣別、涼風ゾフィー最後に言いかけてるの『フランツィ』だよな……言葉が途切れるときの口の形がイの形だもんな……。皇帝陛下になる前に使っていた愛し子のための愛称。

父子の対立

田代フランツがルドルフを詰めるときの語調が静かなまま強く圧すで固定された感じ(前はラドゥー大佐でしてたみたいにふわっと語尾が上がっていた)
甲斐ルドルフはなんか……若いわね……。利発でセンスがいいけど人に言うこと聞かすとかの説得するとかの経験が圧倒的に足らないし、時間的な遠くは見えても規模的な意味での森を見るのも苦手

闇が広がる
甲斐ルドルフ、民衆に拒絶されて座り込んだとき呼吸の音がどんどん速く短くなってって過呼吸かパニックか起こしてるようだったのが古川トートに呼びかけられて静かに治まるので、彼にとってこの友達は大きな存在なんだなあと思うなどした、し、(役者の、ではなくルドルフの)精神状態がな……よくなさそうなんだよな……。拒絶にこんな強い反応をするような人に肉親があれをやったらそれはまあ死因になりかねんよという説得力

甲斐ルドルフの感情ジェットコースターの速度と高低差を見ていると、ルドルフを知る人間には父と母に見捨てられた彼がその孤独ゆえに自殺したように見えるんだろうな……と思う。だってどう見ても精神状態がよくないもんな……ルドルフくんの……。まあパパかママがそばに置いてくれていたら彼は革命や自殺を選ぶことはなかったろうから間違いでもないんだけども。

乱戦に入るとき、トート閣下が嬉しそうに愉しそうにわあっと駆けて音楽が切り替わるの『狩の時間だ!』みたいな感じだった
トート閣下がルドルフを誘導するように手を伸ばし、目を合わせて真摯な表情をしていたのが、姿勢の流れはそのままで獲物を見る愉悦の笑みに変じたの見た?

葬儀
ルドルフが棺の中に収まった後、ひとり立つトート閣下がすうっと嬉しそうに笑んだのを見て胸がいっぱいになってしまいました。シシィが自分を望んでくれると確信していらっしゃる……。ふ、と笑みをしまって墓の後ろに入っていった

あなたのせいではないと首を横に振るスターレンと衝撃に立ち尽くしたままのフランツの構図に、スターレンのほうがシシィのことをよくわかっていそうだなと思ってしまい、冬。自分も我が子を喪った親である彼にあんまり多くを求めるのも酷な話ですが。
でもフランツはシシィのこと、行動はともかく情動や思想はあまりわかってなさそうだなと思う。だってフランツくん誰かにそれをしてもらったことないでしょ、あなたの安らぎを想うってことをさ。

死を求めるけど自分を愛してはくれてないシシィを拒絶して、静かに俯いて傷ついた少年みたいな顔してじいっとしている古川トート閣下、かわいいよね。情動の因果がヒトじゃなくてかわいい(あと言葉を発すことなく傷ついてる(役の)古川雄大氏はとても輝いていると思う)

悪夢
オペラ「悪夢」で指揮されるのはフランツなんですね……?
ということに今の今さら気が付きました。死者の末期を再現してるのかと思ってた(それもしてるっぽいけど。)閣下の手の動きに合わせてフランツが不随意に引っ張られてるじゃん。

ルキーニがシシィを刺すその瞬間を、死者たちが残らず見ているなかで田代フランツだけが見ていられなくて頭を抱えてしまうの無力でかわいいなと思っているんですけど。その後でゾフィーやルドヴィカたちが顔を両手で覆って倒れたシシィから目を逸らす中、甲斐ルドルフだけが身を乗り出して死にゆく母から目を逸らさないんですよね。彼は何を見届けようとしてるんだろうね……。
フランツが耐えられないのは愛する人が致命的に損なわれるのを見ているしかできない無力(刺されて倒れた後はむしろずっと彼女を見て手を伸ばそうとするよね)、ゾフィーが見ていられないのはハプスブルク沈没の象徴のような死、ルドヴィカが目を逸らすのはわが子の死なのでしょう。知らんけど。それじゃあ、ルドルフは死に行くシシィに何を思って、あるいは重ねて見ているんだろうな、と思って。

愛のテーマ
つま先立ちになるまでいっぱい背伸びしてトートに抱きつく愛希シシィが可愛かったし、そのシシィの腰に優しく紳士的に触れて彼女が踵をつけるまで支える古川トートも愛らしくてかわいい好き合った2人の

力の抜けたシシィの亡骸を前にただただ悲しそうな古川トート閣下を見て、閣下はいまはじめて『愛する人を喪った悲しみ』を知ったんだな……と思いました。
ルキーニは興奮したまま首吊っていったけど、ルキーニは閣下にそれを知ってほしかったの? あの時間軸のルキーニが史実の1回目なのか100年の狂想劇の監督なのかはわからんけども

*1:WOWOWオンデマンドで見られる。よかったら見てね

*2:というか山崎トートがねっちょりしてるんだよな……なんか……接触の性的ニュアンスが高いというか……

*3:エリザ初見の方の事前知識「やらかしおじさん」が大変ツボってしまいまして。

*4:この組合せだとお口あちちしてるゾフィーの横で美味しく紅茶を味わってるフランツの図になり、双方が累乗で可愛い

*5:この私人としての感情が公人としての義務に全く影響しない、切り分けでさせないところに涼風ゾフィーと田代フランツの親子感を覚えるのだなあ。

*6:涼風ゾフィー、自分の息子相手には反抗したら杖を打ち付ける音で威圧するしフランツもそれだけでびくっとするほど鞭での躾を叩き込まれている