つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

スリル・ミーの萌えポイント語り、止まってましたね(3)

ちょっと色々ありまして*1すっかり更新が止まっていたんですが最後まで通しておきたい気持ちが出てきまして。やたら多かったり少なかったりするのは書き掛けを放置してたからです*2
ミュージックナンバーの番号振りに違和感覚えてた方もいると思うんですが、すみません今年のパンフではなく2014年版のCDに合わせてます。

 

「プレリュード」~「スリル・ミー」まではこっち。

スリルミーの萌えポイント語りがしたいんですよ。(1) - つまるところ。
スリルミーの萌えポイント語りがしたいんですよ。(2) - つまるところ。

 

 M8(戻れない道)

〇成福ペア
たぶん(リプライズではなく)こっちだったと思うんだけど、成河私、大阪では19歳で歌ったよねこっち?*3 "彼"を殺人に誘導しそして完全犯罪を失敗させる道がもう既に見えている……どう転んでも完全犯罪にする気がない……。絞り出すように歌うの、そして"彼"のほうを見ないのずるい。どこか遠くを、目を細めて見ているんですよ。空に鳥を見つけたときのように。
福士彼は「ハンマーは完璧だ」って言いながら、金目の部分をたん、たんって手のひらに打ち付けてるのが印象に残っている。

 

〇松柿ペア
だから柿澤彼もうちょっと楽しそうにして???
淡々と、心を動かされることなく準備をしていく……ロープの長さについて触れながら自分の首を絞める練習をするの、なんか可愛かったけどちょっと大きめに見開いている目の奥は非常に平坦……。もうちょっとわくわくして……?
塩酸の小瓶を振るとき*4はちょっと楽しそうだった気がする。


M9(スポーツカー)

〇成福ペア
福士彼の「スポーツカー」、子供ついていくわかる。
優しくて柔らかくてさわやかで、ちょっとオーバーな仕草が親しみやすさを漂わせていて*5。まるで歌のお兄さんみたいだった。ふくしおにいさんがいた。「ハンドル持って」の仕草なんて本当にそこにハンドルがあるみたいで、遊園地にあるゴーカートを動かすみたいに左右に回しながらにっこにこの笑みで隣に笑いかけるの。
福士彼、どっちかといえばこちらがいつも見せてる振舞いで、あの感情の乗ってない透明な目は成河私に対してだけなんだと思う。人あしらいにも長けてそうな福士彼がそう扱うほどだったんだな成河私…まあ基本的に距離感がやべえ*6もんな……。
そんな福士お兄さん、大阪で見た時は子供から見えない(客席を向いている)ときの表情には笑みが一切なく光りのない目をした無で、えっぐ……と思いながら見ていた。子供に呼ばれて?振り向いて屈みこむときにはまた人好きのする優しい笑顔を浮かべている……。"私"か家族か"スリル"なのか、因果はわからないけどこの"彼"も「スリル」なしでは生きていけないほどひずんでいるんだよな……。

 

〇松柿ペア
柿澤彼の「スポーツカー」、子供ついていかないわかる。
身体で隠すようにしながらジッポライターを弄っていて、もう本当に不審者ですありがとうございました。不審者だし同時に剥き出しの不安定さが儚さというか、脆さを感じさせた。軽くて風で削られて毀れていってしまいそうな脆さ。
子供を見つけて誘いながら、露出は少ないままだし目は笑ってないし、どっからどう見ても不穏。もうちょっと笑おう……?がんばろ……?
それなのに、「羨ましがる」のところで本当に鮮やかに笑うんですよ……。子供に目を合わせて……。それ以外のところも音は綺麗だし声は楽しそうに誘うんだけど、それらが全部「羨ましがる」をより魅力的にみせるための添え物として機能しているあの感じ。柿澤彼、誘い文句で本当に効果があると思ってるのあの感情だけなんじゃないかなって思ってしまった。ドライブが楽しいとかわくわくするとかが(実際に起こり得る感情だとしても)行動の決め手になるなんて信じていなくて、友達に自慢できるっていう感情だけが背中を押すだろうって、動機となるだろうって、そう思っているみたいで。
あと鍵を出したところのリアクションが子供相手というより犬と遊んでるときのそれで、あの動作、幼い彼が何かを欲しがった時に"親父"がしたことをなぞってるのかなって考えるとあっという間に胸が痛くなりますね。自分の優位と満足感のために幼い子供を玩ぶ……そしてそれを「一緒に遊ぶ」だと認識しきっている……。
黒い手袋をはめる姿が妙に鮮明に焼きついている。そして子供の手を握るときの、ゆっくりと、でもしっかりと指を折り曲げるあの所作。笑顔を向けながら歩きだし、歩き去る背中を見ながら取り返しのつかなさに背筋がぞわぞわした。*7

福士彼についていくのはわくわくを抑えきれない衝動的な(年の頃を考えれば普通の)男の子だけど、柿澤彼についていくのは彼とどこか似たものを持ってる子供だと思う。万能感と劣等感と愛着への欲求を自覚しないまま持て余している子供。


M10(超人たち)

○成福ペア
松柿ペアを観た後だと、福士彼のテンションがちゃんと高いことに安心してしまってですね。暴力的な興奮と喜びのごった煮みたいな表情、ちゃんと"スリル"を受け取って高揚している。
成河私キチンとリュックをしょって持ち手を握ってるの律儀か。動転しているはずなのにそこがキチンとしてることに少し可笑しさがあったんですが、思い返すとめちゃくちゃ怖いよな……。実はまったく冷静だったのか成河私が"そういう"人間*8 であることを示してたのか。
ごめんねここログ取ってなくて*9 あんまり思い出せない。ひとつ言うなら美しい人間は醜い感情を剥き出しにした姿も他人の目を惹き付けるんだなあってこと。等身大の人間なのに目を逸らすのが惜しくなる美しさがあった。現実の人間、己の美しさを使いこなしてる人間でもそういう場面では醜さの輪郭が浮き上がって見えてしまうので、あれは役者福士誠二さんの力なんだと思う。

〇松柿ペア
だから柿澤彼、もうちょっと楽しそうにして!?!?(ありがとうございます大好きです。)
冒頭は興奮してたのに表情からはあっという間に薄れていって荒っぽく縄を柱に打ち付けながらも(目にぎらぎらした興奮が残っているものの)真顔だったし、何より「この町破壊してやる」、ねえなんでそんな泣きそうな顔をして言うの!? 手袋を乱暴に口で引っ張って外しながら、ぎゅっと眉を寄せて、嗚咽を殺す子供みたいな顔で。
この後の松下私55歳の回想が「あんなに楽しそうな*10彼を見たのは久しぶりでした……」で始まるんですがねえ何を見てたの!?楽しそうだった!?あんなに泣きそうな顔してたのに!?って心の中で叫んでいた。松柿ペア、相互不理解が若さゆえって感じで大変に好きですね。相手を理解した気になっている 、誰より見ているつもりで肝心なことは何も見えていない。
私事なんですがわたくしこの演目をおかきペアのCD*11で知ったクチだったので本当にたまげました。荒い息とこみ上げる笑いがぶつかった呼吸、デスミュで見たあのげっすい(賛美です) 愉悦の表情、そういうものを予想してたんですよ。いや欠片もなかったですね……。
この"彼"、本当に「最近なにも感じない」んだと思う。そのことへの焦りとか苦しさとか渇きとか、そんなものまで感じられなくなってしまえばいっそ楽だったろうに。
松下私の「誰かに見られた」「何か落としたとか」でみるみる動揺していく柿澤彼、大変に哀れ。ひと言ごとに反応する動きが大きくなってくんですよね。あの部分、"私"が自分の不安に"彼"を巻き込んでくようにも見えるんだけど、全部通してから思い返すとまだ間に合うよ」「まだ戻れる」って気持ちの揺れだったんだろうなって思ってしまう。戻って見れば死体を奥に押し込まなきゃいけないことに気が付くかもしれない、戻れば落とした眼鏡を持ち帰ることができる。"彼"を閉じ込めて手に入れる欲望と、ぼくを見て、信じて(そうしてくれるなら今のままでもいいから)って呼びかけと。まあ、その呼びかけは届かなかったんですけどね。


M11(脅迫状)、M12(僕の眼鏡/大人しくしろ)

○成福ペア
このあたりから福士彼がどんどんお人形から人間っぽくなってくる。
「お前はそうだろ。自慢の息子だからな 」が他のシーンではみられないくらいざらざらした響きで、福士彼の心情を吐露するというよりは成河私に対する揶揄に聞こえた記憶。お前は自慢できるような息子じゃないのに(それでもそんなに愛されるんだ)な、って感じに。
眼鏡を探す成河私の目の前に脅迫状を突きつけるところ、あまりに目の前に突き出すのでやっぱり福士彼"私"のこと好きじゃないだろ……という感じ。確かこのシーンだったと思うんですが、福士彼が屈むときに左の足を外側に倒して、革靴が傷まないような姿勢をしてたんですよね。つま先立ちになると革が折れ曲がって跡が取れなくなるから。右は踵を付けたまま、両方だとシルエットが崩れるから左は足首を倒して。柿澤彼は普通につま先を曲げていたので、2人の余裕の差というか、外からどう見られているかに対する意識の違いが出ているようで面白かったです。ところで福士彼は譜面通りというか拍できっかり音を切る歌い方をするんですね。大阪では脅迫状を読み上げるときに成河私がそれにぴったり合わせて音を切っていてすごいなって思った。声ごと福士彼に添うように響いていた。
電話越しの会話、事態の悪化にだんだん苛立っていく福士彼に初めて人間らしさを感じた。"私"が見ていないときの福士彼は普通の人間みたいに感情を表に出すのでは?と思ってしまったことはいったん置いておくとして。ところでTLの感想見てたら成河私、暗転部分では動揺のかけらもない"いつも通り"の動きをしていた(=電話口での動揺は福士彼に見せるために演技してる)っていうレポがあって震え上がりました。

 

○松柿ペア
脅迫状を打つ柿澤彼は背中をぴんと伸ばしていて、その姿勢の良さが逆に"彼"の小ささを強調していた。2人の身長は同じくらいだと思うんだけど、松下私より小さい印象を強く感じたというか。上手くいっているはずなのに余裕がなくて、そんなときでも自意識がまとわりついている。このあたりからレイ、の呼び方が一層あまく切なくなって、上ずったそれが親鳥を呼ぶ雛鳥のような切実さを孕んでいる。
「お前はそうだろ。自慢の息子だからな」の「自慢」に皮肉と自虐が効いてて、ほらもう"私"はそうやって劣等感を刺激するから…みたいな気持ちになって見ていた。あのシーンの松下私、"彼"を傷つけるつもりなかったでしょ……必要もなかったし……。
打ち終わった脅迫状を私の目の前に差し出す"彼"、恋人かってぐらいの甘い雰囲気があったよね…なんなんでしょうねあれ……知ってます共依存っていいますよねオタクは詳しいんだ。
歌に合わせて新聞をぐっしゃぐしゃにする柿澤彼が好き。焦りと苛立ちを物にぶつけている。やっぱりさあ、振りにしろマイナスにしろ、柿澤彼の感情を呼び起こせるのは松下私なんだよな……。そして電話越しの「レイ」、やっぱりあまくて切ない高い声で、この呼びかけだけは否定されないと信じているような響きだった。

 

M13(あの夜のこと)

歌に入る前の会話で成河私が放った「見栄っ張りな親父」への激しい怒りに意識をもっていかれました。これまでパパのことそんな嫌いな素振り見せてなかったじゃん…?福士彼の感情をなぞってるよね……?君自身の感情はどこ……?というかねえ、"彼"の執着以外に人間に対する情動、持ってる……?
柿澤彼だったか福士彼だったか両方だったか、途中から"私"の目を見なくなるのに心を殴られていた。"彼"は「スリル」しか見ない……。
「マニキュアも」と返した成河私に「その調子」って言いながらいや福士彼どうでもいいって思ってるよね……? みたいな等閑な答え方。柿澤彼はもうちょっと一緒にテンション上げてたと思う(記憶が曖昧)…身勝手な少年の若さというか…。
自分のフレーズを歌った後に繋いだ手を相手のほうに押しやる動きがあるんですけど、そのとき福士彼の動きにすごく力が入ってて「言うように強いている」ようでした。最後だけ、押された手を成河私がぐっと押し返して真ん中で止まる。個と個のぶつかり合いって感じ。

 


M14(戻れない道リプライズ)

“私”がいつのまにか外しているネクタイを“彼”が締めていることに震えました。というか“私”が外したままなことに慄いたというか。もう戻れないし戻る気もないんじゃん。
成河私が一見消沈した従順さと“これで前に戻れるね”って無邪気な希望を見せながら受け答えをして、福士彼の拒絶にそんな酷いことを言われるなんて思ってもみなかった!みたいな顔してるのを見ながら嘘吐けぇって思ってしまった。全部わかってただろ…なあ…。
留置場に投げ込まれた“彼”、柿澤彼は酷い扱いをされたことに傷ついてる感じで福士彼は大勢の前で連行されたことに憤慨してる印象だった印象。


M15(僕と組んで)

このメロディー、「スポーツカー」と同じなのがえっぐいと思うんですよね。全部嘘なんだよ。

○松柿ペア
柿澤彼、大人になってしまった。いや何ていうか、うん、「大人」になってしまった……。あんなに傷ついても零れ落ちるように見えていた、少年のきらきらした輝きが失せたんですよ……。松下私に言葉を掛ける柿澤彼、身を削るような刹那さのかわりに承知してしまったようなうわべの献身があって、そんなものを"彼"が持ち合わせていたことに、身に着けてしまったことに衝撃を受けた。それなのに、この後に及んで"私"を呼ばう「レイ」があまい響きを孕んでるの反則だろ……!?と思っていた。好きです。柿澤彼の「レイ」の呼び方、これをも拒まれたら本当に何もかもを諦めてしまいそうな響きがあると思う。自己有用感をぜんぶ乗せたような呼び声。
"彼"の口づけそのものはじっと受けていて、いっそう深くなる気配を見せたところで"彼"を押しやるのに「全部わかってた」感じがある。と思う。でも"私"が求める"彼"の気持ち、向けられてないだけじゃなくて最早"彼"の中に残ってないんだよね。

○成福ペア
だからさあ!福士彼のこの「身体を売った」感が!えぐい!
成河私を説得するとき、私を見る前の表情が「スリル・ミー」で承諾した後の表情と一緒でさ、少し目を細めて遠くを見るような、心をどこか遠くへやってしまったような儚い顔をするんですよ。
説得される成河私、これまでの福士彼をなぞって"訴えに動じない" 、"相手から目をそらす"をしてるのにさ、口づけられた瞬間びくりと背をのけぞらせるのがなんかもうだめじゃん(好きです)……成河私が"彼"をどうでもいいものにできるわけないんだよ……。
契約を交わす前は"彼"のほんの気紛れで与えられていた口づけが、今やここまで追い詰めて心を折りにいかないと得られないものになってしまったあたり、"私"もゲームに負けてるんだよなあって思う。


M16(死にたくない)

◯松柿ペア
松下私が寝てるのを低い声で確かめてからの歌い出し、ひと言目から高く震える声で表情も一気に崩れていって素晴らしかった。あの柿澤彼、ひとりぼっちで暗闇に脅える子供なんだよ……。闇から伸びてくるありもしない手に脅えて縮こまる子供。半ばこの場面での“彼”を観に行くつもりでチケット取ったけど*12大正解だったなって……。

◯成福ペア
「首に巻きつく ゆっくりとロープが」で首を掻きむしっていて、それが「スリル・ミー」で少し指を浮かせて首をなぞったのと同じ位置でですね。福士彼、首を絞められる夢を見て眠れないのはいつからだったんだろう……。歌の後半、どんどん間がなくなって拍より速く駆けていって、最後肺腑ごと吐き出すような「死にたくない」で崩れ落ちるの、なんかもう見事しか出てこなかった。すごい。ここで終わりでもいい(よくない。)
ずっと福士彼を抜いてたので気がつかなかったのですが、最後の「死にたく ない」で成河私がぎゅっと目を瞑ったらしいですね。

このナンバーでの"彼"の姿、柿澤彼は超人像の裏返し、極限状態で剥き出しになったヒトの生への執着ってイメージなんですけど、福士彼は傷つけられて傷つけられて傷つけられて、丸裸にされた生き物の憐れって感じがする。傷口をナイフでこじられて悲鳴を上げたことをどうして弱さだなんて責められようか。みたいな。


M17(九十九年)

別演目にドはまりしたせいもあって記憶がすっかり。かなしいですね。
◯松柿ペア
護送車のシーン、虚勢なのが透けて見えるようでもそれなりにはしゃいでいる柿澤彼が可愛かった。あわれだったけど。"彼"、こういう風に人間関係やってきてたんだろうなあって思う。
松下私の告白を受けた柿澤彼が自分の口に手を持っていくのが小さい子供みたいで、爪や指を噛んでないかって思わず双眼鏡で抜いてしまった。ちょいちょい見せていた頭に片手をやる仕草がここでもあって、現実を受け入れられないようでとても可哀想。
柿澤彼、「君を"認めよう"」の瞬間に心が零れ落ちるような痛々しさが強い意志を湛えた攻勢に転じて、"彼"はこのときに復讐を決意したんだなって思った。"私"を最も深く傷めつける為に何もかもを使う覚悟を固めてしまった。その"彼"が「まさか、お前」で何に衝撃を受けたのか、未だ考え続けている。
松下私もなんか悲壮というか、勝利の喜び!って感じじゃなかった印象がある。戻りたかったのは"私"のほうなんじゃないかなあ。

◯成福ペア
護送車で会話する2人、福士彼の「俺が本当に『なりたい』のは、あんな弁護士だ」が現在形で心を殴られるなどしました。成河私の「そうなんだ」が肯定も否定もなくて(笑顔なのに)、いや本当にこの"私"の精神はヒトの形をしていないなって……(賛美。)この現在形の言葉といい、成河私の告白に追いつけなくて混乱もたどり着かずぽっかりと空白になる感情といい、演技やブラフじゃなく本当に理解ができないって風だったし憐れだった。告白されてから"私"から少しでも距離を取ろうとするみたいに身を引く姿や私の視線から外れるみたいに手錠の掛けられた腕に頭を埋める姿がなんかもうさ、福士彼にできる唯一で、抵抗ですらない弱弱しい拒絶のあらわれだったのかなって。
満面の笑みで告白した成河私が「俺を見直したか」では泣きそうな顔してるのに「こわくなったか、」では上目遣いに窺うの、“彼”が自分を見ない→スリルを与えてくれるものばかり目で追っている→自分がスリルを与える「こわい」ものになれば“彼”は見てくれる、って思考の飛躍起こしてない?泣きそうな顔っていうか目に光るものがあったのでたぶん泣いてるんですよね。そのくせ「九十九年」はまた、満面の笑みで歌うんだ。福士彼の返答を聞いているときはその狂気が少し薄まって見えるんだけど「いや、」と返すときにはもう元の箍の外れた笑顔だから……。あのときの成河私の声、やわらかさやちょっと高いトーンや吐息の入り方は優しげと言っていいの要素が詰まってるはずなのに、やさしさなんて印象は一片も浮かばないの何なんだろうな……。
これは1月だけかもしれないんですが、階段を上がって扉の向こう、硬い顔した福士彼がそこから更に表情を変え、見開いた目に絶望を浮かべるのが最高に精神に来る。曲の終わり、福士彼の「九十九年」についで呟くように歌う成河私の「えいえんに」に絶望を浮かべるんですよ。成河私の語る"彼"の最期、あれが真実だとするなら"私"から逃れるために福士彼ができた唯一の抵抗で、残された報復の手段だったんだと思う。
ところで、護送車で告白ぶちかました後に目を凝らして空を探し 「奇妙な鳥が2羽…」って続けていくのあまりに静かで"いつも通り"でめちゃめちゃ怖くなかったですか。成河私は"本当に"目が悪いんだって情報を拾えたけどそれ以上に"私"の精神の歪さが際立ってませんでしたか。

 

M18(プレリュード)

○松柿ペア
松下私を呼ぶ「レイ」、空気に溶けて消えそうな澄んだ響きがあってですね。松下私は"彼"を喪ってからこの幻想を胸に抱いて生きてきたんだと思う。(ただですね、記憶違いかもしれないんですがこのときの柿澤彼、真顔だった気がするんですよね……)
一瞬見えた気がした彼に追いすがるように階段を駆け上がって、最後の「スリル・ミー」でした。松下私、(成福ペアに比べると)救いがあったような気がする。この話における救い、さっぱり見当つかないけど。
これは全くの妄想なんですが、仮釈放された松下私は"彼"になりに行くと思うんですよね。「今度こそ」ただ子供を攫って殺しにいく。あのときのようにスポーツカーで、子供を煽って、おいで、って手を引いて。証拠1つ残さず「完璧」にやってみせる。

○成福ペア
仮釈放が決まったときの「じゆう」の言い方がこわい。抑揚もなく一音ずつゆっくり伸ばして、単語というよりただの音としか捉えてないというか。"私"にとっての自由、福士彼と一緒にいるときにしかなかった、もう存在しないものなんだろうな。その後の「しょじひん……」はまだこう、言葉として認識している感があったし。
この成河私がなんで今さら仮釈放をされたがっていたのかどうも理解がいかないでいるんですが、「彼の写真」を手に入れるためだったのかなあ、というのでひとつ納得することにしている。成河私の求める"彼"、福士彼というひとりの人間ではなくヒトの形をした偶像に見えるので……。
勢いよく階段を駆け上がって固まった後、いっぱいに目を見開いてがばりと振り返りる「スリル・ミー」が鬼気迫る勢いで、最後の最後で恐怖に突き落としてくるのやめて!?(好きです)という気持ちでした。成河私のラスト、"彼"の写真が飛んでいってしまったんだと思っている。この後の成河私、行方知れずになる以外の未来が想像できない。

 

スリル・ミー感想('19年) - Togetter

*1:観劇回数がメタマクd1を上回ったり田代万里生さん出演作品を片端から揃えたりした。

*2:その期間はほぼ日生にいた。

*3:成河私に関して、55歳か19歳かは手を組み合わせてるかどうかで見分けてます

*4:なお振ってはいけない。あれ結構粘度高いぞ

*5:素地が圧倒的に美しいので滑稽さが微塵もない。

*6:普通の人類はあんな風にタメのない感情表出をしない。

*7:ドアを開けて招き入れるところまでやってた気がするんだけど記憶が定かでない。福士彼のほうかもしれない。

*8:どんなに切羽詰まっていても「こうあるべきである」を崩さないし崩せない人間。

*9:ツイッターのあらぶり、そのとき自分が心動かされたものの記憶を引っ張り出すフックとして機能しますよね。

*10:興奮した、だったかもしれない

*11:尾上私の呼吸音が泣きべそかいてるみたいで、あれ特定の人に大変刺さると思う。

*12:曲として「スリル・ミー」が“私”の、「死にたくない」が“彼”の見せ場だと思っている