つまるところ。

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タージマハルの衛兵(2回目)感想

1回目はこっち。

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今回けっこう前の席だからというのもあるのかいくつかだいぶ印象が違った。後ろのほうだと音が空気を含んでいるというか、少しふわっとした質感で届くよね。嫌いじゃないけど印象は異なるから、どっちが見せたい絵なんだろうと考えたりはする。


とりあえず特に衝撃大きかったの2つ先にいいすか。

 

〇最後の場面、フマーユーンの白昼夢。前見たときあれはバーブルが話した計画の後半かと思ったんですよ。皇帝を殺したかはともかくとして、バーブルと2人でジャングルの中、白檀も使った筏の上で過ごす空想。違いますね?あれ「俺たちの秘密基地」の思い出だね!?フマーユーンは最後まで発明なんかできなかったんだな!?
ハーレム警備も秘密基地の思い出もフマーユーンが語る事実はあんなに鮮やかで、フマは「発明」の、つまり空想で誰かを楽しませる才能はないけどその代わり、事実を語って誰かをわくわくさせる才能はあったんじゃないかなあって。バーブルは空想でフマーユーンは現実で、誰かを救う才能があったんじゃないかな、って。

〇act2、あの「ひどい仕事」の後、バーブルがゼロから「発明」したものは何もないんだなって……。雲の紅茶や透明な家は手を切り落としながら考えたものじゃん。シートベルトやとんでもない悪夢はエアロプラットの、持ち運び式抜け穴の二重袋はフマの発明のアレンジで。4万本の手を切り落として、最後まで悲鳴を上げなかったウスタッド・イサの手を切り落として、美しいものを愛する彼の手は「石みたいに」固まって使い物にならなくなった。
バーブルが話す皇帝暗殺と「計画の後半」はフマーユーンの心をぜんぜん動かさない。彼の空想はいつだってフマをわくわくさせていた(「ひっどい」光景を掃除するときでさえ)のにバーブルが見る現実はフマーユーンに響かない。フマーユーンみたいに事実を鮮やかに伝えて想像させる力をバーブルはもっていない。
あの仕事でフマーユーンの目は見えなくなってバーブルの手は使えなくなった。でも二人が協力して、お互いを助ければ目も手もまた使えるようになったんだよね。そんな未来もあるはずだったんじゃないか。あのときだってフマーユーンはバーブルを助けて自分も楽になる術を、バーブルの足枷を外す鍵を持っていた。バーブルの言葉はもう彼を動かさなかったけれど。

 

こっからは雑多ですはい。
・フマとバーブルの手や足がすごく赤っぽくて(特に足)、なんだろうと思ったんだけどact2で血のりの色が落ちてないんだと気がつくなどした。血の色が染み込んで落ちない、っていうとわりとこわいやつ。
バーブル、なかなか紐を結べなくて独り言いいながら格闘してた(ちらちらそっちを気にしてるフマーユーン)
・「黙ってろ!」って言われたから鳥の声がして話しかけたくなるのを口押さえて我慢するバーブルえらくてかわいい。「ムネアカ!!!ムネアカナントカカントーカ!!!そういう名前!」って答えちゃうフマーユーンもかわいい。

・フマーユーンの規則の話を聞いてる(聞いてる?)バーブルの精気のない目、ライトの加減もあって少しオリーブ色の浮いたうす茶色に見えて乾いたふかふかな地面みたいな色をしてるなって思った。
・act2以降、バーブルの目が塗りつぶされたみたいに暗く黒が強くなってて、黒目の縁に鮮烈な赤がのってるのがぞっとした(賛美)

・マッサージをしてるフマーユーン、バーブルの顔を見て話してるようでずーっとちょっとずれてるとこを見てるんだね。腕を伸ばしてあたりを探ってるときも目は開いてて感情も見て取れるのに何も映ってない(視線の先に焦点の合うものがない)感じがするのすっげえなって思う。
・パニックしてるフマーユーンに対するバーブルの兄ちゃんな接し方がわりと好き、フマが上手じゃないのかバーブルが慣れてるのか、バーブルは感情的に衝突したら一歩引いてやる振る舞いが多い気がする。

・たまたまかもしれないけどさ、フマーユーン、血のべっとり染み込んだ雑巾を絞るとき目を瞑ってぱっと顔をそむけるね…。バーブルと並んで絞ったときもその後のときも、そんな大きな動きじゃなく、でも目線を外す。血が滴り落ちる手を見られない。
このずっと後、act4で「もう血なんか見たくない」みたいなことを言ったバーブルにフマーユーンが「そんな弱い〜」って責めるよな調子で返すんですよね。フマーユーン、自分が弱いから(そういやact1で言ってる)、弱いのを見せないで生きようとしてきたから弱さを肯定するのができないのかなって思った。いま。

・ところでさ、2回目の見張りのときの鳥だけ声が違わない?ムネアカナントカカントーか(ムネアカタヒバリ?)のギャーッ!って声じゃなくて、カモメかウミネコみたいなみゃーみゃーした声な気が。

・「やっぱりお前何っにもわかってない!」から世界の仕組みを説明するフマーユーン、目が濡れてたんですよね。何がフマーユーンにとって涙を溜めるほどのことだったんだろう。バーブルが夢見てたみんなが幸せな世界なんてないと突きつけること?

・やっぱりバーブル、途中から「皇帝を殺す!美は絶対生き残る!!」って言う。

バーブル、育ちは結構大変なのかな。「俺が育ったところに比べれば宮殿だよ」みたいなこと言ってたね。…バーブル、「世界のはずれ」にいた側の人間なのか……

・気のせいかもしれないんですがact4、バーブルが「“ひとりで”逃げるから!」って言ったときにフマーユーンの様子が少し変わった気がしたんですよ。気のせいかもだけどでもフマーユーン、前の場面でバーブルを押さえ込みながら「(3日我慢すれば)お前と俺、また俺たち二人でいられる!」って言ってるんですよ……。フマーユーン、「二人で」いたかったのかな。

◯ところでフマーユーンがバーブルの足枷を外したのは何故なんでしょうね。
バーブルを逃すつもりなら手を切る前に外せばよかった。皇帝の言葉に従う(手を切れば生かしてやる)なら焼き鏝を持って来る必要があった。けれど彼が独房に引っ張り込んだのは、手を切る道具だけだった。
あのときバーブルが「一緒に逃げよう」って言っていたら、フマーユーンは頷いたのだろうか。まあバーブルは思わなかっただろうけど(幻覚です。)フマーユーンはバーイーを「裏切った」し。「後ろめたさで号泣する」フマを見て「許す」と言ってくれたけど、その後でもう一度、バーブルはフマーユーンが裏切ったことを知る。しかも今度はバーブルを救うためでもなく、なんなら必要ですらなかった。皇帝に嘘をつく後ろめたさにフマーユーンが耐えられれば、バーブルの罪をごまかすかわりにフマーユーンがひとつ罪を背負えばどうとでもなったんですよ。バーブルが侮辱したのがアッラーか皇帝かなんて、本当のことは2人にしかわからないんだから。
・ねえそういえばフマーユーン、バーブルの手に剣を当ててからバーブルの顔を見た? そもそもその前に投げられたバーブルの声(「そんなことしたらお前おかしくなる!」)、あのときバーブルはフマの目を見据えていたけど、フマーユーンはバーブルを見てた?
バーブル、剣を打ちつけられてる時は叫んでいたのに手を切り落とされてからは一度も悲鳴をあげない。ウスタッド・イサみたいに。(もちろん役者さんにそうする必要があるんだけど)切られた傷口を隠してうずくまるのがフマーユーンへの優しさにも見えて。さっき言いそびれたけどバーブルが「ひとりで逃げるから」って言った理由、前に提案したときフマがジャングルで暮らすのを嫌がったからでもあるんじゃないかなって(幻覚)act2の「おエライ人、(フマをちらっと見て)皇帝!」とかact3の「月みたいに綺麗な(タージマハル)」とか、バーブルはフマーユーンがこだわったところはちゃんと覚えてて譲ってくれるんだよね。だからきっと、バーブルがフマを一緒に逃げようなんて誘うことはない。あの晩、フマーユーンは嫌がったから。

・夜の警備でフマーユーン、ちっちゃい声で「バーブル…?」って言った……

・act5の白昼夢がフマーユーンの空想でなくいつかの思い出だとしてさ、フマーユーンがact2で「鳥!美しい」って言ったとき、彼が思い浮かべたのはあの時に見た空飛ぶ鳥の大群だったりしない……? フマーユーンが思い出した美しいものたちは"バーブルと二人で見た"ものばかりだったりしない…?
・すげえ、すげえって興奮してあたりを見回してたフマーユーンが、呆けて口を開けたまま目から高揚が消えて、あいまいな動きで表情が無に戻って、また日常に戻る。

・act5のフマーユーンの口上、皇帝の名前変わってましたね……。フマーユーンが止めなくても偉大なる皇帝は君臨し続けやしなかったし、バーブルが計画を実行しなくても美は生き残ったし、皇帝が変わったらハーレム警備兵なんか僻地に飛ばされる気もするし、フマーユーンのしたものの結果はただ1つ、バーイーを失ったってことだけなのかもしれない。

 

3回目(とちゅうでつかれた)もある。

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