つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

シークレット・ガーデンを観てきた

noteから持ってきました。日時はそっちに合わせています。
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石井さんを観に行くつもりで予約をし、石丸さんすごいな?ってなっている今です。なお備忘録なので脈絡はあまりないです。

石丸さん演ずるアーチボルトの話をしよう。
彼の第一印象は、憐れな弱い人間だった。
背中を丸めて本を抱え、会話をしているはずの弟を見ないで動き回る彼は、神経質で新しいことに耐えられなさそうに見える。
動き方がこう、神経の弱っているような、思考に囚われるのを恐れてじっとしていられない人みたいなのだ。
ネヴィルにメアリーを案じるようなことを訴えながらも、家に着いたメアリーに顔を合わせられなかったり、その後もメアリーを正面から見据えることができずにいたり。
庭でリリーを想っているところにメアリーが出くわしたときの動揺っぷりもなかなかすごかった。それでも、メアリーの上着のボタンが掛け違っていることに気がついたら膝を突いて丁寧に直してあげるのだから、引っ込み思案の人見知りではあっても優しいんだろう。そんな印象を与える人だった。
身も蓋もなく言うなら、もともと神経が細くて容姿や能力にも自信がなかった人が、唯一得られた理解者を失ったときに存在意義を落としてきちゃった。そんな感じ。

彼とリリーの話をしようか。
アーチボルトとリリーの関係について示されたのは、アーチボルトが(おそらく) 庭で幻の人々やリリーと踊っている場面だと思う。いつかの夢、過去の思い出に浸り続ける彼を象徴するシーン。
そのときの、リリーとの踊りがすごく綺麗だった。ネヴィルと話していたときの病的な神経質はどこかに隠れて、背筋もすっと伸びた踊り。リリーは舞台の反対側で踊っているのだけど、姿勢やターンのタイミングはぴったり揃っていて、本当に手を取って踊っているみたいだった。リリーは途中で動くのを止めてしまって、それでもアーチボルトは目を閉じたままステップを踏み続けていて。それが切なかった。
彼はリリーの死を全く受け入れられていなくて、夢想に浸るときだけが憂鬱から離れられる時間なんだろう。
自分に対してそっけなく…というか、拒絶よりの無関心を見せられたメアリーは少しショックを受けていたようだったけれど、仕方ないと思う。彼にとってリリーとの思い出は大切な宝物で、そして浸っていることを知られてはいけないものだから。
そんなに大切な存在なのに、物語の中でリリーのほうを殆ど見ないのも印象的。
もちろんリリーが見えていないからなんだけど、同じく亡霊なのだろうメアリーの父アーノルドとメアリーの動きはかみ合っているのとはいかにも対照的だった。
アーチボルトはリリーの喪失と向き合うのではなく、意識から隠すことを選んでたんだろう。手当てをしない傷が治るわけがないのに。乾くまで放っておくならまだしも、他にすることもなくて傷を始終触っているんだから。
駅のホームで線路を覗き込んでいたアーチボルトがリリーと抱き合うところ、あそこで確かに「何か」が変わった。変わったんだけど、何が起こったのか、その後の展開で私の記憶が飛んでいてあんまり覚えてない。もう一回観に行くべきか。
とりあえずですね、一幕のアーチボルトとリリーの踊りが本当に綺麗なのでぜひ。ぜひ。