つまるところ。

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マタハリ6/16感想

マタハリラドゥーの話をすると言ってたのでラドゥーの話をします。(2回目)
あらすじ追い終わったからどうしても細かいところに目が行ってる。
自分で読み返して思い出すためのものなので楽しいとこしか書いてないしすべて受け手の主観すなわち幻覚だよ、そのことをご了解ください。

愛希マタ・田代ラドゥー・東アルマンです。

 

○1幕感想

愛希マタハリ、踊りながらのまん丸い眼やすうっと細まる笑顔が仔猫のようで、なるほど艶めかしい猫……。柚希マタは野生動物のようだったけど、愛希マタはどこか愛玩動物みたい。やさしく誘えば腕の中に入ってきて、でも繋いで留めようとすると腕から抜けていってしまう愛らしいソマリ*1みたいな女。

楽屋の田代ラドゥー、無理して悪辣ぶってる感じがしませんでした? 警戒や反感を掻き立てるよな表情をしてみせるのに感情喚起に付随する目的がなさそうというか。マタハリへのストレートで好意的な賞賛がどこかそぐわないのも、敵対の意思なしを示してるときに効果がある行動だからなのかな。
マタハリがお願いを突っぱねたときに目を見開くのが、怒りというよりは「えっなんで?フランスのために働きたくないの?」みたいな驚きに見えて可愛いなって思いました(幻覚) 最後、私が信頼できる人間だと〜って話すときにはちぐはぐした印象が薄れて柔らかくなるのが、権力じゃなくて信頼で関係を作るのに慣れてたのかなって印象。

シャンパングラスを取ろうとしたキャサリンの手を田代ラドゥーがやんわり止めて、いこうかって誘うの可愛いなって思いました。
パーティで妻や他の客と談笑してる姿がふわふわきらきらしてて、この人もともとこっち側で仕事してたんじゃないかって妙な質感が……敵意を力で威圧するより、華やかな場に潜り込んだり相手を気分良くさせたりして情報を引き出す諜報員に向いてそう。さっきも言ったけど、(内心どうあれ)好意と信用で関係を組み上げたり懐に入ったりするほうが得意そうなんだよな……。
上官との話し合い、一度は君の知る必要のないことだって撥ねつけときながら移り気を疑われるとマタハリだって教えちゃうの、妻に疑われるの嫌だったのかな……だとしたら可愛いな……。後の場面を見るに地雷がありそうなのは“覚えのないことを疑られる”ことのほうな気はする。

ところでさ、この場面のキャサリンが「踊り子の皮を被った売春婦よ!」って言うじゃん。なんで知ってるの? 噂が流れてるの??
金髪の〜って会話からするに根拠のない憶測の可能性が高そうだけど、キャサリンも元諜報員だったりしたら楽しいなって思いました。夫の口からマタハリを聞いてびっくりするんだし、ラドゥーが話題にしてたことはなさそうかなって。1人上に残ったラドゥーの代わりに上官が世間話して背中に触れて退場を促すからたぶん家族ぐるみの付き合い。そりゃそうか最重要機密握ってるんだもんな、人質は要るよな……。

東アルマン、自立した若い男の人だった。いやそういう人なんだけど。三浦アルマンに少年っぽさというか、ほっとけない危なっかしさを想起したのでそこが強く印象に残ったんだと思う。1人で立てるからこそ、差し伸べられた手にちょうど良く重さを預けられるようなバランス感覚してそう。
アルマンという人間がよくわかってないのであれなんですけど、東アルマンがスパイの道に踏み込んだときは"国のためにできることを"を健全に発想してそうだなって思った。切迫して居ても立っても居られずにではなく、きちんと考えて覚悟が決まった上で選んでそうだなって。
東さんについてはDoVで1回見たきりだったので、こんなにしっかり声出す方なんだ!という驚きがあり。マイクの増幅もあるのかもだけど、太さと滑舌揃ってて聞きやすかったです。1階と2階で相当に音が違うから何もわからなくはあるんですが

田代ラドゥーと東アルマンの会話、アルマンのほうが冷静さを保ってるの面白かった。初めは上官してたラドゥーが、仕事の出来を言及されたアルマンの放つ「マタハリに『好意』を持つように」でばちん!と繕ってた余裕が飛ぶ。そこに地雷があるんですね……?

マタハリの手に唇落としたまま大きく息を吸い込むのシンプルにきもちわるいな……(賛美の表現です) これ加藤ラドゥーもやってた……? 遠くて吸気が聞こえなかっただけ……? 目を伏せたまま涼しい顔でやってるから余計に執着が強そうでぞわっとする。
キスの誘いに乗ってくれないマタに素直に切なそうな顔するのかわいいですね。

リオンで東アルマンが繰る人形、テーブルの上でマタにお話する。マルガレータの告白を聞きながらだんだん気配が変わっていって、ここで落ちたんだろうなと思いました。ホテルの支配人が「フロントでサインをするのを見て〜」ってシャンパンを取り出すのを愛希マタハリは綺麗で愛嬌のある笑み浮かべて眺めているんですよ。アルマンに笑うときはちょっと硬いくらいの笑い方なのに。この子の笑顔は身を守る鎧なんだろうな。

アルマンの「落ち着かないご様子ですね 大佐」が当になように、田代ラドゥー、余裕がないのかすぐ焦燥が剝き出しになる。だから敵意を持って対すればペース乱すの難しそうじゃないのに、激昂したときの脅しは語尾が甘く掠れるのがすごいこわい。更に怒らせると声が低いまま仕草にも眼差しにも艶が出てくるの、何あれ……。1幕終わりの論戦でひとフレーズ、ぐんと艶を増した声が柔らかい布みたいにアルマンに絡むんですよ。情愛とは別のところでそういう色を帯びるの、シチュエーションや本来だろうラドゥーの感情と全く噛み合ってないがゆえに、つややかであればあるほど剥ぎ取った下にある得体の知れないものを想像させてこわい。
しかもそれやるのだいたいアルマンになんだよな……マタハリ相手じゃないんだよな……。
リオンから戻ってきたアルマンのジャケット掴んでゆっくり息を吸い込むの、そうですかそこで嘘を判断する……。ところであのナンバー、アルマンも「あの薫りが」って言ってるんですね? なんかちょっと聞こえてきた。
ラドゥーが「鏡の中に彼女を見る」って言うのは楽屋を思い出してるのかなと思ってたんだけど、田代ラドゥーはマタハリのなかに自分と同じものを(一方的に)見出していそうだなって思いました。2幕まで観て。

少年パイロットを励ますアルマン上官、少年の正直な開示(「少し、漏らしました」)で少年の肩を支えにするくらい笑ってから「僕も、」って開示するの人心を掴むのが上手で感動しちゃった。感動した後につい、諜報員に志願だかスカウトだかされるだけはある……と思ってしまい。優しさや面倒見の良さ、人の心を開かせる天性のものがあって、そこに作戦が乗ってるんだろうな、東アルマンのスパイ技術。

リオンでは少し硬いぎこちない笑顔をしていた愛希マタが、1幕終わりではアルマンを想って空を駆けるような笑顔を浮かべてたのがとても好きです。裏切られても傷つかないよう無意識に構えていた彼女が「本当の愛」を見つけて、手放しに笑えるようになったんだなと感じて。

 

〇2幕感想

少年パイロットの悲痛な「空に隠れ場所はない」「祈ってくれ」が大変好きなんですよ。
この少年パイロット、次に現れるときは大きな銃を持っているのでパイロットから陸軍兵士に志願し直したんだよなたぶんな……。国のために……上官が励ましてくれたように、英雄になるために……(パイロットたちのナンバー、「英雄になれ」っていうそうですね)

田代ラドゥー、マタハリに頼られるとすごく嬉しそうで素直だなって。アルマンの情報を渡したけど諜報員だとは暴かなかったの何故なんでしょうね。マタはアルマンに会うためにリオンに立ち寄ったのに。マタがパリから出られないと信じてたのかな、それともマタをがっかりさせたくなかったのかな。
自分で口にした「嘘」のひと言から一気に過熱されるのマタと同じくらい嘘か本当かに拘りありそう。嘘はいらないから愛などいらないなの? そういうことなの?
サスペンダー脱ぎ落とす動きに全然色気がない。*2 焦りと衝動と、理性の箍が外れた獣の姿。
マタハリへの想いを自覚したら感情制御されるかと思ってたけど……そんなことなかったな……。そもそも田代ラドゥー大佐、どういう感情か自覚したのかな……。
「追い払ってやった」って話す声にも表情にも甘さも余裕もなくて、嘘つくの下手か……!? えっ身内だから……? キャサリンに立ち去られて可哀相なほど動揺していて、“そうして彼はまた一つ失った”の感。

愛希マルガレータ、オランダ人のパスポートで旅に出るとき帽子を深くかぶって顔を隠すんですね。柚希マタがけっこう堂々と顔を見せていたので驚きがあった。座席が違うからそう見えたのかもだけど。

上官にマタの逮捕を促されて、目を閉じ深々とため息をついて天を仰いでからぱっと見冷静に立ち去る田代ラドゥー、1幕でテンションが上がりきると一周回って腹が据わるのを見てるから内心が恐い。

裁判のラドゥーがめちゃくちゃ活き活きしていて、夏。活き活きしてるっていうか演説上手ねっていうか、見られることと魅せることをよく知っていそうというか……笑顔で民衆(客席含む)の一人ひとりに視線を合わせて説得しようとする……。田代ラドゥー、やっぱり人前で動く任務で成果出してきてるのでは。適性如何はさて置いても積んできたスキルの高さがすごいぞ。
「あなたのような男たちから身を守るための!」でそれまでの涼やかさが嘘のように豹変する。そうだねマタハリを守りたかったんだよね……。同情の余地はないけど……。

アルマンと揉み合い発砲音がした後、地面に落ちて苦痛の表情を浮かべてたラドゥーが自分の腹に傷がないと気がついた途端、可哀想なほど動揺するの何故なんでしょうね。自分の手で人間を殺したことになの、アルマンに駆け寄るマタを想ってなの、でもアルマンたちに振り向く前だったんだよな……同朋を、ひょっとしたら人間を直接手に掛けたことなかったのかな……。アルマンに近づこうとして、アルマンを抱き締めるマタにまた絶望する。手すりに縋りついてなんとか崩れ落ちないでいる有り様で階段を上がっていくの、可哀想だなって思った。

最後、腰の折れて俯いていたのがゆっくり背筋を伸ばし、首だけ真上を向いてはけていったんだけどあのラドゥーそのうち自殺しそうだなっておもいました
ラドゥー大佐(史実)も二重スパイ容疑で殺されたってTLみたとき、加藤ラドゥーにはあそこまでしたのにその結末なのかって思ったけど田代ラドゥーにはよかったねって思ってしまい。戦争終わるまでは自分から死ねなさそうな男だったので。

 

だいたいラドゥーの話したんだけどひとつだけ役者さんの話していいですか、田代さん声が重……!? 表面がざがざしてるのに粘度の高い感じ。高い音でもどろりと這うようで、ざくろの皮が爆ぜるみたいにばんっ!って圧が増す。喉のとこで音をぐっと圧してるように聞こえたのは私の耳が悪いのかハコの音響かは分からん。愛知ミーでしばしばしてたのと同じ歌い方に聞こえた。

*1:猫の品種。鳴き声が高くてきれいで、甘え上手なんですよ

*2:ジャケットとサスペンダーを脱ぐ仕草に色香が匂い立つ役を演じていらしたのが1月前なんですよ スリルミーという