つまるところ。

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BLUE/ORANGE感想。(ネタバレあり)

ちょっとなんか書き留めなきゃという気持ちに駆られてこれを書いている。体力に余裕がある状態で観たBLUE/ORANGE、色んな意味で衝撃が大きかった。
ネタバレを含むしログ残す意味合いが強いからネタバレしか含んでないし衝動に振り回されて言葉が強くなってるけど好きなところだから書き残してるわけで、全ての文末に(賛美です)が入っている。他の二人を掘る心の準備がまだできてなくてだいたいブルース追ってます。

 
ほぼ1週間空けて、今度は手前側と奥側から観たんだけどブルースの印象が全然違ってですね、えっこれ演出の違い?日替わり?それともやっぱり向きが違うと印象が変わるの!? ってわたわたしています。
金曜は子供っぽく見えたブルースが日曜にはちゃんと(社会をやっている)大人に見えた。ロバートの言葉に対してあっと言う間に心を閉じて聞き入れない姿勢になってた子供が、状況や相手に苛立ちながらも努めて冷静な態度を取ろうとしている大人に見えた。あと日曜はクリスとブルースの会話にも、一見穏やかなやり取りが危ういバランスで成り立っている緊張感が強くあったような。金曜の印象は1幕が、日曜の印象は2幕が主になってるからやっぱり観た向きも大きいのかもしれない。


金曜(12日夜)の回感想。
ブルースが子供っぽい! 感情がぜんぶ出てるんじゃないかってくらい露骨に表情や身体の動きに出ていて、特にロバ―トに対して子供っぽくなっているように見えた。たとえば「落ち着けよ! フラハーティ先生」の後。座り直して顔こそロバ―トに向けてるものの表情には警戒と拒絶が滲んでて腰から下が左のほうに逃げてて、ロバ―トの言葉を受け付けないのが身体に出てしまっているみたいだった。理由をよくわかってないまま叱られてる子供ってあんな反応するよね。ロバ―トの失言や取り繕い(「私に媚びてくるんだよお!」とか「黒人だから!?」の後とか)を受けての反応もなんか露骨で、それはまあこの回だけではないんだけど、彼の失言に対して挑発的というか軽蔑というか、嘲りの感情を表情から隠さなくなってるんですよ。これも先週からだっけ?ロバートのまくし立てる言葉に不信を浮かべた表情でも頷きながら聞くところと頷かないところが出てきた*1んですけど、「私みたいなちゃらんぽらんで、」にこくんって頷いちゃうの正直で可愛いけど社会やってくには正直すぎるぞ青年。2幕の「ぐだぐだぐだぐだ!?」「みんなって誰だよ言ってみろよ!」では体をぶつけてくるロバートに体当たりし返すんじゃなくてまっすぐぶち当たって肩向こうを指し示すようになってるのが面白かった。クリスが扉を開けるタイミング*2でぱっと身を躱す(からロバートがすっ飛んでく)のも滑稽さが増して見えた。
クリストファーに対しては大人? 先生やろうと頑張ってるんだけど、ある種の潔癖さと頑なさで完全に手玉に取られている。いやもう最後まで。「この中に◯◯◯◯挿れたことある?」から先、漸くクリスを見たもののどこかいじめられっ子みたいな、夜に怖い話を聞かされてる子みたいな気配があって、小学生がこういうコミュニケーションの拗らせ方させるよね…相手への関心を上手に表現できない子と止めてが言えないで溜めてく子…。ブルースの目がもっかい潤んでいくのにそう錯覚しただけかもなんだけど。そもそも子供っぽく見えたのも目の周りに赤みが差してたからかもしれないんだけど。*3

このブルースの流すほうがいい小さなことを真正面から受けて拘ってしまう頑なさ、いっぱいいっぱいで余裕がなくて、自己有用感が削られてるっぽいのが人と関わる仕事にいきなり放り込まれた新人って感じで(可哀想だなって思うけど)テンション上がる。描いていた理想や価値観がぐらんぐらん揺らされて小さな刺激にも大きく防衛反応が出るあの感じ、現状をそのままにはできないし自力で何とかするには成果とキャパが追いついてないしで動くほど泥沼にはまる新人そのものじゃないです……? ロバートがちょっと現場離れて論文でも書いてみるかって声かけるのもわかる気がする。それはブルースの心を心配した思いやりではあるものの甘やかしだと思う*4し、それに従った後で逃げたと自認してしまったら彼はもう現場に戻れなくなると思うけど。

対してロバートは大人に見えた気がした。精神的な成熟ではなく、社会の仕方をよくわかっていて実践しているって意味で。日記のやり取りなんかは思いきり煽りに行ってるし、人格者に見えるとかそういうのは全くない。ブルースとの言い争いでは抑揚に余裕があるままのことも多くて、己が上の立場にいること、ブルースがちょっと煽れば墓穴を掘る性格(か精神状態)だってことをちゃーんとわかって立ち回っている印象だった。先週はどっちも同レベルで子供っぽく見えたんだけど、今回はどっちかが子供っぽくなるとどっちかが大人の振る舞いになるように見えたなあ。「お前、ひとりで世界を救うつもりになってるんだよ」が感情に訴えるだけでなく諭しの色も入ってるように聞こえたのがおおお……という感じ。ガラスでできた棘のような鋭い切なさが和らいで、張り詰めた背中に手を置くような、解すことで届かせるような触感に聞こえた。ところでクリスへのアドバイスに「そうすれば相手はイラつく。いい作戦だろ?(細部は曖昧)」の追加セリフがありまして、そういう意味だったの!?と驚愕しました。*5クリスがなるほどってするアドバイスとしてはしっくりくるのでなるほどだったし、クリスがブルースに言うときその悪意をすっ飛ばして「笑うんだよ。やばいっしょ」っていうの刺さりますね。クリスはやっぱり相手をよく見ていると思うし、会話の一部だけを切り出すとまるで別の色が見えるっていうのをここでも見せてくれるのしんどい(賛美です。)1幕のブルースは相手の言葉(主にセクシャルな冗談)から心を遠ざける壁として笑顔を出すのでそういう意味でも割としんどい。

 

日曜(14日)の回。
初めて感情を引っ張られた。いやこんだけ通っといて何言ってるんだって話なんですが、この演目で胃の腑を殴られる衝撃は受けても観ている最中に感情引っ張られたことなかったんですよ。「点と点を~」からまくし立てるロバートの言葉を聞きながら泣きそうな気配がどんどん濃くなってくブルースに引っ張られて割と泣きそうでした。後ろの席から啜り泣きが聞こえてあっ仲間がいるって思った記憶。このシーン殻に籠るだけだったじゃなかったっけそんな泣きそうな顔してたっけブルース……。身体が逃げてるのもそう見えた一因だったのかもしれない。
あとね、あのね聞いて、ロバートが自分のハンカチをブルースに渡した!!*6そんな顔するなよって!! インテリを気取る(偏見)のロバ―トが胸ポケットから覗かせてチーフみたいにしてるおしゃれアイテムを貸してやったことに感動した。友人だし部下を思い遣る上司みたいだった。渡されたハンカチで目元を拭って返事をするブルースがまたいじらしくて可愛かったし自身のハンカチを使う2幕ではまず洟を拭うのでちゃんと理性が残ってる。えらい。部屋から出ていくロバ―トを追って思わず立ち上がったブルースの置いていかれる子供みたいな「ねえ、ロバート」に返してやる「ブルースぅ」があったかくてですね、子供の背中をさすってやるお父さんみたいだったんですよ……(独身だけど。)あの言葉が本心からだとしてもクリスにした「しーっ」と同じものだとしても、受け取った側が救われるんだったらある意味で正解なんだと思う。このアドリブを見てブルースが(自分の価値観で)正しくありたいようにロバ―トは悪になりたくないんだなって改めて思ってしまった。対症療法しかできない病の患者を何人も見てきただろうロバ―トに残った信じられる価値観がそれだったのかなあ。2人のやり取りの最後、「私はおまえの味方だよ」を聞いてブルースがふわぁっと笑顔を浮かべるんだけどそれがあまりにも無防備で何の陰りもなくて、ついでに言えば彼がそういう笑顔浮かべるの後にも先にもこのときだけで、2幕の展開を知ってるせいで久しぶりに胃の腑を殴られましたね! 純粋な気持ちでよかったねって言えない!!あとブルースきみやっぱり腹芸と陥穽必須なその世界向いてないよスレてなさすぎる!! オレンジを掴む前に右手に持ったハンカチをじっと見つめていて、それがまたクるものがあった。

ブルースが社会やってるって印象じゃなかったっけ。
確か「それは、それはクリスが自分で切り抜いたものだからですよ?」の印象からだ、大人が子供に諭すみたいな、いっこいっこ言い聞かせるような音の粒がはっきりした発音と言葉尻の抑揚と。怒りや遣る瀬無さを抑え付けて努めて冷静でいようとしてるみたいに見えて、それを大人っぽく感じたんだと思う。あと"気が付いた"のも早くなってなかった?この台詞を向ける前にロバートがどんな"勘違い"としたのか理解したみたいな。「今朝は自分の父親がモハメド・アリだと言っていたからです」も真っ直ぐ目を見て言うようになってたような。
ロバートがブルースの腕を掴んで部屋の外に連れ出す場面、扉が閉まっちゃったのを開けるために二人がなだれ込んできました。ちょっとだけ外が見えたので眺めてたら、はじめブルースがロバートを追っかけ回してたのが(雪崩れ込んできたのもロバートが先頭だった)いつの間にかロバートがブルースを追い回してて、何が起こってるんだろうあそこ。途中からブルースの台詞をがしがし遮ってロバートの台詞だけが響くようになるし今回戻ってきてからブルースの歩き方がなんか不安定になってるし、本当に何が起こってるのあそこ。*7

日記を読み上げられて「落ち着いた」ブルースはロバートの口上を黙って聞いてるんだけど「くっさいチーズトーストと〜」で目の色が変わってひいってなった。手にしてたコップを黙って握り潰す前半も凄みがあったけど、何もしてないのに目だけが怒りでぎらぎら輝き出すのすっごい怖かった。妻を侮辱されると自制もふっ飛ぶブルース、和むどころじゃないんだけど思い返すとほんわかする。そして特大の地雷を踏んだのに全く気が付くようすのないロバートのだから独身なんだよって説得力な……。

「ロバ―ト、ロバート、ロバート・・・、先生…」ずっとわからなかったんだけど、ロバート、の後に言葉を探すように唇が動くのを見て自分の中で一つ腑に落ちた。言葉を探して何も見つけられなくて、クリスのために、彼のような患者の病が(本当の意味で)良くなる為に自分たちが何もできないと受け入れた、そういうことなんじゃないかなって。現状を変えなくては、でも今は何もできない。低く低く、締まった喉で絞り出すような「先生」に、そんなことを思った。

クリスがオレンジ片手に話し続けるのを見てるブルースが引き攣った不規則な呼吸になっていって、本当に下ネタだめなんだな……って思ってみてた。淡々と話してるクリスはもちろん、ロバートもふーん、くらいの顔してるので余計に。

 

 

なんて、何処を見てどう考えても結局のところ、わかったような思い込みをしてるだけだって言うのがねー!楽しいですよねー!って思っている。この演目は特に。

相手を理解する行為は、自分の持ってる枠に相手を当てはめることだもの。

*1:「お前のために点と点を繋いでやる!」には頷くのに、続く「統合失調症はタブーだ!」に頷かないことがあるんですよ。ひいってなる。好き

*2:厳密に言うとちょっと前で、そこ含めて考えるとブルースに悪意があって楽しいと思う。

*3:マチソワの日だったっけって思うくらい赤かった。ライトの関係かもしれない。

*4:ブルースはその「心配」に拒絶を見せるわけだけど

*5:辛いことがあっても笑えば早く忘れられるって意味かと思ってた。

*6:たぶん。背中で隠れて直接は見てない。

*7:ビンタの音が聞こえたりいつの間にか服に血痕が付いてたりした回もあった。