つまるところ。

観劇や演奏会の感想を置いて行く場所。だって青い鳥には推しがいるから。もっと雑多なログもある。 https://utayomichu.hatenablog.com/

JtRはやっぱりアンダーソンが主人公なんじゃないかと思うんですよ

Q.そろそろ1年経つのにまだ言ってるの?
A.はい。

章立てて書いた方がわかりやすいよなーとは思うんだけど6月から散発的にきゃんきゃんしてたのをまとめたやつなので……仕舞い込むより出すかなーとおもいました。

 

JtRはアンダーソンを主人公ポリーをヒロインに据えてホンを直して(というか戻して)やれば筋と道理と人物像が通ってちゃんと面白くなるんじゃないかなと思うよ……。ダニエルはまだしもグロリアがヒロインは無理があるんよ……May'nさんは可愛かったが。
アンダーソンを主人公に据えるならポリーとの蜜月(出会いでもよい)とその破綻を時間と見せ場を確保してやらないとポリーの死をアンダーソンがあんなに嘆く理由に共感しにくいし*1、ダニエルを主人公だと主張するならせめてグロリアの瑕疵を消さないと自業自得じゃん……から抜け出せないんだよ。闇取引の相手を警察に売った女が復讐に殺されかけた(しかもジャックは復讐後に警察に殺された)ところでド因果応報だしそら地獄の炎で焼かれもしようよ案件なんだよ。7年前のちょっとお高くとまったところも含めてあれは悪役の女。悪役の女であることが悪いわけではないが、全てが自業自得な女は悲劇のヒロインではないのよな。

当時はそれどころじゃなくって*2そこまで目を向けられてなかったんだけど、キャラの持つ要素がグロリアもダニエルも間違いなく悪役のそれなんよ。あの二人の「悲劇」、それぞれ欲をかいた裏切りによる因果応報と欲望を優先して目を瞑ってた矛盾が膨らんだ狂気だもん。

アンダーソンの叫びが正しいのは「だから」なんだよ。2人が悪党だから、正論ではなくても*3正しい。
人を救う研究と言いながら「殺人で」作られる死体に金を払う男と、殺人死体の取引仲介で小金稼ぎをするのに厭いて取引相手を警察に売った女。その二人の破滅をロマンチックな恋の悲劇と謳い、犠牲になった罪なき女たちの死を消費するなという叫び。
演目の中で明確に瑕疵がないのはポリーだけなんだよね。酒に浸ってはいるが誰かを害しても裏切ってもいない。たぶん、純粋で穢れのないヒロイン性を与えられていたのは本来彼女なのだろう、と思う。好景気の終わりと環境が彼女の暮らしを現状に落としただけで。
誰かを害したり騙したりしてはいないという点にだけ絞るならアンダーソンもそうだ。ホームズとかと近い時代ならコカインはアリな気もするけど……どうなんだろう……。民族学に詳しい各位教えて。


モンローは……要素が抜けたのか元はネームドじゃないのかちょっとよくわからないんだけど……人物の要素を取れるほど一貫した言動がないので後者だったのかな。あるいはキャストを要素にするポジションだったか。*4元々ネームドだったなら、あったはずの軸を省かれちゃったのか。焦りか生活苦か、金や名誉で掴みたい何かがあったからの抜け駆けだろうので。
人間がいつも理由のある行動をするわけではない、というのは真理ですが、物語上の人物、特に表書きに名前がある(=作者がスポットライトを当てている)においては理由なき行動はまずないだろうと思っています。登場人物の主観として明確な目的があるかとか、意志が一貫してるかとかとはまた別の話です。

というようなことを1年ほど言い続けてきたんですが、あのもしかして、初版で彼が持たされてた役割って「ジャックに魅入られ己の使命*5を見失う」だったりする?
悪魔の影を追ううち自らが魅入られて、神の光の届く世界を見失った者?最後の一線と帰る場所を手放せなかったアンダーソンと違って?

1幕では緩衝役やったり常識ある説教*6したりとアンダーソンと比べても割と秩序側の言動してたモンローが、2幕では金のための裏切り(グロリアの行い)、目的と行動の矛盾(ダニエルの在り様)とジャックと契約を交わした者たちの価値観に侵食されていき、最後は悪魔の陣営に堕ちアンダーソンを(キリスト教的な意味で)誘惑する側になる、そういうことなん?

……いやあの縦しんばそうだとして、その役割はアンダーソンが主人公じゃないと物語の要素にならないのよ。ダニエル主人公でそう動いても悪魔の腕の中で完成した2人だけの世界に入り込むお邪魔虫、馬に蹴られろ事案でしかない!! そのポジションに物語上の意味が生じないのはモンローの責ではないが、アンダーソンの物語じゃないとただいるだけになるんだよなその要員はな……。

モンロー、動機は綺麗じゃないけど目指す状態は結果として秩序の維持に繋がるもので、アンダーソンともそこが共通するわけじゃん。名声願望とヤク中の隠蔽で繋がった我欲まみれの共同戦線だけど……改めて言葉にするとマジで碌でもねえ絆(ほめてる)だな……。
ダニエルの「悲劇」を聞きながら魚の目になっていくアンダーソンと関心ゼロで道具の手入れするモンロー、わんこみたいに揃って欠伸するとこまで含めてなんか愛嬌のあるいきものだったよ。君たちダークヒーローだったんだね。


……JtR、やっぱりアンダーソン主人公に戻してやりません……?それだけで全てが自業自得で1ミリも同情できないダニエルグロリアペアとか物語の都合で人格がぶれてるようにしか見えないモンローとか唯一の癒しだけど完全に話の余分になっちゃってるポリーとか全部解決するやつじゃん……。

ダニエルが繰り出すトンチキ医術や自らをフランケンシュタインに譬える愚かささえ悪魔信仰者の狂気の発露で解決する……。あの時代のイギリスが好きなヒューマンがロンドンはこんな町じゃないって憤慨してた案件はどうなるのかわからんけど……。
めちゃくちゃ悪趣味(ほめてる)なキリスト教の使い方にも神と悪魔の代理戦争って面が出てくるし……。

一見すると自堕落なアンダーソンが与える愛を持つ者で、一見すると聖人そのもののダニエルが悪魔との契約者だったとか。1人の女に執着して残虐を繰り返すダニエルに対して、己の為すべき使命のために最愛をも生贄に差し出す*7アンダーソンとか。
連続殺人事件に全く関係がないアンダーソンの恋愛事情を物語のもう1個の軸としてライト当たる場所に引き出してくると、神対悪魔の構図が出てくるんですよ。

旧約や異聞にはさっぱり詳しくないので、あの話や演出がリリスとかソドムとかまで押さえてるのかは知らんけど……ダニエル&グロリアペア、そういうもんも盛り込まれてそうな気配はするんですよね……。少なくともダニエル研究所はベルゼブブ*8の要素を入れられているわけで。

まあこんな感じで、作中に登場するキリスト教モチーフが悉く悪魔陣営を上げる演出で使い倒される悪趣味さ結構ほんとに好きだったんですけど、フライヤーに血で曇って傾いた銀の十字架でも入れとけよとも思いました。せめてベルゼブブ側のモチーフ入れとこうよ、雷と狼と黒い羽虫とでさ、だいじょうぶホリプロ制作班の技術なら映えが狙えるよ。私は聖書ネタが好きなだけで信仰篤くもないので悪趣味~~~でげらげら笑ってたが、そこへの事前情報一切なしだったから信仰対象に信仰のモチーフで泥掛けられるのを心の準備なく浴びせられる人が出たんじゃないかって不安になっちゃったよ。

*1:ごりごりの演技力で押し切って場面を嘆き一色で染め上げたの加藤和樹の底力って感じだった

*2:加藤和樹氏のプロデュースは素晴らしかった、それ以外の素材がタイヘンなことになってただけで

*3:モンロー側から裏切ったので契約破棄になってるとはいえ、ゴシップをなかったことにせよは本来の約束とは相容れない要求なので。

*4:例えば森公美子さんのマダムテナルディエ、もりくみさんという存在がもうキャラの人物造形の軸じゃん?

*5:十字教のほう。創造主に与えられている、地上で生きているなかで果たすべき役割

*6:人前でヤクをスニッフするな、そこそこ常識を弁えた説教だと思う。人前でなければいいんだというのはあるが、モンローはそれをネタについて回ってるからヤク断ちされてもではあるのだろう。

*7:イサクの燔祭でググってくれ。この話に神の救いは差し伸べられませんでしたが。

*8:怒ると火を吐き狼のように吼える大悪魔。蝿の王とも呼ばれ、羽根に髑髏模様がある蝿の姿で描かれることもある。あんま召喚に応じないけど「友達」を認めた者のしたいことにはそこそこ協力してやったりする。