つまるところ。

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スリルミー大千秋楽おつかれさまでした。(にいまりペア大楽回の感想です)

スリルミー大千秋楽おつかれさまでした。 ありがとうございます好きです。

好きです、なんだけどあの、にいまりペア、こんな緊張の強い関係だったの???????引きで見たから???????

観たものをまだ消化できてないんですけど、なんか、愛って片方だけじゃ成り立たない、双方向の感情なんだな……って思いました。

言うて他の方の感想見るかんじそこまで大きな変化があったわけではないっぽく、いつもより重度の幻想を見ているなと思ってください。*1あと毎回言ってるんだけど役者さんと登場人物を完全に切り離してみる派です。表現者とその作品に抱く印象は別物なんだよ。

 

新納彼、厳しいね?????

新納彼、愛がないわけではなさそうなんですよ。なんだけど、なんか、すごく厳しい。厳格な教師みたいな、“私”の失態やミスを許さない厳しさというか。見てなかったのかしてなかったのか“私”を見る目元にいつも浮かんでいる笑みの気配がなくて、だからあんなにあそびがなさそうに見えたんだと思う。
そして新納彼から鷹揚さが見えないだけで、2人の関係はこんなに空恐ろしく映るんだな、って……。 

このペアの2人は主従関係というか師弟関係というか、はっきりした役割分担があるなあと思っていて。キスの仕方とかスリルの楽しみ方とかを“彼”が“私”に教え込んだんだろうなって感じ、しません? 全公演終わったので言っちゃうと、庇護を伴う精神的な支配と従属の関係みたいなのがさ、見えませんでしたか。幻覚ですけど。
こわいものから守ってくれる関係だから、新納彼が大きな音立てると俯いたりびっくりしたりする田代私は普段の“彼”なら見せない面に驚いてるのかなって、思っていたんですけど。

もしかしてあの、君たちかつて関係性の躾に身体的な苦痛もお使いだったりしました……?
柱を蹴りつける音に“私”が慌てふためき俯くのとか届いていないタバコの煙にひどく怯えるのとか、あれは滅多に見ないからじゃなくて、
“彼”の指示にうまく応えられなくて蹴られたり息ができない状態にされたり、したことあります……?
躾って言っちゃったけど(初めて感じたし初めて言った)、慈愛や赦しのないあの行為は躾と呼ぶしかないじゃん……。 

煙草に火をつけて一服してるときは「弟」をぶつけられても比較的穏やかに流すから、"私"への当たりが強くなるのは余裕がないときなんだと思う。基本的には“私”に大人ぶるし、そう言ってほしがってる(と少なくとも“私”は思ってそう。)*2無視するって形の罰は与えてるけど強く睨んだり振り返ったりはしないのも、大人っぽい"彼"と言わずにおれない*3子どもの"私"の力関係が表れているのかなって思った。

 

"私"の心のひび割れ、いつから?

"私"の心はいつから壊れ始めたのだろう。にいまりペアを見るたびに考えるんだけど、今回は速攻で(自分のなかの)こたえが出た。

長くて辛い半年間。"彼"と離れていた時間に"私"の心は耐えきれなかったんだなって。

「僕はわかってる」の最後、「わかってるだろ……」で狂喜から一転、ぞろりと表情が落ちて。あれいったい何……!?まだ1時間以上あるのにこれから何を見せられるの!?って思った。
あの眼の奥にじつは寂しさとか迷子の切実さとかがあったの?わたしが見落としただけ?それならその方がずっといいと思う。マッチを拾い上げてからの爆発するような歓びも"片鱗"だなって毎度(後から)思うけどさ、狂喜からゼロに落ちるのそれこそ人間の情動じゃないじゃん……。
でもこのときもう……だったら「契約書」での思案も「超人たち」よりあと加速していく欠落もラインが綺麗で構図が楽しい(じごく)と思うよ……再会したときから決めていた、壊れた心の最後の願い。

  

全ては“私”の計画通り

田代私が「契約書」で考えてる顔するって噂には聞いていたんですよ。ほんとだ考えてる……。“彼”の言葉に抗いも見せず泣きそうに顔をゆがめて震えていた“私”が、「文書?」*4っておうむ返ししてから「認めるんだ」まで、“彼”の言葉を意識の外にして、遠くを探すように目をこらしている。*5立ち上がりざま勢いよく振り返ったときには、泣き出しそうな切迫した表情にぱっと切り替わって。
あの姿が“私”の思案なら、タイプライターの前で目を上向けて考えてるのはフェイクなんだろうな……。このとき新納彼は背を向けて“私”を見ていないのに見られているように仕草を作る。印象付けたいのは“彼”ではなく審理官に、なのかしら。

話変わるんだけど、新納彼はニーチェの思想(を曲解した理想)を語るとき本当に力強く嬉しそうにするね……。*6「やさしい炎」でも満ち足りた顔はしているけど、有能感に基づく自信をもっているのはあのときだけな気がする。気のせいですきっと。

 

スリル・ミー!!

なに?????なにごと???????

テンポだかメロディだか歌詞だか何が違ったのかわからないけど*7、なにかがかけ違ってトロッコがひっくり返ったみたいで。がちゃがちゃに乱れた音の渦の中、新納彼は怒鳴っていて田代私はわめいていて、爆発をぶつけ合うようなやり取りと目まぐるしく動く表情と叫ぶような歌声と、加熱していった激情がエネルギーはそのまま揺らがない脅しに転じて。

なにごと??????????

わたしこの曲はいつも頭の端っこでピアノの拍を浮き輪かわりにしてるんだけど、途中から見失ってぐるんぐるん振り回された。なんでかはよくわからない……遠かったから……?
こんなスリルミー(曲のほう)体験はじめて…みたいな感覚だったんですけど2人はこんな感じだったかといえばだいたいこんな感じだった気がする。にいまりペアは互いに見せたい姿を見せているから、どっちもが余裕をなくしたらこんなにも分かり合えない人間2人になるしかない。普段は幼くてびくびくしてて訴えるときも見上げるようにしてるけど、田代私は新納彼とほとんど身長変わらないおとこのこ*8なんだよね。いくら主従関係ができてるようでも、従の側が放棄すれば力づくで言うこと聞かせはできない。
激情が怒りじゃなくて泣きや懇願に傾きがちなの“私”のお育ちの良さだと思ってるんだけどさ。「もっと!」「お願い!」って切なげに懇願をぶつけてた“私”が「今は駄目だ!」を聞いた瞬間一転して(一見)冷静な脅しの姿勢に切り替わるのが、あんなに怒ってるのに言動の感情制御が完璧で、ぞっとするほど頭が良くて能力が高くて、ふだんの“私”は丁寧に丁寧に加減してあの関係をつくってたんだな……と思う。あのくるりとした黒い目の真顔で“彼”からびたイチ視線を逸らさず落ち着いた足取りで詰め寄っていく全身からぜんぜん鎮まってない激情と“本気”の気配がするの、あれはもう両手を上げて降伏するしかないじゃん……。

ところで今回のスリルミー、「もう逃がさない」からぬるりと這うような質感がなく発破のような直情さで、だから「いつかのように」で目を閉じ“彼”に頬ずりする異様さが際立つみたいなとこありませんでしたか。あれは“彼”も突き飛ばすよ。そのまましてたら粘度の高い執着に頭から呑まれちゃうよ。

 

世界に宣戦布告する“彼”、砕けていく二人

「計画」でどす黒い殺意をひらめかせてから笑みに残忍さが滲むようだった新納彼がさ、「この町破壊してやる」を荒々しい興奮と熱量はそのままに笑顔を引っ込めて叫ぶように歌うの、あの、あれは幸せそうなの……? 2年前に見た柿澤彼(泣き出しそうに吐き出して歌う)と比べたらそりゃ幸せそうだけど、世界を打ち倒さなければならないと思ってそうなあの“彼”は幸せなのか……? でも“私”に向き合ってるときは高揚して楽しんでいるような残忍な輝きもあるからかな、「超人たち」の“私”はこっそり“彼”の様子を見るどころじゃないもんね……。目をまん丸くして衝撃に感情を塗りつぶされたような顔で、堪えてた動揺が飛び出すように歌い出す声の強さで、動きはどこか芯の抜けたようで、どれもばらばらなのが衝撃の強さという感じでかわいそう。
というかあのですね、「超人たち」の最後の2人の表情、あれは一体何の感情なの……?*9 2人の目の先にあるもの、おそらく犯した罪が強い衝撃と情動を引き起こしているのはなんとなくわかるんだけど、2人のあれをこういう心理って引き合いに出すもののストックがわたしの中にない。
にいまりペアと成福ペアは(特に“私”のほうが)強く音を出して呼吸をしていて戯画的だなあと思う。このペアがそれをするとかえって、殺人の罪は甘やかでも物語的でもない、質量を伴ったみにくい事実って感じがするなって思った。個人の感傷なんですが。新納彼のぎらぎら興奮した目は口元に笑みがあっても残忍さが隠れていないで、いつもの「大人っぽ」いカリスマみたいな空気は微塵もないただの犯罪者のようで。田代私の強い恐怖の表情は他のとき、荒れた“彼”や炎へ“こわがる”をするとき浮かべる表情と全然違っていて、見られている意識が頭からすっぽ抜けているようで。 

ところでわたしは“彼”のスリルを受け取る「やさしい炎」と“彼”の気持ちを共有できない「超人たち」を対比と思って見ているんですが。犯した罪を見つめながら“彼”から渡されたものを“私”がどうするかなって。
田代私、このときからだと思うんだけど、“彼からふれられる”ことに反応示さなくなっていきません……? 反応は示すんだけど、「やさしい炎」で抱きしめられたり「計画」で首を掴まれたりしたときのうっとりした陶酔をしなくなっていくじゃん……。
抱きしめてくれた“彼”にしがみつくように抱きついてもまなこが動揺と恐慌に見開かれたままで、興奮した新納彼が抱きしめて首筋に顔を埋めて口付けすらするのに、気づきもしていないみたいに恐怖で固まったままで。*10はじめから壊れてはいた心だけど、形のなくなってしまうほど砕けていった致命傷はここなんじゃないかな、と後から思い出して感じました。 

田代私は心がぼろぼろ砕けていくわけですが(わけですがじゃない、)新納彼が砕かれていくのは本心と身体以外の全てって感じしません? 理想像も未来もプライドも手から離れていくように砕けて、その全部が“私”の誘いに乗ったからで。誘いっていうのかな、誘導? “私”が不安を訴える言葉の、感情でないものに手を伸ばすことでどんどん理想の自分が保てなくなっていく。一見ただしいような選択から少し遅れて。
例えばさ、田代私は新納彼の本心(「俺が本当になりたいのは、彼みたいな弁護士だ」)を絶対知ってたと思うんですよ。子どもでいるのをやめたから、気まずそうな“彼”を気遣って知らなかったって答えてあげてるだけで。*11
だって田代私、「『弁護士』と相談する時間をくれたんだ」をあそこだけかなり強くはっきり言うじゃん。「スリル・ミー」や公園での決別でぶつけた破裂するような叫び声じゃなくて、強いけど輪郭のはっきりした硬い音。“彼”がずっと隠してた本当に欲しいものを(人を救う弁護士という、眩しくてまっすぐで子どもっぽい夢を)知っていて、手を伸ばさずにいられないものを差し出したんじゃないかと思ってる。
“彼”が離れていくのを止めたかったからっていうのもあると思うんだけど、あそこで弁護士のように「話すこと」を教えたことで、“彼”は殺人の実行犯だとバレなくても“私”の偽証の共犯者になっちゃうんですよね。警察が真実を見抜くほど有能ではなく、けれど“私”の疑いが晴れるほど馬鹿ではなかったときの保険になる。“私”が“彼”への裏切りを、自首をしなくても一緒にいられる保険。

ここからも幻覚なんだけど、田代私は自首するつもりなかったんじゃないかなーとも思うんですよね。公園での決別で「待てよ!!」って叫んだ後、田代私は俯いたままひどく動揺してたんですよ。少しの間だけど、足は止めても振り向かない“彼”を見ることもしないで。
ここで“彼”が「先に裏切」るだろうこともきっとわかってて、黙って自首しても(ひょっとしたら自首しなくてさえ)同じ結果になるのに思わず引き止めてしまった、より傷つく選択をしたのが駆け引きでもなんでもない“私”の衝動だったらすてきだなって。傷つくだけなのに求めずにはいられないの、2人の関係だしスリルを必要とする“彼”とおんなじだし、すてきじゃん? 

途中から“私”の話になってくの自分でも笑っちゃうんだけど、まだ遠目で新納彼の感情を追えるほど新納さんを見慣れてなくて……つい……*12

 

感情、残ってる???

砕けていく二人って言いながら砕けてく“彼”の持つものしか話してないな?と思って(砕けてない“私”の話はちょうした)項目が増えました、「超人たち」から後ぼろぼろ見えなくなっていく“私”の情動が心の砕けていくようだという話をですね。
「脅迫状」で「きっと払うよ」「金持ちなんだし、当然だろ!」って明るい声でお返事する田代私の顔に何の表情も浮かんでないの、見ました……? 新納彼はタイプする手元を見てたり“私”の言葉に現実の痛みを刺激されて苦しそうにしてたりで“私”を見てなくて、だから気づかないんだと思うんだけどさ。田代私、立ち上がって振り向いたくらいまでずっとそういう顔してるんだよね……。歩きながら「うちもきっと〜」って話し掛けるときにはもう笑ってるんだけどさ。*13“彼”が背を向けてるときでも上向いて考える仕草をするような子だったじゃん君……。
余裕がないというよりも、そういうのを感じるところがなくなっていってるような不穏な何もなさの印象を受けた。*14

取調べ室でやっぱり感情の乗ってない顔のまま低く話していた田代私が、ぱんっと明朗なあの*15声で「君は嘘を吐いて自分だけ逃れようとした」「僕は真実だけを話した」って言い出すのすごい、すごいあの、こちらの情緒が一気に掻き回されましたね……。前は…まえ聞いたときは柔らかくて少し高くて慈愛のような、穏やかに凪いだ大人みたいな声して言ってたじゃん……そんな、「まるで弁護士」みたいな淀みなく力強い声……。
嘘をついたり言い訳したり、ここでの新納彼が卑怯でちっぽけで憐れな人間らしいように揺らがない田代私を超然としているっていうこともできるのかもしれないけどさ、いやあの、わたしは嫌だよ情動を出さないんじゃなくて見せるような情動がないような感じを超然としてるって呼ぶの……。

「僕を組んで」で見上げた新納彼の少年を攫ったときみたいな笑顔からふいっと顔を背けて、声を殺して必死に涙を堪えているような悲しみでいっぱいだった田代私が、新納彼が抱きしめた瞬間に壊れた人形みたいにごとんと表情をなくしたの忘れないからな……。何も映していないまなこの表面がまだ濡れたまま黒いガラス玉みたいに輝いていたのを、さっきまでそこにあった少年の感情の残滓みたいな涙の跡を忘れないからな……。
新納彼が力をかけたときのぐにゃりとした力の抜け方が意思に添うてるんじゃなくて意思がない物が動かされてるようなそれで、口付けられてびく、と胸から跳ねた身体に意識の宿ってた安堵を覚えた(拒否反応のようで胸は痛くなった)
世界に引き戻されたのに切実な表情で振り向いても冷静な目をした“彼”とはすれ違うように一瞬視線が当たるだけですぐ後ろを向かれてしまうの本当に可哀想でしたね……。糸を引っ張られるように一歩踏み出した足はそこで止まってしまって。

  

孤独で幸福な世界

“彼”といられる幸福と“彼”が離れることへの恐怖しか残っていない田代私が新納彼の告げた「孤独だ」を強く打ち消したあの瞬間、“私”は本当に孤独になってしまった。と思った。"彼"の言葉さえ届かない、誰とも心を通わすことのない一人きりの完全な幸福に。
だってあの顔見た……? 涙を流す“彼”が掛けた「孤独だ ひとり」に目を見開きかけたのを「いや!」って否定して、続く「離れられない」ではどろりと融けるように笑んでいて、“彼”の言葉も涙も意識に入り込めやしないの。
幼くてこわがりの田代私が"彼"に揺り起こされた最後の恐怖を自分で打ち消してしまったから、もう新納彼は"私"にスリルを与えられないし、“私”が"彼"に恐怖を取り去ってもらう必要もなくなってしまったんですよ。キスも言葉も心もいらない。
そんなの孤独じゃん……。物理的に一緒にいたって一人でいるのと変わらない。「いい加減な気持ちならいやだ」って、心を与えられない不安に目を揺らしてた“私”がそうやって幸福になってしまうの哀しすぎるでしょう。
わたしはにいまりペアに夢を見ているので、あの“彼”の言葉を心の壊れた親友への哀れみやあの頃の“私”がしんでしまった悲しさだと思って聞いています。もう届かないけどさ、何もかもを壊してまで手に入れたかった“彼”の気持ちを最後にもらえていたらいいなあって。

  

まとめきれてないけど好きなんですよ

ところでさ、「見殺しにはしないよ」の主語は絶対『僕が』だと思うんだけど(特にこのペアは絶対そうだと思うんだけど)新納彼なんで気づかないの!?って毎回思う、“私”の顔を見てないからですねわかります。田代私ここでだけ、永遠をうたうときのあの顔をしたんですよ……。*16
でもさ、にいまりペアはさ、このセリフだけめっちゃくちゃ声がとろりとするじゃん……蜂蜜みたいな音になるじゃん……。

取調べ室の新納彼が「二人でいよう」って、誘拐する少年に向けてた笑顔と声とそっくり同じもので田代私に向き合うから、“彼”は何もわかってない、いまこの人は“私”をなんにも見てないんだな……って気持ちになりオタクは情緒がぐちゃぐちゃになった。好きです。 
新納彼は取調べ室で“私”が見上げていることに気づいても、人間らしい荒れた感じをあんまり隠さないよね……。*17“私”の前ではありたい姿と自然の振る舞いの乖離が小さくいられたのかな……だといいな……。 

前も言った気がするんだけど「スリル・ミー」でジャケットを脱ぎ落としサスペンダーから腕を抜きってしていく田代私の色香がという話をですね。新納彼も艶っぽいんですよもちろん、ゆるくまとわりつかすように手にしたネクタイがしなやかに抜けて落ちてくのとか、ベストのボタンを片手でするする外していくのとか。手慣れた迷いのない動きのひとつひとつに見惚れる艶がある。 
幼いそぶりを好んでしてる田代私がそういう、相手のために服を脱ぐ仕草で色香が漂うの、“彼”仕込みって感じですごくこう…テンション上がりますね……。*18ジャケットの厚い布地が滑り落ちる瞬間に目を閉じてちょっと頭を上向けるの、内から現れるシャツの白と一瞬だけ見える白い喉元と静やかな表情と、あの幼子みたいな仕草の子からふわっと花の香るようにそういうのが覗くの、“私”の天性*19でも身に染むまで教えられたのでも一度言われたことをずっと覚えているのでもすごくこう、いいよね……。すけべ親父みたいなこと言ってるなわたし。
あとこの2人たちさ、ネクタイの落とし方お揃いじゃないです? タイミングは色々な気がするけど(大楽は間を取っていた)手のひらをする、と抜けて行くのとかさ。

 一度言われたといえばね、この“私”「僕と組んで」で口付けられるときに自分から口を開くから。見て。がらんどうの瞳で引き倒されてされるがままに目を閉じた“私”がうすく唇をひらく様、30日のみんなぜひ見てね……。

契約書にサインするとき、出せったら、って苛立った表情で言われて一瞬固まってからゆっくり手を差し出す“私”が指をぜんぶ伸ばしてるの、田代私のほうだったと思うんだけどあれ可愛くなかったですか。人差し指だけを伸ばしてたのにそろっと手を出すときに伸ばしてるんだよ可愛くない? で、“彼”も一瞬手を繋ぐみたいに指先をまとめて握ってあげるの可愛くない?
普通に言ってもナイフへの恐怖が勝って動かない“私”を一瞥して声と表情にさっと苛立ちを乗せて命令する新納彼、やっぱり躾って感じがする。普段はしないからちらっと見せるだけで覿面に効果があるの手慣れてるし、怯えながらでも従ったらご褒美をくれるのもこう……。手を引っ張られて座り込む“私”がちっちゃく悲鳴をあげるのすきだよ 

「死にたくない」でただの少年みたいに弱々しく震える新納彼が「誰にも見られたくない」って言ったのを聞き届けるかのように、何も浮かんでない顔をごろりと向けていた“私”がゆっくり向こうへ頭を動かして重い腕をゆっくり動かして目を覆うの、あの晩“私”がしてあげられた唯一のことって感じで好きだよ そんなになってもまだ“彼”の言葉を叶えるような
暗い檻が怖い、死刑が怖い、先の見えないこれからが怖い、って震えている新納彼が、おそらく“私”を付き合わせてスリルを楽しんでいた頃からつきまとっていた首に巻きつくロープや暗闇で笑う悪魔から目を逸らす術もなく腰が抜けたまま首を振って後退るしかできないのすごく可哀想 鉄格子の冷たさに怯えているほうがまだ怖くなかったね
ありもしない、って言ったら可哀相なんだけど(というのは現実の痛みに悲鳴を上げている“彼”の心が出していたサインだったんだろうから)想像の死の気配から逃れようとして結果、本当に死の手が届きそうなところまで進んでしまったのが哀れ

 

そんなスリル・ミーにいまりペア、なんと5月30日17時から配信があります! いろんな権利で大変だったらしいのでたぶん一回こっきりの機会です、みんな見て!! "彼"が鷹揚で”私”がひよこしてて双方向の愛があるから安心して見て!!
でも"彼"は人間に引きずり下ろされるし"私"の心は壊れる。それは間違いない

*1:今回でわたしが人の声そのものじゃなくハコに反響してる音含めて声の高さと認識してるのが判明したりしたので。TVや円盤は音の上側の厚みが切れると思ってはいた……

*2:だから「大人っぽくなった」って答えるんじゃないかな、あのとき

*3:田代私、躊躇ってから口にするよね

*4:ピアノの音とぴったり重なる拍でとんとんって落ちる「ぶんしょ?」が好きです

*5:田代私は目で考えるんだなあ、と思った。欲しいものを、手に入れる道のりを目の前に描き出すみたいに。

*6:ニーチェ?いつから哲学なんか」って嬉しそうにするからこの“私”は哲学が趣味だよ(幻覚)本を捲るときも、背表紙確認して目次を見て中ほどまでページを繰ってじいと読んで、「ニーチェのどこに書いてある、火をつけろって!」って反論する前に彼から見えない向きでうん、って納得するような顔する

*7:田代私が「僕は騙されない」と言ったのに何故かびっくりしたことだけ、覚えている

*8:「計画」の最後で田代私の頭が新納彼の胸元ちょっと上あたりにまで来ててあっ大きいってびっくりした。なるほど「頭をくっつける」(配信で言ってた)ような……。なんか、再び対等になったようなしずやかさがあったね……

*9:福士彼はまさに強い喜び、成河彼は目を逸らすことも許されない恐怖といった印象を受けた。広山ペアは2人とも、一線を超えてしまったことへの強い強い衝撃があって、山崎彼はひび割れた心での喜び、松岡私は罪への恐怖、みたいな。

*10:やがてぐったり力を抜いた田代私の泣き疲れたときみたいにしょぼつかせた目の、ひび入った水晶みたいに光が入っているのが憐れましくて好きだよ。無力でちっぽけな人間みたいな。

*11:あと護送車まで至った“私”が本当に知らなかったら、それこそ小さく震えて泣き出しそうじゃない? 妄想強度が高い幻覚なんですけど。

*12:Q.田代さんは? A.LNDだけで今期スリルミの倍くらい拝見しており。チケ取りしやすかったんよ……

*13:「車で出かける?」って聞いたときみたいな笑顔で。さっぱりして一見何の含みもなさそうな。

*14:ところでこの後、「金さえ出せば〜」からも音の終わりが綺麗に揃うのお二方の関係の長さと表現力を感じましたね……。距離もあるし姿勢も違うし歩いてもいるのに、少しのぶれもなくぴたりと切れる。

*15:田代さんがカテコトークやコンサートで名乗るときのあの声で

*16:今回の田代私、新納彼を見て「うちも、きっと出すと思うよ」を言うまで感情おっことしてきたような顔であの明るい声出しててそれもそれで不穏だったよ。

*17:1番大きく変わるのは福士彼。傷つき動揺した少年がすぅっとうつくしい男の顔になって冷たく見下ろす。侮蔑の色で。

*18:公園で『口を開けろ』ってジェスチャーされてたじゃん、あんな感じでいっこいっこ教え込まれたのかなって

*19:元々にいまりペアの“私”に彼仕込みの印象があって盲点だったんですがすごくえっちい発想だなと思いました。集合知ってすごい。