つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

みずほの成人の日コンサート感想

すみませんが教養がないのでほとんど2部です「こうもり」の抜き出しなんだって。新成人のお兄ちゃんが弾いてた曲はドビュッシーの月光というらしい。

 

1部
きらきらしてるなーと思ってたら嵐の前みたいな強くて形のある風の勢いでわあっとしてておもしろかった。技術とか歴史とか背景とか表現とかおれにはなにもわからないからおれになにもきかないでくれ。


幕間
テープ?で赤じゅうたんが固定されていくのとかおっきいチェロとかハープとかがどんどん運ばれてくるのとか見ていて楽しかったです。ハープだ!ハープいつ弾くのかな!と思ってたんだけどいつ弾いてたのか見るのは忘れた。弦楽器の弓が膜みたいになってるの初めて知りました。


2部

語りの後に歌が来る、サンホラ村の住人には慣れ親しんだ構成。演奏会形式というらしいです。このくらいの長さだと楽しいなーって思ってるうちに最後まで終わるので体力ない民にやさしいなって思いました

お話の内容は……
あらすじを読んだ私「昼ドラじゃん」
見終わった私「りぼんとかちゃおとかの絵柄だった」

いやあの揶揄する意図はないんですが、その、ごめんあのもしかしてオペラって痴情がもつれがち……? 前にここで見たオペラの曲も振られた男どもが嘆く歌だった気がするんだけど……?
おそるおそるツイッターで聞いてみたところ、

オペラ大体もつれるイメージ

よくよく話を追うと9割がた痴情のもつれ

演出によっては魔笛ですらもつれる

とオペラ観る知人各位に力強い肯定をいただきそうか……としました。痴情がもつれないオペラもあるらしいとは噂に聞いた。サロメはもつれていると思います。

お歌と演出がつよつよだから言葉のニュアンスわからなくてもなんとなく言ってることがわかる*1のプロがやる伝統芸術の強みだなと思いました。パンフレットの情報と見た印象だけで喋ってるからたぶんだいたい間違ってる。ごめんね。こういうこと言ってたがふわっとしてるのは私の脳内記憶がゆるふわしてるからで訳詞字幕はちゃんと日本語でした。すごいばらつきがあるのはついついガブリエルおじちゃん見てたのと初めてみる人間から情報拾うのへただからです。


ファルケ(与那城敬さん)
進行のおじちゃん。博士らしいです。おじちゃんが日本語で喋ってくれるからお話についていける。「こうもり博士」のエピソード話してるときの目をくるんとさせるのが可愛い。
「ここで私も」って言ってひょっと歌い出すのコミカルでおもしろかった。めちゃめちゃ声が出ててマイク……要るんです……?と思ったけど喋るときには要るものなんですね……?
晩餐会でアイゼンシュタインをけしかけたりよしよしみたいな顔してたりした気がする。いや司会が流麗でそっちの印象が強くて……。「日本からゲスト」をお呼びするって趣向らしいですね。


アイゼンシュタイン(小森輝彦さん)
かわいいねこのおじちゃん!?出てきた瞬間からよよと嘆いてた、その全力のやっちまったー!感がすごい好き。可愛い。1週間の刑罰でえーやだー不幸ーみたいな落ち込み方してるのにファルケからのちょっとしたお楽しみのお誘いでころっと上機嫌になっちゃうの可愛いがすぎる。現実の知り合いにいたら尻に一発蹴り入れたくなるだろうけど虚構で昔で異文化圏だから無害でめちゃくちゃ可愛いオジサンなんだよな。害がなくてちょろい生き物に人間は警戒を解くよね。
愛しい仔猫ちゃんって挨拶しとけよ、いいや愛しい子ねずみちゃんと呼ぶよ!の後に私が猫のように抜け出すからね!ってしたり顔でにゃんこのポーズしてファルケを見るの、ちょっとよくわからないぐらい可愛かった。アイゼンシュタインのすごいところ、いい歳の紳士がこれやってもくどさのなくあっ可愛いーで進んでくところだよ。ちょろかわいい。
ゲストの歌を椅子にぺしょんと凭れて聞いてるのが可愛いオブ可愛いだった。曲紹介でファルケが「大人になった二人が最初に出会ったのも、ここイシュー」って言ったときにファルケに顔向けてそうなの?みたいなこと言ってた(口の形で)のも可愛いだよ。ファルケに復讐(仕返し)されてるアイゼンシュタインのほうが私たち仲よしだよねーくらいの懐っこさ。
あらすじ読んでファルケが主役だと思ってたんですが、パーティーの終盤でもしかして主役この人?と気づきました。誰が一番憎めないキャラでおいしいところ持ってくかってこのおじちゃんなんだよな。
このガブリエルをあわれんでくれって跪いてロザリンデに乞うてる姿に1幕のアルフレードを連想したんだけど(構図の対比が大好きなので)演出ではなさそうだなと思った。声域も違うし。


アデーレ(高橋維さん)
おしゃま……ではないのか大人の娘っこなら、健全で健康にすくすく育ったお嬢さんって感じ。動きいっこいっこに活力があって、若さだなあ……って眩しい(中の人のお歳は知らない。)アルフレードが外で何か言ってるのさっぱり無視して、掃除したり自分あての手紙で行きたいなーって夢見る目してたりする。
晩餐会での啖呵の切り方いいよね、あたしがその小間使いに見えるのはあなたがその子に恋してるからよ!可愛い子はみんな小間使いに見えるんだわ!仕込み側だったとしても奥様のドレス着たまま旦那さまにこの啖呵切れるの最高じゃん。晩餐会では公爵にもフランクにもモテてたから事実可愛い子なんだろうね。ほら見てよこの腰をみたいな台詞とともに歌いながら腰を動かしてたのがすごく印象に残っている。


ロザリンデ(嘉目真木子さん)
3人して建前から本音がはみ出てるのが面白い。「心が揺れ動く」って字幕出たときに悲しみでその表現使う?と思ったら3人がお楽しみにわくわくしだして、心の声洩れてるじゃんって面白かった。数語ぐらいの短いフレーズをぴょこぴょこ繰り返すの楽しげでおもしろいね。
話がいまいち噛み合わなくて怪訝にしてる所長と全然気にしてないアルフレードのやり取りをあーもう!って顔して見てたのが印象的。恋人としてちょっと遊ぶにはいいけど一緒に暮らすのテンポが違いすぎて無理そうだな……と思いました。
仮面で顔の上半分が見えないのに、夫と話してるときにどんな表情してるんだろうなっていうのがなんとなく伝わってくるのすごいなーと思いました。時計を取り上げる手管が鮮やかで、さてはガブリエルかつてのロザリンデも同じ文句で口説いたな?幻覚です。ハンガリーの歌うたうところがこの人の見せ場なんだな?という理解をした。
3幕、どういうこと?と妻を振り向くアイゼンシュタインにいっこも怯まないで勝ち誇った笑顔で懐中時計取り出す強かさ。いっけー!って思っちゃったもんね。


アルフレード(田代万里生さん)
言葉違うから何言ってるかわかんないけどわかる、この人空気読まないで暢気なこと言ってる。怪訝な顔してる所長さんと慌ててるロザリンデに挟まれて一人陽気で暢気な顔してるイタリア男。違ったらすみません、でもこの男ラテン系だと思う。あらすじに夫ではないと言えずに……みたいなこと書いてあったの見て湿度とプライド高めの人間を想像してたんですが、あっけらかんとした陽気で愉快な男だった。
お別れのキスって言葉を聞いてぴっかぴかの笑顔でロザリンデに向き直ってさあ!って両腕広げてウェルカムしてるの暢気すぎてめちゃくちゃおもしろいんだよな…… ラッキーチャンス発生みたいな顔してるんじゃないよ(すごいおもしろかったです)(ずっと笑ってた)
すてんと躓いてもロザリンデを愉しそうに見上げて、待ってる所長さんに構わずガウンの袖を笑顔で示して戯れて、連行されながらつぼめた指先にキスしてロザリンデに投げていった。人生楽しそう。まだご飯食べてないのにーみたいなこと言ってたのもこの人だっけ?
ラスト、彼女が幸せならまいっか!みたいなこと言ってて空気読めるんじゃん!?って思いました。でも牢から出されて早々にロザリンデの隣に立って彼女にぱちんとウインク決めるのやっぱ陽気なラテン男だよ。
出だしの声だけ登場、かわいい小鳩ちゃんみたいな字幕出てるところにきゅるって音が丸くなるのこっからもう面白いんだよな……と思った。アデーレはまたかみたいな顔して後は一顧だにしない。


フランク所長(後藤春馬さん)
かわいい。所長お仕事に忠実で人柄もそこそこ良くて(でも女の子が恋するタイプの人柄の良さではない)押しとノリに流されやすくて可愛いね。お仕事で来たのに陽気なイタリア男の押しに負けてえ、ああ、えー……?って感じでシャンパン受け取ってあれー…?ってしながら飲み干して、飲み終わったら味にうんって頷いてるのめっちゃ可愛くて笑っちゃった。かわいいオジサンがいっぱい出てくるねこの話。
フランク所長、2幕の晩餐会でも色気より芸術より食い気で可愛かった。パーティーの中ごろ、椅子に凭れてたり女の子にアプローチしたり企みの順調さに満足げだったり、他の参加者たちは各々自由に寛ぎながらゲストの歌を見てるのに、この人ひとり他所向いておいしそうにグラス乾して\もう ない/みたいな顔してるの可愛くなかったですか?会が進むにつれ順調にへべれけになってく。
晩餐会でアデーレの顔見てあっ!?ってたじろいで、出頭でアイデンシュタインと顔合わせてあれっ!?て同様に驚いてをしてるの可愛いですね。乾杯でグラス合わせたきりアデーレへアプローチする素振りもそんななかったのに(見てなかっただけかも)3幕でアデーレがどうすればって言うのを受けていきなり求婚するの、展開も口説き言葉もコミカルで面白かったし、困ってるならおいでよみたいなノリで誘うのそこそこ人柄が良いんだよなこのおじちゃん。


オルロフスキー公爵(村松稔之さん)
5年目ベンチャー企業の社長みたいな男出てきた。気前が良くて作法には寛大で愉しいことが好きそうで、しかし絶対に機嫌を損ねたくないタイプの人間だよあれは。細身で涼やかなのにエネルギーが溢れんばかりで、逆鱗に触れちゃいけない香りがする。楽し気に歌い上げてる晩餐会のルールが普通につよかった。無礼講の宴としては最高のルール設定だと思う。
だいたい笑顔なので言うほど恐くはないんだけど、アイデンシュタインと彼を怒ってみせてるアデーレを見ながら表情がすっと変わったの背筋がひやっとした。直後、アデーレが笑いに変えて赦してやったの見てなんもなかったみたいに朗らかにしてたけど、あそこで愉快で楽しい場の維持に努めなかったらどうなってたんだろうなとちょっと思った。静かに有無を言わさず叩き出されそう。
そんな公爵は自分と乾杯したアデーレがフランクにも乾杯しにいったら残念そうにムッとしてたから、気の強い可愛い小鳩がお気に召したんだと思う。晩餐会のあいだ、ゲストの歌を聞いてるときもちょこちょこ話しかけてたし。その甲斐あって会の終わりにはそこそこ距離が近くなれてて微笑ましかった。一夜の楽しい夢かと思ったら翌日口説き貰いにいったのでつよいな……若いな……そして国やイエを気にしないだけの力があるんだな……と思いました。
晩餐会の終盤の曲が終わるのに合わせてシャンパングラスをくるくる揺すって口をつけ、曲の終わりにぴったり合わせて飲み干してさっ!と立ち上がるパーティーのホスト、絶対仕事ができる。すごいキレ者そうなのにアデーレやフランクと一緒になってアイゼンシュタインを野次馬の好奇心全開の顔で焚きつけてて(仮面の下を見にいけよ!的なお囃子)、楽しいことや色事の彩りがほんと好きなんだなあと思った。

*1:トムとジェリーとか昔のポケモン映画ポケモンパートとかみたいな。何言ってるかわからんけど何おきてるのかなんとなくわかる感じの。