つまるところ。

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マタハリ6/15感想

ラドゥーの話をすると思うって言ってたよね、だいたいラドゥーの話をします。

柚希マタ・加藤ラドゥー・三浦アルマンの組合せ、敬称略です。
個人団体その他諸々に無関係の一個人が見た幻覚であることをご了解ください。

組合せ固定じゃないから難しんだろなとは思うんだけどCD出ませんか?ワイルドホーン楽曲邦訳歌唱を残してほしい。


○1幕感想
楽屋に入ってきた加藤ラドゥー、駆け引きと余裕のある笑みを含んだ色男の眼差しで会話してたのがマタが名刺に目を通した途端に甘さを消した厳格な軍人の顔になるからすごいよ
険しい顔したマタが要求を突っぱねて蠱惑的な踊り子の振る舞い(そういう話は終わり、の牽制だと思ったんだけどどうなのだろね)をしたら彼もまた権力ある色男の甘い眼差しをするところも含めて、この男敵に回したくねえなって凄みがあった。

三浦アルマンのヤンキー座り、ガラの悪さよりも所在のなさに見えた、場にそぐわなさというかどこか儚い雰囲気というか。ほの青い白目が控えめに覗くようにマタを窺ってるからかな。この組合せラドゥーもアルマンも白目のあおさが健康そうないきもので好き。

加藤ラドゥーさ、ライトの関係か虹彩の色かわからないんだけど、「一万の命」で大きく見開いた黒目が暗い赤に輝いて見えるんですよ。苦悶を浮かべたまなこが血に濡れた戦場を見ているようで、見ているこちらの息が止まるようでしたね……。ライトの加減もあるのか若さなのか、目が少し潤んでいるように光がよくよく入るんだけど、彼は苦しんだり無念さを噛み締めたりしながらも涙をこぼさないんだよなと思った。兵士の命を預かる彼はたぶん、それを己に許さなそうだなとも。自分の力不足で奪われた命に後悔はしてもいいけど同情はさ。
その後の場面、マタハリへの激情が噴き上がるところで見開いた目がやっぱり血の赤を帯びていてわあ……と思った。
2回目の逢瀬で立ち去るとき、キスを拒まれた口元にラドゥーが自分の手を運んでいて、夏。1回目はまっすぐぴしっと姿勢を崩さず立ち去ってたじゃんさあ……

マタハリを想うラドゥーのソロ、イントロ直前あたりで加藤ラドゥーがぎ、ぎぎって軋むような動きで揺れて、入りの歌詞が「なぜ軋むのだ」(胸が、かも)だったの細かい そしてラドゥーさん己の恋情を自覚しきれてないから制御できなくて、間欠泉のように名前のついてない衝動が噴き上がるの好き。
 
ラドゥーくん、最初に楽屋で言葉を探してやっと伝えた「君は……魅惑的だ」が全くの本心で一目惚れだったんじゃん。直後にアルマン差し向けて美人局するのなんなのマゾなの??? いやたぶん順序が逆なんだな、スカウトしにいくと決めた時点で念を入れてアルマンの伏兵を仕込み、コンタクトのために入った舞台で一目惚れしたんだな……。

アルマンの口から「マタハリ」の語が出るたびにあそびのない目で唇を戦慄かせるラドゥー大佐、どう見てもアルマンと色が違うタイプの執着なのにお前も同じ言うてるのが変に自覚なくてやばいんだわ。顔上げて振り向いて見てみろアルマンどん引きの目ぇしてるぞ
ラドゥーが心を掴まれたのは輝く女『マタ・ハリ』でアルマンが恋したのは痛みを抱えて生きる『マルガレータ』だからなんにも同じじゃないんだよな。大佐、おまえさんが恍惚としているマタ・ハリの「あの薫り」にアルマンはたぶん何の執着も抱いていないぞ。

ラドゥーの前でマタが見せるのは妖しく艶やかに笑い本気と駆引きで戯れ合う女で、アルマンの前で見せるのは娘のように裏なく笑う女で、2人はどちらもあの女に惹かれているけど、見ている面も欲しいところも全く重なってなさそうなのよね
三浦アルマンはマタハリに「サインが欲しくて」って言ったり痛み止めのツリーオイルに「いい匂いだ」って笑って見せたりするけど、あの時点ではただの監視相手としか思ってなさそうじゃない? 思いがけずマタハリの本当を聞いて、ほんとに「同じ」かもしれないと思ってしまって本気になる、みたいな。

柚希マタハリ、ヒョウでもシマウマでもカンガルーでもいいんだけど、しなやかで強い野生のけもののような魅力だなと思った。ふっと思ったのはどの雄より美しい翼を持ってしまった雌孔雀のよう、だったんだけど(おそらく色合いもあって)リオンでの会話でなんとなく納得した。適性が高かったから強く魅惑的な女をやって、やれているけどマタ自身はそういうものを欲しい女じゃないのかなーと。アルマンと話しているときは娘のように笑うよね、マタハリ
というかあの、マタハリが踊っているのってシヴァ神信仰に基づく鎮魂の踊りなんですね……?

○2幕感想
1幕では戦争に喘ぐ町の人々(現実)とマタハリという鮮やかな夢って感じのお出しされ方だったのが、2幕ではマタが戦争を嘆く無力な町人(希望の薄い帰りを待つ女たち)の1人になってるの、クるものがありましたね……。

踊り子マタハリの顔ではなく1人の女としてラドゥーの元を訪れるマタと、どうありたいかがここ一番不明のラドゥー大佐、おもしろいですね……?
心など(愛など?)なくても良いってマタに迫るラドゥーがだいぶキてて好きです。最初に楽屋で出会ったときの駆け引き含んだ甘さはないのに見返りなしの本心でもないの、それでいて愛が欲しいわけではないのどういう感情なの?(好き)
欲しがるものは(その感情動機が)よくわかんないけど言ってること自体はそこまで道理がおかしくはないんだよなラドゥー。私の力でお前の欲しがるものを与えよう、対価に一夜の夢を寄越せ。ドイツの将軍はじめ、おそらく世界中のマタのファン(有力者)も同じことをしている。
お金に対して返される「愛を込めて」、一夜限りと承知しての情交、どちらもマタハリは与えて来ているよね。自分の愛なんかを手に入れてしまったから国境の分け隔てなく愛を売る女マタハリでいられなくなったのだろうけども。
それともあれなのかな、嘘を承知で一晩恋人どうしをやるのにラドゥーのほうから幻想あそびを投げ捨ててしまったからマタも本心で返さざるを得ないのかな。初めに条件提示したら或いは頷いたのだろうか。うーんでもあそこに来てるのマタハリというよりマルガレータだったしなあ。
恋はアルマンに向けるよう仕向けたから俺には本心からの屈辱と憎しみを寄越せなの?(たぶん違う)
妻に突き飛ばされて少し驚いた顔の後、自嘲するような笑みをしたラドゥーがその後に顔を上げて、愉快なものを見つけたみたいに笑みの質を変えたの何見ているのかわからなくて不穏。袖に消えるまでずっとその笑みを浮かべて何かをまっすぐ捉えている。

上司に決断を迫られ、返事をして立ち去る直前にラドゥーの白眼がぬらりと輝いて凄みがありましたね。大きく目を見開いて俯くからライトの反射がぬるりと蛇のように白目を這うんだ。
アルマンともみ合って発砲音がする直前、苦痛に顰められた顔がただの青年みたいに見えた。「記憶から取り去り」みたいなこと言ってたラドゥーがナンバーの最後で「記憶のなか」ってこぼすの可哀想だなとおもいました。ベンチ?ソファ?にかけたまま心の芯を失ったみたいな顔で消えていったね

ラスト、狂を発したかと思ったけど最後の言葉を聞くにちゃんと正気っぽいんだよな……。そうでもないのかな……。割れて歪んだ鏡に己の顔を映して不安定な表情をするマタ、あそこ見るとあまり正気には見えないけども
いつまで経っても答えないアンナに顔を曇らせて振り向いたマタが、アンナの震える声での「もちろん大入り(うろ覚え。"いつもの"口上)」を聞いて踊り子マタハリの顔で笑って見せたの最高でした。
最後の最後、リオンで見せていた娘の笑顔で手を伸ばしていたからたぶん会えたんだね。ジーンの踊りを見たあの湖だしね。(あのレースと水色の背景、そういう理解でいいんだよね?)