つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

JtRとりあえずおすすめを……ええとおすすめですたぶん……

JtR観てきました。観てきまして、登場人物を感想言うの今んとこ難しいので各キャストのここが見どころ(たぶん)!をまとめようと思いました。
私の普段のとちくるい方を檻の向こうから見ている人はなんかお察しいただけるかもしれんがおれの消化具合はそういう感じです!食道でつっかえてて胃袋が困ってる!!
あとリピチケ価格設定みた感じかなり困ってるっぽいので先にお勧め要素をと思った。

あくまで個人の印象であり感想であり推測であることをご了解ください。私は歴史と文学の知識が本当に虚無です。

勧めるためといいつつ最大級のネタバレがあります。でもこれスジを楽しむ作品じゃないと思うな……。そこにどんだけオマージュ盛ったんだよって手を叩いてげらげら笑う作品だと思う。推しのいつもと違うトコ観てみーたい!そーれイッキ!で観るのがいっちゃんストレスなく楽しめるよ。

 

加藤和樹さん(ジャック役・アンダーソン役)
アンダーソンは観てないからいずれ。
好きな役者さんがジャックをやるなら観に行け! 私は加藤和樹さんのファンがどんな加藤和樹(敬称略)を好きなのかは知らないんですがそれだけは確実に言える。し、TLで知らない加藤和樹氏ファンが迷ってるのを見つけてこの勢いで勧めてきた。
観に行ったほうがいい。絶対後悔しないから。

加藤和樹氏のファンの方が認識してる推せるポイントをどこか知らないんですけども。私は「怪人と探偵」の最後の30秒*1で名前を覚えたので俳優加藤和樹(敬称略)にはそういうもの(出てきた瞬間にどういう存在かをわからせる説得力)を期待してしまうんですが、今回それがいっぱい見られた。と思う。
JtRって全体的に登場人物の自我が曖昧*2なんですが(個人の感想です)、ジャックはそれがすごい良いように働いているなって思う。何のためにそれを求めて譲れない線はどこで何を最も大事にするのか、そんなもん見えてこないほうが2幕の最大の見せ場が輝く。

ジャックを観たいならセンター寄りの上手がお勧めです。前列ならセンブロがいいよ。上手の端っこだと1幕でジャックの顔が見えないシーン(話は分かる)がちらちら出ると思う。

恋愛色は皆無だけど初っ端から濃厚なキスシーンがあるのすげえおもしろいっすね。いや本当に純粋に面白い(称賛)と思う。あそこでキスがあろうとなかろうと筋には影響しない(本題は下で進行してる)しジャックの人間性を窺い知れもしない、あのシーンのでかカロリーが純粋なサービスシーンとしてのみ機能してるのすげえ贅沢な使い方だよ。

ジャックとダニエルがそっくり同じ動きでマントを跳ね上げる場面があるんですが、タイミングも角度も視線も雰囲気まで一体となってて迫力も見ごたえもがっつりでした。細かい調整をしてるとしたらジャックの側だろうと思う(彼のが奥にいる。)
2人がそっくり同じ動きで見得を切るところがもう1回あるんだけどそっちもタイミングや雰囲気が2人重なるようで、でも微妙に違ってて(ジャックはとうに成熟して完成している感じ、ダニエルのほうはどことなく生まれたてのばけもの感がある)テンションが上がるなと思いました。

ジャックとダニエルの関係性、わたしの勝手な印象ですがファウストフランケンシュタインとジキハイ入れたんだなって感じのそれです。2幕のどっかでジャックの立ち姿を見て、ああメフィストフェレスと思った。
あと演出の人日本版フランケン好きでしょこれって思った。1幕のステッキ隠喩、あそこ唐突にすげえ浮いてるんだけど、フランケン2幕のジャックにそっくり同じフリがある。

ジャックの衣装は悪魔のモチーフをふんだんに取り入れていて、ポジション悪魔なんだなって(知ってる人には)教えてくれてるの古典好きに親切な仕様だなと思いました。1幕ではステッキの握り(ヤギの頭だよね?→頭が長いヒト?サル?の髑髏だった。)だけだったのが、2幕ではまあ色合いからして相当どぎつい衣装*3なんで出てきたときはかなりびびるけど、なんかその次の登場では普通に似合ってかっこよく見える。あの衣装でもなんだかんだ街並みに溶けるの衣装や風景考えた人すごいと思ったし、と言ってもひとり明らかに世界観の違う衣装なのにばっちり自然に受け入れられるジャックをしてる加藤さんもすげえんだと思う。
紳士を装う黒い燕尾とコートが血の赤で染まったイメージなんかなとは思ったんですが、どっちかというと人間の肉と煉獄でできた赤い革に浴びた血の烙印が黒く染みついたみたいな印象だったな。ハットの両側にでっかい(まじででかい)羽がついているんですが、あれヤギの角のメタファも孕んでない?気のせい?位置が下側だからちょっと遠目で見ると耳あたりから何かが生えてるようにも見えるんだよね。
ジャックだけめっちゃ語るんですがいやあのジャックは観てて全然ストレスなくて……自我を思い測れもしないほうが自然なキャラクターなので……。


小野賢章さん(ダニエル役)
声の解像度がすげえ高い。声優さんってすげえなと思いました。
わたし人の声の聞き做しが下手で初回じゃだいたい聞き取れない台詞が出てくるんですが、ダニエルは一個もあまさず聞き取れた。輪郭がくっきりしてる。音響さんが不慣れなのか今マイク入ってる?や音量めもりミスった?みたいのが何回かあったんですが、そんなときでも言葉がすとーんと通るのすごいね。
小野さんを観に行くならセンター寄りやや上手だと思う。ジャックと同じだけどだってジャックと最大の見せ場が同じだから……。他のシーンも見せ場ではだいたい上手にいるので*4、サイド席を買うのでも見切れない程度の上手がいいんでないかなあ。
小野さん入れ替わりの場面がすごいんですよ、同じ人物の身体から出てる同じ高さの声なのに絶対に違う中身の人間が喋ってる声がする。ばしんと走ったSEで変貌した小野さんに、ジャックだ……って呑まれていることしかできない。殺人を好む残忍な人格ってだけでなくてさっきまでダニエルと会話していたあのジャックなんだっていうのがすごい。すごかった。
その後の場面でモンローにナイフを持たされてるときの声の、魂が修復不可能に減ってる感じがなんかこうすごい不穏でこわかったですね……好き……。(ある種)気が違っているのお約束が舞台で見かけるやつでなくアニメ表現でよく見るやつだったのは小野さん独特だなーと思いました。お約束が違っても声に問答無用の説得力があるので伝わるやつ。
あと個人的に登場シーンの存在感が好きです。アンダーソンやモンロー含めて殺人死体でざわざわしてる人々のなかに、差し込むように声が入ってくるの。


松下優也さん(アンダーソン役)
平常時でも眼球にうっすら張ってる光の膜がクスリとか熱とかに浮かされてる人間を連想してすげえ好きですね。表情が喜びや好奇心だと瑞々しさに見えるんだと思うんですがアンダーソン基本的に生気のある表情してないから、不随意調節されてるはずの機構が壊れかけてる病的な雰囲気になっててすごくよきものだなとおもいました。眼球に水気はあるのにモンローやダニエルと並ぶと白目がうすら血走ってるのもよきだよ。どこ見てるのかって話だけど私が舞台行く目的の3割が新鮮な眼球なのでゆるしてくれ。
聴取を聞いてるときの顔がめちゃくちゃ面白い。すごいよ、ダニエルの話が進むごとに目が死んでく。顔だけ向けてはいるけどイチっミリも関心がないんだなー!って感じ。
ポリーとのシーンは薔薇をぐしゃっと握り潰すときの顔が好きです。*5魅力的で薄情なひも男がすごい輝く人だとサンセットで思ってたけど荒れた精神の底にきれいな愛情をしまっていた青年も普通に魅力的だった。アンダーソンの設定って松下さんご本人とはもーちょい上*6なキャラなんではの印象だったんですが、外見や基本行動からするに本来もっときらきらしてるんだろうなって人がロンドンの霧に冒されて淀んでいる様は大変よきものだった。


田代万里生さん(モンロー役)
この演目なんと田代万里生(敬称略)がタイプライターを打ちます!!!
タイプライターはアンダーソンの部屋セットなのでアンダーソン役が触ることが多いんだけど、松下さんが重く疲れたような音でキーを叩くのに対して途中でちょっと交代したモンローの田代さんが澄んだ音で軽快に打ってく対比がめちゃくちゃ面白い。本当に音から違うのよ。
インタビュー(聴取だけどもうインタビューでしょあれ)はある意味本業のブン屋だもんなって感じの使い慣れた感じで打鍵してくのが面白くて楽しいですよ。
タイプライターを打つ田代万里生(敬称略)を観るために行くなら下手側を取るんだ。あと一応ラストにもいっこ動きが多い場面があって、そっちも下手のが見えると思う。上手だと歌詞が聞き取れないんだけど下手ならいけるかもしれない(ブリリアではそうだったので。)

いや……真面目な話、この方目当てで迷ってる人に他のどこをお勧めすればいいんだよ……。好きなところアンケートであの要素が一位になるファン勢だぞお勧めできないよ今回その2つ……ええとかなり変えてやってるもん。*7普段と違うものを食べたい人には別腹で楽しめる気はするんだけど、いつもの田代さんのあの要素、歌や声や演技の仕込みが好きで観に行きたい人の口に合うかは……*8後半のリプライズでおもしろそうなこと言ってる空気なのになんも聞き取れなくて困ったくらいに歌い方はちがうよ。俺のジャックがどうとか言ってる気がする。

PVの特ダネにホラーがいるとめちゃくちゃびびっていたんですが、「特ダネ」はアンサンブルが盛り上がるのをモンローが餌撒いて引っ張ってくシーンの曲で、自我強度の根源が見えない理由が分かり恐怖は解消されました。閉じた群れの倫理のなさをひとりに詰めたらそら怪奇だわな。

 

 

内容そのものへの印象は

今んとここんな感じなので……。いやあの本当に申し訳ないんですが内輪ネタで盛り上がられるの苦手……。前提として入れておいてほしい古典や他国版や役者イメージがあるならそれなりに余裕をもって提示してほしかったな、と。アフト聞いたら何か印象変わるのかな……。*9
韓国版の動画みたらすごく面白かったので韓国版を前提としたパロとして観るか、初見でも西洋の古典文学とそれを題材にしたミュージカルのオマージュを探しつつ観るとかするとお話も楽しめるのかもしれないなと今ちょっと思った。

 

設定と展開とキャラの人格がどんなに…ええと……でも問答無用に感動を引き出せるALW御大の音楽はやっぱド天才だよ……。ファントムとか考えるほどあの幼児性におまえミュオペラ座で何を学んだってなるのにあの音楽をもう一度と月のない夜きいたら屈服するしかないもん……

*1:さっきまで明智そのものの言動だったのに、仮面の奥の表情だけで中身が怪人二十面相なのをわからせられる感覚

*2:ネクロニカのPCみたい。ネクロニカというのは死体人形のPCがセッション中に思い出した「記憶のかけら」に合うようにPLがPCの人格を弄り回してくシステムのTRPG

*3:フランケン(の2幕)が好きな人は好きだよって盛んに言われるのめちゃくちゃわかる……。みたいな色合いと装飾してる。

*4:ダニエルの住居セットが上手に設置されているのもある。

*5:ポリーとのシーンはそこに至るまでの背景をくれ!!!現在の関係と現存する感情矢印の落差の理由を仄めかしてくれって叫んでしまった(無言)んだけど向い先はホンであって役者さんに要求することではない

*6:19世紀ロンドンを考えれば丁度なんだと思うんだけど日本社会の年齢と人物のイメージからするともうちょい上、それこそ加藤さんくらいの年齢じゃない?

*7:強火の演技を推している勢もTLでの観測率高いんですが、私のこのキャラへの現印象は行動動機がわからない、まじで金だけで動くには年齢が足りない、社会の仕組みが見えてすぎて狂人ゆえじゃ弱い、で上演中ずっと吉田鋼太郎で観たいが頭から離れなかったのであのすみません今はちょっと。

*8:後ろにFC枠があったらしく感想が聞こえてきたんだけど(ここのFCのひと田代さんだけ下の名前で呼び捨てで他の役者さんのことは名字+さんで呼ぶよね)、すげえ婉曲な表現でかなり渋いコメントしてた

*9:すげえ個人の我儘なんですが作外で補足しなきゃ成り立たない作品はどうなのと思っちゃったりはするんだけどもうそんなんどうでもいいから納得できる人物理解が欲しい、誰も彼もが物語をオチに運ぶため動いてるようにしか見えない