つまるところ。

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SH新譜『絵馬に願ひを!』感想

やっと聴きました。BD再生機器を持っていなくてちょっと遅刻したよう。

まずはRevoさん新譜発売おめでとうございます。待ってました。
そしてところでお願いがあるんですけど、フルエディションの折はどうか、1回出た曲は任意再生できるようにしていただけたり…しませんか……。
物語そのものが一時停止も早送りや巻き戻しも受け付けないのも未出の曲が存在すらわからないのもれぼちゃんが仕込みたいならしょうがない。しょうがないんですが、一度出たものについてはADVのスチルや取得イベント/EDみたいな感じで、こう……我々の全員が一度見聞きした音楽を完全記録するマジカル集中力と記憶力を持っているわけではないんですよ……。


以上以下、個人の感想です。以下ネタバレを山のように含みます。

ランダム曲は少年のみ引いた…のかな?
1曲目の彼女と2曲目の姫子、4曲目の少女が同じ人物(改竄されてたり地平が違ったりする可能性はある)と仮定しています。

「星空  へと続く物語」
星空の後ろが確実に2文字ぶん以上空いている件。レア曲だとこっちに曲名/歌詞が挿し込まれるの?
告知のときにTLがざわざわしていた「白い影」*1が幻想だと判明したりもしましたが、そこを抜きにしてもなかなか達観した目線ですよね。達観というか、諦観というか。自分も他者もまんべんなく無味乾燥にみている。
母が産褥死して「何も望まないように」「諦めながら生きてた」彼女には、父親は唯一の生者とのつながりになるんだろうなあ。諦めることですべてを受け入れてきた少女が諦められなかった変化への願い。
父親の病は今すぐ生死を左右するもの*2って説とアル中のような自分と周りを振り回すもの*3って説がポップしてるみたいですが、中高生の少女にはどちらもおおごとです。一度も振り返らずに「白い壁」から遠ざかるのだから、父親は病院にいて、緊急性か高いか病状が重いかなのだと思います。*4
ところでこの”新しい巫女”、選択時のシルエットが真っ白じゃなくてうっっすら赤く色づいているの地味に不穏ですね。

「絵馬に願ひを」(曲名不明)
この神サマ、胡散臭い。
ルールに則ってる動作に言いがかりつけて過失に加算してるのも騙りのにおいがするんだけど、この神社が何を奉ってるかに結局答えてないのがきな臭いのですよね。「ほんとに神社の娘?」って煽ってからフォロー入れた風で流してるけど、狼欒神社の狼欒大神って何一つ説明してないのとそう変わらないと思うんです。「OK!」「Of course!」とかそことなく漂う英語圏も胡散臭さに拍車をかけている。ノエルの兄ちゃん(故)が関係あるのかもしれないけど。
過去と未来の狭間なら、父の病はやっぱり緊急性の高いものなのだろうか。巫女の選択が姫子自身の願いに返る? 信徒の願いを叶えるなら、願われた呪いも叶えに行くよな……。
Romanは母親の《伝言》だったけど絵馬は神々の《伝言》なのかもしれないね。解釈していたのはMoira,書き換えていたのはNein,事象を飛び越えていた地平線はあったろうか(強いて言えばヴァニスタが飛んでたけど墜ちたよねよだか)

「夜の因業が見せた夢」
失敗した国産みと最後の神産みの輪郭がすごい。すごいっていうかその神話がモチーフなのでしょう。ついでに言えば昏い坂道からヒカリを目指して駈け上がるのに黄泉比良坂の気配を感じる。
陽葦火山神社の”葦”、ヒトのことかと思ってたんだけど日本神話は葦にも何か意味があるのかな。
この曲、ポジションがジェッソだからそれこそ知識がないと突っ込むところが見つけにくいな?

「贖罪と焔の息吹」
冬を越えれば春に至るとされているのに少し救いを見た気がしました。この世界では命は春から始まり冬に終わるのではなく、冬を越えれば春に咲くことができるものなのだな、と。続く、雪が涙で溶ければ海になるだろうって言葉に海の魔女を連想してオタクは背後から刺されましたが。溶けた死の中で歌い続けるしかできなくなったヒトでなきもの。
喪った子のぶんも生まれた子を愛せばいいって親の想い、子が負う望まぬ呪いのひとつだよなあ、と何度でも思う。食物子のときも思ったんだけど、この子は最初で最後の贈り物にもう呪いが詰まっている。宿った火を留めることができなかった母の悔いと、それこそ「呪いにも似た願い」を乗せられた《焔》という名。

「暗闇を照らすヒカリ」
は紛い物の希望でした。ヴェルタースオリジナルじゃん(違う)
この曲じわじわこわいんだよな。「流す」に「おろす」ってルビがついてるところとか、石段がひとつ減ってるところとか。
不育症がどういうものかはそんな詳しくないけど、家畜の場合は(ヒトも)ごく早期の流産ってけっこうな割合でそもそも育てない子なんですよねえ。そう例えば、近親交配のせいで致死遺伝子が揃ってる子だったり、精子卵子の異常で染色体の数がおかしかったり、必要な遺伝子が突然変異で壊れてたり。
前曲の「幸せを願わない母親はいない」が「こんな世界、滅んでしまえばいい!」につながってるのなかなかに人間らしくてよい。母親なら幸せを願う、母親ではないから幸せを願う存在でなくても矛盾がない。ないんだけど、それもまた真なんだけど、切っ先めちゃくちゃ鋭いですね??
最後の願いが砕かれてのこの叫び、イザナギとイナザミの決別(イザナギが全面的に悪い)を思い起こさせて好きです。一度は希望を見たからこそ、裏切られた瞬間に想いが憎悪に反転する。

望みが叶うと《焔》が産まれ、望みが砕けた女は神を呪うこの構図、選択的ヤネウラの香りがしませんか……。巫女が「神に従順」な選択をするとRomanの物語が生まれて、失敗し続けると呪い返し(呪ったのは参拝客だけど)を喰らって父の病を祓った世界線がなくなるんじゃ……。「願ひ」を裏切り続けると過去に戻って呪いに「復讐」されるシステムの可能性、ない……?

「ワタシの生まれた《地平線》」
歌姫のくせなのか演技なのかわからないんだけど、「お酒」「堅物」の音がやたら強張っているのについ虚構を疑ってしまう。普段はお酒を飲まない堅物の父、彼女の育った現実とは異なってたりするのでは。母の死が少女の罪で、鏡に映る姿に面影を見るってことは、生と同時に片親を喪った少女が見慣れるくらい母の写真がずーっと飾ってあるんでしょ? 神社の子なら仏壇はないだろうし、遺影で顔を知っているわけではないと思うのです。
世界ってまあそんなものですよねーと同感する曲なのですが、思想に違和感がなくてどこを切り取ればいいのかともなるのよな。たぶんこの子、巫女やってる中であと2回ぐらい転換点があると思うんだ。

「生きているのはボクだけなんだろう?」
紫紫か青青でしか出てこないのかと思ったけど、全ルートで出るっぽいですね。紫青はまだ確認してないけどたぶん出てくる。
うーん虐待の連鎖、暴力の連鎖! 少年と成人男性が一緒に歌い、最後の哄笑も両方入っていることについていろんな解釈が出てますね。私は少年の父親もかつては少年だった解釈で聞いてる。人はもらったものしか与えられない生きものだと思っているので。
「じゃなきゃこんな酷いコトできるハズがない」も同様だと思うのですよ。「殴られても痛いのはボクだけ」だからって論は、(たぶん)父親から意志をもって加害されたことを否定するのと同時に、猫に同じコトしたときに持っていたはずの加害を自認できなくする。
高いところから落とされて発熱しても放っておかれ*5、水だか湯だかの中に頭を押し込まれ、バットで殴られて。少年が被っているキャップが野球球団のファングッズみたいなことに、あのバットはもともと息子と野球をするために買われたんだろうと思ってしまいセルフ地獄発掘をしている。オタクなので。

「恋は果てまで止まらない!」
はじめ選択肢の意味がわからなくて疑問符5個ぐらい出てたことは秘密*6。悪ガキ幼馴染と愛猫曲の悪童のシルエットが同じなので、この男の子は同一人物なのでしょうね。となると妹はすずちゃんになるのではって気がしてくるのですが、でもまあシルエットが人型なので人間なのでしょう。たぶん。
絵馬に縋ってないで告白すればいいじゃん?って思うんだけど、何かできない理由があるのかね。
姫子の紫に胡散臭いカミの言葉がうつっててビビり散らすじゃん……?「まぁいい」、絶対聞き覚えがあると思って記憶をあさっていたんですがそうだ井戸とメルメル。復讐を促すメルメルの口上と構成が一緒なんだな、この紫…。

「西風のように駆け抜けろッ!」
Revoの韻踏みパワーが炸裂している。婆で妹の黒猫、屋根裏堂を思い出すじゃん……?
スクナヒコ、何やったひとだったかなーと思ってググったら酒造の神が出てきてびびったんですが、たぶん今回は「悪童」と「病気平癒」の面がピックアップされてるんだろうなあ。ウサギに蒲畑でごろんごろんしなさいした神様だっけ?
姫子の青がヒトっぽくなくてちょっとおぞましさある。それはそれとして、苦しみの生って言い切るところに彼女の価値観が垣間見えるような気がする…んですけど、少年を出してから聞くとあの猫このすずちゃんじゃないよね大丈夫……?って気持ちになるな……。

紫にしろ青にしろ、色を重ねると姫子の台詞が胡散臭いカミサマの言い様に近づいてくるのも地味にこわいですね。天秤を傾けすぎるとヒトからかけ離れていくようで。

後奏
過去(7.5)と未来(8.5)の狭間、だから輪廻(第捌の地平線)につながる地平線なんですね!?

*1:”かげ”は古語だと光を指すこともあるという情報が乗って結構な盛り上がりを見せた

*2:愛猫すずの病のように

*3:或る少年の父親のように?

*4:彼女自身が患者の可能性もあるのですが、その場合"近親相姦による望まぬ妊娠"の線しか見えてこないので今回は割愛。ある意味これ以上なく面影で罪を思い知るシチュエーションですが、そこから真っ先にあの願いが出てくることはない……としたい。

*5:この後の猿田分岐で同じ絵に「体温」の音ルビが振られている

*6:願い主の性自認がどうこうって話なのかと思った