つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

けむりの軍団感想。

結局2回みたんだけど記憶の時系列がすぐぼやぼやになっちゃうのでぼやぼやです。*1
それでも2つ、3つかな、すっごい記憶に残ってることがあるのでそれだけ吐き出しとこうと思って。

 

◯劇場が回る。

回らないはずの劇場が回るという噂は偽義経*2から聞き及んでいたんですよ。そのときは体感としては理解できてなくて「回る劇場だからこそできる演出を回らない劇場に持ち込んだ*3」という比喩だと思ってたんです。
回った。回りますね。遠心力がかかる。
びっくりした。オペラグラス使ってたら急にぐらっときて、すわ地震かと慌てたら場面の切り替わりだった。視覚と聴覚処理だけでヒトの三半規管を狂わせられるんですね…。
前方の席だったときは迫力に度肝を抜かれながらも大地は揺らがなかったので、あの回転感覚は中〜後方でだけ楽しめるのかもしれない。

 

◯人の心がひずむ瞬間。

癒し系おとぼけマスコットキャラの心がひずんでぐちゃぐちゃに崩れる瞬間を生で拝める舞台、ここだけでは?(賛美の表現です。)
闇を抱えた人物の過去編じゃなくですよ。登場時はなんの曇りもなかったちょっとおばかなマスコットキャラを、おばかだけど優しいいい子として描きながら2時間半で精神崩壊に追い込んだ。
文字にするとすっげえな。まどマギ*4でも3話までかかったのを生の舞台で、しかもメインストーリー進める傍らで伏線散りばめて回収までしたのか。
この物語、彼の心を壊すのがメインシナリオじゃないんですよ。彼はいつでも変わらないおばかさでシリアスシーンにオチをつける役回りで、まさかあんなことになるなんて事態の5分前まで予想すらしてなかった。
ん?と思ったらあっという間に話が不穏なほうに転がっていき、えっえっえって思ってるうちに決定打が叩き込まれてまっしろでふわふわしてた(ように見えた)彼の世界が真っ黒な地獄に変貌した。いやあの世界を壊された彼の主観にはたったひとつ白い希望があるんですが、私にはあれが、あれこそが一番真っ暗な怨念の塊に見えるんですが!?ねえ私だけ!?
おばかだけどピュアで性根の優しそうなお坊ちゃんに焦点が当たってから作為と悪意の地獄で自我を壊すまで、この間わずか5分(体感。)
展開を知って見た2回目、意識して聞くと彼の登場している場面にはそのシーンに繋がる言葉や出来事が落ちていて、そういうものひとつひとつを拾い集めて彼に地獄を与えた彼女の執念がどの場面にも薄くまとわりついて見えて背筋がうすら寒くなる。
なお先程から地獄と形容しているそれですが、彼にだけは「救い」のルビが見えて彼女は「愛」と発音している、そんな感じです。

 

早乙女太一さんがすごかった

すごかった。記憶に残っている断片がどのシーンのものか整理ついてないんだけどどこを見てもすごかった。人間ってあんな速度であんな精度で肉体を操れるんですね……。
お城に侵入した敵を相手取るときと主君の本妻を相手にするときで動く速さが違ってて、生で見てるのにスローモーション機能があった。どっちもものすごく綺麗な動きで、お姫様を傷つけないよう手加減してるんだなとか、そんな余裕があるくらい実力差が大きいんだなとか、言葉での説明がなくてもはっきり伝わってくる。
あと最後のシーン。手負いの獣の心が折れた、って思ったのだけ覚えてる。

*1:義経は他に追ってる舞台がない期間かつ情緒をぼこぼこにされた帰りに3時間、それをPCにぶつける時間が確保されてたので。

*2:正式名称は「偽義経冥界歌」、東京・福岡公演はこれから。

*3:それだけでも十分にとんでもない技巧力である。

*4:キャラデザ蒼樹うめさん脚本虚淵氏、かわいいの皮を被った地獄。