つまるところ。

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バタフライ効果のたとえ話、いつかしたいと思っていた

 田代さんがSoMLの紹介でバタフライ効果の話をするたび、あの言葉をあの向きで説明するの世界への信頼がすごいなあと思っているという話をですね。いつかしようと思っていた。
あの説明が田代さんの解釈なのかブライアン・ヒルさんの解釈なのかは存じ上げないのですが。未知への可能性のニュアンスで話をするじゃないですか。眩いなあ、と思う。

《butterfly effect》ある系の変化が初期条件に極めて鋭敏に依存する場合に見られる、予測不可能な挙動のたとえ。もとは、米国の気象学者ローレンツが1972年に行った「ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか」という講演の演題に由来する。大気の対流が決定論的な微分方程式に従うにもかかわらず、数値計算の精度をいくら向上させても事実上正確に予測できないカオスの性質をもつことを象徴的に表現したものとして知られる。(デジタル大辞泉

 バタフライ効果とは - コトバンク

 言葉の定義としてはこんな感じ。ソース掴めてないですが初めはカモメを喩えに使うつもりだったというエリザ好きには楽しそうな小話もありますね。

わたし理系分野の専攻だけど物理や数学は専門じゃないのでここからはどうか話半分で聞いてくださいね。情報を拾い集めてもその分野でメジャーな概念理解を獲得するのは外のヒトには難しいので。

わたしは科学に、特に物理には世界の近似値を求める学問だってあたまがあったので、*1このたとえ話を自然にはいまだ届かない、人類の限界を表すことばだと認識していたんですよ。近似式はアナログのゆらぎを削いでデジタルにしたものだから、ゆらぎが結果に大きく響くカオスは計算しきれない、といいますか。
科学の発展は観測している箱庭の枠を広げることや解像度を上げることはできても、箱庭の外や点と点の隙間そのものを計算できるようにはならない。だから、ごく小さな差異が大きな違いにつながる複雑系の全貌を正しく計算することはできない。箱庭のたとえでいうなら、箱庭の外が変化すると、それに合わせて箱庭の中がまるで書き変わってしまう……みたいな感覚かなあ。なんか違うんだけど。がたがた揺れる電車の中で線のブレひとつなく手紙を書け、みたいなほうが近いかもしれない。
まあとにかく、そういうニュアンスで出た喩え話だと思っていたんですよ(そもそも私の理解が間違っている可能性は十分にあります。物理、専門外。)

なので、蝶の羽ばたいた小さな空気の動きでさえ地球の裏側で嵐を起こすことが"できる"という、未知への可能性の物語としてかたられるバタフライ効果がとても新鮮でまばゆかった。

『メガホンの話をしてください』*2みたいな鱗の落ち方をしたのかもしれない。

オチがないね。まあないからねオチ。ルールとしての数学は根性だけど、物理をやっていた人にツールとしての数学の話を聞くと世界の解像度が上がって楽しいよね。文字の連なりが彩りに見える瞬間。

*1:この表現でいうなら生物学は世界を最頻値であらわす学問かなと思う。近似もとるけど、生物学において個体差と学習をないとして考えることはできないので。

*2:科学者はメガホンの音が出る仕組みを語り、小説家はメガホンが出てくる物語を語るってやつ。学校業界の講話としてよく回るんだけど発祥と真偽は知らない