つまるところ。

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スリルミー配信ありがとうございますの巻

何が"巻"なのかはわかりませんが。
まずはあの、配信ありがとうございました! 本編もだし特別映像もだし、いろんなところでたくさんの人が頑張ってくださったんだなーと思いました。
普段アンケート送らない*1んだけど感謝の気持ちを伝えたいので何か送らなきゃなと思いました ありがとうございますしか出てこない*2ので怪文書が4つ行きそう ゆるして

さて。以下、一個人の主観による感想であり特定の個人団体宗教その他諸々とは無関係です。わたしは自分が観たものを継ぎ接ぎして見たい絵をみる物語観賞をするタイプだし*3、あなたが観たものがあなたの真実なんですよいいですかいいですね。


配信ミー全体の感想

元々スリルミーという演目そのものが、ペアや回が違うと別の作品のように印象が変わる物語だと思っているんですけれど。それを置いても配信ミー、劇場で見るスリル・ミーとは別の作品のようだと思いました。どっちも「スリル・ミー」という演目なんだけど、視点が固定されている、音がもう1枚フィルター挟んでいるとこんなに変わるんだなと。劇場だとひとつの場面ではどちらかの人物を追ってることが多いので(首と目の関係で)、二人の表情が交互に見えることでこういう状況だったんだって気づくことがあったり、相手の言葉を受けるたびに変化してくのが追えなくなったりするんだなという気づきもあった。

抜きの画はカメラ越しが、遠景はヒトの目がより画質が良いなーと思いました。スリルミー、物理的に暗いしね。個人の視覚によるのかな。
そしてこれはスピーカーが安物だからかもしれませんが、やっぱりデジタルオンリーだと音のかたちの上半分がなくなる……いやこれは自分が何を聞いているのかわからないんですけど、現場にいたものを配信で見るとまるかったのがすぱっと切れているような、耳が塞がった感じがするんですよ……しません……?音声じゃなくて振動なのかな。

すっげえ個人の主観による感想で間違いなくそういう意図でなされたものじゃないと思うんですけど(予防線)、広山ペアの編集は一度に1カメラの映像固定で、観劇をしたことがない人に舞台を観るってこういう感覚なんですよって導入するみたいだなと思いました。大きく抜いたときに初めて見える僅かな変化や若者特有の目の輝きが"19歳の彼らの物語"にリアルさの味をつけていたなあというか。一度に映る情報量がヒトの目で見た視界と同じなぶん、映像が一番くっきり綺麗だったのもこのペアの編集だったのかなーって。あと、またあとで(たぶん)話すけど松岡私がアップで見ると感情がある人間みが強くて人間だ……と思った。
成福ペアの編集はスリルミ知らない人への挑戦って感じ(個人の感想です。)53歳成河私の語りと笑みで引き込んだら勝ちでしょ……。だってその後に出てくるのがあの福士彼なんですよ、勝ちじゃん。一番心拍数上がったのが「隠された真実」後の成河私から豊かな響きで紡がれる2人だったからそう感じたんだと思うんですが。あそこ意識が引き込まれたまますごく落ち着かなくなりませんか、言葉でないとこの情報量が多くて。そして単純な好みの話なんですが、スリルミ初めての人にも観劇するけど配信あんま見ない人にも入り込みやすい編集だったんじゃないかしらと思っています。どうなんだろうね。
にいまりペアの編集は一度このペア観てる前提のどんでん返しって印象(個人の感想です。)「契約書」その2のカメラワークとか。*4わたしはこの編集(の方針)がヘキどんぴしゃで歓喜したけど初見の人はあそこそれぞれが何をしてるのか*5わかるのかしらとも思った。ピントかホワイトバランスか、途中から全景カメラで表情が見えなくなったからそういう印象になっただけかも。

どのペアの編集も「3ペアのうちこの"私"/"彼"/2人しかしない」動きは抜き出されていることが多くて、すごく丁寧だなあと思いました。そして複数ペア見る前提で編集しましたね?って思いました。最初の53歳私の大写しと「99年」のラスト、カメラワークがぴったり一緒じゃなかった?


各ペアの感想

ペアのって言いながらわたしスリルミのこと"私の物語"だと思ってるので、たぶん短くまとめようとすると偏る。

広山ペア

松岡私、人間になった……。"彼"が"私"を人間にした……。
何を言っているのかわからないと思うんですが劇場で見た松岡私、まなこの質感が共感性絶無*6っていう印象だったのでつい。どアップで見ると思ったより人間みがあった。いや隣の山崎彼と比べるとだいぶん一般的な人間の質感とは違うんだけどさ……。弟くんと電話してたときは気と押しが弱い男の子って感じだったから、"彼"にだけアプローチの仕方が違うんだろうな。
あとあの何より、5/5に(幻覚を)見た砂漠に咲く蓮の花みたいな愛情の大輪*7が咲かなかったので……。配信ミーの松岡私、"彼"を手に入れた喜びのなかに痛々しいものを見るような哀れみがありませんでしたか(幻覚)
"私"が回想した再会からの一連を経て、アルジャーノンのように一人だった松岡私は同種のものに抱く感情を山崎彼という人間に対して手に入れたんだなって思った。なんでその過程で人間性を手に入れたのか言葉にするほどわからなくなるけど……なぜその道のりで……?
山崎彼、劇場で観たときの印象と近くて劇場で観たときより幼い印象が強かった。こまかな仕草が、ちょいちょい幼い。幼さというより、手をかけてもらっていない未熟さなのかな……。例えばさ、「契約書」で血のサインするとき、親指と人差し指を擦り合わせて傷口の血を指に押し広げてから書くんですよ。他のペアの"彼"見ればわかると思うんだけど(もう見られない)、爪でちょいっと掬えばわざわざべったり指を汚さなくても書けるんですよ。指の腹で書くよりはおそらく字幅も細くて格好がつく。そういうところがスマートな仕草の像が描けてない、そういうものを教わってこなかったし示されてもこなかったがゆえの幼さに見えた*8のかな、と思った。いま。「超人たち」の後、探り当てた"私"の手をぎゅっと握るの可愛かったですね……。
このペア、階に駆け寄る"私"に1枚の写真は飛んで行ってしまったんだなと思った。真実は知らない。

成福ペア

わりと……わりとこのペア劇場で観たときと全体的な印象が変わらないので何を言えばいいのかわからない。*9東京で観たときと似た印象を受けた。東京で録ってるんだからそりゃそうか。53歳の成河私がどうしてここに至ったかの物語。序幕で大写しになる53歳私のあの笑みを、護送車のなか19歳の成河私が見せるあの瞬間が個人的ハイライトでした。衝撃の大きかった箇所はいくつもあるんだけど、物語全体でってなるとここかなあと。"大人になってしまった"*10を彼私の両方に感じたの、21年成福ペアがはじめてだと思う。
あとあのさ、わたしこれツイッタであんまり同じ感想みないんだけどさ、"私"への献身が一番表に出てるの、そして根っこがただの愛情深い男なの福士彼だと思うんだけどどう思います????? いやあの関係性に夢見ているのはわかってるから語らせてくれ。すぐ終わるから。
理由を持ってこなきゃすぐ終わるんですよほんとに、福士彼が成河私に見せるあの蠱惑的でうつくしい男の姿、「意地悪く微笑む」"彼"を好きな"私"のために素の自分とは違う姿を演じ続けてるんじゃないの? って話。どこ見て思うかっていうのはツイッタでいっぱい言ってるからいいかな……たとえば「計画」や「超人たち」の後、"私"から見えないところで優しい愛おしむような顔して"私"を見ているところだよ。ぼうっとしたままの“私”に目線を合わせて意地悪く微笑みながら手を引いて立ち上がらせてやるところだよ。
ところで配信ミーの福士彼、「計画」で誘いを拒まれてからの本気の誘惑がすごいな(鬼気迫るのほうで)と思った。わからない、気のせいかもしれない。殺害計画で殺す相手が弟じゃなくなったところで一度は気を緩めた成河私が、「両方?」から一転して強く焦り始め、「お前はな」で止められないと悟って呆然とするのすごくかわいいなと思いました。犠牲の羊に涙を流すのに短いロープや少ない塩酸でやっぱり止めようを期待するの好きだよ。ぜんぶ受け手の見た幻覚なんですが。
「99年」のラスト、扉が閉まるのを泣きそうな顔で身を乗り出して見ている"私"に、この"彼"速攻刺されて亡くなってそうだなと思いました。人を誘い、自殺のように。

にいまりペア

このペアも全体的な印象はあんまり変わらない、かな……双方向の愛情が(あるいはその残り香が)あることがペアの特徴になるスリルミーという演目……。わたしはそういうのを観に行ってるしホリプロちゃんのそういうとこ好きだよ*11
新納彼、思ってたより"私"のことを(物理的にも)見てるし"私"の言葉や仕草ひとつひとつに反応見せてるんだなって思った。「やさしい炎」の印象が強くて、視線を向けなくても"私"の感情の動きを読んでいて、思い通りにあやして宥めて導いてやってるように思ってた。思ったよりずっと"私"に目を向けるし、望む反応が返ってくると嬉しそうにするじゃん……。「僕はわかってる」でずっとどこか現実に倦んでそうだった新納彼が、"私"にわかった、って応えをもらってから目に喜びの光が入るのを見て、ああこの"彼"は"私"がいなきゃだめなんだなって思った。自分が楽しんでいる(いた)ことを"私"に教え込んで、同じように感じさせるのが嬉しいのかなこの"彼"。それは、その愉しみは一人じゃできないね……。
こういう具体の話をしているとまた6000字とかいくから全体の感想を話そう。うん。
ええと。新納彼は思ってたより"私"の一挙一動に反応して感情が表に出てたし、田代私思ってたより序盤から精神が不安定だった。「僕はわかってる」で泣きそうな顔して訴えるなかに明滅するように悦びだけの表情が浮かぶの、この人のなかで"彼"の存在がどれだけ大きいかを物語っているようで。拾い上げたマッチを口元へもっていくあの動き、毎回言うけどすごく好き。精神バランスは危ういなって思う。でもほら、新納彼も田代私もなんだけどさ、(創作上の)人間って壊れかけたときの輝きがいっとう魅力的なとこあるじゃん……? このペアどっちも精神の均衡がぐらぐらしてるからどっちもきらきらして綺麗なんだよ。その輝いているものは往々にして砕けた心のかけらだったりするんだけど。
あの、ところで配信ミーの田代私、公園で「一緒にいてくれればいいのに……」って言ってから顔を傾けて“彼”の首筋に口を寄せるじゃないですか。唇が触れる前に腕から抜けられてしまったけど。あれ、「超人たち」で新納彼がした首筋への口づけをなぞるようだなって感じたのわたしだけですか。興奮した“彼”から受けた、“私”の恐怖を取り去ってはくれなかった口づけ。
直前までの恍惚も興奮も恐怖すらなく、幼い子どもみたいなあどけなさで幼い子どもがしないような仕草をするの、すごく可愛かったんですよ。可愛かったんだけどさ、導く者と庇護される者の役割がきちっと分かれてたにいまりペアが、一方の仕草をそのままもう一方がなぞるのは、それはもう関係の崩壊じゃん……。好きか嫌いかで言えば先を歩いていた新納彼と位置関係がするりと入れ替わるのを示唆するようですごく好きなんだけどでも関係性が壊れてるか“私”の自他境界が壊れたかのどっちかじゃんそんなの……(強度の高い幻覚を見ています)
「99年」、“彼”が離れることをこわがる“私”に哀しそうに笑って「君を認めよう」って言ってあげたの新納彼の憐れみと愛情だと思ってるし“私”にはよかったねと思ったんですがわたしはこれをハッピーエンドとは呼ばないからな!!!!!!!!(好きです) これは意地です。
外の世界を見回すように所持品を確かめる“私”の目が一枚の写真を見つけた途端に内に入るのを見て、このひとは“彼”のいない世界を生きられないんだな……と思いました。

 

特別配信映像の感想はちょっとあの、15分毎にいったん止めて席を立ってうろうろする状態を脱してからでもよろしいですか。ありがとうございますほんとに。

*1:作品の感想を絶対に公式宛で話したくないため。

*2:作品の感想や好みを公式宛に絶対に送りたくない(再)'00年代サブカル沼で公式が客に阿って展開が変わり軸が折れた作品をさんざ見てきてすっかり地雷になった

*3:ついでに言うと根拠のある根も葉もない理屈を展開する狂人の論理タイプでもあります。二次だと大概どマイナーCPにおちる

*4:肩震わせて泣いてる(ような)背中を抜いたり全景にしてその背中しか見えない"彼"とどこか遠くを見ている"私"を映したりする。

*5:"彼"の言葉を泣きそうな顔して聞いてた田代私が「文書?」からずっと静かに何か考えていて、新納彼に振り向いたタイミングでまたぱっと泣きそうな顔をするんですよ。新納彼はあそこで抜いたことなくて、抜いたことある方の知見を求むよりなく

*6:あの大きな目がぬるりとした光を帯びて"彼"をじいっと見ているんですよ……

*7:「99年」で手に入れてしまった人間らしい愛情の表情、それまで"彼"にだけは向けていた共感性がなくなった結果の人間らしい愛情に満ちた笑顔

*8:今回の配信には映りませんでしたが、個人的にはあの損なわれ続けたような男の子がタオルの端を合わせて丁寧に畳んでいく姿が好きです。どこか幼い子どものようでなぜか胸が締め付けられる。

*9:日曜1日かけて具体的な悲鳴はツイッターで上げたのもあり

*10:もちろんいいニュアンスではなく

*11:人間の強い感情は、特に他者に向けるそれはグロテスクが本質だと思っているので。個人的に。