つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

MA1/31感想その2

 

見て取った構図の語りとこの人物のこのショットを見てくれを同時に書こうとするから行き先迷子になるのだと気づいた冬。気づきが遅すぎる……喉元過ぎれば振り返らないのが悪い……。

 

小野田さんオルレアン公。
歌が良い。いや本当に歌がいい。安定した艶のある低音から駆け上がるハイトーンの光沢、ぜひ「私は神だ」も歌ってほしい。
私この方を知ったのがNHKラジオ*1の生歌でそれ聞いた瞬間に出てる円盤すべて集めることをしたんですが*2、声量と音色の響きと艶が両立してるのすっごいよね。各音楽会社は一刻も早くこの人をつかまえてCDアルバムを出させてほしい。
オルレアン公、市民の味方と言いながら彼らを道具としてしか見てないから言動不一致のぬるつきが各所でみられる。煽動のために3色の布をばらまきながら市民はぼろを着たままなのとかさ……。3色で抗議行動するならその色の服で十分事足りるのに、服飾工場押さえられなくても生地だけ渡して服を作れと言えばいいだけなのに、なんですよ。端から手段・道具としてしか見てなくて、彼らを救うとか生活の改善とか発想そのものがないんだよな……。
女たちの煽動で硬貨を放ったのを見た瞬間にマルグリットが愕然とした顔になって、沸き立つ女たちを先導しながらも最後までその感情を隠さないままはけてったのが個人的にすごく好き。徹頭徹尾信用も信頼もしてない。
2幕頭だったかな、市民たちが沸き立つ中「暴力こそ」「自由だ」(正義だ、だったかも)の間に一瞬だけすうっと口角を上げるんですよね。彼だけ。今ここの怒りと熱狂で動いているだけの集団でひとり、彼だけがゴールの図を描いている。民衆が考えてるのは”現状”を”壊す”ことだけで、”どうなる”の明確な形をイメージしてはいない。オルレアンだけが己が実権を握る国家ってゴールを定めているから、怒りの空気に呑まれて動く暴動のなか期待通り進んでいる満足をおぼえるんだよね。
小野田さん、ダンスやってらしたからなのか指先まで意識が通っていてテンション上がる。あともしよかったら目元いやこれは好みの問題だな。目の動きや光のわずかな変化に感情がにじむ演技がヘキに入るというだけだしな……。でもせっかく綺麗な白眼なのでパンフだけでなく板の上でも見せてくれたらオタクはもっとうれしい。
ところで小野田さんも高貴な貴族枠なので艶のある長髪をリボンで括っている組で、妖艶なプラチナブロンドに黒いリボンが大変眼の幸福度を上げてくれるのでみんなぜひ一回は後姿をグラスで抜いてみてね。普段の黒いビロード?ベルベット?も似合うけど服屋来訪の着込んだ白に似合う黒も素晴らしいよ。

 

昆さんマルグリット
歌声の音色と台詞の音色が地続きなのすごくタイプ。ミュージカルのナンバーは歌だけど台詞なのでそういう調整をしてくれる人をみるとすぐ好きになっちゃう*3
マルグリットを道具でも英雄でもなくひとりの人間として見てくれるのが作中でフェルセンただ一人なの、ちょっと残酷すぎる(好き)世界は彼女を消費するばかりで誰も彼女を守ってくれない。連行されそうなマルグリットをフェルセンが庇ったの、彼女が母を亡くしてから見返りを求めない行為を受けた初めてで唯一だったんじゃないかな……。
スラムの人々は食料を得てくれる英雄として見ているしオルレアンや自称詩人は使える道具としか見てないし*4、マリーも敵としてはある意味対等な個人としてみてたり一瞬気持ちを分かち合ったりしたけど、可能性の絆さえ手紙を運ぶ道具にしたし。マルグリットがフェルセンに抱くたぶん恋心とされている感情、事由はもっともっと根源的なところにある気がしてならないんですよね……恋心としての発露が、なんというか一番”まとも”というか彼女自身が”容認しやすい”形だっただけで……。彼女をひとりの少女として気遣った扱いをしてくれた唯一の人間に特別な感情を抱く、人間が人間であるため心のやり取りを求める心身の悲鳴に近いものでは……?
処刑前の一瞬、マルグリットがマリーを(王妃ではなく)一人の人間として手を伸べたから、マリーも彼女に一人の人間として行為の感謝を返したのそういう意味でも胸熱だった。
昆さんマルグリット、ランバル夫人の私刑の場面で自分はなぜこんなことをしているんだろうって顔のまま、泣き崩れる母に不安がる子供2人をベッドに誘導して窓の外が見えないよう抱き寄せている姿が最高だから……。場面の終わりまでずっとその表情してるのに、子供たちから離れないしまもる腕をけして外さないの最高だから……。マリーの机をあさって咎められても平然と、言質を取られないためだけに言い訳してるあの冷たいからっぽの声と眼差しから自分の儘ならなさに振り回されているこの変化ですよ……

 

原田さんルイ16世
私はフランス革命ものにおいて、出てくるならもう例外なくルイ16世にハマる性癖をしているので割とこう最高だった。ミュージカル作品におけるルイ16世、だいたいは王適性のなさを自覚しているさとく優しく優柔不断なおろかものなので出てくるたびにテンションが上がるんですよね……。お飾りの道化であることしかできないとわかっているおうさま、かわいそうでかわいくないですか。私は「自分で履いたんだ」って笑って見せる彼の誰の面子も傷つけまいとする道化が大変好きだよ……。国王が一人でお召替えするわけないのに、もし本当だとしてもマリーのところに来るまで誰一人耳打ちしてあげなかったことは変わりないんだよなあ……。
MAにおけるマリーとルイ、どちらも「子ども」の夫婦なのだよな、と思う。どちらも子どもで現実が見えていなくて、それでも自分の役割としてぶつかってきたものにはほんのちょっと敏感だからお互いが子どものようにあぶなっかしく思える、そんな感じがする。ルイは国と民のあやうさがマリーよりよく見えていて、マリーは身内とされる人間の害意と作為がルイよりよく見えている。ルイ、マリー流にいえば「人の善意を信じすぎ」る人だから……。彼のそれは己がふがいなさへの負い目半分、国王としての国と民への愛情半分だったのではと思ってしまう。靴もだし革命の帽子もだけど、誰かが血を見るくらいなら自分が道化にされることぐらい躊躇わないルイ16世、国王の矜持と覚悟を十分に持っていると思うんだけどね……政治の能力は、まあ……だけど……*5 侮辱の意しかこもってない革命帽をひったくって被り正面から睨みつけるルイ、
MAのルイ16世、マリーに言う「理解している」もフェルセンを手を握って感謝を述べて続く言葉を塞ぐところも、なんというか愚昧ではあっても暗愚ではなさそうだなって思う。フェルセンとの仲もマリーの取り巻きが甘い蜜を吸っていることも理解はしていて、自分が干渉したところで(国にとって)良いほうへは変わらないから黙認しているような、根の深い学習的無能感が行動動機…行動しない選択の動機になってるような感じがしません?
投獄後、膝に抱き上げたシャルルぼうやの動かす馬車が胸を横切ってもするがままにさせて優しく歌い続ける姿が個人的ハイライト。その歌詞が「鍛冶屋だったら」なのが切ないよね。

*1:今日は一日!ミュージカル三昧

*2:ニコニコミュージカルのおまけCDもある。

*3:考えてみたら推し、みんなそのタイプだった。濱めぐさんとか田代さんとか唯月さんとか

*4:「女だが使える」「男七人分の価値がある」、女性に対して以前に人間に対して侮辱的に過ぎる

*5:というかミュージカル絶対王政において大衆に尽くす頂点はどうもダメっぽいよね、エリザのフランツも「甘すぎる」言われてたもんな

MAみてきました(1/31回)

田代さんにハマったとき*1に円盤買って見てるから内容知ってるはずなんですが、オチを忘却の彼方にしてたので新鮮な驚きがあった。
1/31回です。

花總さんマリー
登場時の気品ある国母の美しさに息を飲まれていたら、それが彼女の身を守る仮面でしかなかった話をですね。気を許せる人の前でほど幼くなっていく王妃が頬が緩むほど愛らしくて息を飲むほど痛々しい。
バルコニーでフェルセンの名を呼ぶ笑顔も服屋で妹とささめき笑う鈴の音も女学生のように愛らしいんですが、庭園のシーン、差し出したお茶をフェルセンに固辞されて、ちょっと肩を落とした後すぐにこにことケーキを分け始めるマリーが童女のようで愛らしくそのえぐさにオタクは泣いた(賛美)
マリーにとって大人らしい振舞いは勤めと身を守るための道具で、彼女の心は幼い少女のまま育てなかったんだよ。もう大人であることと自分でいることが完全に乖離してるじゃん……幼い少女に寄ってたかって大人を強いて、段階を踏んで育つ過程と時間を奪った結果がこれだよ……。
このマリーにフェルセンが繰り返す「大人になるんだ!」、茎から切られた蕾に大きく花開けって言ってるようなものじゃん……。彼女の心が再び育つにはありのままを受け入れてくれる無条件の愛と庇護が必要なのに、フランス王妃にそんな自我は許されないんですよね。もっと時代が下ったフランツでもあれ(ミュージカルエリザ)だぞ。皇族として生きることは心を殺すことなんだぞ。
終盤の少女ではないマリーアントワネットは確かにいますが、あれは少女の心が成長したんじゃなくて少女ごと心が殺された結果だと思うんですよ私は。マリーの心を引きずり出して殺したからフランス王妃と母の在り様が残った、それだけなんじゃないかなあれ……。
裁判で何を言われてもどう侮辱されても凪いだ微笑のまま表情ひとつ動かさなかったマリーは確かに王妃の気品と威厳を保った立派な振舞いだったけどさ、彼女によく耐えた、頑張ったねって励ましをくれる人はもういないんだよ……。マルグリットにシャンパンを掛けられたのを赦したときに「善かった」とほめてくれたフェルセンはもう側にいない。
危害から身を呈して庇おうとしてくれてよきことをしたら誉めてくれて、フェルセンはそういう意味でもマリーにとっての「現実」だったんだよな……。
花總マリー、大慈大悲の淑やかな国母とフェルセンと2人だけのときに見せる少女のいとけなさのギャップがすごく胸にくると思います。あたたかくも穏やかに凪いだ淑女と世界の輝きを目に映した童女、どちらもが完全に切り離されているからそれぞれが心を動かすほど美しいんだけど、それらが混じり合わず両立していることこそ彼女のひずみなんですよね……。あのえぐいほど美しい少女のいとけなさ、自らの眩しさを自覚していない幼子特有の輝き、大好き……


田代さんフェルセン
「無邪気な」に音符が乗っていてオタクは歓喜した。いやあのたぶんいつもコンサートで歌われるときも乗ってるんだと思うんだけどあの感情のこもり方とメロディラインの残り具合が最高だったという話です。
フェルセン…作中のフェルセンという男が卒なく目立った粗もない男で全体的に所作と品性のよさを観賞する感じだった。*2あの時代の貴族階級として破格にいい男だと思いますフェルセン。マルグリットにもひとりの人間として接しているあたり破格なのでは。スラムで人々に囲まれて「……すまない!馬鹿な質問をした」って言うときの目と落ち着いてのジェスチャーが割と好き。紳士的な対応の範疇だけど身の危険を感じてるな? って空気がある。
しかしアクセル、マリーの恋人なんだけど役割というかポジションというかがパパなんだよな……お兄ちゃんでもいいんだけど。よいことをしたら誉めてくれて危うい振舞いを窘めてくれて、危険から庇い悪意を牽制し何度でも救おうと手を伸ばしてくれて。フェルセンに守られ導かれながらなら、マリーの奥にいる少女は大人になれたんじゃないかな……どうかな……。大人になれなかった少女の心が再び育つには、身を守る鎧としての大人の振舞いを外して、本心で考え決めることをしていく過程が必要だったんじゃないかなって思うんだよ……。
マリーに「大人になるんだ」「現実を見て」って言いながら「現実はあなたよ」って言われて顔を緩ませてしまうあたりフェルセンはマリーを愛している恋人なんだよなーって思う。たぶん*3
花總さんと田代さんのペアでこの流れ、エリザのシシィとフランツを思い起こさせるけどこのシーンだけ絞って見ても2人の雰囲気も人物像も全然違って見えるから役者さんってすげえなーって思う。恋や愛に優劣をつける気はさらさらないんだけど、フェルセンはなんというか自我の形があるから……。フランツがないわけじゃないんだけどフランツ、自我のいれものの中に皇族としての自分がめっちゃ多いから……人物としてはしっかりしてるけどプライベートの個人とすると途端にふわふわするいきものじゃん……そこがかわいいんだけど……。
フェルセンはたぶん自分の感情とできることの折り合いのつけ方が上手なんだな。破滅へと踏み出せない男。だから遠くでひとり涙することになる。*4マリー斬首の通知を読んで、目をきつく瞑って天を仰ぎ数度肩を震わせるフェルセン、かわいそうでよいよね。ライトが外れてるのも相まって、彼はこの絶望や悲しみを誰にも見せられないで生きたのかなって幻覚がたくましくなる。
そのフェルセンにまっすぐ客席を射抜いて復讐の連鎖を続けるかを問われるのなかなか胸を圧される演出だった(好きです)。でも一概に悪と言ってるわけじゃないと思うんだよな、だって復讐の連鎖がなければマルグリットの告発もなく、マリーの汚名も濯がれなかった。
言い募ろうと重心が前に出た瞬間ルイに手を握られて口を閉ざすしかなかったフェルセンの、一家と別れて顔を上げてからの動揺押し殺して最善をなそうとする姿がとてもよきなので見てほしい。私やっぱりこの方のやる、破滅の足音を聞いて焦燥に駆られる姿がめちゃくちゃ好きなんだなって……。本当にしたいこと、しなければならないこととできることが乖離していて、しかもそのことに自覚がある。気が付かないほど愚かだったら、すべてを投げ出せるほど無謀だったらこんなに苦しくならないだろうに。
登場時にオルレアン公と言葉を交わした後、目の端で牽制している表情も最高に好きでしたが。はい。地位や立場とその意味をわかっていてどう振舞うかコントロールしている感じがこう、テンション上がる。

ところでフェルセンもオルレアンもなんだけど西洋お貴族のゆるくウェーブした艶やかなウィッグに落ち着いたデザインの質の良さそうなリボンがついているの最高に良いですね。表情が見て取れない後ろ姿にも楽しみがあるの最の高だよ。実用寄りだから色合いも落ち着いていてそれがまたよきです。
東宝ちゃん今からでも間に合うビジュアルブック作ろう。LNDを見習っていこうあれは最高の試みだったよ。

 

 

*1:'19LND

*2:嫌いじゃないんですどっちかというと楽しかったですひずまなければ生き延びられなかったいきもののあわれさを偏愛するオタクなのでそうでない生き物の愛で方がわからないだけで。

*3:わかんない自分のぜんぶをかけて愛してしまういきものばかり愛でてきたから……メタマクd1夫人とかノーマとか……。

*4:歌いだしから目が濡れてて最高にテンションが上がった。

SH新譜『絵馬に願ひを!』感想

やっと聴きました。BD再生機器を持っていなくてちょっと遅刻したよう。

まずはRevoさん新譜発売おめでとうございます。待ってました。
そしてところでお願いがあるんですけど、フルエディションの折はどうか、1回出た曲は任意再生できるようにしていただけたり…しませんか……。
物語そのものが一時停止も早送りや巻き戻しも受け付けないのも未出の曲が存在すらわからないのもれぼちゃんが仕込みたいならしょうがない。しょうがないんですが、一度出たものについてはADVのスチルや取得イベント/EDみたいな感じで、こう……我々の全員が一度見聞きした音楽を完全記録するマジカル集中力と記憶力を持っているわけではないんですよ……。


以上以下、個人の感想です。以下ネタバレを山のように含みます。

ランダム曲は少年のみ引いた…のかな?
1曲目の彼女と2曲目の姫子、4曲目の少女が同じ人物(改竄されてたり地平が違ったりする可能性はある)と仮定しています。

「星空  へと続く物語」
星空の後ろが確実に2文字ぶん以上空いている件。レア曲だとこっちに曲名/歌詞が挿し込まれるの?
告知のときにTLがざわざわしていた「白い影」*1が幻想だと判明したりもしましたが、そこを抜きにしてもなかなか達観した目線ですよね。達観というか、諦観というか。自分も他者もまんべんなく無味乾燥にみている。
母が産褥死して「何も望まないように」「諦めながら生きてた」彼女には、父親は唯一の生者とのつながりになるんだろうなあ。諦めることですべてを受け入れてきた少女が諦められなかった変化への願い。
父親の病は今すぐ生死を左右するもの*2って説とアル中のような自分と周りを振り回すもの*3って説がポップしてるみたいですが、中高生の少女にはどちらもおおごとです。一度も振り返らずに「白い壁」から遠ざかるのだから、父親は病院にいて、緊急性か高いか病状が重いかなのだと思います。*4
ところでこの”新しい巫女”、選択時のシルエットが真っ白じゃなくてうっっすら赤く色づいているの地味に不穏ですね。

「絵馬に願ひを」(曲名不明)
この神サマ、胡散臭い。
ルールに則ってる動作に言いがかりつけて過失に加算してるのも騙りのにおいがするんだけど、この神社が何を奉ってるかに結局答えてないのがきな臭いのですよね。「ほんとに神社の娘?」って煽ってからフォロー入れた風で流してるけど、狼欒神社の狼欒大神って何一つ説明してないのとそう変わらないと思うんです。「OK!」「Of course!」とかそことなく漂う英語圏も胡散臭さに拍車をかけている。ノエルの兄ちゃん(故)が関係あるのかもしれないけど。
過去と未来の狭間なら、父の病はやっぱり緊急性の高いものなのだろうか。巫女の選択が姫子自身の願いに返る? 信徒の願いを叶えるなら、願われた呪いも叶えに行くよな……。
Romanは母親の《伝言》だったけど絵馬は神々の《伝言》なのかもしれないね。解釈していたのはMoira,書き換えていたのはNein,事象を飛び越えていた地平線はあったろうか(強いて言えばヴァニスタが飛んでたけど墜ちたよねよだか)

「夜の因業が見せた夢」
失敗した国産みと最後の神産みの輪郭がすごい。すごいっていうかその神話がモチーフなのでしょう。ついでに言えば昏い坂道からヒカリを目指して駈け上がるのに黄泉比良坂の気配を感じる。
陽葦火山神社の”葦”、ヒトのことかと思ってたんだけど日本神話は葦にも何か意味があるのかな。
この曲、ポジションがジェッソだからそれこそ知識がないと突っ込むところが見つけにくいな?

「贖罪と焔の息吹」
冬を越えれば春に至るとされているのに少し救いを見た気がしました。この世界では命は春から始まり冬に終わるのではなく、冬を越えれば春に咲くことができるものなのだな、と。続く、雪が涙で溶ければ海になるだろうって言葉に海の魔女を連想してオタクは背後から刺されましたが。溶けた死の中で歌い続けるしかできなくなったヒトでなきもの。
喪った子のぶんも生まれた子を愛せばいいって親の想い、子が負う望まぬ呪いのひとつだよなあ、と何度でも思う。食物子のときも思ったんだけど、この子は最初で最後の贈り物にもう呪いが詰まっている。宿った火を留めることができなかった母の悔いと、それこそ「呪いにも似た願い」を乗せられた《焔》という名。

「暗闇を照らすヒカリ」
は紛い物の希望でした。ヴェルタースオリジナルじゃん(違う)
この曲じわじわこわいんだよな。「流す」に「おろす」ってルビがついてるところとか、石段がひとつ減ってるところとか。
不育症がどういうものかはそんな詳しくないけど、家畜の場合は(ヒトも)ごく早期の流産ってけっこうな割合でそもそも育てない子なんですよねえ。そう例えば、近親交配のせいで致死遺伝子が揃ってる子だったり、精子卵子の異常で染色体の数がおかしかったり、必要な遺伝子が突然変異で壊れてたり。
前曲の「幸せを願わない母親はいない」が「こんな世界、滅んでしまえばいい!」につながってるのなかなかに人間らしくてよい。母親なら幸せを願う、母親ではないから幸せを願う存在でなくても矛盾がない。ないんだけど、それもまた真なんだけど、切っ先めちゃくちゃ鋭いですね??
最後の願いが砕かれてのこの叫び、イザナギとイナザミの決別(イザナギが全面的に悪い)を思い起こさせて好きです。一度は希望を見たからこそ、裏切られた瞬間に想いが憎悪に反転する。

望みが叶うと《焔》が産まれ、望みが砕けた女は神を呪うこの構図、選択的ヤネウラの香りがしませんか……。巫女が「神に従順」な選択をするとRomanの物語が生まれて、失敗し続けると呪い返し(呪ったのは参拝客だけど)を喰らって父の病を祓った世界線がなくなるんじゃ……。「願ひ」を裏切り続けると過去に戻って呪いに「復讐」されるシステムの可能性、ない……?

「ワタシの生まれた《地平線》」
歌姫のくせなのか演技なのかわからないんだけど、「お酒」「堅物」の音がやたら強張っているのについ虚構を疑ってしまう。普段はお酒を飲まない堅物の父、彼女の育った現実とは異なってたりするのでは。母の死が少女の罪で、鏡に映る姿に面影を見るってことは、生と同時に片親を喪った少女が見慣れるくらい母の写真がずーっと飾ってあるんでしょ? 神社の子なら仏壇はないだろうし、遺影で顔を知っているわけではないと思うのです。
世界ってまあそんなものですよねーと同感する曲なのですが、思想に違和感がなくてどこを切り取ればいいのかともなるのよな。たぶんこの子、巫女やってる中であと2回ぐらい転換点があると思うんだ。

「生きているのはボクだけなんだろう?」
紫紫か青青でしか出てこないのかと思ったけど、全ルートで出るっぽいですね。紫青はまだ確認してないけどたぶん出てくる。
うーん虐待の連鎖、暴力の連鎖! 少年と成人男性が一緒に歌い、最後の哄笑も両方入っていることについていろんな解釈が出てますね。私は少年の父親もかつては少年だった解釈で聞いてる。人はもらったものしか与えられない生きものだと思っているので。
「じゃなきゃこんな酷いコトできるハズがない」も同様だと思うのですよ。「殴られても痛いのはボクだけ」だからって論は、(たぶん)父親から意志をもって加害されたことを否定するのと同時に、猫に同じコトしたときに持っていたはずの加害を自認できなくする。
高いところから落とされて発熱しても放っておかれ*5、水だか湯だかの中に頭を押し込まれ、バットで殴られて。少年が被っているキャップが野球球団のファングッズみたいなことに、あのバットはもともと息子と野球をするために買われたんだろうと思ってしまいセルフ地獄発掘をしている。オタクなので。

「恋は果てまで止まらない!」
はじめ選択肢の意味がわからなくて疑問符5個ぐらい出てたことは秘密*6。悪ガキ幼馴染と愛猫曲の悪童のシルエットが同じなので、この男の子は同一人物なのでしょうね。となると妹はすずちゃんになるのではって気がしてくるのですが、でもまあシルエットが人型なので人間なのでしょう。たぶん。
絵馬に縋ってないで告白すればいいじゃん?って思うんだけど、何かできない理由があるのかね。
姫子の紫に胡散臭いカミの言葉がうつっててビビり散らすじゃん……?「まぁいい」、絶対聞き覚えがあると思って記憶をあさっていたんですがそうだ井戸とメルメル。復讐を促すメルメルの口上と構成が一緒なんだな、この紫…。

「西風のように駆け抜けろッ!」
Revoの韻踏みパワーが炸裂している。婆で妹の黒猫、屋根裏堂を思い出すじゃん……?
スクナヒコ、何やったひとだったかなーと思ってググったら酒造の神が出てきてびびったんですが、たぶん今回は「悪童」と「病気平癒」の面がピックアップされてるんだろうなあ。ウサギに蒲畑でごろんごろんしなさいした神様だっけ?
姫子の青がヒトっぽくなくてちょっとおぞましさある。それはそれとして、苦しみの生って言い切るところに彼女の価値観が垣間見えるような気がする…んですけど、少年を出してから聞くとあの猫このすずちゃんじゃないよね大丈夫……?って気持ちになるな……。

紫にしろ青にしろ、色を重ねると姫子の台詞が胡散臭いカミサマの言い様に近づいてくるのも地味にこわいですね。天秤を傾けすぎるとヒトからかけ離れていくようで。

後奏
過去(7.5)と未来(8.5)の狭間、だから輪廻(第捌の地平線)につながる地平線なんですね!?

*1:”かげ”は古語だと光を指すこともあるという情報が乗って結構な盛り上がりを見せた

*2:愛猫すずの病のように

*3:或る少年の父親のように?

*4:彼女自身が患者の可能性もあるのですが、その場合"近親相姦による望まぬ妊娠"の線しか見えてこないので今回は割愛。ある意味これ以上なく面影で罪を思い知るシチュエーションですが、そこから真っ先にあの願いが出てくることはない……としたい。

*5:この後の猿田分岐で同じ絵に「体温」の音ルビが振られている

*6:願い主の性自認がどうこうって話なのかと思った

ポケモン映画~ココ~を観てきた

名探偵ピカチュウぶりにポケモン映画を観てきました。そもそも映画が名ピカぶりかもしれない。
入ったらカップル2組ぐらいしかいなくて空き具合に戦慄していたら、開始まで5分を切ったあたりで未就学っぽいお子さんがわしゃわしゃ入ってきました。ちっちゃい子に長いこと座って待つのは難しいよな…と親御さんにお疲れ様を禁じえませんでしたね……。我が家は子供を映画館に連れてくのは父の役割だったので、母子率の高さに戦慄したりもしました。お子さん3人連れてるワンオペマミーもいたぞほんとにミイラになっちゃうぞ。

ここから下はネタバレを多分に含みます。話を知ってても楽しい映画だけど、初めての色鮮やかさもよきものですね。

続きを読む

舞台「不滅の恋人」感想

感想…うん感想ですね。一個人の主観による感想です。
ネタバレを含むほどあれが何なのか理解していないんだけど内容知らないで観たい人は自衛してくださいね。

だいじょうぶです、栗山民也演出を信じろ(敬称略)

 

そして各関係者はお願い各シーンで演奏されてる曲の小題と曲名と出た年と簡単な背景をまとめて売ってください。有料PDFで売ってくれ。知識と教養がないと演出の半分がわからないのとても途方にくれる。くれた。

続きを読む

クラブ・スーサイド財膳くんルート感想

・「クラブ・スーサイド」のネタバレを山のごとく含みます。

・個人の感想であり、いかなる実在の思想や宗教や価値観とは無関係です。

・いいですね創作と現実は別物だ。主に人権とか倫理とか道徳とか。

感想の前に公式さんに一個だけお願いがあるんですが作品紹介ページの販売先へのリンク、斜体か太字か色変えか、見た目に違いがあるとすごく嬉しいです……たどり着くのに20分くらいかかった…ので……(結局みつけられずにTLに流れてきたファンの紹介ツイートから飛んだ)

 

続きを読む