やっとこさ観てきましたDisc3。最後のぐるぐるになるんだなあと思うと感慨深い。
いやあ…何というかですね、特に推しができたわけでもエモさの暴力もないんだけどすごかった。充足感がすごい。テーマは何なんだろうなあと考えているんですが、千秋楽までには固めたい。チケット増えてたら笑ってくれ。
さて、ここからメタルマクベスDisc1,2,3のネタバレを含みます。観たのは11/26です。
メタルマクベスDisc3、ある意味一番、原作に忠実なマクベスなんじゃないかと思う。特にランダムスター夫婦が。「milk」と言われるランダムスターの優しさ、「女の邪悪さ」を謳う夫人の目の輝き。ランディのために己を「女でなくし」、からだを「残忍さでいっぱい」にしたはずなのに、女でしかあれない夫人の哀れさ。夫人に落ちてる気がしなくもないけど沼は風邪と一緒だから落ちてないって言ってるうちは落ちてないんだ。
頭が飛びぬけて長いので目次を導入してみました。いっかいやってみたかった。*1
浦井健治さんランダムスター。
弱くて情けなくて優しい男。
ランダムスターの中で一番情けない(ほめ言葉)男だと思う。
情けないというか根性がヘタれているというか、
小学生
男児みたいな我の通し方というか。
王の暗殺について話し合うときの「また今度にしない?」、
短剣を置いてくるように言われたときの「絶対やだ!」、
さすが
浦井健治すばらしい情けなさだった。
ブロードウェイと銃弾
*2でも思ったんだけど、
この人本当こういう情けない男の役が似合う。
本っ当に情けないんだけど絶妙に憎めないし見捨てられない男なの
素晴らしいと思うよ。「絶対やだ!」
ではまさみ夫人に尻叩かれてたもんな。
注射嫌がって腕隠す子供みたいだったもんな。これがさー、
イラっとするどころか輝いてみえるんだからすげえと思うんよ。
あれが輝くの浦井さんだけだよ……。ローラも王もESP軍も、
あんなに強いのに小学生
男児の如くやんちゃでハイテンションでち
ょっと空気の読めない浦井ランディに苦笑しながら、
なんだかんだ憎めないんだよなあって好いていたと思う。
disc1ランディは夫人に何とかしてあげなきゃって思われてる
けどdisc3ランディはみんなにそう思われてる。(
テンション上がりすぎると夫人が呼ばれる。)
情けない演技で輝いてるんだろうと思ってたけど想像してた以上に
浦井健治だった、1幕の感想はこれに尽きる。
そんな浦井ランディだけど、彼の魅力かつ恐ろしい所はその二面性だと思う。こんっなに情けない、子供みたいな男なのに、2幕では本当に「変わってしまった」。
1幕で見た、あの陽気でやんちゃでしようのない男はどこに行ったのか。disc1の"家族"の繋がりが切れていくにつれて加速する姿でもなく、disc2の人になれなかった者の、人間への不理解でもなく。disc3のランダムスターの言動には、ただただ単純に「人間の残忍さ」がある。
これが顕著に表れているのが、
グレコ母子の暗殺を命じる伝令に躊躇う
ヤマハを促すシーンだと思
います。
このシーンね、橋本ランディも松也ランディもがなるんですよ。
脅すように声を張り上げ、
大声に圧されるように
ヤマハが駆け出していく。
ところが浦井ランディは、すごい静かに言うんですよね……。
抑えたトーンで静かにクリアに、ちょっとだけ語尾を伸ばして、「
早く行け」って促すんです。
こっわ。こっっわ!!!
メタル
マクベスの3作品(+α)を観た中で初めて、
ランダムスターを怖ろしいと思った。
兵士たちもそりゃ逃げ出すよ。低い整ったあの声で「何してる」、
なんて言われたら王の視界にいられねえよ怖ぇよ。
このランディの何が怖ろしいって、彼、100%正気なんですよ。いや狂気ではあるんだけど魔女に精神を侵されたからではなく、「人間」の理性を手放さないままあの狂気を孕んでるんだよ。
例えばこのやり取りのちょっと前。
ヤマハが声をかけるときランディが少し顔を上げてるんですけど、
その時の表情が笑顔なんですよ。
それも恍惚とか酩酊とかじゃなくて、
残忍さのかたまりみたいな薄い金色の笑顔。
笑顔に金色って自分でも訳わからんけどあれは金色だった、
弓なりの目と口元が鈍い金色をした残忍さを湛えている。
兵士たちが立ってはいるもののこっそりお喋りしているだらけた雰
囲気の中、
ヤマハだけが恐怖で強張った顔をしている。
あの笑顔を見たのは
ヤマハだけだから。
王に掴まれた両肩から手を外そうとする動きが、「ここは、
場内です!」の必死さが、disc1とはまるで違って見えた。
浦井ランディ、夫人が壊れるまでは人を脅すときに声を荒げないんですよね。まだ怒っても苛立ってもいない、そういう風に見せる。だからこそおそろしい。人間が最も恐怖するものは想像力が産み出す怪物の影だってことを本当によくわかっている。
浦井ランディ、兵士が指示に従わなくても直接殴るんじゃなくて、
そうかー残念だなあって言いながら妻子を拷問しそうな怖さがある
。
本当はこんなことしたくないんだけどなあって言葉と裏腹に刃には
迷いがないし、その通り目には何の感情もない。
歓びも嫌悪もなく罪のない人間の悲鳴を聞く。
何でもするからもうやめてくれ!って叫んだ兵士に嬉しいよ!
っていつもの笑顔を浮かべて見せて、
けれど命令をこなした兵士が戻ると血の海と冷たくなった家族が待
ってるし、浦井ランディは絶叫する彼の心臓を背後から貫く。
そう考えると、
グレコの造反にまず夫人と子供を殺しにかかったのは「
そこまで狂った」んじゃなくて当然の結果なのかもしれないな……
あのランディに夫を喪って自分を恨む女子供を放置するって選択肢
があるとは思えないし……。浦井ランディが本当にそこまでできるかどうかはわからない、
でも彼ならやりかねないと周囲に思わせることは確実に成功してい
る。
浦井ランディがおそろしいってとこに字数を割きすぎていますが、もう誰が見ても変わってしまったって言い切れるような変質なのに、まさみ夫人にはあんなに優しいの反則だと思う。夫人に向ける愛のベクトルが一直線すぎて、浦井ランディは何も変わってなかったんじゃないかとさえ考えてしまう。大切な相手には無防備で懐っこくて、そうじゃない相手は最大効率で従わせる。元々そういう人間で、1幕ではランディの「大好きな仲間」にカテゴライズされてたから残忍な面が見えなかっただけなんじゃないかって。
ローラとの会話(「先輩、いや親友じゃないか!」)
なんかを見るに増長しているのは確かなんですけどね。
まさかあの胸が悪くなるやり取りが、
天から垂れる
蜘蛛の糸に見える日が来るとは思ってなかった。いやまあ、それでも浦井ランディが変質した理由が見当たらないことには変わりないん
ですけどね。
disc1は家族の繋がりが切れたからじゃん? disc2はランディのかみさまが櫻子夫人じゃなくなったからじ
ゃん?disc3、変質の理由にまるで見当がつかない。
傍からはまさみ夫人が手綱を離したからランダムスターが増長して
いるように見えると思う、夫人はどこにいるんだ何とかしてくれって皆考えてると思う。
レスポールが縋ったみたいに。でも夫人は、
夫人だけはそうでないことを知っている。
だって夫人の声はとうに届かなくなっているから。
独りで思いつめて、思いつめて漸く見つけた 答えが「私のせいでしょ?」なの胸が痛すぎますね。夫人がそんなに思いつめてるのに、浦井ランディが「悪魔」
になった瞬間にも致命傷を負った瞬間にも夫人は直接の原因になれ
てないの本当ひどいと思う。全くの妄想なんですが、浦井ランディが「人間」
じゃなくなった瞬間、
老パール王との一騎打ちで門番を盾にしたあの時だと思ってるんで
すね。あの瞬間、ランディは他者との繋がりを全て失ったんです。
愛してくれる人も気遣ってくれる人もなくなって、
彼らに与えられたものも手放した。
師匠に教わった剣術を塗り替えたように。
夫人の死も大きな要因ではあるんだけど、一因でしかないのがさ。
致命傷についても、他のdiscのランディは「夫人の幻影を見る→意識を奪われている隙を突いて傷を負う」じゃないですか。浦井ランディだけ、その流れに「狐の面が真っ二つに割れ、驚愕と絶望の表情を見せる」のを挟んでくるんですよ。夫人の幻影(これだって魔女が化けたものかもしれないけれど)はきっかけであって、直接の原因は魔女の加護が失われたことだって明示される。
つらくない!!?? 2幕後半であんなに「彼女はぼくがまもる!」感出してたのに!!!
怖い辛いってd2ランディみたいなこと言ってたら明日はうっかりライビュなので、尻切れトンボだけど一旦締め。
長澤まさみさんランダムスター夫人。
まさみ夫人の脚が長い。色んな方が仰ってますが脚が長い。
そして思った以上に歌が上手い。低音がしっかり太く響いていて、
大変にドスが効いててよいです。最初の登場シーン、
魔女の予言がエコーと音響も総動員で殴りに来てましたね。
テレビの俳優さんだしなあと思ってたけどしっかりランディとロー
ラを惑わす化け物でした。「若返ったなんてもんじゃないわー!」「おっさんが
長澤まさみになった!!」存在がそのままセリフになるってすごいな
長澤まさみ。
まさみ夫人、”生身の人間”なのがすごいし痛いししんどい。
当たり前なんだけど、
ミュージカルの登場人物って感情にしろ行動にしろ、「普通」
の枠から外れてることが多いじゃないですか。
まさみ夫人はどこまでもただの人間なんですよ。
虚構なのに
現代日本からかけ離れた世界観なのに、
朝ドラに出てくるみたいなふっつーの人間がいた。
あれすごいよほんと。
まさみ夫人だってランディと一心同体なんだけど、
濱田夫人みたいに自分をなくすほどひとつになることはできなくて
、櫻子夫人みたいにランディのかみさまになることもできない。
ただの小さい人間でしかあれないのが彼女の魅力で強さで、
弱さだったんだと思う。
彼女の在り方、
破滅の仕方は非常に原作の
マクベス夫人に近かったと思う。
原作に近いというか、
この
解釈*3で見た
マクベス夫人像にばしっと填まった。
1幕の夫人は男性的な要素が大きく、2幕ではそれを失い、
また王殺しで見た赤い血をきっかけに弱さが現れる。
血の恐怖を吐き出す場を得られないまま、
恐怖に押し潰されていく。そんな感じの論だった。
まさみ夫人じゃない?
まさみ夫人、
女性性を押し付けられるのを要所要所で拒むんですよね。
例えば王とJrへの敬礼。あそこ、
まさみ夫人は騎士の礼なんですよ。濱田夫人も櫻子夫人も、
両手を胸の前で組んで腰を落とす淑女の礼をするのに、
彼女はランディと同じ形の礼をする。
レスポール王から「奥さん!
」って振られたときも熱のない対応をするの、
相当肝据わってるなって思うしよっぽど嫌なんだなって感じ。「私の殺意」
でランディをガンガンに煽るので女性として見られることそのもの
が嫌なわけではないと思うんだけど、服装にしろ振る舞いにしろ、
自分の性別によって何かを制限されるのが嫌なのかなあ。
そんな彼女の上げる悲鳴は鋭く甲高く、夫人が「女性でしかない」
ことを突きつけてくるの最高に残酷。(ところでまさみ夫人、
いれるの誰よりも早かったですね。
あの妖艶disc1夫人も歌い終わるまで待ったっていうのに。)
(ここ、
そういう素振りだけで跨ってるだけだったら夫人の闇が思ったより
深いやつだよなって考えてしまう、もしそうなら「子供を作ろう」
が全く別の意味を孕んでくる)
男勝りで強気なランダムスター夫人だけど、
動揺した時に見せる面は本当に、
どこにでもいる小さな人間なんですよね。
王が殺される場面を直視できない、「手を洗わなきゃ」
の錯乱状態、
翌朝の演技だって人の目がないところで繕う余裕がない。
なんでもないこと(門番の言葉とか)にびくびくして、
罪が暴かれることを恐れている。
それでも1幕ではランディと一緒に恐がることができていたのに、
2幕では何も話さない。いや言葉は発するんだけど、全部「
ランディのための」言葉であり仕草なんですよね。
最愛の夫にさえ自分の弱さを見せられない、
それがまさみ夫人の弱さなんだと思う。
彼女はランディの前で弱音を吐かないし、
酒で流し込んだ
睡眠薬だって、ランディが来たら冷蔵庫に隠して。
赤い血に囚われていることも眠れないこともランディには話さない
。ランディが他所を向いていても彼女と向き合おうとしても、
夫人の心を裂いた傷はランディの手の届かないところ、
彼女は独りで狂っていく。彼女を助けたいランディに向けるのは、
慰め励ます言葉だけ。夫のぶんの罪も背負って励まして、
ランディはそんなこと望んでいないのにね。
最後、Jrとマーシャルに紳士の礼をして飛んだ夫人。きっと彼女が欲しかったのは王冠でも王妃のドレスなんかでもなくて、「ランダムスターになりたかった」んじゃないかな、と思う。ありのままの自分を受け入れられ愛されている男の子に。パンフレットの一番最後の写真を見てくれ、1人立つランダムスター夫人を包む霧に、ランダムスターの幻影が映っているあの写真。
病識があるまさみ夫人とランダムスター、また改めて話したい。
*4
待ってた!! 岡本
エクスプローラーのこともそんなに嫌いじゃなかったはずなの
に、じゅんさんの登場でまず思ったのがそれだった。
あの質量さえ感じさせる、
パワーのあるあったかさはじゅんさんの
エクスプローラーだからこ
そだと思う。
髪型は黒髪をあえて白く染め、でっかく作ったモヒカン部分をさらに赤く染めるこだわりのスタイル。ニワトリかな。ランディを悪夢から遠ざける朝告げ鳥だったのかな。モヒカンになってない部分は細かい三つ編みになってて、それがまた鳥っぽい。最初の殺陣は別々に戦いながら互いのピンチには駆け寄り加勢する、disc1とはまた違う共闘でした。
disc1から一層父ちゃんらしさを増したローラでした。王の葬列で、最後までマーシャルについてやっていたり。涙を拭いながら歩くマーシャルの頭をぐいっとやって、たぶん不器用な父親が頭を撫でてやってるんだよねあれね。肩を抱く父に身を寄せるマーシャル、父親に縋る幼い男の子でしたよう……。disc3のマーシャルは声が高いのもあって、こういうときの繊細な男の子っぽさが際立ってました。
ランディに対しても、息子みたいな後輩だと思ってたんだろうな。自分で親子ほど歳が離れているが、みたいなこと言ってたし。魔女の予言前のシーンでランディが乱心したときはマーシャルにするみたいながち目のビンタ入れていて、ランディもそれを気にした様子でもなく。あそこは2人の距離感がよく現れていると思う。disc2ローラが大狼狽していた「マーシャル!…おおお前、王様になりたいか?」「えぇ?」のやり取りも気にする様子がなくって、息子二人のじゃれ合いぐらいに思ってるのかなって感じ。鉄拳を落としながらも気にかけて守ってやる、二人の父ちゃんなローラだった。
そんな関係でも1幕で、ランディに「親友」っていうところが好きだよ。自分より出世していく後輩に恩を着せるわけでもなく、嫉妬を見せるわけでもなく、導きながらも心をほぐしてやろうとする優しい先輩。
体調が良くなかったのかもしれないんですが、
ランダムスター王と
大量破壊兵器の話をしているときのローラがと
ころどころで鼻を啜っていて、
涙ながらに説得しているみたいでオタクは精神を袋叩きにされまし
た。
目を覗き込んでくるランディを振り切るようにバイクを進めて、
彼の弁を聞きながら苛々と動かすつま足がdisc2とは全く違っ
て見えて。(
disc2のローラはいかにも聞き流している風だった。)
鼻を啜るような音が入ってたのはバルコニーで予言の話をしたとき
とこの時だけで、
ランディを案じるローラの心痛のあらわれのようで余計につらかっ
た。
このローラはマーシャルだけじゃなくランディのことも本当に案じてくれていて、それだけに暗殺者の言葉を受けての「まさか…ランディ!」がすごく痛い。敵から目を離さないまま、衝撃を顕わに目を見開いて。彼は最後まで、ランディのことを信じていたんですよ。答えに至るのにそう時間は要らなかったから、可能性には気が付いていた。わかった上でローラはランディを疑わないことに決めたんだよ。彼は命を懸けてマーシャルを守っただけじゃなくて、命を賭けてランディを信じたんだよ。天国のローラ、再会したランディの頭に思い切り拳骨落とした後で、全てを水に流してぐっと抱きしめてくれないかな……無理かな……。
最期の殺陣も当然のごとくしんどいポイントです。disc1,2では斬られるのはマーシャルに逃げるよう言ってからですが、disc3ではかなり早い段階で手傷を追う。マーシャルを庇って避けられただろう一撃で脚をやられ、マーシャルから敵の目を逸らすためにその脚で大きく暗殺者を蹴り上げて利き腕を斬られ。マーシャルが駆け寄ってくるときには、今から逃げてももう助からないだろうなあってぐらい。ここで駆け寄るマーシャル、「命の危険をわかっていてもただ見捨てることができない」っていうところにローラとの親子を感じさせてよいです。己が逃げて生き延びることが父の最期の希望になる、それを理解してまだ生きている父を背にバイクを駆るマーシャルが優しくてしんどい。父と一緒に戦って散ることも選べただろうに。ローラの最期の言葉、そんなマーシャルの想いがちゃんと伝わっている……。
ローラのところで一通り語ってしまったのでここで。自分の気持ちより大好きな人の願いを選び取る優しい子。
声が高くてちょこまかしていて、まだ成熟していない線の細さを感じさせるような可愛らしいマーシャルでした。そんなことないはずなんですけどね、まあそう見えたんですよ。父ちゃんの陽気な()愛情を受けてすくすく育った優しい子。みんなに大事にされてきたあのJr.に守ってあげなくちゃって気持ちを持たせるってすごいよなあ。バルコニーに引っ張り上げられるところ、仔犬2匹が頑張ってるみたいだった。
そんなdisc3マーシャル、意外に胆力があるんだと思う。夫人が飛び降りた後、天を仰ぐJr.に対して飛び降りた先をじっと見続けていたんですよね。彼のほうが死に対して肝が据わっているんだなあ。敵の死であっても戦いの犠牲から目を逸らさないところが王の器なのかもしれないね。学級委員を決めるみたいに降ってきた王位に一番動じなかったのも彼だったし。古着屋やりたかったけどしょうがないよなーって感じ、すごくフラットに受け止めてる。
ラストの「生存者がいたぞー!」にびくっと背を伸ばしたのはちょっと意外でした。敵味方のバランス感覚はしっかりしてるんだなあ。(disc2はここで嬉しそうにしていて、底抜けの人の好さを覗かせていた。)
髪型は赤いモヒカンで、父ちゃんの真似してるんだっていうのが一目でわかるスタイルなのが愛らしかったぞ。
ひよこみたいだった。小さくて幼くてうす黄色で。
お父さんやESP軍の後をひよひよ付いていって、僕も僕も!
って羽をぱたぱたさせてるみたいな。彼を守るのが当然、
守られるのが当たり前なひよっ子Jr.で、
グレコはESP軍の面々にさぞ仕事を取られてただろうと思う。
あんなの色々教えて構いたくなるに決まってる。
「王の報告」が終わった後、
ヤマハに駆け寄って拳をこつんって合わせに行ってて、あんなに大事に甘やかされてきたのに増長せずにすくすく育ったんだなあってほっこりしました。
ヤマハの報告シーンで我が事のように胸を張ってたのは「僕の大好きな
ヤマハはこんなに頑張ったんだぞ!」ってやつなんだね、ヒーローを誇る男の子みたいだね。人の頑張りを認めて評価できるJr.、こんなにひよこ感たっぷりでも王の器なんだなあって思った。
このJr.に対するESP軍の接し方、王も含めて完全に「箱入り」のお坊ちゃん。
ゼマティスの処刑でも、いつものあんまり分かってなさそうなJr.
の言動をみんな温く見守ってる。宣言までしてるのに、あの「
弾みで首切ってしまった」感じ、すごいよねあれ。
そんでもってESP軍の反応がひどい。ひよひよJr.
が頑張って首切ったのに、声を揃えて「あ〜あ、(
やっちゃったよ)」ですよ。泣くぞー、と思ったんだろうなあ。
でも、このJr.は首を見てもげーげーしないんですよね。いや、
見逃しただけかもしれないけど。
でもこのJr.はきっと、結局お弁当食べられないままパール王の謁見まで行くと思う。話しながらべそかきそう、ああでも泣かないかな。目に涙をいっぱい浮かべて、つっかえつっかえしながら、でも最後まで泣かないでちゃんとお話できる気がする。あの老パール王にしばらくここで暮らしなさい、君さえよければ稽古もつけてあげよう、って優しい言葉をもらって、お礼を言いながら泣き崩れるんだ(そしてフェルナンデス軍の庇護欲に火を付ける。)戻ってきた短剣をね、胸にそっと抱き寄せるのが大変よかったですね。
彼、フェルナンデス国でもひよひよしてたんだと思うんですよね。
グレコとの問答で老パール王がはっと驚いてたのはそういうことだと思う。
グレコもパール王もJr.の可能性を信じてはいたけれど、ノータイムで頷くとは思ってなかったんだろうなあ。その後びっくりする剣幕で家族の元へ行けって促すのを見ながら、Jr.は家族とともに迎えられなかった朝を知っているんだよなあと思っていた。見送るJr.の肩にそっと手をかけて押し出してやるパール王まじ先生。
「明けない夜は長い」あれね!いいよね! 真宙さんお歌に苦手意識強いらしいんですが(アフトでもパンフでも言ってる)、いやあみんなの希望だった。みんなの輪の真ん中で声を張り上げるJr.はたぶん剣もあんまり上手くないままだけど、もう守られているだけの子供じゃない。彼はそこにいるだけでいいんだ、Jr.が敵を見据えているから反乱軍は明けない夜を戦える。王ってそういう存在じゃん、Jr.はもう王の器なんだよ……。
ところでJr.と
グレコが真ん中でポーズ取る姿に「ぷりきゅあだ……」
と妙な感動をしました。メタマクdisc3は
プリキュア。
Jr.が後を継いだESP国ってifがあるとしたら、私は高杉Jr.のESP国に住みたい。disc1はどんなに親しい仲でも裏切るかもしれない疑念を拭えないと思うし、disc2は王になる強さと人間としてのバランス感覚を得たけど1幕で見たランディと同じものを感じさせる笑みがこちらの記憶から拭えない。高杉Jr.は人を信じて頼ることを自然にできる、みんなを愛してみんなに愛される王様になれると思う。なれたと、思う。
「だったら、斬るしかない!」って覚悟を決めたのに、ESP軍に斬りつけた刃をはっと見てしまう、人が「人間」であることを絶対に忘れないJr.が大好きだよ。
威厳 #とは みたいな。
ご本人がアフトで「(
威厳のある王を演っていたつもりだったんですけど)
いのうえさんに「威厳のない王様もいいね」って言われた」
と仰っていたんですが、思わず深々と頷いてしまった。
d2の感想でも見たような、「テレビの演技に寄ってる」
*5感じだったのかなあと思った。
しかしこの
レスポール王、
何を考えてるのかいまいちわからなくて。
いや悪い王様じゃないと思うんだけどさ。
1幕での問答、さりげない声音で優しく問いを投げるんだけど、なんだろう、笑ってるんだよね。蔑みや拒絶ではなかったんだけど、親愛や慈愛ともなんか違って、でも無関心でもなくて。何らかの何かがランディに向いてるんだけど、どんな感情がどのくらいの籠ってるのかがさっぱり読み取れなかった。
Jr.を送り出してから自分が寝室に去るまで、
彼がどんな意図で何をしたかったのか、さっぱり読めなくて。
たぶんあそこのシーンは「役割」
じゃなくて人間だったんだと思うんだけど。わからない、
レスポール王がわからない……。
レスポール王といえば。2幕の問答、
disc2から地下室からバルコニーに変更になりましたよね。
あれ尺の関係だと思ってたんですが、「
殺した者の幻覚はランディの言葉に従って現れる」
からだってやっと気づきました。
バルコニーの向こうから現れるのは、
レスポール王暗殺の晩、
ランディが
レスポール王の血が「
東京湾を真っ赤に染めるだろう」
って言ったからか!
あ、そうだ。1幕葬列で遺影を囲む花が紫と白のバラだったので、やっぱり薔薇は王家のモチーフなんだと思います。寝間着の裾から黒白縦縞のズボンが見えて、葬式柄……と思ってすまなかった。
忠臣っぽかった。
いやごめんなさい、2幕の浦井ランディが強烈すぎて色々吹っ飛びました。
報告しながらひょいひょいビール飲んじゃうあたりランディやローラと仲良しなんだろうなあ。牛乳飲んでたローラ以外飲酒運転になるけどいいのかしら。
エレベーターの中で、「数字とか見ちゃったりするよね、見たくもないのに」って言ってやりながらずっと
グレコ夫人を見てるのが流石だな愛妻家、と思ってたりしました。ランディとうちの妻が素敵だ話をしたことがあってほしかった。
お衣装は腰のところに
シベリアンハスキーの毛みたいなもふもふの毛皮がついてました。「狼」を強調しているのかなあ。
Jr.の「家族はどうした」に坊ちゃんの成長を感じて衝撃を受けてるあたりがJr.の養育係でしたね。パール王とはそういう知り合いだったのかもしれない。坊ちゃんの養育係に任命されたんだ、ってランディに話したらそうかおめでとう!って言われて紹介されたのかな。自分じゃ力になれないけど力になれる人なら知ってる、って言いそうだし言える人脈も持ってそうだよね浦井ランディ。
disc2でもそうだったんだけど、
グレコへの感想が淡白なのは8/23のdisc1
グレコが心に焼き鏝を当てていったからだと思う。うん。終盤にもいちど観に行くので、そしたらまた変わってるかも。
峯村リエさんグレコ夫人、小沢道成さんローマン。
グレコ夫人、今回は夫とお揃いのジャケットでしたね。あれよかった、すごい好き。夫人は白髪交じりだし、disc3の
グレコ夫妻はたぶん歳の差婚なんですよね。だからなのかそれでもなのか、ペアルックがすごく微笑ましかった。
ローマンは優しい子でしたね。「死体はもういいよ…」と言いながらも、命の残り火を愛しむように猫の死体を抱きしめてあげられる優しい男の子。ローマンのこの台詞はESP国の現状を暗示してると思ってるんですけど、笑顔の消えたこの国でなお、このローマンは他人の苦しみに心を割いてあげられる子なんだなあって。
さて。えーと、唐突にdisc1,2を語ります失礼します。
d1d2で、凶刃に倒れたローマンを置いて
グレコ夫人が逃げた理由について。個人の解釈なんですけどね、
グレコ夫人が息子を置いて逃げる理由なんてそんなの、ローマンが願ったからだよ!!!母が逃げ延びることが、もう助からない息子の最期の願いだったからだよ!!!!! と思うんですよ。
*6
だって
グレコ夫人、命惜しさも何もそもそも生に執着していないんですよ。暗殺者が現れた時点で死ぬ覚悟を決めている。「(
グレコを喪って)未亡人になるくらいなら舌噛み切って死んでやる!」とまで言ってるんです。孤独な生より誇りある死を選ぶ、そういう人なんですよ。その彼女が、将軍
グレコの妻として誇りを持っている彼女が信念を曲げて生を選ぶんですよ。理由なんてひとつしかないじゃないですか。彼女が逃げればローマンは小さな希望を抱いて死ねるから。命を懸けてマーシャルを逃がしたローラのように。
そりゃ
グレコ夫人だって息子の死なんて望んでなかっただろうし、代わってやれるなら代わりたかったでしょう。でもローマンはもう生きられない。5つの子供のからだからあんなに血が出て、助かるわけがないじゃないですか。だから夫人は逃げるんですよ。我が子が絶望したまま死なないように。守れなかった命の代わりに、せめて心を救うために。逃げながら彼女が叫ぶ「人殺し」、暗殺者だけじゃなくて息子を救えなかった自分にも向けた言葉なんじゃないかな……。
disc3の感想で変更された演出を語る、何やってるんだかって感じですが
グレコ夫人があまりな言われようしてるので語りたかったんですよ。
もちろんdisc3の、逃走も自決もできたのに息子を庇って殺される
グレコ夫人の行動も愛情ゆえだと思う。そして母の願いを背負い、最期の力を振り絞って逃げるローマンは、本当に優しい子だと思う。
ユウキもうざ……年頃にやんちゃではあったけど、disc1ほどのクソガキ感はなかった。どっちかというと裸の王様に出てくる子供みたいな役回りだった、ように見えました。
村木仁さん門番。
disc1よりちょっと賢しい雰囲気でした。気のせいかも。スケベなマタニ
ティーと二十時間睡眠は健在。
医者が冷蔵庫から勝手にビール出しても何も言わなかったり内服薬の袋に入った甘納豆を気にせず食べたりするあたり、あんまり教養はなさそう。王が死んだんだって理解したときは寝室まで駆けていったし、衝動的に動く人なのかもしれない。何回か見たらまたイメージ変わるかも。
個人的には、門番に対する浦井ランディの態度が変わってったのが気になっている。立場がだいぶ違う
からしょうがなくはあるんだけど、ランディの門番への態度って基本的に雑なんですよ。苛立ちや無関心を隠しもせずそのままぶつける。婉曲な言い回しでは通じないからっていうのもあるんだろうけど。
なのに「俺ぁ生きてるだけで大変だよ」だけ、すっごい優しいんですよ。疲れた顔で、でも憐れむような労わるような色さえ滲ませて語り掛けるように応じるんです。明らかに門番に向けて喋ってるもんだからびっくりして双眼鏡覗いてしまった。妻や自分を守ろうとしていた門番は夫人を喪ったランダムスター王が「優しいランディ」の面を見せる最後の人間だったのか、このときの彼は
ヤマハや兵士に命じたとき同じ「絶対に逆らってはいけない」暴君だったんだけど素朴で学のない門番には王が孕んだ膨大な悪意や殺意が見えなかったのか。どっちだと思います?どっから見てもしんどさしかないんですけどね。
パール王ー!! うん、好き。
殺陣の好みはぶっちぎりでdisc1パール王なんですけど(
腰を落として静かに下がっていく名乗り最高でした)、
disc2のパール王は兵器みたいに顔が良かったけど、
智慧の王って感じの老パール王見た瞬間に好きになる。
disc1は智略の王、disc2は正義の王、
disc3は
智慧の王。
ランダムスターとの関係も旧友から家庭教師に変わっていて、
Jr.に加勢する動機づけがより強くなった。
言うても決定打はJr.の「もちろんだ!」だったんだと思う。
まだまだ未熟だと思っていた教え子の成長を目の当たりにして、
自ら討って出ることを決意したんじゃないかな。あの一瞬の驚き、じわじわ浮かぶ嬉しそうな笑み、教え子が自分の手を離れて羽ばたく瞬間を見て、王ではなく浦井ランディの師としてなすべき(だと思ってた)ことを為すと決めたんだと思う。「明けない夜は長い」の
プリキュアシーンでパール王のお歌が入るところ激熱でした。色んな枷を振り切った獰猛な激昂でしたね。
殺陣のシーン、浦井ランディと戦い方一緒だ……!話には聞いてたけど剣の出し方とか盾の使い方とか一緒だ……! ランディの盾が髑髏でパール王のそれがドラムセットのシンバルなの、何の象徴なんでしょうね。ドラム担当
ナンプラーの意味だけではないと思ってるんだけど。
老パール王の「覚悟!」からの流れがつらい。あそこ、浦井ランディが師を超えた瞬間なんですよね、忠臣を身代わりにするという最悪の手段でもって。パール王が教えたままの剣筋だったら勝てなかったはずで(だからこその「覚悟!」だと思う)、かつての教え子が「人間」から「悪魔」になる最後の一押しをしてしまった彼は、どんな気持ちで死んでいったのだろう。
ナンプラーについても触れておこう。スティック、回ってましたね!
*7 あれがスティック回しか……じゃなくて。
ナンプラーちゃん、スカート穿きたかったのかな……。2幕のキルトも男性用の衣装とはいえスカートと言えなくもないし。いやね、1幕でローズは「ドラムはそのままでいい」って言ってた
*8のに、2幕では衣装チェンジがあるじゃないですか。で、
ナンプラーはそれに全く抵抗を見せてないじゃないですか。だとしたら、ローズは
ナンプラーの何を許容したんだろう。彼女が認めたのは「男の子がスカートを穿くこと」、もっといえば「生まれ持った性別に縛られない」
ナンプラーの柔軟さなんじゃないかなって思う。
ファッションは全く分からないんだけどさ、このバンド衣装に統一感なさすぎません? 白馬の王子様チックな
マクベス浦井、洋風
かぐや姫みたいな
ナンプラー、バンクォー橋本は
厚底ブーツに十字架光ってるしマグダフは忘れた。2幕の衣装一新にローズのメンヘラ強い意志を感じましたね。
マクベスだけ何も変わってないから結果めっちゃ浮いてるの、君らはあれでいいのか?ってぐらいだった。
あとこれ、わざわざ項目作った理由なんですけど、ユウキの「くーるくーるぱー!」に誰もが同調してるのがすっごいキツかったんですけど、何あれ、なにあれ……。ファンも業界のお客様でさえノリノリだったんだけど何だったのあれ。唯一あからさまに同意しないのが
ナンプラーだったんですが、
ナンプラー、しーってやってるの反ってキツいからやめろ
ナンプラー、眉を寄せてはいるのに目の奥が笑ってるのがキッツいからやめろ……。ヤジも「別のバンド作ろうぜ!」の声も消え、人がはけたホールに響くローズの「どうぞご内密に……」が本当につらかった。